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アラスカ・ジャッジメント
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「そうだったんだ」
栞が下を向いて呟いた。
「お前なぁ。俺は雑賀さんを「絶対に守る」って約束してここに来て貰ったんだぞ。それでお前がぶちのめしてどうすんだよ」
「ごめんなさい」
「それになぁ。絨毯もマホガニーもそりゃ大事だけどよ。あの「ディーヴァ」だぞ」
「うん、レイのものだったのね」
「そうだ。あの「ディーヴァ」の話をした時に、雑賀さんが感動してくれてな。「このお酒は自分が必ず守ります」って言ってくれてたんだよ」
「え!」
「お前は雑賀さんの誓いを踏み潰したのな」
「……」
俺は敢えて厳しい言い方をした。
栞には十分に反省して欲しい。
「「Rosso DIVA」はもう一本あるけどよ。栞なら分かるだろう?」
「うん……」
「同じ酒だからいいってものじゃねぇんだ。あの酒に俺たちは思いを馳せて来たんだからな」
「本当にごめんなさい!」
「この世には、金で買えないものがある。俺の部屋でもいろいろ見てるだろう」
「うん、そうだった」
「これからは気を付けてくれな」
「はい」
9時半になり、俺たちは雑賀の部屋へ向かった。
一応医療施設で検査はしたが、もちろん栞が雑賀を傷つけるようなことは無かったので部屋へ運んでいた。
チャイムを押すと、雑賀がすぐに出てくれた。
笑顔で招き入れてくれる。
俺は雑賀の前で栞の頭を引っぱたき、中へ一緒に入った。
「雑賀さん、申し訳ない!」
「雑賀さん、本当にごめんなさい!」
二人で頭を下げた。
栞はそのまま土下座した。
雑賀が慌てて栞を立たせ、リヴィングのソファへ座らせた。
コーヒーを淹れてくれる。
「石神さん。私の方こそ申し訳ない。あの「ディーヴァ」を」
「いいえ、雑賀さん! それはこのバカのせいで雑賀さんには何も!」
「それは違います。私は石神さんにあのお酒を守ると約束いたしました。それを果たせなかった」
栞の顔が蒼白になった。
「雑賀さん、本当にそれは。俺が大事なものなのに、あんな所に置かせたのが間違いだったんです。札束を積み上げて客を呼んで、それが無くなったからって、それは俺のせいですよ」
「石神さん……」
「そんなことより、雑賀さん、お身体は大丈夫ですか?」
「あ、はい! それはもちろん!」
「こいつの頭に五寸釘を打ちます?」
「い、いいえ!」
「ああ、ガンを持って来ますから」
「石神さん!」
俺は笑って、また謝った。
「こいつの酒癖の悪さを失念してた俺が悪かったんです。雑賀さんには本当のご迷惑を」
俺は栞たちの過去の「乙女会議」の顛末を話していった。
雑賀さんがそのうちに大笑いした。
「ね、だから夕べも、そのメンバーで行かせた俺が悪いんですって。こいつら、なんか呪われてるんで」
「アハハハハハ!」
俺は絨毯は腕のいい縫製職人にやらせ、マホガニーのカウンターも職人に修復させると言った。
雑賀は有難いと言ってくれた。
「それで「ディーヴァ」はしょうがない。今度はブルーダイヤモンドのものを置きましょう」
「はい、かしこまりました」
「レイは「オオルリ」が大好きでしてね。本当はブルーの方がいいとも思うんです」
「はい。では、どうして最初に「Rosso DIVA」を?」
「レイと一緒に真っ赤なアヴェンタドールでドライブしたりしたんでね。俺との思い出があるものですから」
それを聞いて栞が絶叫して泣いた。
また床に蹲って土下座した。
「おい!」
「あなた! ごめんなさい!」
「もういいって! レイだって許してくれる!」
「でも!」
俺は頭を引っぱたき、無理矢理座らせて頬を掴んでヘン顔をさせた。
「いい加減にしろ! 雑賀さんも困ってるだろう!」
「ゴヴェンダザイー!」
大泣きだ。
俺はコーヒーを飲ませ、落ち着かせた。
ぐずってはいるが、少し落ち着いて来た。
