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神の血 Ⅲ

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 タカさんの血液を直に入れるのは、流石に準備が必要だと思った。
 1メートルのラットでも、結構手ごわそうだった。

 蓮花さんに相談した。

 「なるほど、10グラムでそのようなことが」
 「うん! だけど、今度はレイラさんの時と同じで輸血状態でやってみたいの」
 「それは重要なことかもしれませんね」
 「でも、血清10グラムでも結構強そうだったから、あれ以上は危ないかもって」
 「確かに。それでしたら、こちらで実験なさいますか?」
 「え! でも!」
 「防衛システムは完備しておりますし、ブランたちも居ります。万一の場合は「武神」もおりますので」
 「そっか!」
 「石神様の御宅の御庭では、被害が出れば石神様が」
 「そうだよね! じゃあ、今度の土曜日に行くよ!」
 「はい、お待ちしております。お手数をお掛けして申し訳ございません」
 「何言ってるの! 全部タカさんのためだよ!」
 「さようでございました」

 蓮花さんがちょっと泣いてた。
 ハーと相談し、準備を整えた。





 タカさんはアラスカへ行っていない。
 私とハーと、ロボも連れて蓮花さんの研究所へ飛んだ。
 ロボには、マグロ食べ放題だと言っている。
 
 「「こんにちはー!」」
 「これはようこそ。お待ちしておりました」
 「ごめんなさい、まずはマグロで」
 「はい、心得ております」

 蓮花さんは笑って、ロボのマグロを出してくれた。
 ロボが喜んでどんどん食べる。
 私たちにはステーキをどんどん焼いてくれた。
 いつも庭でバーベキューをする場所だ。

 ミユキさんたちや他のブランの人たちも来た。
 最後に甦ったという五人とも会えた。

 食事の後で、すぐに実験に取り掛かった。
 ラットの身体に超高性能爆薬RDXを幾つも取り付ける。
 巨大化しても落ちないように、強力な粘着テープを使っている。
 更に荷電粒子砲で周囲を囲む。
 ブランたちも、それぞれ武装して待機した。

 「いくよー!」
 
 ハーが注射器でタカさんの血液を注入した。

 みるみる大きくなった。
 ハーが餌になるステーキを目の前に置いた。
 無言で食べて行く。
 身体は5メートルを超えた。
 ステーキの質量と釣り合わない。
 全員が驚く。

 「諸君」

 「「「!」」」

 全員がその声に驚いた。
 重々しく、威圧される声だった。

 「これが「虎神」の血か。これほどとは……」
 「あんた! 悪いことするか!」
 「何を今更。善悪は神のものだ。人が語るものではない」
 「何言ってんの!」
 「やんのかぁー!」
 
 「フフフフ。我を滅するのは「虎神」のみ。小さき者共よ、我に構うな」
 「オッパイは成長中だぁ!」
 「タンポンも使ってんだぞー!」
 「笑止」

 デカねずみがちょっと動いた。
 全員が吹っ飛び、荷電粒子砲も倒れた。

 「他愛無し」

 デカねずみが空を睨んだ。
 光の柱が生まれた。

 「「グングニール!」」

 このままでは、周辺一帯が吹っ飛ぶ。

 「まずいよ、ルー!」
 「分かってる、ハー!」

 超ヤバい。
 
 「「ロボ! お願い!」」

 最後の手段を使った。
 ロボが巨大化した。
 5メートルサイズだ。

 「なんだネコごとき……お、お前は!」

 
 ぶす


 デカねずみが死んだ。

 「ネズミがネコに敵うかぁ!」
 「ざまぁ!」

 みんなでお祝いをした。
 ロボにはマグロと鯛をたくさんやった。




 「ルー、これ以上は不味いね」
 「やっぱ基礎研究をしっかりやろう」
 
 蓮花さんの研究所から戻り、また血液学の勉強に戻った。
 だが、やっぱり独学では突破出来ない壁があった。

 「あー、誰かに教わりたいなー」
 「専門家探すか―」

 「「あ!」」

 忘れていた。
 私たちにはピッタリなゴイスーな能力があった。

 「ハー!」 
 「うん!」

 ハーが瞑想に入った。

 「どうかー、血液学に詳しいかたー」

 ハーが一心に祈り、専門家の霊を呼んだ。
 しばらく二人で一緒に祈った。

 「あ! 誰か来たよ!」
 
 ハーが叫んだ。

 「いい波動! 凄く気持ちいいよ!」
 「どんな人?」
 「今聞いてる……え?」
 「どう?」
 「え、まさか……そうなの!」
 「ハー!」
 「うそ! だって今まで幾ら呼んでも……」
 「ハー! 誰が来たの!」
 「お父さん!」
 「!」

 二人で泣いた。
 久し振りにこんなに泣いた。
 しばらく泣き続けるしか出来なかった。

 「うん、分かった! そうだよ、タカさんのためなんだよ!」
 「お父さん!」
 「ルーもいるよ! 亜紀ちゃんも皇紀ちゃんも、みんな元気! みんなタカさんに大事にされて優しくって、もう幸せなんだよぉー!」
 「もっと伝えて! 私たちがどんなに幸せなのかぁー!」
 「うん。そう!」

 ハーが伝えている。

 「そうなんだ。タカさんの血で女の子が突然狂暴になっちゃって。だからラットでね……」
 「タカさんが苦しんでるの。自分の血でそんな酷いことになっちゃったって」

 ハーがこれまでのことを説明し始めた。

 「うん、約束する。お父さんが来たことは誰にも喋らないよ。第七宇宙までの摂理だもんね、知ってる。これまでも全部話したことないから」

 私たちはお父さんから血液についてのことを学んだ。
 お父さんの知識がそのまま流れて来た。
 そして、それ以上のことを知った。

 「え! それじゃタカさんの血って! まさか!」
 「そうか! そうすればいいんだね! うん、ちゃんとやる!」
 「でも、タカさんの身体って……」

 「うん! そうだね! タカさんはタカさんだよね!」

 私たちは抱き合って喜んだ。
 お父さんのお陰で、タカさんの血の呪いは防げる。

 「え、お父さん! もう会えないの?」
 「うん、でも……」
 「光の大天使様……」
 「分かったよ。こっちのことは心配しないで! みんなでしっかりやるから!」
 「亜紀ちゃんと皇紀ちゃんも会いたかっただろうなー」
 「お母さんにも宜しくね!」
 「「いつか、みんなで!」」



 私はハーと抱き合ってまた泣いた。
 お父さんはずっと変わらずに優しかった。
 お母さんと一緒にいることも聞いた。
 それが何よりも嬉しかった。



 「タカさん、お父さんとお母さんがありがとうって」
 「「がんばれ、親友」だってさ」

 私たちは伝えられない言葉を、今口にした。
 そして二人でまた泣いた。 
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