上 下
1,305 / 2,840

神の血 Ⅲ

しおりを挟む
 タカさんの血液を直に入れるのは、流石に準備が必要だと思った。
 1メートルのラットでも、結構手ごわそうだった。

 蓮花さんに相談した。

 「なるほど、10グラムでそのようなことが」
 「うん! だけど、今度はレイラさんの時と同じで輸血状態でやってみたいの」
 「それは重要なことかもしれませんね」
 「でも、血清10グラムでも結構強そうだったから、あれ以上は危ないかもって」
 「確かに。それでしたら、こちらで実験なさいますか?」
 「え! でも!」
 「防衛システムは完備しておりますし、ブランたちも居ります。万一の場合は「武神」もおりますので」
 「そっか!」
 「石神様の御宅の御庭では、被害が出れば石神様が」
 「そうだよね! じゃあ、今度の土曜日に行くよ!」
 「はい、お待ちしております。お手数をお掛けして申し訳ございません」
 「何言ってるの! 全部タカさんのためだよ!」
 「さようでございました」

 蓮花さんがちょっと泣いてた。
 ハーと相談し、準備を整えた。





 タカさんはアラスカへ行っていない。
 私とハーと、ロボも連れて蓮花さんの研究所へ飛んだ。
 ロボには、マグロ食べ放題だと言っている。
 
 「「こんにちはー!」」
 「これはようこそ。お待ちしておりました」
 「ごめんなさい、まずはマグロで」
 「はい、心得ております」

 蓮花さんは笑って、ロボのマグロを出してくれた。
 ロボが喜んでどんどん食べる。
 私たちにはステーキをどんどん焼いてくれた。
 いつも庭でバーベキューをする場所だ。

 ミユキさんたちや他のブランの人たちも来た。
 最後に甦ったという五人とも会えた。

 食事の後で、すぐに実験に取り掛かった。
 ラットの身体に超高性能爆薬RDXを幾つも取り付ける。
 巨大化しても落ちないように、強力な粘着テープを使っている。
 更に荷電粒子砲で周囲を囲む。
 ブランたちも、それぞれ武装して待機した。

 「いくよー!」
 
 ハーが注射器でタカさんの血液を注入した。

 みるみる大きくなった。
 ハーが餌になるステーキを目の前に置いた。
 無言で食べて行く。
 身体は5メートルを超えた。
 ステーキの質量と釣り合わない。
 全員が驚く。

 「諸君」

 「「「!」」」

 全員がその声に驚いた。
 重々しく、威圧される声だった。

 「これが「虎神」の血か。これほどとは……」
 「あんた! 悪いことするか!」
 「何を今更。善悪は神のものだ。人が語るものではない」
 「何言ってんの!」
 「やんのかぁー!」
 
 「フフフフ。我を滅するのは「虎神」のみ。小さき者共よ、我に構うな」
 「オッパイは成長中だぁ!」
 「タンポンも使ってんだぞー!」
 「笑止」

 デカねずみがちょっと動いた。
 全員が吹っ飛び、荷電粒子砲も倒れた。

 「他愛無し」

 デカねずみが空を睨んだ。
 光の柱が生まれた。

 「「グングニール!」」

 このままでは、周辺一帯が吹っ飛ぶ。

 「まずいよ、ルー!」
 「分かってる、ハー!」

 超ヤバい。
 
 「「ロボ! お願い!」」

 最後の手段を使った。
 ロボが巨大化した。
 5メートルサイズだ。

 「なんだネコごとき……お、お前は!」

 
 ぶす


 デカねずみが死んだ。

 「ネズミがネコに敵うかぁ!」
 「ざまぁ!」

 みんなでお祝いをした。
 ロボにはマグロと鯛をたくさんやった。




 「ルー、これ以上は不味いね」
 「やっぱ基礎研究をしっかりやろう」
 
 蓮花さんの研究所から戻り、また血液学の勉強に戻った。
 だが、やっぱり独学では突破出来ない壁があった。

 「あー、誰かに教わりたいなー」
 「専門家探すか―」

 「「あ!」」

 忘れていた。
 私たちにはピッタリなゴイスーな能力があった。

 「ハー!」 
 「うん!」

 ハーが瞑想に入った。

 「どうかー、血液学に詳しいかたー」

 ハーが一心に祈り、専門家の霊を呼んだ。
 しばらく二人で一緒に祈った。

 「あ! 誰か来たよ!」
 
 ハーが叫んだ。

 「いい波動! 凄く気持ちいいよ!」
 「どんな人?」
 「今聞いてる……え?」
 「どう?」
 「え、まさか……そうなの!」
 「ハー!」
 「うそ! だって今まで幾ら呼んでも……」
 「ハー! 誰が来たの!」
 「お父さん!」
 「!」

 二人で泣いた。
 久し振りにこんなに泣いた。
 しばらく泣き続けるしか出来なかった。

 「うん、分かった! そうだよ、タカさんのためなんだよ!」
 「お父さん!」
 「ルーもいるよ! 亜紀ちゃんも皇紀ちゃんも、みんな元気! みんなタカさんに大事にされて優しくって、もう幸せなんだよぉー!」
 「もっと伝えて! 私たちがどんなに幸せなのかぁー!」
 「うん。そう!」

 ハーが伝えている。

 「そうなんだ。タカさんの血で女の子が突然狂暴になっちゃって。だからラットでね……」
 「タカさんが苦しんでるの。自分の血でそんな酷いことになっちゃったって」

 ハーがこれまでのことを説明し始めた。

 「うん、約束する。お父さんが来たことは誰にも喋らないよ。第七宇宙までの摂理だもんね、知ってる。これまでも全部話したことないから」

 私たちはお父さんから血液についてのことを学んだ。
 お父さんの知識がそのまま流れて来た。
 そして、それ以上のことを知った。

 「え! それじゃタカさんの血って! まさか!」
 「そうか! そうすればいいんだね! うん、ちゃんとやる!」
 「でも、タカさんの身体って……」

 「うん! そうだね! タカさんはタカさんだよね!」

 私たちは抱き合って喜んだ。
 お父さんのお陰で、タカさんの血の呪いは防げる。

 「え、お父さん! もう会えないの?」
 「うん、でも……」
 「光の大天使様……」
 「分かったよ。こっちのことは心配しないで! みんなでしっかりやるから!」
 「亜紀ちゃんと皇紀ちゃんも会いたかっただろうなー」
 「お母さんにも宜しくね!」
 「「いつか、みんなで!」」



 私はハーと抱き合ってまた泣いた。
 お父さんはずっと変わらずに優しかった。
 お母さんと一緒にいることも聞いた。
 それが何よりも嬉しかった。



 「タカさん、お父さんとお母さんがありがとうって」
 「「がんばれ、親友」だってさ」

 私たちは伝えられない言葉を、今口にした。
 そして二人でまた泣いた。 
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~

みつまめ つぼみ
キャラ文芸
 ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。  彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。  そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!  彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。  離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。  香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田
キャラ文芸
 等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。 【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。 【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?

処理中です...