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顕さんと冬の別荘 Ⅴ

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 翌朝。
 顕さんとモニカには、朝食は8時だが、寝たいだけ寝て下さいと言っておいた。
 でも、やはり8時に起きて来た。
 寝間着でと言ったのは、そうやってくれている。
 もちろん、俺たちも寝間着だ。
 リヴィングは温めている。

 「おはようございます」
 「「「「「おはようございます!」」」」」

 「ああ、みんなおはよう」
 「おはようございます」

 席について頂き、双子がすぐにお二人に食事を並べる。
 夕べは結構食べて頂いたので、朝は軽くした。

 ほうれん草とベーコンのごま油炒め。
 スモークサーモン。
 柳の新ショウガ。
 それに、御堂家謹製卵。
 味噌汁はシジミ(八丁味噌)だ。

 モニカは亜紀ちゃんが卵黄だけを取り分け、醤油も垂らして調整しておいた。

 「モニカ、これがまた美味しいんだよ」
 「そうなんですか」

 外国人は生卵を食べない。
 フランスや韓国くらいではないか。
 衛生管理の問題なのだが、要は生食を避ける風土があるのだ。
 食中毒を避けるためだ。
 
 「モニカさん、日本の卵は安全なんですよ。でも無理して食べなくてもいいですからね」
 「はい」

 子どもたちは普通にかき混ぜてご飯に掛け、ニコニコして食べている。
 それを見てモニカもやってみた。

 「!」
 「どうだい?」

 顕さんが笑って聞く。

 「美味しいです!」
 「まだまだ一杯ありますからね」
 「はい!」

 モニカはお替りして2杯食べた。
 気に入ったようだ。
 
 「ここは何も無いですからね。食事が一番の楽しみになるんです」
 「いや、石神くんはいつも美味しいものを食べさせてくれるじゃないか」
 「顕さんたちだからですよ。いつもはご飯に塩を掛けてるだけですから」
 「タカさん! 久し振りにお味噌汁に具が入りましたね!」
 「空き缶を一杯集めたもんな!」
 「はい!」

 顕さんが大笑いしている。
 モニカはちょっと分からない。

 


 朝食の後で、顕さんとモニカを散策に誘った。
 振動を改良した荷車に乗って頂く。
 俺とロボも一緒だ。
 子どもたちが引く。
 雪が積もっているが、全然関係ない。

 「おい、石神くん!」
 「奴隷共! ちゃんと引け!」
 「「「「「はい!」」」」」

 最初は驚いていたが、顕さんも笑った。

 「モニカさん。日本では親を乗せて子どもが荷車を引くのが習慣なんですよ」
 「モニカ! ジョークだからね!」
 「アハハハハハ!」

 ハーが林に飛び込んだ。
 ウサギを捕まえて帰って来る。
 両耳を持って、俺たちの前に見せに来た。

 「まあ、カワイイ!」
 「?」

 モニカが喜び、ハーは不思議そうな顔をする。

 「逃がしてやれ!」
 「えー! 美味しそうだよ!」
 「!」

 モニカが驚いている。
 ハーの頭を引っぱたいて、ウサギを逃がす。

 「モニカ、ジョークだからね!」
 「……」

 ウサギは必死で林の中へ逃げて行った。

 


 「倒木の広場」に着いた。

 「夏場はいつもここまで散歩するんです。木に腰かけてのんびりするんですが」

 今は雪が積もっているので座れない。
 
 「ということで、雪合戦でもしますか!」
 「いいな!」

 顕さんが喜んだ。

 「当たった奴は、両手を挙げて「ガオー」って言うんだぞ!」
 「「「「「はい!」」」」」
 
 チーム分けをした。
 そうでないと、皇紀が的になるのは目に見えている。
 俺と顕さん、モニカ、柳。
 亜紀ちゃん、皇紀、双子。

 「柳、分かってるだろうな」
 「え?」
 「お前が全弾受けろ!」
 「えぇー!」
 「俺たちに当たったら承知しねぇぞ!」
 「は、はい!」

 最初は楽しく遊んだが、亜紀ちゃんが熱くなっていく。

 「イタイ! ガオー!」

 柳は懸命に俺たちを守る。
 たちまち雪塗れだ。
 亜紀ちゃんが投げた雪玉が立木に当たり、へし折れた。

 「しゅ、しゅーりょー!」

 俺が慌てて止めた。
 顕さんとモニカは気付いていない。
 亜紀ちゃんの頭を引っぱたいた。

 「ごめんなさーい」

 中央の雪をどけて焚火をした。
 みんなで枯れ木を集めた。
 湿っているものは、こっそり双子が「電子レンジ」で乾燥させる。
 俺がナイフでファーヤースティックを作り、双子が木を薄く削いで行く。
 ライターですぐに火が付いた。
 
 石を組んで鍋をかける。
 ポットに入れたコーンスープを入れて、カップを配ってみんなで飲んだ。
 食べたい人間はスコーンを配る。
 みんなで立ったまま飲んだ。

 「あー、久し振りに雪合戦なんかしたな」
 「楽しかったです」

 顕さんとモニカが喜んでくれた。

 「じゃあ、戻ったら雪像でも作りますか!」
 「えぇー!」

 別荘に戻り、双子が中心になり顕さんとモニカの四分の三身像を作った。
 亜紀ちゃんと皇紀はひたすらに雪を集めて行く。

 1時間も掛からずに、見事な雪像が出来た。
 顔の造形が素晴らしい。

 「おい、凄いな!」
 
 腰から上の二人が腕を組んでいる。
 両脇に並んで頂き、写真を撮った。
 
 「おい、みんなも一緒に撮ろうよ!」

 顕さんが言い、皇紀が三脚を持って来て、全員で並んで撮影した。




 昼食はほうとう鍋だ。
 作っている間、身体が冷えただろうと、顕さんとモニカには風呂に入っていただいた。

 ソファでロボと寛いでいると、亜紀ちゃんがコーヒーを持って来た。

 「顕さんたち、楽しんでもらってますかね?」
 「そうだといいな」
 「はい!」

 顕さんとモニカが風呂から帰って来た。

 「石神くん、昼間のあの風呂もいいね!」
 「そうですか!」

 亜紀ちゃんと一緒に笑った。
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