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寮歌祭
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少し遡る8月の下旬の日曜日。
懐かしい方から電話があった。
「伊藤さん!」
「石神くん! 久し振りだね」
伊藤さんは「日本寮歌祭」で知り合った方だ。
若い頃から旧制高校の人たちが集まる「寮歌祭」によく行っていた。
東京では、毎年体育の日にやっている。
「最近、どうして来てくれないの!」
「いやぁ、なかなか忙しくて」
「今年も欠席らしいけど、どうしても来られないのかな」
「友人の子どもを引き取って、それからどうも時間が作れなくなってしまって、すいません」
「え! そうなの!」
「はい。大学時代の親友だったんです。突然の事故で夫婦共に亡くなってしまって。それで俺が引き取ったんです」
「そうか! 大変だったね」
「まあ、今じゃうちで賑やかになってますよ」
「だったらさ、そのお子さんたちも一緒に来てよ!」
「え?」
「小さな子どもたちにも、寮歌を伝えて遺して行きたいんだ」
「はぁ」
伊藤さんは東京の寮歌祭の実行委員をずっとやっていらっしゃる。
第四高等学校(現・金沢大学)の出身の方で、非常に親しくなった。
ある日本映画の中で歌われる第四高等学校の『琵琶湖遭難追悼歌』に俺が感動した話をしたことが切っ掛けだった。
寮歌祭では各学校がテーブルごとに固まっているが、よく他の学校にもお邪魔して酒を酌み交わして仲良くなっていった。
その中で、伊藤さんとは話も合い、特に親しくさせていただいていた。
もう、全身が「親切」で出来ているような素晴らしい人だった。
俺が『琵琶湖遭難追悼歌』が素晴らしいと言うと、即座にテープを送って下さった。
もちろん、第一高等学校(現・東京大学)に俺は席を頂き、そこでも可愛がってもらった。
旧制高校は戦後に廃止され、だから寮歌祭に来る人間はほとんどが高齢者だ。
俺たち戦後の世代は、人数は少ないが、寮歌というものに親しみ、旧制高校ではないのだがお邪魔させて頂いく人間もいた。
俺は子どもたちを集め、寮歌祭の話をした。
「お前たちがうちに来るまでは、時々顔を出していたんだ」
俺がそう言うと、子どもたちが全員で「是非行って下さい」と言ってくれた。
「それでな。今回はお前たちも一緒に来て欲しいということなんだ」
「「「「「え!」」」」」
「まあ、各校で一曲ずつ歌うというものでお前たちには退屈かもしれないけどな」
でも、子どもたちは行きたいと言った。
俺は伊藤さんに電話し、俺と子どもたち全員で6名の参加を伝えた。
そして、更にお願いをした。
「うちの費用で、出店を一つ出させて欲しいんですが」
「そんな必要はないよ。石神くんも知っての通り、いつも十二分な食事が出るんだから。ああ、今年も寿司の屋台を出すよ?」
「それがですね、うちの子どもたちは尋常じゃなく食べるんですよ」
伊藤さんはそれならいつもよりも多くしようと言って下さったが、俺がステーキを10キロも一人で喰うのだと言うと驚いて、大笑いされた。
「それは是非見てみたいな! 分かった、じゃあ石神君にそこはお任せするよ」
「ありがとうございます!」
良かった。
あそこで会場の食事が全滅すると、俺が困る。
俺はケータリングのサービスを頼み、ステーキを100キロ用意した。
もちろん、うちの子どもたち以外にも食べて欲しいからだ。
御高齢の方ばかりだが、みなさん健啖で大いに飲んで食べる。
喜んでもらえると嬉しい。
俺は子どもたちに第一高等学校の寮歌を覚えさせ、他にも俺が好きな寮歌を教えた。
