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神の血 Ⅱ

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 蓮花さんの研究所から、タカさんの血液サンプルとデータを預かって来た。
 まずはハーと一緒に、綿密に再検討しながらデータや実験記録を読んだ。

 「通常の検査では、別に異常は見つかってないよね」
 「うん。でも蓮花さんも私たちも血液学の専門じゃないからね。まだ見逃していることがあるかもしれない」
 「そうだね。ちょっと徹底的に勉強するかー!」
 「おー!」

 ハーと一緒に血液学の専門書を買い漁った。
 二人でガンガン勉強する。
 私たちはお互いに覚えたことを共有できる。
 だから、二倍の効率で勉強が進んだ。

 「はぁ、それにしても血液学って難しいね」
 「前にタカさんが言ってた。東大生でも血液学の実習は「お前らじゃどうせ無理だから」って放置されるんだって」
 「でも、私たちは超小学生だからね!」
 「おー、がんばろー!」

 そうやってしばらくは二人で勉強していった。
 血液保存のための冷凍装置は皇紀ちゃんに頼んだ。

 「皇紀ちゃーん!」
 「なんだよ」
 「大好きー」
 「エヘヘヘヘ」
 「ねえ」
 「なに?」
 「お願いがあるんだけどー」
 「何でも言ってよ!」

 すぐに作ってくれた。
 タカさんの血液サンプルを保管した。
 凝結しないシステムになってる。

 勉強しながら、他の必要な実験機材や薬品も揃えて行った。

 「皇紀ちゃーん!」
 「なんだよ」
 「大好きだよー」
 「オホホホホ」
 「ねぇ」
 「なにかな!」
 「遠心分離機作って」
 「まっかせなさーい!」

 簡単に作ってくれた。
 まあ、買ってもいいんだけど、皇紀ちゃんに甘えるのは楽しい。
 薬品なんかは以前に買収した化学会社から提供させた。
 
 五月の終わり頃、一通りの勉強が終わり、装置や薬品も揃って来た。
 ハーと一緒に、蓮花さんがやっていなかった検査や実験をやる。
 ラットも手に入れた。

 「蓮花さんは段階的にやってたけどさ」
 「うん、一挙にやってみる?」
 「その方が結果は早いよね」
 「「おし!」」

 10グラム。

 万一を考えて庭でやった。
 ハーが血清を打った。
 ロボがなんか見に来た。
 
 ラットがプルプル震え始めた。
 私が撮影している。

 「「あ!」」

 身体が倍に膨れ上がった。
 体毛に隠れてはいるが、物凄い筋肉なのが分かる。
 体毛が動く度に盛り上がるからだ。

 「お二人さん」
 「「喋ったー!」」
 「にゃ!」

 「ここはどちらでしょうか」
 「「うち!」」
 「はぁ」

 蓮花さんが50マイクログラムの実験で言ってたように、知性がある。
 日本語を喋っている。

 「あの」
 「なに?」
 「すいやせん。ちょっと小腹が空いているもんで」
 「わかった!」

 ハーが家の中に入り、ロボのカリカリを持って来た。

 「これでいい?」
 「ありがとうございやす」
 「にゃ!」

 ロボがちょっと怒ってる。
 でも今は実験が優先だ。
 ラットはカリカリを美味そうに食べていく。
 どんどん身体が大きくなっていった。
 1メートルにもなった。

 「ああ、ありがとう存じやす。それではこれで」
 「どっか行くの?」
 「はい。もう自分で自分の面倒は見れやすので」
 「誰か襲わない?」
 「は? 自分以外はどうでもいいんですが」

 「それはダメだよ!」
 「人間とか襲っちゃダメだよ!」

 私たちが言うと、ラットが大笑いした。

 「ワハハハハハ! あの、お二人さん。あっしを止められる奴がいるとでも?」
 「なんだと!」
 「こら! ネズミの分際でぇ!」
 「フン! あっしはもうネズミなんぞじゃございやせん。「花岡」の戦士ですぜ?」
 「何言ってやがる!」

 言ったハーに向かって、ラットが前足を振るった。

 「「「虚震花」!」」

 ハーはすぐに察して横に飛び退いた。
 私が慌てて「闇月花」で相殺した。

 「どうしよう、ルー!」
 「なんとかしないと、ハー!」

 
 ブス


 ロボが爪を伸ばしてラットを刺した。
 ラットが死んだ。

 「「……」」

 「何やってるのー」

 亜紀ちゃんがウッドデッキから出て来た。
 ロボがカリカリの袋を咥えて亜紀ちゃんに駆け寄る。
 袋を振って訴えてる。

 「なーに? ああ、お腹空いてるの?」
 
 亜紀ちゃんはなんか勘違いしていた。

 「亜紀ちゃーん」
 「ロボがー」

 ハーと一緒にラットの死骸を見せた。

 「あー、またアッチ系ね。悪いけど佐藤さんちに持ってってくれる?」
 「「はーい」」

 ハーと捨てに行った。




 「なんかさ、無茶苦茶な凶暴さじゃなかったね」
 「結構礼儀正しいっていうか」
 「これってさ、野生の本能だからじゃない?」
 「そっか! そこにタカさんの理性が乗っかるか」
 「だから「タカさん成分」が小さいとただの暴れん坊で!」
 「「タカさん成分」が多くなると理性的になるか!」

 二人で光明が見えて喜んだ。

 「でもさ。タカさんって結構暴力的じゃん」
 「そこはどうなるんだろうなー。優しい人なんだけどね」
 「「うーん」」

 「ねえ、もっと多めに打ってみる?」
 「でも、それヤバいかも。さっきの奴、「花岡」バリバリだったよ?」
 「タカさんレベルで使われると、私たちも危ないよね」
 「「うーん」」

 ちょっと怖かった。

 「そう言えばさ、レイラさんの時には、血清じゃなかったんだよね?」
 「そっか! 輸血だもんね!」
 「じゃあ、そのまま入れたらどうなるかな」
 「やってみっかー!」




 とんでもないことが起きた。
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