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挿話: 第一回「響子杯」麻雀大会
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少し時は先になり、4月上旬の火曜日。
俺は一江に響子のボードゲームの相談をしていた。
「前に双子とも話し合ったんだけどさ。どうも響子がオセロやチェスに飽きちゃってなぁ」
「六花しかほとんど相手しませんしね」
「まあなぁ。たまに俺もやるんだけど、どうもそれだけじゃなくてな。ゲームそのものに飽きたって言うか」
「そうなんですか」
俺は双子がネットでいろいろ探してくれた話もした。
「テレビゲームはどうかととも言われたんだけどな」
「ああ、なるほど」
「でも、響子が夢中でやるのは分かってるからな」
「隠れて夜中もやりますよね」
「そうだよなぁ。絶対にやる」
一江もすぐに調べてくれたが、これだというものは見つからなかった。
「六花が新しいゲームを覚えるのに苦労しそうですしね」
「その間に響子が圧倒的に強くなってるよな」
「囲碁とか」
「悪くはないんだけど、六花がもうダメだろう」
「そうですねー。運の要素があればまだ」
「ああ、それは双子とも話した」
俺たちがあれこれと話していると、斎木が話に入って来た。
「あの、部長。麻雀とかどうですかね?」
「あー、麻雀かぁ」
「ほら、運の要素もありますし、その気になれば戦略も無限に立てられますよ」
「そうだけどなぁ。でも、あれは人数が4人だろう?」
「麻雀なら、私がいつでも入りますよ!」
「いや、お前は仕事しろって」
「空いている部の人間でどうです? もちろん私も」
「うーん」
ちょっと考えた。
響子が雀卓を囲むのはどうかとも思ったが、金を賭けたりしなければ別に問題は無い。
俺も学生時代に多少は嗜んでいる。
面白いゲームだ。
役も覚えやすいし、一方でカウンティングの要素もあって頭の訓練にもなる。
心理戦も面白いし、お喋りをしながら打てるのもいい。
人数の問題は、逆に考えれば響子が四人の人間と楽しく遊べるということだ。
六花と二人きりで遊ぶことが飽きの原因とも言える。
まあ、俺と六花がいれば三人麻雀も出来る。
斎木もやりたがってくれている。
こいつは身を滅ぼし掛けたほどの麻雀好きだ。
多分、ビルを取られ掛けた時からは自粛しているだろうが、久し振りにやりたいのだろう。
それに付き合うのもいい。
一江や大森にも覚えさせるか。
鷹が入ってもいい。
院長も巻き込むか。
ああ、うちの子どもたちがいる。
特に柳には入ってもらいたい。
響子に話をした。
麻雀の動画なども見せて、雰囲気を感じてもらった。
簡単にルールも説明する。
「面白そうだね!」
「そうか!」
AMOS REXXレックスⅢCSJ型(自動配牌・ドラ出し・QS機能)を買った。
全自動で牌の攪拌から並べるところまでやってくれる。
あのみんなでジャラジャラも楽しいのだが、並べるのに時間もかかる。
響子は体力が無いので、なるべく早いゲームが必要だ。
半荘が基本だが、響子の体調もあるので、局単位で辞めてもいい。
ルールは別に難しくはない。
六花でも大丈夫だろう。
「麻雀ですか!」
六花が目を光らせた。
「栃木にいた頃には、タケたちとよくやりました!」
「そうなのか!」
「フフフフ! 響子! 覚悟しなさい!」
「すごいな!」
響子が顔を膨らませて六花を睨んだ。
目線がバチバチと絡んだ。
六花が得意なのなら、ますます良い。
俺は家にもAMOS REXXレックスⅢCSJ型を買って、子どもたちが練習した。
俺も初心者に近い。
ルールや点数の数え方は知っているが、戦略は全然知らない。
真面目に勉強するのは恥ずかしいので、麻雀漫画をごっそり買った。
俺と子どもたちで回し読み、響子にも回した。
面白かった。
「では、第一回「響子杯」麻雀大会を始めます!」
土曜日に響子の部屋に集まり、みんなで遊んだ。
俺、亜紀ちゃん、双子、柳、六花、鷹、斎木、一江、大森(大森は観客)。
最初は俺と響子、鷹、六花が打つ。
全自動のマシーンの動きにみんなが感動する。
「あ! 出て来たよ!」
牌が見事に整列して並ぶ。
みんなでサイコロを回し、俺が親になった。
自分の牌を見る。
「あれ?」
「高虎、どうしたの?」
「あー、ロン!」
「「「「!」」」」
国士無双が出来た。
