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雑賀良平
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翌朝。
俺は7時に目を覚ました。
響子を起こさないようにそっとベッドを出て、リヴィングへ行った。
夕べは俺が怒り心頭で栞たちを外の廊下で寝かせていたが、帰って来た桜花たちに泣いて頼まれ、仕方なく中へ入れた。
鷹はお兄さんの所へ行っている。
お兄さんは本格的にこちらで料理を教えてくれるようになり、非常に助かっていた。
夕べは一江たちとも行きたかったようだが、久し振りに栞と話させてやろうと遠慮したようだ。
大好きなお兄さんにも当然会いたい。
まあ、行かなくて良かった。
鷹ならば栞を止められたかもしれんが、そうすると被害は拡大したかもしれない。
リヴィングでは、栞たちが起きていた。
子どもたちが作ったスープを飲んでいる。
「おい、てめぇら! 何をまっとうな物を喰ってやがる!」
「あなた!」
「「部長!」」
三人が土下座する。
俺はそれを踏み越えてテーブルに座った。
「座れ!」
三人がテーブルに座る。
亜紀ちゃんが三人に「Ω水」(「Ω」の翅を漬けた水。ちょっと気持ち悪い)を飲ませたので、二日酔いはなさそうだ。
子どもたちは自分たちで食事を作っている。
桜花たちの分もある。
桜花たちにはゆっくりと起きるように命じていたので、まだいない。
「夕べのことを話せ」
三人が話し始めた。
最初は普通に飲んでいたようだ。
雑賀がちゃんと気遣って酒量も制御していた。
つまみも十分に考えて出されていたようだ。
しかし、また栞がワガママを出しやがった。
雑賀から「光明」を止められたことで、俺への不満も結びついて雑賀を昏倒させた。
そして「光明」を飲み干した。
それまでに日本酒を二本空けている。
「それで栞が限界突破したか」
「「「……」」」
一江と大森がもう帰ろうと言った。
すると栞が最後にもう一本と酒を取り出して来たと言う。
俺の中で何かがへし折れた。
「「Rosso DIVA」を飲んだのかぁ!」
俺が特別に頼んで作った、1200億円で購入したものだ。
「ディーヴァ」は特別な愛好家だけが購入できる。
その上で俺が特別な指定をして作ってもらった。
頑固な職人たちを納得させ、無理を言ったのだ。
その礼も含めての金額を支払った。
5本だ。
レッドダイヤモンドで2本。
ブルーダイヤモンドで3本。
もちろん、世界で一番高い稀少な酒だ。
レッドダイヤモンドで濾過した最高級の酒だ。
ウォッカの好きだったレイのために作った。
あそこに行けば、レイと一緒に飲むのだというつもりで置いていた。
一生、あの酒を呑むつもりはなかった。
あれはレイのものだ。
俺が自分を抑えきれずに怒鳴りながらそう言うと、三人は蒼白になって涙を流して謝った。
子どもたちも震え上がっている。
俺の激怒が分かったのだ。
「レイの札が掛かっていただろう!」
「ごめんなさい! 千切っちゃった!」
「!」
俺が栞に近づくと、亜紀ちゃんと双子が必死にしがみついた。
「タカさん! お願いです!」
「栞ちゃんをゆるしてあげて!」
「私たちが何とかするから!」
本気を出している。
俺も本気を出さねば引き剥がせないほどだった。
俺はしばらく、動かないでいた。
止められなければ、栞に酷いことをしてしまうのが分かっていた。
「ガァァァァァーーー! もういい!」
しばらく亜紀ちゃんたちはしがみ付いていたが、俺が力を抜いたままだったので、ようやく離れた。
「栞! 雑賀さんの見舞いに行くぞ!」
「は、はい!」
「一江、大森!」
「「はい!」」
「お前らは朝食をしっかり喰っとけ!」
