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御堂、衆院選 小島将軍

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 翌朝の日曜日。
 俺は7時に起きてリヴィングへ行った。
 もう子どもたちが朝食の支度をしている。
 御堂と正巳さんも降りて来た。
 
 「やあ、今日も美味そうだ」

 正巳さんが嬉しそうな顔をする。

 タラのムニエル、アサツキのみじん切り乗せ。
 出汁巻き卵。
 ニラと鶏の炒め物。
 豆腐サラダ。
 タケノコの味噌汁。
 他に子どもたちはウインナー(大量)。

 「今日は京王プラザホテルだな」
 「ああ。取材も幾つか入るけど、主に自由党や各省の事務次官、それに大手企業との会談だね」
 「昨日ほど神経は使わないだろうよ」
 「そうもいかないよ」

 御堂が苦笑する。

 「わしも初めてのことだからね。あまりいいアドバイスもないよ」
 
 正巳さんが言う。
 
 「そんなことは。政治のことは大先輩なんですから。それに一緒にいて下さるだけでも、御堂は心強いですよ」
 「ああ、なるべく頑張るよ」

 今日は正巳さんは幾分気が楽だろう。
 自由党との会談では大いに役に立ってくれると思う。

 「もう既に決まっていることの確認が多いしな。必要があれば俺も出る」
 「頼むよ」

 一部の相手には俺のことも話してあるし、何人かは会ってもいる。
 
 「取材はCNNとネットのBABooだよな」
 「ああ、そうだ」
 「CNNは俺も同席するから」
 「うん」

 食べながら簡単な打ち合わせをしていく。
 正巳さんの食欲が旺盛なのを見て安心した。
 流石は歴戦の政治家だ。
 重要な場面で委縮せずに、燃える魂を持っている。
 それに、胃腸が頑健なのは人間として強いことを示している。

 「何しろ、今日はあの「小島将軍」がいらっしゃるからな」

 俺が言うと、御堂と正巳さんが流石に緊張の表情を見せた。

 「俺も同席する。あの人には全て話しておくつもりだ」
 「分かった。宜しく頼む」
 「ある程度の情報は掴んでいるようだった」
 「うん、寮歌祭で話したんだよね?」
 「そうだ。今後の俺たちの活動に重大な影響がある人だ」

 俺は緊張を解くために言った。

 「寮歌祭でよ、こいつらが「ヒモダンス」をやりやがってな」
 「え!」
 「小島将軍が「最高だな」って言ってた」
 「アハハハハ!」

 御堂が笑った。
 正巳さんも笑っている。

 「怖いものを知らない奴らだからなぁ。冷や汗が出たぜ」
 「最高だね」
 「冗談じゃねぇ!」

 「タカさん、みんなで行きましょうか?」
 「絶対に来るな!」

 みんなが笑った。





 またリムジンで移動する。
 今日も双子が一緒だ。
 俺はダンヒルのくすんだ白のフランネルのスーツを着た。
 
 「石神のお陰で、いいスーツを選べたよ」

 俺は御堂と正巳さんに、ブリオーニとダンヒルで沢山のスーツを作らせた。
 全てスミズーラなので、スーツだけで一億以上になった。
 シャツもブリオーニのギザ(海島綿)やボレッリで作り、ネクタイもドミニクフランスやタイ・ユア・タイ、バルベラなどで数百本買った。
 靴は、ガットで10足、シルバノ・ラッタンジーで8足、これらはビスポークなのでまだ出来ていない。
 ベルルッティで20足、その他エンツォ・ボナフェやフェラガモなどで見繕った。
 靴だけで100足近くなるはずだ。
 時計、アクセサリーなども揃えて、総額100億以上になった。
 すべて俺が出している。
 御堂は遠慮せずに受け取ってくれた。
 必要なことだと分かっている。

 



 京王プラザホテルに着き、俺たちはエレベーターで最上階のスイートルームに移動した。
 俺と双子は向かいの部屋で待機する。

 「おし! 好きなものを頼んでいいぞ!」
 「「わーい!」」

 双子はご機嫌だ。
 周囲の警戒は怠らず、ニコニコして飲み食いしている。
 俺も警戒している。
 御堂と正巳さんがいない方がいいと考える人間は大勢いる。
 昨日もそうだが、二人が飲食するものは全てうちで用意したものだ。
 サンドイッチなどで申し訳ないが、食べている時間も少ない。

 「エビフライ、美味しいね!」
 「ハヤシライス! また注文するね!」

 俺は久兵衛でマグロの握りを20貫を取り、オニオングラタンスープとフルーツの盛り合わせを昼に頼んだ。
 双子が九兵衛に気付く。

 「美味しそうだね!」
 「好きなだけ頼め」

 スイートルームで、しかも特別な客なのでルームサービスもいろいろ頼めた。
 午前中のスケジュールが無事に終わり、いよいよ小島将軍が来る時間になった。

 「タカさん、ちょっと!」
 「なんか雰囲気が全然違うよ!」
 
 双子が気付いた。
 寮歌祭でも会っているはずだが、あの時とは別人だ。
 今日は「日本のフィクサー」として来ている。

 「じゃあ、俺も行って来るよ」
 「「はい!」」

 俺は廊下へ出て小島将軍を出迎えた。
 また4人の護衛を連れている。
 ホルスターでガンを吊っているのだろうが、その他に大きな楽器ケースのようなものを3人が持っている。
 恐らくマシンガンとアサルトライフルだ。

 「お待ちしておりました」
 「……」

 俺を一瞥しただけで、何も話さない。
 俺はドアを開けて、小島将軍たちを中へ入れた。
 護衛の一人がずっと向かいの部屋を見ていた。
 双子がいることを気配で察しているのだろう。
 一流の人間だ。

 部屋の中で、御堂と正巳さんが立って待っていた。
 ソファに案内し、小島将軍を座らせる。
 護衛の4人は当然立ったままだ。
 向かいに御堂と正巳さんが腰かけ、俺は脇のソファに座った。
 ダフニスとクロエは、御堂たちの後ろに立つ。

 「それがお前が作ったアンドロイドか」
 「はい」
 「武器は持っていないようだが」
 「「花岡」が使えます」
 「「虚震花」も使えるか?」
 「はい。それ以上のものも」
 
 小島将軍がニヤリと笑った。
 「花岡」の奥義を知っているとは思わなかったが、やはり只者ではない。

 護衛の一人がショートホープを差し出した。
 小島将軍が一本抜き、護衛がデュポンの《ルイ13世 フルール・ド・パルム》で火を点ける。
 小島将軍が愛煙家なのを知っているので、うちからベネツィア硝子のアンティークの灰皿を持って来ていた。
 紫煙を燻らせながら、小島将軍が口を開いた。

 「お前たちがやろうとしていることを話せ」

 全員が巨大な威圧を感じた。
 御堂がまっすぐに小島将軍を見て言った。





 「《エクソダス》です。人類の未曽有の危機に際して、人類の歴史を背負い、次の時代を担う人間たちを生かします」

 御堂が言った。
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