「寮歌というのは、実は一つじゃないんだ。各学校で部活ごとにあるし、その中で年代ごとにあるものも多い。それに譜面に落したものは少ないからな。ほとんどが先輩に教わって伝わって来た」
「へぇー!」
「だから、途中でメロディが変わっちゃったものも多い」
「「「「「アハハハハハハ!」」」」」
「もうメロディが分からなくなってしまったものも膨大にある」
「何か、哀しいですね」
「そうだな。それに旧制高校は戦後に廃止されたから、寮歌というもの自体が段々歌われなくなってしまった。だから俺は寮歌を愛し、寮歌祭にもなるべく参加して来たんだ」
子どもたちにも、寮歌というものが分かったようだ。
「旧制高校の出身者というのは、超エリートなんだ。戦後の日本を支えて来た人間も多い。まあ、そういう本物の知性の方々と喋る機会も少ないからな。お前らは喰ってるばかりじゃなく、なるべく話し掛けてそれを味わえ!」
「「「「「はい!」」」」」
そして寮歌祭当日。
酒も出て付き合わないのも申し訳ないので、俺たちはタクシーで新宿のNSビルまで行った。
そこの地下の大宴会場で、毎年寮歌祭が開催される。
開演の30分前にはほとんどの人が集まっている。
そういう人たちであり、会なのだ。
俺たちも30分前に到着し、受付をする。
会費は事前に支払っている。
男性会員は女性よりも高い。
結構な会費だが、会場の食事の量を観れば納得だ。
全員が80歳を超えているはずだが、みんな凄まじく飲み食いをする。
こういう言い方は控えたいのだが、世間の弱った年寄りなど一人もいない。
みんな高齢にも拘わらず、矍鑠としている。
今の若者の方が余程年寄り臭い。
生物学で、興味深い論文を読んだ。
生命は、自分が諦めた時に老化が始まるというものだ。
人間で言えば、子孫を残すことを諦めたり、自分が年を取ったと思った瞬間から、老化が始まる。
もちろん、それはある方面での話だ。
でも、その論文には一つの真実があると俺は思った。
実際に目の前にいる高齢者たちは、誰も年寄りではない。
元気に再会を喜び、人生を謳歌している。
引退してのんびりと、という人はほとんどいない。
今でも何かを現役でやっている方々だ。
もちろん勤め先を退職された方も多い。
それでも、自分で何か仕事をしたり研究をしたりしている。
素晴らしい生き方だ。
受付でパンフレットや席次表を貰う。
席が決まっているのだ。
俺たちは同じテーブルに並んでいた。
「石神くん!」
俺たちが会場に降りると、伊藤さんが声を掛けてくれた。
「こんにちは! お誘いに預かり、子どもたちを連れて参りました!」
「その子たちが! みんな綺麗だねぇ」
「ありがとうございます」
子どもたちも、伊藤さんに挨拶した。
「会長から叱られてね。子どもさんからも会費を取ったのかって」
「アハハハハハ! ありがたいですが、会費じゃ賄えないくらいに喰う連中ですから」
「そうか、まあ楽しんで大いに飲み食いしてってくれ」
「はい! お言葉に甘えます!」
俺たちは席を探して座った。
すぐに第一高等学校の知り合いから声を掛けられ、子どもたちにも挨拶させた。
胸の下まで真っ白の髭を伸ばした、羽織袴の老人がいた。
俺を手招きしている。
「おう、今年は来たのか」
「小島将軍、ご無沙汰しております!」
「おい、子どもたちも紹介しろ」
「はい」
俺は亜紀ちゃんたちを呼んだ。
「こちらは小島将軍だ。絶対に失礼なことはするな」
「「「「「はい!」」」」」
俺は一人ずつ紹介した。
子どもたちは、いつもの俺の態度と違うので少し緊張していた。
「お前もその子たちも、随分と有名だな」
「そうですか」
「花岡の間抜けが道間のキチガイに騙されて、とんでもないものを生み出した」
「はい」
「お前が頼りだ。何とかしろ」
「はい」