「なんだよー!」
「石神先生、スゴイですね」
「私の実力がー!」
「えへへへへ」
2局目。
俺の親のままだ。
「全部ゴッ倒す!」
響子がなんか言った。
俺は自分の配牌を見た。
「あれ?」
「高虎、どうしたの?」
「あー、ロン!」
「「「「!」」」」
九蓮宝燈が出来た。
「いい加減にして!」
「石神先生、スゴイですね」
「私! 強いのにー!」
「あはははは」
あまりの出来事に、響子のテンションが下がった。
「背中がすすけてるぜー」
「おい」
六花が響子の背中をポンポンとはたいてやった。
「部長! 「花岡」でなんかやってるでしょ!」
「そんなの出来ねぇよ!」
一江が無茶苦茶なことを言う。
3局目。
「強えっつっても、兄さんのは昼間の麻雀だ」
「響子、今昼間だぞ」
「もうちょっとしたらご飯ですね」
「生きたツモ、いただきました」
「モツ煮込みだっけか?」
「違いますよ」
六花はちゃんと響子の世話を考えている。
「あれ?」
「「「「!」」」」
「……」
全員が俺を見た。
俺は手を伸ばして牌を崩した。
「あ、やっちゃった」
「「「「……」」」」
わざとらしい終幕に、みんながゲンナリした。
「死んだ金は卓の上に帰ってこない」
「響子、賭け麻雀は絶対に許さないぞ」
「タカトラのバカァー!」
響子が泣き出した。
俺が抜けて柳が入った。
俺は響子の背中を抱いて見ていた。
「あ! いい配牌だよ!」
「そうだな!」
響子の機嫌が直った。
みんなが響子に気を遣って、わざと上がらなかったり響子の待ち牌を出した。
4局で終了し、響子が勝った。
「わーい!」
パチパチパチパチ。
みんなで拍手した。
六花が落ち込んでいた。
「私、本気で打ったのに」
「……」
六花は2度、響子の役満に振った。
わざとではなかった。
昼食を響子がご機嫌で食べて、眠った。
俺たちは雀卓を廊下に運んでみんなで楽しんだ。
斎木は言うだけあって、やはり強かった。
ずっと笑顔で打ちながら、みんなにテクニックを指導してくれた。
結局、六花はずっと最下位だった。
響子が起きてから、みんなでいちご大福を食べた。
「俺の暗刻はそこにある」
「上手いこと言ったな!」
六花がニコニコした。
それから、俺ヌキでみんなで卓を囲うようになった。
響子が楽しそうだった。
俺は寂しかった。
俺は一江に響子のボードゲームの相談をしていた。
「前に双子とも話し合ったんだけどさ。どうも響子がオセロやチェスに飽きちゃってなぁ」
「六花しかほとんど相手しませんしね」
「まあなぁ。たまに俺もやるんだけど、どうもそれだけじゃなくてな。ゲームそのものに飽きたって言うか」
「そうなんですか」
俺は双子がネットでいろいろ探してくれた話もした。
「テレビゲームはどうかととも言われたんだけどな」
「ああ、なるほど」
「でも、響子が夢中でやるのは分かってるからな」
「隠れて夜中もやりますよね」
「そうだよなぁ。絶対にやる」
一江もすぐに調べてくれたが、これだというものは見つからなかった。
「六花が新しいゲームを覚えるのに苦労しそうですしね」
「その間に響子が圧倒的に強くなってるよな」
「囲碁とか」
「悪くはないんだけど、六花がもうダメだろう」
「そうですねー。運の要素があればまだ」
「ああ、それは双子とも話した」
俺たちがあれこれと話していると、斎木が話に入って来た。
「あの、部長。麻雀とかどうですかね?」
「あー、麻雀かぁ」
「ほら、運の要素もありますし、その気になれば戦略も無限に立てられますよ」
「そうだけどなぁ。でも、あれは人数が4人だろう?」
「麻雀なら、私がいつでも入りますよ!」
「いや、お前は仕事しろって」
「空いている部の人間でどうです? もちろん私も」
「うーん」
ちょっと考えた。
響子が雀卓を囲むのはどうかとも思ったが、金を賭けたりしなければ別に問題は無い。
俺も学生時代に多少は嗜んでいる。
面白いゲームだ。
役も覚えやすいし、一方でカウンティングの要素もあって頭の訓練にもなる。
心理戦も面白いし、お喋りをしながら打てるのもいい。
人数の問題は、逆に考えれば響子が四人の人間と楽しく遊べるということだ。
六花と二人きりで遊ぶことが飽きの原因とも言える。
まあ、俺と六花がいれば三人麻雀も出来る。
斎木もやりたがってくれている。
こいつは身を滅ぼし掛けたほどの麻雀好きだ。
多分、ビルを取られ掛けた時からは自粛しているだろうが、久し振りにやりたいのだろう。
