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クリスマス・パーティ

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 翌朝。
 朝食の後で顕さんとモニカを送った。
 柳が助手席に乗る。

 「石神くん、何から何までありがとう」
 「とんでもない! また27日にお迎えに行きますから!」
 「ああ、楽しみだよ! 本当に向こうでも、あの別荘に行きたくて頑張ってたんだよ」
 「そうなんですか!」

 顕さんが笑った。
 モニカも微笑む。
 顕さんが嬉しそうだと、自分も嬉しいのだ。

 「ああ、顕さん」
 「なんだい?」
 「夕べ泊まって頂いた部屋はですね」
 「うん」
 「俺の親友の早乙女夫妻が泊まった部屋でして」
 「そうなの?」
 「はい! あの部屋で愛し合って、子どもが出来ました!」
 「なに!」

 俺と柳で笑う。

 「楽しみですね!」
 「何を言うか!」

 顕さんが大声で叫んだ。
 真っ赤になっている。

 「子宝の部屋と名付けまして。気づかなかったでしょうが、あちこちの子宝祈願の護符とかお守りが置いてあるんですよ」
 「おい、石神くん!」
 「アハハハハハハ!」

 顕さんの家に着いた。





 「おい! なんだよ、これは!」

 顕さんが驚いている。

 「この柳が責任者です。月に数回掃除なんかをやってもらいました」
 「そうなの? でも、前と全然違うんだけど!」
 「真面目な奴でしてね! 手抜きは一切無いことは、俺が保証しますよ」
 「だって、外壁もピカピカじゃないか! 塗り替えただろう! あの庭の植栽だって!」
 「柳は剪定も覚えたんですよ。業者じゃないから金は掛かってません」
 「腕が良すぎるよ!」
 「アハハハハ!」

 顕さんは建築の専門家なのですぐに分かる。
 俺が預かっていた鍵で開け、顕さんに鍵を渡した。

 「じゃあ、鍵はお返ししますね。またフィリピンへ戻る時に預かります」
 「あ、ああ」

 玄関を開け、また顕さんが驚いている。

 「ああ、やっぱり中もかー」
 「元々こんなでしたよ?」
 「そんなわけあるか!」

 まあまあと言いながら、一緒に中へ入った。
 俺が先に上がり、新調したスリッパを出す。
 
 「前のものは一応納戸に仕舞ってあります。思い出のものとかあるかもと思いまして」
 「そうか、ありがとう。しかし綺麗過ぎるよ」
 「そんなこと言わずに、さあ」

 俺と柳で荷物を居間に運び、キッチンを先に見てもらった。

 「買い物も大変だろうと思って、当座の食材は買っておきました」

 冷蔵庫を開ける。

 「おい! 何でこんなにあるんだよ!」
 「はい、石神家ですので」
 「おいー」

 まあ、数日分は楽にある。
 御堂家の激ウマ米も二人で食べきれないほど持って来た。

 「石神くん、勘弁してくれ」
 「はい! じゃあ、これで今日は失礼しますね!」
 「ああ、お茶くらい飲んで行けよ」
 「いいですって。じゃあ、27日に!」
 「ああ、本当にいろいろ悪かったね」
 「いいえ!」
 「柳さん、本当にありがとう」
 「いいえ、楽しかったですよ! 私、石神さんに任せてもらえたんです! それが嬉しくて!」
 「そうなの。ありがとう。この御礼はまた」
 「とんでもありません!」