「「は、はい?」」
一江と大森には罪はない。
あいつらは栞にまたやられただけだ。
栞に支度させ、俺たちはヘッジホッグの中の雑賀の部屋へ向かった。
電動移動車の中で、栞は落ち込んでいた。
俺の隣のシートで項垂れている。
「雑賀さんはよ、俺が頼み込んでここに来て貰ったんだ」
「うん」
「ホテルのバーラウンジでバーテンダーをやっていてな。一目で気に入った」
「うん、知ってる」
「城戸さんのことも知ってた。昔一緒に働いたことがあるって」
「そうなの」
「俺が城戸さんの店でアルバイトをしてたって言ったら、嬉しそうに笑ってくれてな」
「……」
「この基地にバーラウンジを作ろうと思った時に、真っ先に雑賀さんのことを思い出した。それで頼み込んで来てもらった」
「うん」
「あの人は世界でも有数のバーテンダーだ。だからどこへでも行けるし、店を出すなら出資するって人も沢山いる。だけどうちに来てくれた」
「あなたのことが気に入ったんでしょう?」
「そうだけどな。まあ、ここに来て貰うには、俺たちの「事情」を話しておかなければならない。それを聞いた上で来てくれたんだ」
「はい」
「命の危険がある場所だ。どうして来てくれたと思う?」
栞は考えていた。
「私たちのやることに共鳴してくれたから?」
俺は笑って栞を抱き締めた。
栞が驚いて身体を硬直させた。
その後で力を抜いて、俺に身体を預けて来た。
「あの人はさ、いろんな人間を見て来たんだ。まあ、人間を見ることが最も大事な修行でもあるわけだしな。相手を見て、相手に合わせて酒を出す。それが超一流のバーテンダーだ」
「ああ、昨日もそうだった。私たちが美味しいと思えるカクテルやお酒やおつまみを出してくれたわ」
まだ訪問するには早い時間だったので、俺は途中で喫茶店に寄った。
栞と一緒にコーヒーを飲む。
「雑賀さんに最初に会ったのは、山中と一緒にあるホテルのバーラウンジに行った時だったんだ」
「え?」
俺は話し出した。
俺は7時に目を覚ました。
響子を起こさないようにそっとベッドを出て、リヴィングへ行った。
夕べは俺が怒り心頭で栞たちを外の廊下で寝かせていたが、帰って来た桜花たちに泣いて頼まれ、仕方なく中へ入れた。
鷹はお兄さんの所へ行っている。
お兄さんは本格的にこちらで料理を教えてくれるようになり、非常に助かっていた。
夕べは一江たちとも行きたかったようだが、久し振りに栞と話させてやろうと遠慮したようだ。
大好きなお兄さんにも当然会いたい。
まあ、行かなくて良かった。
鷹ならば栞を止められたかもしれんが、そうすると被害は拡大したかもしれない。
リヴィングでは、栞たちが起きていた。
子どもたちが作ったスープを飲んでいる。
「おい、てめぇら! 何をまっとうな物を喰ってやがる!」
「あなた!」
「「部長!」」
三人が土下座する。
俺はそれを踏み越えてテーブルに座った。
「座れ!」
三人がテーブルに座る。
亜紀ちゃんが三人に「Ω水」(「Ω」の翅を漬けた水。ちょっと気持ち悪い)を飲ませたので、二日酔いはなさそうだ。
子どもたちは自分たちで食事を作っている。
桜花たちの分もある。
桜花たちにはゆっくりと起きるように命じていたので、まだいない。
「夕べのことを話せ」
三人が話し始めた。
最初は普通に飲んでいたようだ。
雑賀がちゃんと気遣って酒量も制御していた。
つまみも十分に考えて出されていたようだ。
しかし、また栞がワガママを出しやがった。
雑賀から「光明」を止められたことで、俺への不満も結びついて雑賀を昏倒させた。
そして「光明」を飲み干した。
それまでに日本酒を二本空けている。
「それで栞が限界突破したか」
「「「……」」」
一江と大森がもう帰ろうと言った。
すると栞が最後にもう一本と酒を取り出して来たと言う。
