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トラ&六花 異世界召喚 XⅨ

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 「ガルマ」は斃したが、依然戦闘は続いていた。
 膨大な数の強化人間はまだまだ進軍して来るし、魔獣や妖魔も多かった。
 だが、もう戦いの趨勢は決まっていた。
 俺の子どもたちを中心に、敵をどんどん撃破して行く。
 この東の戦線はほとんど終了しており、獣人や人族の兵が残党を狩って行く。

 「石神先生、私も手伝って来ますね」
 「ああ、頼む。北へ行ってくれ。まだ柳は危なっかしいからな」
 「はい!」

 六花が美しい笑顔を見せて飛び去った。

 「いい女たちだな」
 
 ガンサーが俺の隣に座って言った。
 晴れやかな顔をしている。

 「そうだろう。自慢の女たちだ」
 「他の戦線は大丈夫か?」
 「そこにも俺の子どもたちがいる。どいつも最強だぜ?」
 「そうか」

 俺はガンサーに休んでいろと言った。

 「俺が掃討するからな」
 「俺にも手伝わせてくれ」
 「お前は十分にやった。疲労が激しい」
 「いや、まだ動ける」

 ガンサーが立ち上がった。

 「じゃあ、これを使え。これはお前にやろう」

 俺は「黒笛」をガンサーに渡した。

 「これはお前に返したものだろう」
 「お前は信頼できる奴だ。このままこれを持っていろ。何かあれば、お前が自分の判断で使ってくれ」
 「いいのか?」
 
 ガンサーが嬉しそうに微笑んだ。

 「なんだ、やっぱり欲しかったんじゃないか」
 「それはな。俺の相棒のようなものだ」
 「そうか」

 「黒笛」は恐ろしい破壊力を持っている。
 だから、全員に戦争が終わったら回収すると伝えていた。
 しかし、ガンサーならば信頼出来る。
 彼に与えることで、これからこの世界の脅威に対抗できるかもしれない。

 俺は飛んで後方から「索敵」を使いながら残党を殲滅して行った。
 ガンサーたちは前方からだ。
 1時間後には、もう「索敵」に引っ掛かる敵はいなかった。




 数時間後。
 トランシルヴァニアを襲って来た敵は全て排除出来た。
 亜紀ちゃんは自分の持ち場であった南戦線を逸早く終結させ、双子に「索敵」を教えながら手伝った。
 柳には六花がついている。
 撃ち漏らしは無く、周辺に膨大な死骸が転がっていた。
 ストレージで手分けして回収していく。
 俺たちのストレージは莫大な容量があるので、全てを回収しても問題無い。
 しかし、回収にも時間が掛かり、日が暮れた時に一旦終了とした。
 明日にまた続行する。

 王城は負傷者たちでごった返していた。
 ラーラたちに状況を説明した後、俺はみんなを連れて虎人族の村へ飛んだ。
 獣人のルーとハーも連れて行く。

 


 「温泉があるんだ。前に亜紀ちゃんと作ったんだよ」
 「そうですよね!」

 亜紀ちゃんが懐かしそうに笑った。
 俺は村長に断って温泉の近くにストレージから出した「屋敷」を建てた。
 全員で温泉に入る。
 獣人のルーとハーも一緒に来た。
 獣人は風呂に入る習慣が無いが、今日は俺たちに付き合う。
 
 皇紀は目隠しされた。
 みんなからは全てを見られる。

 みんなで身体を洗い合い、獣人のルーとハーも楽しそうだった。
 全員で温泉に浸かる。
 真っ暗な中で月の光が美しかった。

 亜紀ちゃんがこの世界について全員に話していく。
 柳が短い時間だが召喚されていたことに驚いていた。

 「植栽の手入れについて教わったんですよね!」
 「おお、そうだったよなぁ」

 みんなで笑った。

 「タカさん、クライスラー王国以外にも人間の国があるなんて知りませんでした」
 「ああ、俺も知らなかったよ。思えばこの世界も随分と広いはずだからな」
 「北の国はどうなってるんでしょうか」
 「分からん。でも、確かめておかないとな」
 「はい」

 オイストラフ連邦というらしいが、「ガルマ」がどのようにその国を支配していたのか気になる。
 まだ残党がいるのならば、手を打っておく必要があった。
 しかし、今回は10万近い強化人間がいた。
 クライスラー王国を基準とした場合だが、それは一国の国民としておかしくはない。
 ティボー国はもっと少ないはずだ。

 俺たちは風呂を上がり、夕食の支度をした。
 もちろん、石神家のバーベキューだ。



 俺と亜紀ちゃんででかいバーベキュー台を出し、作業テーブルを出し、食卓のテーブルや椅子も出した。
 そして「ウマヘビ」を中心にこの世界の美味い食材を出して、亜紀ちゃんと双子がどんどん調理する。
 皇紀は薪を集めに走った。
 柳は料理を手伝いながら、配膳をしていく。
 六花は俺と一緒にテーブルに座って、子どもたちを眺めている。

 「いつも通りだな!」
 「はい!」

 六花は何もしない。
 ロボは先に焼いてもらった「ウマヘビ」を唸りながら食べている。

 すぐに食材のカットが終わり、亜紀ちゃんが作ったスープも出来上がる。
 みんなで好きなように焼いて行く。

 「この肉はウマヘビって亜紀ちゃんが名付けてよ! どうだ、美味いだろう!」
 「「「「はい!」」」」

 初めて食べる皇紀と双子と柳が感激しながら貪って行く。
 獣人のルーとハーに村の人間を呼んで来いと言い、追加のバーベキュー台を出してみんなで食べた。
 ウマヘビが美味いが、カニや他の肉もみんなが驚きながら食べて行った。
 獣人のルーとハーが村長たちに、首都トランシルヴァニアでの戦闘を話していく。
 食べながらみんなが聞き入っていた。

 「タカさんもリッカさんもアキさんも強いんだけどね! 他の三人も物凄く強いんだよ!」
 「みんなで4方向に分かれて、全部斃したの! 凄かったんだ!」

 敵が高い城壁を飛び越えたり、一部の城壁が崩されたりして、一時は危なかったのだと言った。

 「その時にね! タカさんの子どもたちが来てくれて!」
 「このおっきなネコさんも!」

 ロボが自分の話になってウキウキしている。
 
 「この子がね、タカさんの後で物凄い魔法を撃って! それで敵の大将をやっつけたの!」
 「カワイイけど凄いネコさんなんだよ!」
 「「ね、ロボちゃん!」」

 ロボが喜びのジルバを踊った。
 みんなが喜んだ。

 「じゃー! そろそろやるよ! 祝勝の「ヒモダンス!」」
 
 亜紀ちゃんの号令で石神一家が集まって踊った。

 ♪ ヒモ! ヒモ! タンポンポポポン!…… ♪

 最初は唖然としていた獣人たちも、すぐに馴染んだ。
 手拍子を打ち、そのうちに何人もが一緒に踊る。
 意味は分からないだろうが、楽しいダンスなのは分かる。

 みんなで深夜まで飲み食いし、踊り歌った。




 俺たちはまた温泉に入り、屋敷で眠った。
 広いリヴィングにベッドを運び、くっつけて全員で寝た。
 獣人のルーとハーも一緒に寝た。
 ロボが二人の間に入り、幸せそうにしていた。

 六花が隣で俺のオチンチンを握って来たが、今日くらいはやめろと言った。
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