富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
上 下
1,317 / 2,905

最悪の敵

しおりを挟む
 翌日の土曜日。
 子どもたちはブランと戦闘訓練をする。
 俺は一江と大森に、また研究所を案内し、戦闘訓練も見学した。

 「大森もやって来るか?」
 「はい!」

 大森がコンバットスーツに着替えて、訓練に参加した。
 戦闘力に差があるが、みんながそれに合わせる。
 大森が楽しそうに笑っていた。

 「お前もやって来るか?」
 「御冗談を!」
 「ワハハハハハ!」

 蓮花がお茶を持って来てくれた。
 三人で眺めた。

 「大森はまだまだですね」
 「あいつはお前の護衛だ。撃破する必要はない。俺たちが到着するまで、お前を守れればいいんだ」
 「そうですか」
 「それにな、昨日も言ったけど、大森にも指揮官になってもらいたい。お前の補佐になるだろうが、あいつも指揮をして軍を動かしてもらう」
 「はい」
 「マリーンも来てくれたし、優秀な軍人もいるんだがな。でも量子コンピューターを扱ったり、「花岡」の運用やさらに妖魔との戦闘は、特殊な人間が必要だ。お前や大森が必要なんだよ」
 「分かっています」
 「まあ、終わったら、また医者としてやって行けよ」
 「はい、また部長の下で働きたいです」
 「そうだな」

 俺は曖昧に笑った。
 俺も、そう出来たらどんなに良いかと思う。




 昼食の準備を子どもたちが始め、俺と一江、大森、そして蓮花は、栞の出迎えに向かった。
 「武神」のハンガーの前に、時間通りに「タイガー・ファング」が降りる。
 垂直離着陸が出来るので、滑走路はいらない。
 ハンガーから、「武神建御雷」が外に出ている。
 「タイガー・ファング」の護衛のためだ。

 「あなたー! 陽子! カナー!」

 栞が士王を抱き上げて手を振っていた。
 桜花たちと青嵐と紫嵐も降りて来る。
 俺に挨拶する。

 一江と大森は、栞に駆け寄って抱き合っていた。

 「青嵐、紫嵐、お前たちもここは久しぶりだろう」
 「はい!」
 「明日までゆっくりしろよ。自由時間にする。みんなと会って来い」
 「「ありがとうございます!」」
 「桜花たちにも時間を取るからな」
 「「「はい!」」」

 青嵐と紫嵐は嬉しそうに笑って、機体を閉じて駆けて行った。
 栞たちはまだ固まっている。
 士王を一江と大森が見て喜んでいる。
 桜花たちとは初めて会うが、士王を中心に仲良くしている。

 「おい! 腹が減ってるんだ! 行くぞ!」
 「なによ!」

 栞が文句を言ったが、笑って俺に士王を預けて俺の腕を絡めた。
  
 「士王が落っこちるだろう!」
 「あなたは絶対にしないわ」
 
 一江たちが笑って見ていた。




 俺はティーグフを呼んで、みんなで乗って行った。
 食事の準備はもう出来ていた。
 今日は栞と桜花たちのために、純和風の膳になっていた。

 アラスカでは手に入りにくい、旬の日本の魚の刺身。
 根菜の煮物。
 味噌田楽。
 高野豆腐。
 天ぷら。
 それに蕎麦だ。

 夜はまた違ったものを蓮花は考えているだろう。

 桜花たちは士王の食事を別途作り、蓮花がロボの刺身を用意した。
 ロボは蓮花に甘えた。

 食事をしながら一江と大森が栞と楽しく話していた。
 ほとんど一年ぶりの再会だ。
 アラスカでの話題がほとんど無い栞に、一江と大森が近況や他の人間のことを話している。
 
 「あー! 私、毎日何も無いんだけどー!」
 「あってたまるか!」
 「隕石が降って来るとかさー!」
 
 なんか、最近そういう映画を観たらしい。

 「ああ、それな。二度ほどあったけどな」
 「「「えぇ!」」」

 子どもたちは知っているが、栞や一江たちは知らない。
 俺はここだけの話だと言って、最初はクロピョンが、二度目はロボが防いだ話をした。
 給仕している蓮花や桜花たちも驚く。

 「それでこないだ宇宙人が来たんですかぁ!」
 
 一江が叫ぶ。

 「そう言えば、理由を言って無かったな」
 「そうですよ!」

 「宇宙人!」

 また栞が驚く。

 「最初にうちに来たんだって話したらよ、誰も信じねぇの。響子なんか「ごめんなさいって言いなさい!」って怒っちゃってさ。俺も思わず謝ったもんな」

 子どもたちが笑う。
 亜紀ちゃんが、地下鉄で宇宙人がいたと大騒ぎになったのだと言った。

 「ああ、俺が地下鉄で帰したからなぁ。あいつ、無事に着いたか?」
 「はい。ちゃんとうちに戻って来て、みんな母船に帰りましたよ」
 「そっか」

 子どもたち以外が驚いていた。
 
 「あの、地球征服とか」
 「ねぇよ! こっちは「業」だけで手一杯なんだ。宇宙戦争は他の奴がやれって」

 「タカさんに服従を誓いましたもんね!」
 「ああ、そうだ。ロボがしっかり締めたもんな」
 「あの、ロボって一体……」
 「かわいいネコ」
 「はぁ」

 一江が呆然としていた。
 俺もよく分からん。

 



 食事が終わり、一休みした後で、栞は斬の家に行くことにした。

 「じゃあ、亜紀ちゃん。送ってってくれよ」
 「え? タカさんは?」
 「俺が行くと、あいつがヘンな気を回すんだよ。栞と士王とのんびりと会って欲しいからな」
 「分かりましたー! じゃあ、ハマーで行っていいですか?」
 「ああ、頼んだ」
 「はい!」

 栞はアラスカ名物「トラちゃん饅頭」を土産に持った。
 桜花、椿姫、睡蓮も同行する。
 三人は常に栞と士王の護衛だ。
 まあ、亜紀ちゃんがいるから何の心配も無い。

 皇紀以外の子どもたちと大森はまたブランたちと戦闘訓練。
 一江は少し休むと言って、部屋に入った。
 俺は蓮花と皇紀とで打ち合わせをした。








 二時間後。

 桜花から緊急連絡が入った。

 「石神様! 亜紀様が!」
 「なんだ!」
 「襲撃です! 亜紀様が斃されました! 瀕死の重傷です!」
 「すぐに行く!」

 俺は「虎王」を二本持ち、すぐに飛んだ。
 蓮花は子どもたちを集め、後から増援に行くと言った。

 亜紀ちゃんがやられる敵。
 俺は非常に嫌な予感がしていた。 
しおりを挟む
script?guid=on
感想 61

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。が、その結果こうして幸せになれたのかもしれない。

四季
恋愛
王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...