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聖のメイドロボット Ⅱ

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 翌朝、俺は7時に目を覚ました。
 浴衣のまま顔を洗い、ロボと食堂へ行った。

 「いつもお早いですね」
 「お前もな!」

 二人で笑う。
 蓮花が食事の用意をした。
 珍しく洋食だった。

 バターロールのマカロニサラダサンド。
 これは前回来た時に、お袋が作ってくれた好物だという話をしたためだろう。
 蓮花がお袋の料理を知りたがり、俺が幾つか話したのだ。
 貧しかったので、豪華な食事は無い。

 他にハムエッグとフルーツ入りのヨーグルト。
 それにコーンポタージュ。
 蓮花と一緒に食べた。
 ロボは焼いたササミと新鮮なレバーを貰った。
 
 見知らぬ女が食後のコーヒーを持って来た。

 「石神様、クレアでございます」

 銀髪のロングボブ。
 薄いグリーンの大きな瞳。
 鼻筋が通り、唇は少し厚い。
 非常に美しく、また清楚な感じだ。
 身長は170センチほど。
 痩せていて、胸も薄い。
 
 「ほう、いいじゃないか!」
 
 蓮花が微笑んでいる。
 コーヒーを飲んだ。
 クレアが淹れたはずだ。
 美味かった。

 「実は朝食もクレアが作りました」
 「お前はグーグーか」
 「はい!」

 俺はクレアを座らせた。

 「蓮花、クレアの武装は?」

 最も気になっていた点だ。

 「ございません。性能はデュール・ゲリエのSSSタイプ(最高峰)と同じですが、体内には何も仕込んでおりません」
 「そうか、指示通りだな」
 「ただ、もちろん「花岡」はレベルAまで使えますし、武器の使用には習熟しております」
 「それはあとで確認しよう」
 
 家事や育児・教育の面では十二分だろう。

 「クレア、お前の使命は何だ?」
 「はい。聖様とそのご家族に尽くすこと、そしてお守りすることです」
 「よし。お前はそれをやってくれるか?」
 「はい、わたくしはそのために生まれました」
 「クレア、お前にもう一つ命じておくことがある」
 「はい、何でも仰って下さい」
 「お前の最も大切な使命は、お前が聖や聖の家族から愛されることだ」
 「はい、かしこまりました」
 「それが最上の命令だ。お前が聖たちのために働けば、必ずそうなる。それを忘れるな」
 「はい、必ず」

 クレアが微笑んだ。

 「やはり石神様は御優しい方でした」
 「そうか」
 「はい。わたくしのような作られた者にも「幸せ」を感じさせようと考えられている」
 「当然だ」
 「有難いことと存じます」

 クレアには「ディディ」と同じ人工知能が備わっている。
 それは「愛」を知っている。




 俺たちはブランたちの訓練場へ移動した。
 「黒笛」を持って行った。

 ブランたちはいつものように戦闘訓練をしていた。
 量子コンピューターが決めたプログラムに従って、対戦や様々な訓練をこなしている。

 俺たちの姿を見つけ、ミユキが訓練を中断した。
 ミユキが最高指揮官になっている。

 「石神様!」

 ブランたちが駆け寄って来た。

 「悪いな、訓練中に。ちょっとクレアを交えてやってくれ」
 「はい! 分かりました!」

 最初にミユキと組み手をする。
 ミユキの方が遙かに上だったが、クレアの仕上がりがよく分かった。
 集団戦にも組み込まれ、指揮官の指示でクレアも戦う。
 聖やセイントPMCの人間と共闘することもあるだろう。
 なかなかいい感じだった。
 俺はクレアを外し、後鬼を呼んだ。

 「後鬼、お前にこれを預ける。今度お前はこの「黒笛」を使いこなせ」
 「はい!」
 「特殊な刀だ。俺にもどういう性質があるのか分からん。お前に預けるから、好きなように使え」
 「はい!」

 後鬼は剣士になっていた。
 通常の格闘技はこなせるし、「花岡」も十分に使える。
 しかし、その上で剣を使う闘技が突出している。
 後鬼が「黒笛」を抜いた。
 動作が美しい。

 「これは……」

 刀身を見て驚いている。
 何かを感じたらしい。

 「石神様、このような素晴らしい剣を」
 「お前ならば使いこなせると思った。お前に任せるから、存分にやれ」
 「はい! 必ず!」

 俺は笑って訓練場を離れた。
 蓮花とクレアと共に、演習場へ行く。

 


 「さて、じゃあ「換装」を見せてもらおうか」
 「はい?」
 「誤魔化すな! お前が普通の状態のままでさせるわけはないだろう!」
 「オホホホホホ!」

 蓮花が笑った。

 「やっぱりな! おい、何があるんだ」
 「ディディには「殲滅モード」がございます」
 「ああ、あるな」
 「合体することで、航空支援を含んだ一個師団を5分以内に殲滅いたします」
 「ああ、やるな」

 飛行機体を装着し、マッハ10で高機動しながら満載した超兵器でたちまち殲滅する。

 「ですので、クレアにはまったく違う装備を」
 「だからどんなのだよ!」
 「支援機体を操作出来ます」
 「あんだと?」

 蓮花がクレアに「お見せしなさい」と命じた。
 クレアの両眼が光った。

 5秒後に、続々と小型の人型アンドロイドが空を埋め尽くした。

 「今は1000体ですが、最大20000体を操ります」
 「……」

 「各々が「花岡」を操り、レベルA即ち「虚震花」まで使えます」
 「おい……」
 「ああ、もちろん通常兵器も使用可能ですので、武装も可能です。但し、高機動はマッハ3までですので、なるべく10キロ圏内に格納庫を設置することを推奨いたします」
 「おい」
 「《guêpes(スズメバチ)》と名付けました。よろしかったでしょうか?」
 「あのさ」
 「これで軍隊はもちろん、ジェヴォーダンが来てもご家族を守れるでしょう」
 「……」

 クレアもニコニコしていた。
 聖になんて言おう。

 「女王蜂も居ります。そちらは主に《guêpes(スズメバチ)》のメンテナンスをいたします。およそ50年は放置してもちゃんと機能いたしますので」
 「そっか」
 「それと」
 「まだあんのかよ!」
 「はい。今回はディディと違って夜伽の機能はございません」
 「いらねぇよ!」
 「ですが、口を使えば……」
 「やめろ!」

 アンジーが激怒する。

 「あの、石神様」
 「あんだよ」
 「一応、授乳も可能ですので」

 クレアが胸をはだけた。

 「仕舞え!」

 もう聖雅は授乳はいらない。

 



 一応、聖に戦闘装備のことは説明しておいた。
 セイントPMCの敷地に、《guêpes(スズメバチ)》の格納庫を作ると言っていた。

 「それとよ」
 「なんだ?」
 「観覧車もあるんだけど、いる?」
 「あ、いらねぇ」

 そうだろうと思った。
 蓮花が折角作ったので送りたいと言っていた。
 ディディの時に作ったものだ。
 蓮花に聖が断ったと言うと、残念がった。

 「そのうち士王とか六花の子どもとか連れて来るからさ」
 「はい! 楽しみです!」
 「……」

 遊園地に行けば、他にもいろいろなアトラクションがあるのだが。
 今は「武神」の格納庫に一緒に仕舞っている。
 本当に使うことがあるのだろうか。
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