上 下
1,330 / 2,840

トラ&六花 異世界召喚 Ⅱ

しおりを挟む
 俺は「探知」で魔獣を探しながら、六花に屠らせて行った。
 六花はどんどん楽しみながら魔法で魔獣を狩って行く。
 最初から戸惑いは無かった。
 召喚された瞬間は若干の驚きはあったが、俺が一緒にいるのを見てすぐに落ち着いた。
 亜紀ちゃんはもうちょっと落ち着くまでに時間が掛かった。
 しかし六花は、俺が「大丈夫だ」と言った瞬間に、もう平静になっていた。
 驚くべき、俺への信頼度だ。
 
 唯一の気掛かりは響子のことで、自分がいない間を心配した。
 それも、俺が消えた時間にちゃんと戻ると言うと、すぐに安心した。
 俺を1ミリも疑うことはない。
 
 俺はどうせ魔王を斃すまで戻れないことは分かっていた。
 だから六花を安心させるために、「ガルマ」という名前に大袈裟に反応してみせた。
 しかし、あれも必要無かったのかもしれない。
 六花は俺を信頼し切っている。

 「石神先生! レベルが随分と上がりましたよ!」

 六花はもうレベル9000を超えていた。
 異常に早い。

 「凄いな! 亜紀ちゃんはもっと遅かったぞ!」
 「そうですか!」

 嬉しそうだ。
 別に亜紀ちゃんを抜いたことではない。
 俺が褒めたからだ。

 「じゃあ、休憩がてら、もう一回ヤっときますか!」
 「おう!」

 もう4回目だ。
 聖はもちろん、亜紀ちゃんとではこうは行かない。
 六花と一緒に来て、本当に楽しい。

 


 暗くなって来た。
 本当は急げばエルフの里に行けるのだが、俺は敢えてゆっくりと歩いた。
 六花に異世界に慣れて欲しかった。

 俺はストレージから「屋敷」を出すと、流石に驚いていた。

 「凄いですね!」
 「まーなー!」

 細かいことだが、出しながら魔法で基礎部分も固定している。
 魔導コンロで調理をし、美味い晩飯を作って二人で食べる。
 六花が食べる専門なのは、地球と変わらない。
 こういうことで、奈津江を思い出して一層愛おしくなる。

 風呂を沸かし、もちろん一緒に入る。
 洗う前に俺の匂いを嗅ぎまわり、ペロペロし、ジュボジュボやる。
 六花と一緒で本当に嬉しい。

 六花が自分にもやれと言うので、俺もハッスルしてペロペロし、ジュボジュボやる。
 喜んで「六花水」をぶちまける。
 夜中まで二人で楽しんだ。




 翌朝。
 周囲に気配がして、俺は目を覚ました。
 六花も起きた。
 もう、異世界の感覚に慣れていた。

 「誰かいますね」
 「ああ、でも敵じゃない。エルフたちが気付いたんだろう」

 庭に出ると、二人のエルフが飛行機械から降りて、片膝を付いていた。
 
 「マイトレーヤ様がいらしたことを知り、ご挨拶に伺いました」
 
 一人の男がそう言った。

 「そうか、よく分かったな」
 「二週間前に御神木の洞から『最後の預言書』が見つかりました。その中に、今日マイトレーヤ様がここにいらっしゃると」
 「洞から? 今まで見つからなかったのかよ?」
 「はい。何しろ神聖な御神木ですから。誰一人近づく者もなく」
 「それがどうして洞を探ったんだ?」
 「はい。突然地面が割れ、その底から『最後から二番目の預言書』が見つかりまして、その中に御神木の洞を探せと」
 「おい! そっちの方が物凄ぇだろうが!」
 
 羽虫め、何を考えてやがる。
 二段構えにする意味があるのか?

 「とにかく、そうした経緯でここにお迎えに参りました」
 「そうかよ。じゃあ、そろそろ行くかな。いいか、六花?」
 「はい!」

 六花に否は無い。
 俺は屋敷をストレージに仕舞い、代わりに「シエル」を出した。
 前回亜紀ちゃんと乗り回した俺たちの飛行機械だ。

 「カッコイイ!」

 六花が興奮している。
 こいつは乗り物が大好きだ。

 「後で操縦を教えてやる。お前ならすぐに乗りこなすだろう」
 「はい!」
 
 俺は六花を後ろに乗せて、エルフの里に向かった。
 話を聞くと、どうやら前回俺と亜紀ちゃんが帰ってから、まだ2年しか経っていないらしい。
 その前は千年とかだったので、俺も驚いた。

 しかし、エルフの里を見て、もっと驚いた。

 前回20メートル程だった城壁は50メートルになり、更に厚みも増していた。
 そればかりか、重機関銃の他に荷電粒子砲が備わっている。
 俺が遊び半分で図面を引き、エネルギーの作り方を教えたものだ。
 電力だが、エルフたちは火力発電を実現していた。
 まあ、無限供給の「イーヴァ」は流石に教えなかった。

