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アラスカ・メモリー

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 12月30日。
 朝の8時に出発する。
 鷹、一江、大森は病院の響子の部屋に行く。
 子どもたちは早めに朝食を食べさせた。
 別荘に行く時に、俺の分まで食べてしまったからだ。
 反対に、今日は俺と響子の分だけある。
 バターを塗ったトーストに、ブルベリー・ジャムとイチゴ・ジャムのホットサンド。
 それにツナとタマネギ、辛子マヨネーズとハムのホットサンド。

 柳にハマーを運転させ、俺は後ろのシートでゆっくりと食べた。
 ロボが寄って来るので、用意していたササミ焼きをやる。
 ロボも朝食を済ませているが、俺が食べていると欲しがるので持っていた。
 ちなみに、子どもたちはご飯と目玉焼きと味噌汁、サラダだけだ。
 俺をジッと見ている。
 亜紀ちゃんも助手席からこっちを振り返って見ている。

 「あれ? みんなの分はないの?」
 「「「「「……」」」」」

 気分がいい。
 ハーにブルベリー・ジャムのサンドを差し出す。

 「ありがとー!」
 
 すぐに引っ込めて自分で食べる。

 「……」
 「ワハハハハハ!」

 険悪な雰囲気になった。

 「なんだよ、てめぇら! こないだは俺がやられたんだからな!」
 「「「「「……」」」」」

 「それによ、何か持って来れば良かったじゃねぇか。パンでも菓子でもよ」
 「「「「「!」」」」」
 「うちは別に間食を禁じてねぇんだからな」

 「何で言ってくれなかったんですか!」

 亜紀ちゃんが怒る。
 他の子どもたちも文句を言う。

 「ばかやろう! 自分のことは自分で何とかしろ!」

 亜紀ちゃんが電話した。
 病院の玄関前で響子たちが待っていた。

 「タカトラー!」
 「おう、おはよう! 身体は大丈夫か?」
 「うん!」
 「念のために熱も測りました。問題ありません」

 鷹が言う。
 
 「そうか。じゃあ乗れよ!」
 
 子どもたちが荷物を後ろに乗せ、響子は後ろのベンチシートに俺と乗る。
 寝間着だ。

 「あれ、何かありました?」

 鷹が気付く。

 「気にするな。ちょっとこいつら腹が減ってるんだよ」
 「なるほど! あの、ちょっとおにぎりを作って来たんですが、みなさんで召し上がりますか?」
 「「「「「鷹さーん!」」」」」

 俺は笑って子どもたちにありがたく頂けと言った。
 一人二つずつあった。
 一江と大森も礼を言い、鷹からもらっていた。
 俺も食べながら、別荘に行く時に子どもたちが俺の分まで食べた話をした。
 鷹が大笑いした。

 「じゃあ、大変だったでしょう?」
 「そうなんですよ! 私が運転を替わったら、タカさんが「別荘は辞めだ」って言うんですよ!」
 「アハハハハ!」

 響子は俺が作ったブルベリー・ジャムとイチゴ・ジャムのホッとサンドを食べた。
 温かいミルクティを飲んでから、俺が響子専用ベッドに入れてやる。

 「寝てていいからな」
 「うん!」
 「パンツはちゃんと脱いでおけよ!」
 「脱がないよ!」

 みんなが笑った。




 柳と亜紀ちゃんが途中で運転を替わり、二時間ほどで横田基地に着いた。
 ゲートの兵士が俺のハマーを見て最敬礼でゲートを開けた。
 一江と大森が驚いている。

 亜紀ちゃんが指定の場所まで走らせた。
 「タイガーファング」が既に離陸の準備をしていた。
 青嵐が俺たちを出迎えた。

 「おう! 今日も頼むな!」
 「はい! お任せ下さい!」
 
 俺は一江と大森を簡単に紹介し、子どもたちが全員の荷物を入れて行く。
 内部では紫嵐が機器のチェックをしていた。
 俺に挨拶し、作業を続ける。
 青嵐も一緒にやっていく。