雑賀はコーヒーを淹れても一流だった。
俺は今後「ディーヴァ」」をどこに置くのかを話し合った。
「レイと一緒に飲みたいのは確かなんですが」
「そうですね」
「でも、また今回のようなことがあっては」
「はい」
雑賀は普通の人間だ。
万一栞やうちの子どもたちが暴れたらどうしようもない。
「俺が行く時だけ出しましょうか」
「はい。でも、レイ様も普段も飲みたいのではないでしょうか」
「!」
俺の発想には無かった。
雑賀だからそう思ってくれた。
「あの、石神様。私は非力ではございますが、今後は必ず「ディーヴァ」はお守りいたします。ですので、今まで通りに」
「そうですか」
「はい。レイ様のことを思うと、不自由を掛けるのは申し訳ないと」
「ありがとうございます」
俺は笑って、その提案を受け入れた。
「俺も今後は全員に話しておきますよ。栞も知らなかったということも大きいと思うんで」
「さようでございますね」
「まあ、だから俺が勝手に思い込んで誰にも話さなかったことが悪いんです。本当に申し訳ありません」
「いいえ、とんでもない!」
「ああ、栞は出禁な!」
「はい!」
「まあ、俺と一緒の時だけな」
「!」
「他のラウンジは自由に使えよ。でも、もう暴れんなよ!」
「はい! 約束します!」
「お前、毎回そう言うんだけどなぁー」
雑賀と二人で笑った。
雑賀は俺が持って来たフルーツを返そうとして来たが、無理に手渡した。
二人でもう一度謝って帰った。
「あなた、本当にごめんなさい」
「もういいって!」
「でも」
「じゃあ、詫びを入れてもらうかな」
「う、うん!」
俺は途中で街中の「ホテル キャッスル・タイガー」に寄った。
ラブホみたいな名前だが。
栞をガンガン攻め立てた。
「ちょっと酷いよ」
「うるせぇー!」
歩けない栞を担いで電動移動車に乗り込んだ。
帰るまでにちゃんとしろと言った。
「もうお酒は飲まない」
「あ? 反動が怖いからやめてくれ」
栞は腕を上げて俺の胸を叩こうとしたが、そのまま止まって自分の頬を殴った。
俺は笑って、その頬にキスをした。
栞が下を向いて呟いた。
「お前なぁ。俺は雑賀さんを「絶対に守る」って約束してここに来て貰ったんだぞ。それでお前がぶちのめしてどうすんだよ」
「ごめんなさい」
「それになぁ。絨毯もマホガニーもそりゃ大事だけどよ。あの「ディーヴァ」だぞ」
「うん、レイのものだったのね」
「そうだ。あの「ディーヴァ」の話をした時に、雑賀さんが感動してくれてな。「このお酒は自分が必ず守ります」って言ってくれてたんだよ」
「え!」
「お前は雑賀さんの誓いを踏み潰したのな」
「……」
俺は敢えて厳しい言い方をした。
栞には十分に反省して欲しい。
「「Rosso DIVA」はもう一本あるけどよ。栞なら分かるだろう?」
「うん……」
「同じ酒だからいいってものじゃねぇんだ。あの酒に俺たちは思いを馳せて来たんだからな」
「本当にごめんなさい!」
「この世には、金で買えないものがある。俺の部屋でもいろいろ見てるだろう」
「うん、そうだった」
「これからは気を付けてくれな」
「はい」
9時半になり、俺たちは雑賀の部屋へ向かった。
一応医療施設で検査はしたが、もちろん栞が雑賀を傷つけるようなことは無かったので部屋へ運んでいた。
チャイムを押すと、雑賀がすぐに出てくれた。
笑顔で招き入れてくれる。
俺は雑賀の前で栞の頭を引っぱたき、中へ一緒に入った。
「雑賀さん、申し訳ない!」
「雑賀さん、本当にごめんなさい!」
二人で頭を下げた。
栞はそのまま土下座した。
雑賀が慌てて栞を立たせ、リヴィングのソファへ座らせた。
コーヒーを淹れてくれる。
「石神さん。私の方こそ申し訳ない。あの「ディーヴァ」を」
「いいえ、雑賀さん! それはこのバカのせいで雑賀さんには何も!」
「それは違います。私は石神さんにあのお酒を守ると約束いたしました。それを果たせなかった」
栞の顔が蒼白になった。