 「お前らスゲェな!」
 「はい!」

 早速長老のいるビルへ連れて行かれる。
 六花は俺に腕を絡めて上機嫌だ。
 エルフだのビル群だのには何も驚いていない。
 俺がいれば、それでいいのだ。

 俺たちが歩いていると、あのナスターシャ・キンスキー似のエルフが離れた場所から手を振って来た。
 俺も笑って振り返す。
 まあ、今回は六花がいるから関係することは無いだろう。



 
 「マイトレーヤ様!」

 長老が駆け寄って来て跪いた。

 「おい、なんか太ってねぇか?」

 以前はエルフはみんな痩せて引き締まった身体をしていた。
 しかい、里を歩いている時にも、時折デブを見掛けて気になっていた。

 「はい! 以前にマイトレーヤ様方から教えて頂いたサトウキビを大々的に栽培いたしまして。今では多くの者が甘味に夢中でございます」
 「あー」
 「後程、我々が作りました「でざーと」というものをマイトレーヤ様にもご賞味いただきたく」
 「まー、それはそれとしてな」

 糖分の摂り過ぎは良くないことを教えておかないと。
 前回は俺と亜紀ちゃんが欲しくてやっていたのだが。

 「今回は、我々も新たな「魔王」のことは聞き及んでおります。ですので、迎撃兵器の開発を急いでおります」
 「そうか。それにしてもたった二年でよくここまで進めたな」
 「はい。マイトレーヤ様の子孫の「オナニコーキ」という者に才がございました」
 「!」

 「マイトレーヤ様から教えて頂いた技術を信奉しておりまして。その者が夢中で取り組んで数々の成果を出しております」
 「そ、そうか」

 今度、「テンガ」を教えてやろう。

 「それにしても、マイトレーヤ様」
 「あんだ?」
 「そちらの御連れの女性は、なんとお美しく!」
 「おお!」
 「不肖、エルフはみな美男美女ではございますが、これほどまでに美しい者はおりません」
 「そうだろ?」

 六花もニコニコしている。
 こいつは、その辺はどうでもいい女だ。
 俺が褒めているので嬉しいだけだ。

 「マイトレーヤ様の奥方様でございますか?」
 「いいえ、私は二号です」
 「はい?」
 「一号は「響子」です。私は二号です」
 「はぁ」
 
 一号が何なのかは俺にもよく分からんが、エルフたちは二号も分からん。

 「まあ、俺の愛する女だ。みんなもそのつもりで接してくれ」
 「かしこまりました!」

 長老から魔王の情報を聞こうと思ったが、やはり大したことは知らなかった。
 ただ、これまでにない強大で狂暴な魔王であることは確かなようだった。

 その日は俺たちの歓迎の宴を開いてくれるとのことだったので、俺は亜紀ちゃんと暮らした家に六花を連れて行った。
 俺の家ということで、今もそのまま保管してくれていた。
 俺と亜紀ちゃんで頑張って作ったガラスは、今は他の建物にも入っている。

 「素敵な建物ですね!」
 「そうだろ?」

 俺がストレージから昼食の食材を出し、エルフたちが持って来た野菜を使って昼食を作ろうとした。
 
 「ネコだぁー!」

 六花が家に入って来たネコを抱き上げて俺に見せた。

 「おお! ヤマト煮!」

 ヤマト煮が六花から降りて、俺に駆け寄って来る。
 抱き上げると、顔を舐めて来た。

 「前に来た時に出会ったんだ。神獣らしいから、ここでみんなに大事にされてるんだよ」
 「そうなんですか!」
 
 六花も寄って来て、ヤマト煮を撫でる。
 ヤマト煮は嬉しそうに喉を鳴らした。
 ヤマト煮にはウマヘビを焼いて食べさせた。
 唸りながら喜んで食べた。

 俺と六花はパスタを茹でてトマトソースで食べた。
 ウマヘビの肉を使うと何でも絶品だ。

 「異世界って、何の不自由もないんですね!」
 「まあ、前に来た時に随分と頑張ったからなぁ」

 俺は亜紀ちゃんとガラスを作ったり、海水浴もこの世界で初めて実現したことなどを話した。

 「じゃあ、夜までまだ時間がありますから、取り敢えずヤっときますか!」
 「おう!」

 


 六花と一緒にいると、何もかもが楽しい。

 途中でナスターシャ・キンスキー似のエルフが訪ねて来て、俺が散々ヤったのだと説明した。
 六花がじゃあ虎曜日に入れるから一緒にと言った。

 六花と一緒にいると、何もかもが物凄く楽しい。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~

みつまめ つぼみ
キャラ文芸
 ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。  彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。  そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!  彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。  離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。  香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田
キャラ文芸
 等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。 【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。 【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...