俺の中で何かがへし折れた。
「「Rosso DIVA」を飲んだのかぁ!」
俺が特別に頼んで作った、1200億円で購入したものだ。
「ディーヴァ」は特別な愛好家だけが購入できる。
その上で俺が特別な指定をして作ってもらった。
頑固な職人たちを納得させ、無理を言ったのだ。
その礼も含めての金額を支払った。
5本だ。
レッドダイヤモンドで2本。
ブルーダイヤモンドで3本。
もちろん、世界で一番高い稀少な酒だ。
レッドダイヤモンドで濾過した最高級の酒だ。
ウォッカの好きだったレイのために作った。
あそこに行けば、レイと一緒に飲むのだというつもりで置いていた。
一生、あの酒を呑むつもりはなかった。
あれはレイのものだ。
俺が自分を抑えきれずに怒鳴りながらそう言うと、三人は蒼白になって涙を流して謝った。
子どもたちも震え上がっている。
俺の激怒が分かったのだ。
「レイの札が掛かっていただろう!」
「ごめんなさい! 千切っちゃった!」
「!」
俺が栞に近づくと、亜紀ちゃんと双子が必死にしがみついた。
「タカさん! お願いです!」
「栞ちゃんをゆるしてあげて!」
「私たちが何とかするから!」
本気を出している。
俺も本気を出さねば引き剥がせないほどだった。
俺はしばらく、動かないでいた。
止められなければ、栞に酷いことをしてしまうのが分かっていた。
「ガァァァァァーーー! もういい!」
しばらく亜紀ちゃんたちはしがみ付いていたが、俺が力を抜いたままだったので、ようやく離れた。
「栞! 雑賀さんの見舞いに行くぞ!」
「は、はい!」
「一江、大森!」
「「はい!」」
「お前らは朝食をしっかり喰っとけ!」
「「は、はい?」」
一江と大森には罪はない。
あいつらは栞にまたやられただけだ。
栞に支度させ、俺たちはヘッジホッグの中の雑賀の部屋へ向かった。
電動移動車の中で、栞は落ち込んでいた。
俺の隣のシートで項垂れている。
「雑賀さんはよ、俺が頼み込んでここに来て貰ったんだ」
「うん」
「ホテルのバーラウンジでバーテンダーをやっていてな。一目で気に入った」
「うん、知ってる」
「城戸さんのことも知ってた。昔一緒に働いたことがあるって」
「そうなの」
「俺が城戸さんの店でアルバイトをしてたって言ったら、嬉しそうに笑ってくれてな」
「……」
「この基地にバーラウンジを作ろうと思った時に、真っ先に雑賀さんのことを思い出した。それで頼み込んで来てもらった」
「うん」
「あの人は世界でも有数のバーテンダーだ。だからどこへでも行けるし、店を出すなら出資するって人も沢山いる。だけどうちに来てくれた」
「あなたのことが気に入ったんでしょう?」
「そうだけどな。まあ、ここに来て貰うには、俺たちの「事情」を話しておかなければならない。それを聞いた上で来てくれたんだ」
「はい」
「命の危険がある場所だ。どうして来てくれたと思う?」
栞は考えていた。
「私たちのやることに共鳴してくれたから?」
俺は笑って栞を抱き締めた。
栞が驚いて身体を硬直させた。
その後で力を抜いて、俺に身体を預けて来た。
「あの人はさ、いろんな人間を見て来たんだ。まあ、人間を見ることが最も大事な修行でもあるわけだしな。相手を見て、相手に合わせて酒を出す。それが超一流のバーテンダーだ」
「ああ、昨日もそうだった。私たちが美味しいと思えるカクテルやお酒やおつまみを出してくれたわ」
まだ訪問するには早い時間だったので、俺は途中で喫茶店に寄った。
栞と一緒にコーヒーを飲む。
「雑賀さんに最初に会ったのは、山中と一緒にあるホテルのバーラウンジに行った時だったんだ」
「え?」
俺は話し出した。
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