「お前、アメリカから結構な土地を分捕ったようだがな、日本を一番に守れ」
「分かっております」
「御堂のことは俺も応援する」
「宜しくお願いします」
「「「「「!」」」」」
子どもたちが驚愕していた。
「まあ、今日は祭りだ。死んでいった連中も楽しみにしているだろう。お前たちも楽しんで行け」
「はい」
全員で深々と礼をし、俺は子どもたちを連れて席に戻った。
みんな、俺に説明を求めている。
「あの人は小島将軍と呼ばれていてな。日本の黒幕なんだよ」
「「「「「えぇ!」」」」」
「日本橋のある財閥のビルに敗戦後からずっと住んでいてな。日本を裏から操っている。あの人に逆らえば、日本で生きて行くことは出来ない」
「それほどの人なんですか!」
「俺も会ったのは久しぶりだよ。滅多に人前に姿を出さないしな。あの人がここに来るのも久しぶりだろうよ。俺が参加すると聞いたからかな」
「タカさんは、いつ知り合ったんですか?」
「まあ、また今度な。今日は祭りだとあの人が言った。だから言われた通り、大いに飲み食いをしろ」
「はぁ」
亜紀ちゃんが釈然としない顔をしていた。
まあ、始まれば飲み食いに専念するのだろうが。
俺はまた何人かに挨拶し、子どもたちも紹介していった。
子どもたちもずっと話し掛けられていた。
ものおじするような連中じゃない。
俺は好きにやらせた。
いよいよ開演となり、司会者と実行委員が壇上に並んだ。
今年は90歳の方が檄文を読むらしい。
俺は本物の檄文をちゃんと聴けと子どもたちに言った。
「ゲェェェェェッキィ!」
老人の口から何かが飛び出した。
前のテーブルに座っていた男性の顔に貼りつく。
入れ歯だった。
会場が爆笑し、顔にぶつけられた男性が入れ歯を返しに行った。
子どもたちも大笑いしていた。
しかし、その激しくも清澄な檄文に、いつしかみんなが打たれていた。
生命を迸らせ、燃焼させる「文学」というものを知った。
会場が大いに沸いた。
寮歌祭が始まった。
懐かしい方から電話があった。
「伊藤さん!」
「石神くん! 久し振りだね」
伊藤さんは「日本寮歌祭」で知り合った方だ。
若い頃から旧制高校の人たちが集まる「寮歌祭」によく行っていた。
東京では、毎年体育の日にやっている。
「最近、どうして来てくれないの!」
「いやぁ、なかなか忙しくて」
「今年も欠席らしいけど、どうしても来られないのかな」
「友人の子どもを引き取って、それからどうも時間が作れなくなってしまって、すいません」
「え! そうなの!」
「はい。大学時代の親友だったんです。突然の事故で夫婦共に亡くなってしまって。それで俺が引き取ったんです」
「そうか! 大変だったね」
「まあ、今じゃうちで賑やかになってますよ」
「だったらさ、そのお子さんたちも一緒に来てよ!」
「え?」
「小さな子どもたちにも、寮歌を伝えて遺して行きたいんだ」
「はぁ」
伊藤さんは東京の寮歌祭の実行委員をずっとやっていらっしゃる。
第四高等学校(現・金沢大学)の出身の方で、非常に親しくなった。
ある日本映画の中で歌われる第四高等学校の『琵琶湖遭難追悼歌』に俺が感動した話をしたことが切っ掛けだった。
寮歌祭では各学校がテーブルごとに固まっているが、よく他の学校にもお邪魔して酒を酌み交わして仲良くなっていった。
その中で、伊藤さんとは話も合い、特に親しくさせていただいていた。
もう、全身が「親切」で出来ているような素晴らしい人だった。
俺が『琵琶湖遭難追悼歌』が素晴らしいと言うと、即座にテープを送って下さった。
もちろん、第一高等学校(現・東京大学)に俺は席を頂き、そこでも可愛がってもらった。
旧制高校は戦後に廃止され、だから寮歌祭に来る人間はほとんどが高齢者だ。
