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トラ&六花 異世界召喚 Ⅱ

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 俺は「探知」で魔獣を探しながら、六花に屠らせて行った。
 六花はどんどん楽しみながら魔法で魔獣を狩って行く。
 最初から戸惑いは無かった。
 召喚された瞬間は若干の驚きはあったが、俺が一緒にいるのを見てすぐに落ち着いた。
 亜紀ちゃんはもうちょっと落ち着くまでに時間が掛かった。
 しかし六花は、俺が「大丈夫だ」と言った瞬間に、もう平静になっていた。
 驚くべき、俺への信頼度だ。
 
 唯一の気掛かりは響子のことで、自分がいない間を心配した。
 それも、俺が消えた時間にちゃんと戻ると言うと、すぐに安心した。
 俺を1ミリも疑うことはない。
 
 俺はどうせ魔王を斃すまで戻れないことは分かっていた。
 だから六花を安心させるために、「ガルマ」という名前に大袈裟に反応してみせた。
 しかし、あれも必要無かったのかもしれない。
 六花は俺を信頼し切っている。

 「石神先生! レベルが随分と上がりましたよ!」

 六花はもうレベル9000を超えていた。
 異常に早い。

 「凄いな! 亜紀ちゃんはもっと遅かったぞ!」
 「そうですか!」

 嬉しそうだ。
 別に亜紀ちゃんを抜いたことではない。
 俺が褒めたからだ。

 「じゃあ、休憩がてら、もう一回ヤっときますか!」
 「おう!」

 もう4回目だ。
 聖はもちろん、亜紀ちゃんとではこうは行かない。
 六花と一緒に来て、本当に楽しい。

 


 暗くなって来た。
 本当は急げばエルフの里に行けるのだが、俺は敢えてゆっくりと歩いた。
 六花に異世界に慣れて欲しかった。

 俺はストレージから「屋敷」を出すと、流石に驚いていた。

 「凄いですね!」
 「まーなー!」

 細かいことだが、出しながら魔法で基礎部分も固定している。
 魔導コンロで調理をし、美味い晩飯を作って二人で食べる。
 六花が食べる専門なのは、地球と変わらない。
 こういうことで、奈津江を思い出して一層愛おしくなる。

 風呂を沸かし、もちろん一緒に入る。
 洗う前に俺の匂いを嗅ぎまわり、ペロペロし、ジュボジュボやる。
 六花と一緒で本当に嬉しい。

 六花が自分にもやれと言うので、俺もハッスルしてペロペロし、ジュボジュボやる。
 喜んで「六花水」をぶちまける。
 夜中まで二人で楽しんだ。




 翌朝。
 周囲に気配がして、俺は目を覚ました。
 六花も起きた。
 もう、異世界の感覚に慣れていた。

 「誰かいますね」
 「ああ、でも敵じゃない。エルフたちが気付いたんだろう」

 庭に出ると、二人のエルフが飛行機械から降りて、片膝を付いていた。
 
 「マイトレーヤ様がいらしたことを知り、ご挨拶に伺いました」
 
 一人の男がそう言った。

 「そうか、よく分かったな」
 「二週間前に御神木の洞から『最後の預言書』が見つかりました。その中に、今日マイトレーヤ様がここにいらっしゃると」
 「洞から? 今まで見つからなかったのかよ?」
 「はい。何しろ神聖な御神木ですから。誰一人近づく者もなく」
 「それがどうして洞を探ったんだ?」
 「はい。突然地面が割れ、その底から『最後から二番目の預言書』が見つかりまして、その中に御神木の洞を探せと」
 「おい! そっちの方が物凄ぇだろうが!」
 
 羽虫め、何を考えてやがる。
 二段構えにする意味があるのか?

 「とにかく、そうした経緯でここにお迎えに参りました」
 「そうかよ。じゃあ、そろそろ行くかな。いいか、六花?」
 「はい!」

 六花に否は無い。
 俺は屋敷をストレージに仕舞い、代わりに「シエル」を出した。
 前回亜紀ちゃんと乗り回した俺たちの飛行機械だ。

 「カッコイイ!」

 六花が興奮している。
 こいつは乗り物が大好きだ。

 「後で操縦を教えてやる。お前ならすぐに乗りこなすだろう」
 「はい!」
 
 俺は六花を後ろに乗せて、エルフの里に向かった。
 話を聞くと、どうやら前回俺と亜紀ちゃんが帰ってから、まだ2年しか経っていないらしい。
 その前は千年とかだったので、俺も驚いた。

 しかし、エルフの里を見て、もっと驚いた。

 前回20メートル程だった城壁は50メートルになり、更に厚みも増していた。
 そればかりか、重機関銃の他に荷電粒子砲が備わっている。
 俺が遊び半分で図面を引き、エネルギーの作り方を教えたものだ。
 電力だが、エルフたちは火力発電を実現していた。
 まあ、無限供給の「イーヴァ」は流石に教えなかった。

