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トラ&六花 異世界召喚 Ⅳ

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 翌朝。
 俺は対妖魔化魔獣の対抗策を考えた。
 早乙女がやったような、対物ライフルクラスの破壊力ならば傷を与えられる。

 レールガンなら有効だろうが、ここでは冶金の技術がない。
 超高速で撃ち出すレールガンの砲身と弾核はここでは難しいだろう。
 俺は考えた挙句、エルフの得意な弓の握りに「魔法陣」を描いた。
 それに薄い革でまた握りを巻く。

 昨日俺たちと一緒にいたトラスティークと戦闘要員の長、その他長老や他の戦闘要員の主だった人間を呼んで、里の外へ連れ出した。

 「トラスティーク、この弓であの山の方向へ射ってくれ」
 「はい? 分かりました」

 トラスティークが俺の言うままに矢をつがえ、山の方角へ放った。
 轟音と共に、途中の森の木が吹っ飛びながら、山の斜面に粉塵が爆発した。

 「……」

 全員が驚いている。
 威力は凄いが、流石に弓なので時空の裂け目は出来なかった。

 「よし! この弓をお前たちに預ける。いざという時には使え。但し、エルフや他のヒューマン、獣人に使用してはならない。もし使えば、俺が神罰を降しに必ずここへやって来る」
 「はい!」
 
 「俺がこの世界での使命を果たして帰る時には、返してもらう。いいな」
 「はい!」
 「俺がどのように作ったかを調べようとするな。特殊な呪文を刻み、俺の力も注いでいる。ヘタにいじれば、この里の100倍の範囲が吹っ飛ぶぞ」
 「はい!」

 魔法陣のことは、絶対に知られてはならない。
 悪用されれば、この世界が崩壊しかねないからだ。




 「では、人間の街アイザックへ向かうよ」
 「はい。道中御気を付けて」
 「ああ、お前たちもな」
 
 俺と六花は長老たちに別れを告げ、アイザックを目指した。
 六花も飛行機械を一つもらい、一緒に飛ぶ。
 六花はやはり、すぐに操縦を理解し、ベテランの操縦を披露し始めた。

 「この世界でもお前と一緒に飛べるとはな!」
 「はい! もう嬉しくて堪りません!」

 六花が輝く笑顔を見せた。



 アイザックの街に降り、俺は自分の冒険者カードを門番に提示しようとした。

 「ハッ! その必要はございません、メシア様!」

 俺の顔を知っていると言う門番は、最敬礼の後で目をキラキラさせて俺たちを中へ誘導した。
 俺はアイザック家には向かわず、まずは冒険者ギルドを目指した。
 六花の冒険者カードを作るためだ。
 それがこの世界の身分証になる。
 そういうことを、道すがら六花に話した。

 通りを歩いていると、みんなが俺たちを見た。
 俺の顔を知っている者も多いが、六花の超絶の美貌に注目するのだ。

 「みんな見てますよ」
 「六花が綺麗だからだろう」
 「石神先生がカッコイイからですよ!」

 二人で褒め合っているうちに、ギルドに着いた。
 誰かが知らせたのか、俺と六花が入るとギルドマスターが俺たちを迎えに出て来た。

 「またメシア様にお目に掛かれるとは!」
 「ああ、また世話になるぞ。こいつは俺の恋人で六花と言うんだ。ギルドカードを作ってやってくれ」
 「はい! 今すぐに!」

 六花が水晶のボールに手を当てた。
 全員が覚悟していたが、やはり驚いていた。

 「レベル5803!」

 エルフの里へ行く途中で相当レベリングした。
 それに昨日の戦闘が驚異的なレベルアップをさせたようだ。
 六花は訳が分からないでいたが、みんなが驚いているのでニコニコして嬉しそうだった。

 特例になるが、他のステータスも桁違いに高いので、ギルドマスターが六花にもS級の最高ランクのギルドカードをくれた。
 王都近くでは危険な魔獣も少ないので、俺はしばらくここに滞在することに決めた。
 六花のレベリングだ。

 アイザック家に行くと、大歓迎で迎えられる。
 当主はアイザック・アベサダモフだった。
 魔王に関しては未だほとんど掴んではいなかった。

 屋敷の中に部屋を用意すると言われたが、俺は断って森の中で「屋敷」を建てた。
 六花と二人で、毎日森の魔獣を狩り、ギルドに納めることを繰り返した。
 一緒に食事を食べ(ほとんど俺の料理)、一緒に風呂に入り、一緒に酒を呑み、一緒にヤり、一緒に眠った。