それに付き合うのもいい。
一江や大森にも覚えさせるか。
鷹が入ってもいい。
院長も巻き込むか。
ああ、うちの子どもたちがいる。
特に柳には入ってもらいたい。
響子に話をした。
麻雀の動画なども見せて、雰囲気を感じてもらった。
簡単にルールも説明する。
「面白そうだね!」
「そうか!」
AMOS REXXレックスⅢCSJ型(自動配牌・ドラ出し・QS機能)を買った。
全自動で牌の攪拌から並べるところまでやってくれる。
あのみんなでジャラジャラも楽しいのだが、並べるのに時間もかかる。
響子は体力が無いので、なるべく早いゲームが必要だ。
半荘が基本だが、響子の体調もあるので、局単位で辞めてもいい。
ルールは別に難しくはない。
六花でも大丈夫だろう。
「麻雀ですか!」
六花が目を光らせた。
「栃木にいた頃には、タケたちとよくやりました!」
「そうなのか!」
「フフフフ! 響子! 覚悟しなさい!」
「すごいな!」
響子が顔を膨らませて六花を睨んだ。
目線がバチバチと絡んだ。
六花が得意なのなら、ますます良い。
俺は家にもAMOS REXXレックスⅢCSJ型を買って、子どもたちが練習した。
俺も初心者に近い。
ルールや点数の数え方は知っているが、戦略は全然知らない。
真面目に勉強するのは恥ずかしいので、麻雀漫画をごっそり買った。
俺と子どもたちで回し読み、響子にも回した。
面白かった。
「では、第一回「響子杯」麻雀大会を始めます!」
土曜日に響子の部屋に集まり、みんなで遊んだ。
俺、亜紀ちゃん、双子、柳、六花、鷹、斎木、一江、大森(大森は観客)。
最初は俺と響子、鷹、六花が打つ。
全自動のマシーンの動きにみんなが感動する。
「あ! 出て来たよ!」
牌が見事に整列して並ぶ。
みんなでサイコロを回し、俺が親になった。
自分の牌を見る。
「あれ?」
「高虎、どうしたの?」
「あー、ロン!」
「「「「!」」」」
国士無双が出来た。
「なんだよー!」
「石神先生、スゴイですね」
「私の実力がー!」
「えへへへへ」
2局目。
俺の親のままだ。
「全部ゴッ倒す!」
響子がなんか言った。
俺は自分の配牌を見た。
「あれ?」
「高虎、どうしたの?」
「あー、ロン!」
「「「「!」」」」
九蓮宝燈が出来た。
「いい加減にして!」
「石神先生、スゴイですね」
「私! 強いのにー!」
「あはははは」
あまりの出来事に、響子のテンションが下がった。
「背中がすすけてるぜー」
「おい」
六花が響子の背中をポンポンとはたいてやった。
「部長! 「花岡」でなんかやってるでしょ!」
「そんなの出来ねぇよ!」
一江が無茶苦茶なことを言う。
3局目。
「強えっつっても、兄さんのは昼間の麻雀だ」
「響子、今昼間だぞ」
「もうちょっとしたらご飯ですね」
「生きたツモ、いただきました」
「モツ煮込みだっけか?」
「違いますよ」
六花はちゃんと響子の世話を考えている。
「あれ?」
「「「「!」」」」
「……」
全員が俺を見た。
俺は手を伸ばして牌を崩した。
「あ、やっちゃった」
「「「「……」」」」
わざとらしい終幕に、みんながゲンナリした。
「死んだ金は卓の上に帰ってこない」
「響子、賭け麻雀は絶対に許さないぞ」
「タカトラのバカァー!」
響子が泣き出した。
俺が抜けて柳が入った。
俺は響子の背中を抱いて見ていた。
「あ! いい配牌だよ!」
「そうだな!」
響子の機嫌が直った。
みんなが響子に気を遣って、わざと上がらなかったり響子の待ち牌を出した。
4局で終了し、響子が勝った。
「わーい!」
パチパチパチパチ。
みんなで拍手した。
六花が落ち込んでいた。
「私、本気で打ったのに」
「……」
六花は2度、響子の役満に振った。
わざとではなかった。
昼食を響子がご機嫌で食べて、眠った。
俺たちは雀卓を廊下に運んでみんなで楽しんだ。
斎木は言うだけあって、やはり強かった。
ずっと笑顔で打ちながら、みんなにテクニックを指導してくれた。
結局、六花はずっと最下位だった。
響子が起きてから、みんなでいちご大福を食べた。
「俺の暗刻はそこにある」
「上手いこと言ったな!」
六花がニコニコした。
それから、俺ヌキでみんなで卓を囲うようになった。
響子が楽しそうだった。
俺は寂しかった。
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