 「お前らスゲェな!」
 「はい!」

 早速長老のいるビルへ連れて行かれる。
 六花は俺に腕を絡めて上機嫌だ。
 エルフだのビル群だのには何も驚いていない。
 俺がいれば、それでいいのだ。

 俺たちが歩いていると、あのナスターシャ・キンスキー似のエルフが離れた場所から手を振って来た。
 俺も笑って振り返す。
 まあ、今回は六花がいるから関係することは無いだろう。



 
 「マイトレーヤ様!」

 長老が駆け寄って来て跪いた。

 「おい、なんか太ってねぇか?」

 以前はエルフはみんな痩せて引き締まった身体をしていた。
 しかい、里を歩いている時にも、時折デブを見掛けて気になっていた。

 「はい! 以前にマイトレーヤ様方から教えて頂いたサトウキビを大々的に栽培いたしまして。今では多くの者が甘味に夢中でございます」
 「あー」
 「後程、我々が作りました「でざーと」というものをマイトレーヤ様にもご賞味いただきたく」
 「まー、それはそれとしてな」

 糖分の摂り過ぎは良くないことを教えておかないと。
 前回は俺と亜紀ちゃんが欲しくてやっていたのだが。

 「今回は、我々も新たな「魔王」のことは聞き及んでおります。ですので、迎撃兵器の開発を急いでおります」
 「そうか。それにしてもたった二年でよくここまで進めたな」
 「はい。マイトレーヤ様の子孫の「オナニコーキ」という者に才がございました」
 「!」

 「マイトレーヤ様から教えて頂いた技術を信奉しておりまして。その者が夢中で取り組んで数々の成果を出しております」
 「そ、そうか」

 今度、「テンガ」を教えてやろう。

 「それにしても、マイトレーヤ様」
 「あんだ?」
 「そちらの御連れの女性は、なんとお美しく!」
 「おお!」
 「不肖、エルフはみな美男美女ではございますが、これほどまでに美しい者はおりません」
 「そうだろ?」

 六花もニコニコしている。
 こいつは、その辺はどうでもいい女だ。
 俺が褒めているので嬉しいだけだ。

 「マイトレーヤ様の奥方様でございますか?」
 「いいえ、私は二号です」
 「はい?」
 「一号は「響子」です。私は二号です」
 「はぁ」
 
 一号が何なのかは俺にもよく分からんが、エルフたちは二号も分からん。

 「まあ、俺の愛する女だ。みんなもそのつもりで接してくれ」
 「かしこまりました!」

 長老から魔王の情報を聞こうと思ったが、やはり大したことは知らなかった。
 ただ、これまでにない強大で狂暴な魔王であることは確かなようだった。

 その日は俺たちの歓迎の宴を開いてくれるとのことだったので、俺は亜紀ちゃんと暮らした家に六花を連れて行った。
 俺の家ということで、今もそのまま保管してくれていた。
 俺と亜紀ちゃんで頑張って作ったガラスは、今は他の建物にも入っている。

 「素敵な建物ですね!」
 「そうだろ?」

 俺がストレージから昼食の食材を出し、エルフたちが持って来た野菜を使って昼食を作ろうとした。
 
 「ネコだぁー!」

 六花が家に入って来たネコを抱き上げて俺に見せた。

 「おお! ヤマト煮!」

 ヤマト煮が六花から降りて、俺に駆け寄って来る。
 抱き上げると、顔を舐めて来た。

 「前に来た時に出会ったんだ。神獣らしいから、ここでみんなに大事にされてるんだよ」
 「そうなんですか!」
 
 六花も寄って来て、ヤマト煮を撫でる。
 ヤマト煮は嬉しそうに喉を鳴らした。
 ヤマト煮にはウマヘビを焼いて食べさせた。
 唸りながら喜んで食べた。

 俺と六花はパスタを茹でてトマトソースで食べた。
 ウマヘビの肉を使うと何でも絶品だ。

 「異世界って、何の不自由もないんですね!」
 「まあ、前に来た時に随分と頑張ったからなぁ」

 俺は亜紀ちゃんとガラスを作ったり、海水浴もこの世界で初めて実現したことなどを話した。

 「じゃあ、夜までまだ時間がありますから、取り敢えずヤっときますか!」
 「おう!」

 


 六花と一緒にいると、何もかもが楽しい。

 途中でナスターシャ・キンスキー似のエルフが訪ねて来て、俺が散々ヤったのだと説明した。
 六花がじゃあ虎曜日に入れるから一緒にと言った。

 六花と一緒にいると、何もかもが物凄く楽しい。
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