 「なんだか、夫婦になったみたいですね!」
 「そうだな!」

 俺も楽しんだ。
 普通の夫婦よりもヤるのが多い以外は、本当にその通りだった。
 でも、その後で六花が言った。

 「響子は元気ですかね」

 六花にとって、俺とは別な最も大事なことだった。

 「元気だよ。それに、俺たちはあの日の病室を出た時間に戻れる。心配するな」
 「はい」

 六花が俺を見て笑った。
 実感としては分からないことだろうが、俺を信じようとしてくれている。

 「俺のこれまでの経験で大丈夫だ。必ず戻れるぞ」
 「はい!」

 



 この辺りの魔獣もほとんど狩り尽くしてしまった。
 俺は六花と他の訓練を始めた。
 対妖魔の訓練だ。

 「いいか、六花。妖魔は普通の「生命」とは違う。だから生命を殺すだけの技では通用しないんだ」
 「それじゃ、どうやって戦うんですか?」
 「あっちじゃ柳が研究中だけどな。一つは「花岡」の技を改造して行くことだ。もう一つもあるんだが、こちらは制御が難しい」
 「どういうものです?」

 俺は空中に「魔法陣」を描いた。

 「この中心に「槍雷」を撃つと、月までぶっ飛ばす威力が出るんだ」
 「えぇ!」
 「ただ、余りにも威力がでかいんで、時空に裂け目が出来てそこからとんでもない怪物が出て来そうになる」
 「それじゃ、使えませんよね?」
 「そうなんだ。向こうじゃロボに時空の裂け目を塞いでもらってたんだけどな。こっちじゃそれはできねぇ」
 「なるほど」

 六花も理解したようだ。

 「威力を落として試してみたい所なんだがな。失敗すれば取り返しがつかないから、俺も出来ない」
 「うーん」

 六花も、腕を組んで考えていた。
 まあ、こいつの場合はただのポーズで、最初から考えるのは俺に投げている。

 「実はもう一つな。エルフの里の戦闘で思いついたことがあるんだ」
 「流石東大卒!」
 「まーなー!」

 二人で笑った。
 俺はストレージから「黒笛」を出した。

 「この刀だ」
 「でも、石神先生の分しかありませんよね?」
 「そうだ。だけどな、この「黒笛」がもう一振できないかと思ったんだよ」
 「え!」

 「この「黒笛」はどういうものか向こうでも分からなかったんだ。名前だけ、響子が百家に行った時に夢の中で教えてもらった」
 「そうなんですか!」

 「刀身が真っ黒だ。何か思い出さないか?」
 「はい?」
 「これを持って来たのは「クロピョン」だ」
 「あ!」

 六花が驚いている。

 「俺は、この刀は「クロピョン」が作ったんじゃないかと考えている」
 「そんな!」
 「あいつはレッドダイヤモンドでもブルーダイヤモンドでもヒヒイロカネでも、何でも作れる。ダイヤモンドは高温高圧の制御だな。他の金属も、俺は鉱脈を見つけるだけではなくて、自分でも作れるんじゃないかと思うんだ」
 「なんて!」

 「「虎王」はな、人間の肉体と魂を練り込んで作っているそうだ。要は「神性」が入っているということだな。だから、この黒い刀身は、俺はもしかしたら「クロピョン」の身体が入っている、まあそれを変性させて創られたものじゃないかとな」
 「!」
 「だから妖魔を撃破出来る」
 「でも、ここには「クロピョン」はいませんよね?」
 「そう思うか?」
 「?」

 俺はこの世界で幾つかの巨大な魔獣をテイムしていた。
 しかし、あまりにも格が違っている連中だった。
 空に漂う超巨大な帯のようなもの、それは向こうの世界での「天の王:百万モメン」ではないのか?
 そして山よりも巨大な黒い丸の魔獣もテイムした。
 それは「クロピョン」なのではないか?
 そうでなくとも、「クロピョン」は時空を超えて行き来できることを知っている。
 ならば、呼べば来るのではないのか。

 「クロピョン!」

 目の前に、黒い一つ目の蛇が地面から出て来た。

 「「ワハハハハハハハ!」」
 




 俺と六花は大笑いした。
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