俺たち戦後の世代は、人数は少ないが、寮歌というものに親しみ、旧制高校ではないのだがお邪魔させて頂いく人間もいた。
俺は子どもたちを集め、寮歌祭の話をした。
「お前たちがうちに来るまでは、時々顔を出していたんだ」
俺がそう言うと、子どもたちが全員で「是非行って下さい」と言ってくれた。
「それでな。今回はお前たちも一緒に来て欲しいということなんだ」
「「「「「え!」」」」」
「まあ、各校で一曲ずつ歌うというものでお前たちには退屈かもしれないけどな」
でも、子どもたちは行きたいと言った。
俺は伊藤さんに電話し、俺と子どもたち全員で6名の参加を伝えた。
そして、更にお願いをした。
「うちの費用で、出店を一つ出させて欲しいんですが」
「そんな必要はないよ。石神くんも知っての通り、いつも十二分な食事が出るんだから。ああ、今年も寿司の屋台を出すよ?」
「それがですね、うちの子どもたちは尋常じゃなく食べるんですよ」
伊藤さんはそれならいつもよりも多くしようと言って下さったが、俺がステーキを10キロも一人で喰うのだと言うと驚いて、大笑いされた。
「それは是非見てみたいな! 分かった、じゃあ石神君にそこはお任せするよ」
「ありがとうございます!」
良かった。
あそこで会場の食事が全滅すると、俺が困る。
俺はケータリングのサービスを頼み、ステーキを100キロ用意した。
もちろん、うちの子どもたち以外にも食べて欲しいからだ。
御高齢の方ばかりだが、みなさん健啖で大いに飲んで食べる。
喜んでもらえると嬉しい。
俺は子どもたちに第一高等学校の寮歌を覚えさせ、他にも俺が好きな寮歌を教えた。
「寮歌というのは、実は一つじゃないんだ。各学校で部活ごとにあるし、その中で年代ごとにあるものも多い。それに譜面に落したものは少ないからな。ほとんどが先輩に教わって伝わって来た」
「へぇー!」
「だから、途中でメロディが変わっちゃったものも多い」
「「「「「アハハハハハハ!」」」」」
「もうメロディが分からなくなってしまったものも膨大にある」
「何か、哀しいですね」
「そうだな。それに旧制高校は戦後に廃止されたから、寮歌というもの自体が段々歌われなくなってしまった。だから俺は寮歌を愛し、寮歌祭にもなるべく参加して来たんだ」
子どもたちにも、寮歌というものが分かったようだ。
「旧制高校の出身者というのは、超エリートなんだ。戦後の日本を支えて来た人間も多い。まあ、そういう本物の知性の方々と喋る機会も少ないからな。お前らは喰ってるばかりじゃなく、なるべく話し掛けてそれを味わえ!」
「「「「「はい!」」」」」
そして寮歌祭当日。
酒も出て付き合わないのも申し訳ないので、俺たちはタクシーで新宿のNSビルまで行った。
そこの地下の大宴会場で、毎年寮歌祭が開催される。
開演の30分前にはほとんどの人が集まっている。
そういう人たちであり、会なのだ。
俺たちも30分前に到着し、受付をする。
会費は事前に支払っている。
男性会員は女性よりも高い。
結構な会費だが、会場の食事の量を観れば納得だ。
全員が80歳を超えているはずだが、みんな凄まじく飲み食いをする。
こういう言い方は控えたいのだが、世間の弱った年寄りなど一人もいない。
みんな高齢にも拘わらず、矍鑠としている。
今の若者の方が余程年寄り臭い。
生物学で、興味深い論文を読んだ。
生命は、自分が諦めた時に老化が始まるというものだ。
人間で言えば、子孫を残すことを諦めたり、自分が年を取ったと思った瞬間から、老化が始まる。
もちろん、それはある方面での話だ。
でも、その論文には一つの真実があると俺は思った。
実際に目の前にいる高齢者たちは、誰も年寄りではない。
元気に再会を喜び、人生を謳歌している。
引退してのんびりと、という人はほとんどいない。