「雑賀さん、本当にそれは。俺が大事なものなのに、あんな所に置かせたのが間違いだったんです。札束を積み上げて客を呼んで、それが無くなったからって、それは俺のせいですよ」
「石神さん……」
「そんなことより、雑賀さん、お身体は大丈夫ですか?」
「あ、はい! それはもちろん!」
「こいつの頭に五寸釘を打ちます?」
「い、いいえ!」
「ああ、ガンを持って来ますから」
「石神さん!」
俺は笑って、また謝った。
「こいつの酒癖の悪さを失念してた俺が悪かったんです。雑賀さんには本当のご迷惑を」
俺は栞たちの過去の「乙女会議」の顛末を話していった。
雑賀さんがそのうちに大笑いした。
「ね、だから夕べも、そのメンバーで行かせた俺が悪いんですって。こいつら、なんか呪われてるんで」
「アハハハハハ!」
俺は絨毯は腕のいい縫製職人にやらせ、マホガニーのカウンターも職人に修復させると言った。
雑賀は有難いと言ってくれた。
「それで「ディーヴァ」はしょうがない。今度はブルーダイヤモンドのものを置きましょう」
「はい、かしこまりました」
「レイは「オオルリ」が大好きでしてね。本当はブルーの方がいいとも思うんです」
「はい。では、どうして最初に「Rosso DIVA」を?」
「レイと一緒に真っ赤なアヴェンタドールでドライブしたりしたんでね。俺との思い出があるものですから」
それを聞いて栞が絶叫して泣いた。
また床に蹲って土下座した。
「おい!」
「あなた! ごめんなさい!」
「もういいって! レイだって許してくれる!」
「でも!」
俺は頭を引っぱたき、無理矢理座らせて頬を掴んでヘン顔をさせた。
「いい加減にしろ! 雑賀さんも困ってるだろう!」
「ゴヴェンダザイー!」
大泣きだ。
俺はコーヒーを飲ませ、落ち着かせた。
ぐずってはいるが、少し落ち着いて来た。
雑賀はコーヒーを淹れても一流だった。
俺は今後「ディーヴァ」」をどこに置くのかを話し合った。
「レイと一緒に飲みたいのは確かなんですが」
「そうですね」
「でも、また今回のようなことがあっては」
「はい」
雑賀は普通の人間だ。
万一栞やうちの子どもたちが暴れたらどうしようもない。
「俺が行く時だけ出しましょうか」
「はい。でも、レイ様も普段も飲みたいのではないでしょうか」
「!」
俺の発想には無かった。
雑賀だからそう思ってくれた。
「あの、石神様。私は非力ではございますが、今後は必ず「ディーヴァ」はお守りいたします。ですので、今まで通りに」
「そうですか」
「はい。レイ様のことを思うと、不自由を掛けるのは申し訳ないと」
「ありがとうございます」
俺は笑って、その提案を受け入れた。
「俺も今後は全員に話しておきますよ。栞も知らなかったということも大きいと思うんで」
「さようでございますね」
「まあ、だから俺が勝手に思い込んで誰にも話さなかったことが悪いんです。本当に申し訳ありません」
「いいえ、とんでもない!」
「ああ、栞は出禁な!」
「はい!」
「まあ、俺と一緒の時だけな」
「!」
「他のラウンジは自由に使えよ。でも、もう暴れんなよ!」
「はい! 約束します!」
「お前、毎回そう言うんだけどなぁー」
雑賀と二人で笑った。
雑賀は俺が持って来たフルーツを返そうとして来たが、無理に手渡した。
二人でもう一度謝って帰った。
「あなた、本当にごめんなさい」
「もういいって!」
「でも」
「じゃあ、詫びを入れてもらうかな」
「う、うん!」
俺は途中で街中の「ホテル キャッスル・タイガー」に寄った。
ラブホみたいな名前だが。
栞をガンガン攻め立てた。
「ちょっと酷いよ」
「うるせぇー!」
歩けない栞を担いで電動移動車に乗り込んだ。
帰るまでにちゃんとしろと言った。
「もうお酒は飲まない」
「あ? 反動が怖いからやめてくれ」
栞は腕を上げて俺の胸を叩こうとしたが、そのまま止まって自分の頬を殴った。
俺は笑って、その頬にキスをした。
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