 響子を専用ポッドに入れ、荷物を固定して俺たちも準備が出来た。

 「では出発します!」

 青嵐が言い、機体が浮かんだ。
 
 「青嵐、向こうに着いたら、少し上空から景色を見せてやってくれ」
 「はい! かしこまりました!」

 20分後、アラスカ上空に着いた。
 青嵐が基地の上空を周回する。
 夕方の5時半くらいだ。
 既に陽は沈んでいるので真っ暗だ。

 「一江、大森。お前たちは初めてだからな。よく見ておけよ」
 「「はい!」」

 目の前のスクリーンに、青嵐が地上の映像を映した。
 強烈なライトを浴びている巨大なヘッジホッグが目を引く。
 街の灯も美しい。

 「凄いですね!」
 「ああ、こんなの観たことないよ」

 二人が驚いていた。

 「世界で一番安全な場所だ。ここを落とす奴はいない」
 
 機体を地上に降ろした。
 またターナー少将と月岡が出迎えてくれた。
 みんなで挨拶する。

 電動移動車に乗って、ヘッジホッグへ向かった。
 一江と大森は窓からずっと外を見ていた。
  
 ヘッジホッグの巨大な専用エレベーターの前でターナー少将たちと別れた。
 
 「じゃあ、タイガー、ゆっくりと過ごしてくれ」
 「ああ、またな」

 エレベーターで栞の区画に行く。

 「専用エレベーターなんだ」
 「すごいですね!」
 
 いつものように、桜花が出迎えてくれる。
 みんなで歩いて行くと、栞が士王を抱いて待っていた。

 「あなたー!」
 「おう!」
 
 みんなで中へ入り、全員で挨拶する。
 一江と大森は士王を見ている。

 「ほんとに部長の子なんですか!」
 「あんだよ!」
 「だって、カワイイですよ!」
 「俺もそうだろう!」
 「え?」

 一江の頭をはたいた。
 みんなが笑う。
 栞が大森に士王を抱かせた。
 大森が慣れた感じで抱いている。
 一江はおっかなびっくりだ。

 「来て早々だけど、食事にしましょうか」
 「ああ、頼む。子どもたちが大変なんだ」
 「ウフフフ」

 サーモンのシチュー。
 鹿肉ステーキ(大量)。
 ポテトのロースト。
 鹿レバーのガーリック炒め。
 カブのそぼろ煮。
 チンゲンサイの煮物。
 アサリの味噌汁。
 ご飯。

 「あなたの送ってくれたお米って、本当に美味しいの」
 「それは良かったよ。何しろ大量過ぎて、流石のこいつらも消費し切れないからな」
 「ウフフフ」
 
 響子は3時間前にトーストを食べているが、旺盛な食欲を見せた。
 ロボは鹿肉とレバーのステーキを食べて喜んでいる。

 一江と大森は栞と話している。
 睡蓮が士王の食事をさせていたので、俺が替わる。
 歯が生えてきているので、離乳食も少し変えている。
 俺に抱かれてスプーンを口に入れる仕草がカワイイ。

 


 食事を終え、栞と一江、大森で外へ飲みに行かせた。
 俺が作ったバーラウンジがヘッジホッグ内にある。
 そこならば桜花たちが護衛につく必要は無い。
 桜花たちも遊びに行かせた。
 明日一杯まで休暇にしている。
 俺は響子と一緒に風呂に入った。

 「士王ちゃん、カワイイね!」
 「そうだな! まあ、響子には及ばないけどな!」
 「そんなことないよ!」
 
 俺は響子のカワイイ所を言って行き、響子が恥ずかしがった。
 響子は成長している。

 「まあ、みんなカワイイ所はあるんだけどな」
 「うん」
 
 湯船に浸かる。

 「亜紀ちゃんがな、こないだ俺を守ろうとして死に掛けた」
 「え!」
 「亜紀ちゃんの胸に傷痕が出来た。心臓を切られたんだ」
 「大丈夫だったの!」
 「ああ、すぐに手当したからな。でもギリギリだったな」
 「アキ……」
 「あいつも優しい子だからな。傷が付くのはしょうがねぇ」
 「うん」
 「響子もな」
 「私のは違うよ」
 「響子は俺のため、みんなのために必死に戦って生きてくれた。その傷だ」
 「うん」

 響子を足の上に乗せて抱き締めた。
 キスをする。

 「何か、懐かしいな」
 「ほんとね」
 
 響子と初めて一緒に風呂に入り、こうやって抱き締めた。

 「タカトラ、I LOVE YOU」
 「俺もだ。愛してる、響子」




 脱衣所でドタドタと音がした。
 俺たちは笑って風呂を上がった。

 「あ! タカさん! もうちょっとお風呂に!」
 「もう上がるよ」
 
 亜紀ちゃんと柳がいた。
 裸になっている。

 「ごゆっくり!」
 「タカさん!」

 俺は笑って響子の身体を拭いた。




 響子が、亜紀ちゃんの胸の傷を見ていた。
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