今でも何かを現役でやっている方々だ。
もちろん勤め先を退職された方も多い。
それでも、自分で何か仕事をしたり研究をしたりしている。
素晴らしい生き方だ。
受付でパンフレットや席次表を貰う。
席が決まっているのだ。
俺たちは同じテーブルに並んでいた。
「石神くん!」
俺たちが会場に降りると、伊藤さんが声を掛けてくれた。
「こんにちは! お誘いに預かり、子どもたちを連れて参りました!」
「その子たちが! みんな綺麗だねぇ」
「ありがとうございます」
子どもたちも、伊藤さんに挨拶した。
「会長から叱られてね。子どもさんからも会費を取ったのかって」
「アハハハハハ! ありがたいですが、会費じゃ賄えないくらいに喰う連中ですから」
「そうか、まあ楽しんで大いに飲み食いしてってくれ」
「はい! お言葉に甘えます!」
俺たちは席を探して座った。
すぐに第一高等学校の知り合いから声を掛けられ、子どもたちにも挨拶させた。
胸の下まで真っ白の髭を伸ばした、羽織袴の老人がいた。
俺を手招きしている。
「おう、今年は来たのか」
「小島将軍、ご無沙汰しております!」
「おい、子どもたちも紹介しろ」
「はい」
俺は亜紀ちゃんたちを呼んだ。
「こちらは小島将軍だ。絶対に失礼なことはするな」
「「「「「はい!」」」」」
俺は一人ずつ紹介した。
子どもたちは、いつもの俺の態度と違うので少し緊張していた。
「お前もその子たちも、随分と有名だな」
「そうですか」
「花岡の間抜けが道間のキチガイに騙されて、とんでもないものを生み出した」
「はい」
「お前が頼りだ。何とかしろ」
「はい」
「お前、アメリカから結構な土地を分捕ったようだがな、日本を一番に守れ」
「分かっております」
「御堂のことは俺も応援する」
「宜しくお願いします」
「「「「「!」」」」」
子どもたちが驚愕していた。
「まあ、今日は祭りだ。死んでいった連中も楽しみにしているだろう。お前たちも楽しんで行け」
「はい」
全員で深々と礼をし、俺は子どもたちを連れて席に戻った。
みんな、俺に説明を求めている。
「あの人は小島将軍と呼ばれていてな。日本の黒幕なんだよ」
「「「「「えぇ!」」」」」
「日本橋のある財閥のビルに敗戦後からずっと住んでいてな。日本を裏から操っている。あの人に逆らえば、日本で生きて行くことは出来ない」
「それほどの人なんですか!」
「俺も会ったのは久しぶりだよ。滅多に人前に姿を出さないしな。あの人がここに来るのも久しぶりだろうよ。俺が参加すると聞いたからかな」
「タカさんは、いつ知り合ったんですか?」
「まあ、また今度な。今日は祭りだとあの人が言った。だから言われた通り、大いに飲み食いをしろ」
「はぁ」
亜紀ちゃんが釈然としない顔をしていた。
まあ、始まれば飲み食いに専念するのだろうが。
俺はまた何人かに挨拶し、子どもたちも紹介していった。
子どもたちもずっと話し掛けられていた。
ものおじするような連中じゃない。
俺は好きにやらせた。
いよいよ開演となり、司会者と実行委員が壇上に並んだ。
今年は90歳の方が檄文を読むらしい。
俺は本物の檄文をちゃんと聴けと子どもたちに言った。
「ゲェェェェェッキィ!」
老人の口から何かが飛び出した。
前のテーブルに座っていた男性の顔に貼りつく。
入れ歯だった。
会場が爆笑し、顔にぶつけられた男性が入れ歯を返しに行った。
子どもたちも大笑いしていた。
しかし、その激しくも清澄な檄文に、いつしかみんなが打たれていた。
生命を迸らせ、燃焼させる「文学」というものを知った。
会場が大いに沸いた。
寮歌祭が始まった。
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