 俺たちは顕さんの家を出た。
 まあ、他の場所を見られると、また騒がれそうだからだ。
 顕さんの部屋にはダブルベッドが入れてある。
 前は布団だった。

 全部の部屋のカーテンを新調し、壁紙も古くなった部屋は一部変えた。
 勝手にやり過ぎだと言われても仕方が無い。
 まあ、俺に任せた人が悪い。

 「どっかに寄りたいけど、今日はまっすぐに帰るな」
 「はい! 準備でみんな大変でしょうから」
 「俺は何もしないけどな!」
 「アハハハハハ!」

 家に向かった。





 家では亜紀ちゃんが中心になり、パーティの準備をしていた。
 料理が中心だが、リヴィングの飾りつけもある。

 俺が昼食に鰻を注文した。
 一段落させ、みんなで食べる。

 「鷹さんは3時頃に来て下さるんですよね?」
 「ああ、料理を手伝ってくれる予定だな」
 「和のクリスマスもいいですね!」
 「お前らは肉がありゃなんでもいいだろう!」
 「「「「「ワハハハハハハ!」」」」」

 「響子ちゃんと六花さんは5時に。早乙女さんたちも同じですね」
 「ああ。響子はいつもよりよく寝てから来る。まあ、来ても何も手伝わないけどな」
 「いいですよ! 楽しんで欲しいですね」
 「まあな」
 「院長先生たちとか一江さんや大森さんも呼びたかったですね」
 「あんまり大人数になってもなぁ。左門たちは呼びたかったけど、生憎訓練だ」
 「そうですねー」
 
 食事の後で、また全員が作業を始めた。
 出前にしたのは後片付けをしないで済むようにだ。

 こんなに忙しくしているのは、双子のせいだ。
 少し前に三人で夜にドライブに出かけ、プロジェクションマッピングのショーを見たのが切っ掛けだ。
 双子が大感動で、あれを自分たちでやりたいと言いやがった。
 当然皇紀が巻き込まれ、忙しい中で装置とプログラムを作らされた。
 もちろん、プログラムは双子もやったが。

 その調整がギリギリまでずれ込み、今も皇紀とルーで頑張っている。
 二人が抜けたので、その分の作業が残り三人にのしかかっている。
 まあ、好きなようにさせようと俺は思った。

 他の人間が忙しくしている中でのんびりするのは格別だ。
 それに亜紀ちゃんが総指揮を取っているので、俺が入ると使いにくいだろう。
 俺は邪魔にならないように顕さんたちの使った干した布団を取り込み、鷹に電話して早めに迎えに行くことにした。

 「助かります! 荷物が結構多かったんで!」
 「そうか、じゃあすぐに行くよ」

 鷹はもうオペの予定は無いので、今日から年末年始休暇を取っていた。
 明日からアラスカへ行く予定だ。

 「おい! これから鷹を迎えに行きながら、ケーキとか引き取って来るからな!」
 「ありがとうございます!」

 亜紀ちゃんが嬉しそうに言う。
 トロワグロでケーキを注文しており、東京丸鶏でローストチキンを予約している。
 他の料理でオーブンを使うので、ローストチキンは業者に頼んだ。

 鷹をマンションで迎え、一緒に車で回る。

 「明日からまたアラスカか」
 「はい! 楽しみですよ」
 「もうすっかりアラスカ人になったな!」
 「アハハハハハハ!」
 「俺以上に詳しくなっただろう」
 「そうですね。普通の街歩きでは、石神先生よりも知ってると思いますよ」
 「パピヨンの街も大分出来て来たしな」
 「はい! 素敵ですよ! あんな街があるなんて。夜がまたいいんです」
 「栞と歩いたか?」
 「ええ、何度も。桜花さんたちとも一緒に歩きました」
 「あいつらもようやく寛ぐようになったか」
 「そうですね」

 鷹が嬉しそうに笑う。

 「でも、石神先生ともっと一緒にいたいです」
 「お前、取ってつけたように!」
 「アハハハハハ!」

 買い物を済ませ、響子たちを迎えに行った。
 響子は既に起きて着替えていた。

 「なんだよ、一緒にシャワーを浴びようと思ったのに」
 「やだ」
 「なんだとー!」
 「アハハハハ!」




 四人で家に向かった。
 六花が後ろから俺の肩を掴んで言う。

 「石神先生、まずはシャワーですね」
 「やだ」
 「なんだとー!」

 四人で笑った。
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