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トラ&六花 異世界召喚 XⅤ

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 俺と六花は以前に亜紀ちゃんと使っていた家に入った。
 食事を作り、一緒に風呂に入る。
 六花が丁寧に俺の身体を洗ってくれた。

 「石神先生、大変なことになりましたね」

 湯船に浸かりながら、六花が言う。

 「そうだよな。お前、大丈夫か?」
 「私は石神先生の傍にいられれば」
 
 俺は六花に微笑み掛け、肩を抱いた。

 「俺もそうだよ。お前が傍にいてくれて本当に良かった」
 「じゃあ、後でまたヤりましょうね!」

 俺は大笑いした。

 「まあな。でもちょっと待ってくれ。その前にやっておきたいことがあるんだ」
 「なんですか?」
 「前に、この世界でテイムした奴らがいるんだ」
 「テイム?」

 俺は魔獣を自分の仲間に出来る能力だと話した。

 「そんなことが出来るんですか!」
 「ああ。お前にもあるとは思うんだが、使ったことはないだろう」
 「はい。でも、やってみたいです」
 「そうだな。後で一緒にやるか」
 「はい!」

 六花が明るく笑う。
 こいつの笑顔は常に最高だ。

 「それでな。結構強大な連中を仲間にした。まあ、あまりに強大で今までほとんど呼ぶこともなかったんだがな」
 「そうなんですか」
 「でも、今回は呼ぼうと思っている」
 「必要なんですね?」
 「ああ。俺の感覚なんだが、あっちの世界の妖魔たちに似ているんだ」
 「え?」
 「クロピョンは、そのものだった。それに空の王に似た奴もいる。あれらは、もしかしたら妖魔なのかもしれん」
 「そうなんですか」

 六花は考えていない。
 俺が話すことを聞いているだけだ。

 「今回は妖魔を使う戦争だ。あいつらが有効な気がしている」
 「じゃあ、やりましょう!」

 単純な奴で嬉しい。
 だが、俺は口にはしないが、妖魔の王たちを使うことのリスクを考えていた。
 以前に空の王「百万モメン」を使ったことがあるが、ほんの僅かな時間だけだ。
 長くいれば地上が崩壊するほどの存在の威力がある。
 だから皇紀や双子たちに、妖魔の運用の研究をさせているのだ。
 こちらの世界では、そういうわけには行かない。





 風呂から上がり、六花と森の奥深くへ行った。
 岩山の麓に降り、俺は以前にテイムした銀色の巨大な狼「フェンリル」を呼んだ。
 目の前の空間が裂け、「フェンリル」は現われた。
 体長80メートルの巨体に、六花が驚く。

 「おう、久し振りだな」
 「我が主、ようやく呼ばれたか」
 「ああ、力を貸して欲しくてな」
 「なんなりと。我は我が主のために在る」

 「お前と同じように、空間の中へ消える奴がいる。そいつが今回の敵だ」
 「そうか」
 「そいつは人間を妖魔に変身させる。そういう奴を知っているか?」
 「「ガルマ」だろう。あいつが敵か」
 「知っているのか?」
 「あれは元々はこことは別な世界の者だ。「%$’)%$#」によってこの世界に引き寄せられた」

 一部聞き取れない名前があった。

 「そうか。どのような奴なんだ?」
 「数多くの邪悪な者を取り込んでいる。あいつは、それを植え付けることが出来る」
 「なるほど。それは誰にでも可能なのか?」
 「一部の者だけだ。ある種の波長が合う者には植え付けることが出来る」
 「俺やこの女はどうだ?」

 「フェンリル」はしばらく俺たちを見ていた。

 「無理だな。我が主とその女は魂が高い。そういう者には植え付けられない」
 「そうか、良かった。それと、植え付けられた者に攻撃され、理性を喪った者がいるんだ。分かるか?」
 「それは分からない。邪悪な者はひたすらに破壊し、脳髄を喰うことは知っている」
 「そうか。ところで、お前は「ガルマ」の居場所は分かるか?」
 「今は分からない。だが探してみよう」
 「頼む。分かったら教えてくれ」
 「承知した、我が主」

 「フェンリル」は目を閉じ、頭を深く下げた。
 そしてまた空間の裂け目に消えて行った。

 「あ、行っちゃった」
 「なんだ?」
 「ちょっと触りたかったのに!」
 「そうだったのか。じゃあ、また今度な」
 「はい!」

 動じない女だった。
 六花は明るい笑顔で頷いた。

 もう一体呼び出した。
 金色の巨大な亀「グイ」だ。
 俺が呼ぶと、山の斜面が盛り上がり、そこから「グイ」が出て来た。
 体長200メートルもの巨大な身体で、土から出て来たにも関わらず一切の汚れが無く、黄金色に輝いている。

 俺はテイムした者の能力が分かっている。
 「フェンリル」は瞬時にあらゆる場所を疾走し、見聞きすることが出来る。
 戦闘力も相当で、その気になれば人間の街などは簡単に蹂躙出来る。
 そして「グイ」の能力は防御と治癒だ。
 俺は「グイ」に、「ガルマ」の攻撃を防ぐことが出来るかを問うた。

 「出来ます。また、「ガルマ」に妖魔を植え付けられた者を解除することも可能です」
 「心強いな」
 「必要があれば、いつでも御呼び下さい」
 「ああ、頼むぞ」

 「グイ」も俺に頭を下げた。

 「ああ、六花。こいつに触っておくか?」
 
 六花はブンブンと顔を横に振った。
 好みではないらしい。

 「じゃあ、また呼ぶからな!」

 「グイ」はまた山の斜面に消えて行った。
 六花がパンパンと後ろから俺の肩を叩く。

 「じゃあ、帰ってヤりますか!」
 「おう!」

 俺のシエルに二人で乗り、六花が俺の背中に抱き着いて帰った。
 俺の股間の操縦桿から手を離さなかった。
  
 



 数日は何の攻撃も無かった。
 「フェンリル」も居場所を特定できないでいた。
 一度報告を受けたが、どうやら移動しながら何かをしているらしい。
 嫌な予感がしたが、どうすることも出来ない。

 俺はその間に何度か王城へ行き、早期連絡の方法と避難誘導の具体的な手段を詰めた。
 概ねの対処法は確立できたと思う。
 これでまた「ガルマ」の攻撃を受けても、俺たちは対応出来る。
 「ガルマ」の無差別憑依は脅威だったが、恐らく二度目は俺たちが何とか出来そうだ。

 しかし、俺たちの予想を超え、「ガルマ」の軍勢と戦うことになった。
 


 俺と六花がトランシルヴァニアに着いて、二週間後のことだった。 
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