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麗星、大サービス Ⅴ

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 麗星と家に戻ると、4時半頃だった。

 「お帰りなさい! 今日はどちらまで?」
 「ああ、横浜に行った。陳さんの店に寄って、乾さんの所にも顔を出したよ」
 「いいですね!」

 麗星が着替えてリヴィングに来た。

 「あの、石神様」
 「はい?」
 「三時のお茶を逃してしまいました」
 「ああ。でも陳さんの……」
 「もう残ってはおりませんか」
 「……」

 亜紀ちゃんが紅茶を淹れ、ドーカンのチーズケーキを出した。
 麗星はニコニコして食べた。
 俺も笑って、コーヒーを一緒に飲む。
 チーズケーキはいらないと言った。
 亜紀ちゃんがキッチンでムシャムシャと食べる。

 


 夕飯はすき焼きだ。
 しかも、争いの殆どないすき焼きだ。
 一人ずつ鍋を用意した。
 食材を最初に分け、肉と野菜を全て食べ終えてから、俺に次の具材の許可を求めに来る。
 何故、もっと早くこの方法に思い至らなかったのかと反省する。
 まあ、家族分の鍋を用意する発想は、他の人間にも無いだろう。
 御堂にも素晴らしい方法を発見したと連絡したが、何故か却下されてしまった。
 おかしな奴だ。

 次の鍋の具材を求めに来る時、俺に一芸を披露することになっている。

 「よし、皇紀!」
 「あべし!」

 『北斗の拳』のモノマネをやる。
 下らないが、とにかく何か一芸をやればいい。

 「よし、亜紀ちゃん!」
 「夢の巨乳アターック!」

 胸を俺の肩にぶつけてくる。

 「がんばれよ!」
 「はい!」

 俺と麗星は一緒の鍋をつつく。
 麗星が幸せそうな顔でどんどん食べて行く。

 「よし、柳!」
 「オーホホホホホ!」

 麗星の真似だ。
 麗星は気付かずに鍋を漁っている。

 「よし、ルー!」
 「タカさんのことなんて、全然好きじゃないんだからね!」

 「ワハハハハハ!」

 カワイイ。

 「よし、ハー!」
 「ウンコビーム!」
 
 《プゥー》

 「テメェ! 禁断の技を!」
 「ほんとに臭いよー」
 「ギャハハハハハ!」

 臭い。
 麗星が鼻を摘まんで肉を食べていた。





 食後に、麗星が「妖探盤」を出した。
 組み上げる必要があるということで、俺は皇紀と双子に手伝わせた。
 亜紀ちゃんと柳は片づけだ。

 30分程で用意が出来、全員を集めた。

 京都で見せてもらったものよりも、大分大きい。

 「今回は探知能力そのものよりも、その機構がよく分かるように組み上げました。オリハルコンがふんだんにございましたので、このようなものが出来上がりました」

 麗星が自分の護衛の《暗黒小鬼》を出した。
 身長50センチほどの黒い痩せた鬼だ。
 テーブルに乗せた「妖探盤」が《暗黒小鬼》に先端を向け、移動させると先端も回転した。

 「どうだ?」
 「うん! 分かるよ!」
 「もうちょっと観測が必要だけど、これなら分かると思う!」
 「そうか!」

 双子の確信に、俺たちは喜んだ。

 「麗星さん! ありがとう!」
 「いいえ。あれだけのオリハルコンを預からせて頂きましたから。これから、他にも有用な道具を提供出来ると思います」
 「そうですか!」

 麗星も一安心したか、本当に嬉しそうに笑っていた。





 麗星が夕べの「虎温泉」を気に入ったと言うので、また用意した。
 皇紀以外の全員で入る。
 麗星は俺と二人で入りたかったか、ちょっと残念そうな顔をしていた。
 しかし。

 「タカさん、あれやっていい?」
 「おう、お祝いのあれか!」
 「うん!」

 俺たちは洗い場に上がって、「ヒモダンス」を踊った。

 《ヒモ! ヒモ! タンポンポポポン! ヒモ! ヒモ! タンポンポポポン!》

 麗星が湯船から驚いて見ている。
 そのうちに大笑いしながら出て来て、一緒に踊った。

 《ヒモ! ヒモ! タンポンポポポン! ヒモ! ヒモ! タンポンポポポン!》

 風呂から上がり、全員で「幻想空間」で飲み、楽しく話した。
 俺は麗星と横浜に出掛け「海の王」を仲間にしたことを話した。

 「「「「「えぇーーーー!!!」」」」」

 子どもたちは驚いてはいたが、ちょっと「今更感」もある。
 うちは大抵のことでは、もうそれほど驚かなくなった。
 麗星は不満そうだった。

 「あの、みなさま、もうちょっと」
 「うん、驚きましたね!」
 「……」

 「タカさん、どうして半魚人が「アマゾン」なの?」
 「ルー、お前『大アマゾンの半魚人』って知らないのか!」
 「知らない」
 「カァー!」

 まあ、俺もそれほど好きな作品ではないが。

 「もう一つな、『仮面ライダー・アマゾン』ってあったんだよ」
 「へぇー」
 
 俺は立ち上がって、両手を上に曲げて叫んだ。

 「あーまーぞーん!」

 みんなが呆然と見ている。
 
 「何それ?」
 「いや、俺もよく知らなくてな」

 大恥を掻いた。

 「まあ、そんな感じだ」
 「ふーん」
 「あとで調べろ」
 「分かった」

 俺は「海の王」が「クロピョン」にそっくりだったと話した。

 「まあ、身体は透明っていうか、白っぽいんだけどな」
 「じゃあ、「シロピョン」でも良かったんじゃない?」

 ハーが言った。

 「あぁー!」

 断然いい。

 「今から変えよう!」
 
 麗星が立ち上がって、怖い顔で俺を睨んだ。

 「石神様! 絶対に辞めて下さい!」
 「なんで?」
 「眷属ならばともかく! 王に対して名付けは絶対です!」
 「そうなの?」
 「そうです! 今度こそ世界は破滅しますよ!」
 「そっかー」

 俺は冷酒を注いだグラスに向かって言った。

 「おい、「ボウズ」」
 「石神様!」

 グラスの酒が盛り上がり、小さな半球が浮かんだ。

 「おお、呼べば来るんだ」

 細い触手が伸びた。
 左右に揺れている。

 「あのさ、お前の名前なんだけどさ。やっぱ「シロピョン」の方が良くない?」
 「あぁー!」

 麗星が叫んだ。
 グラスから伸びた触手が「〇」を作った。

 「おし! じゃあそういうことでな。ああ、あいつは「アマゾン」のままな!」

 また触手が「〇」を描く。

 「じゃあ、帰っていいぞ! これからも宜しくな!」

 触手と半球が消えた。
 全員が俺を見ている。
 
 「良かったー!」
 「い、い、石神様!」

 麗星が身体を振るわせている。

 「わたくし、絶対に辞めて下さいと申し上げましたよね!」
 「ああ、大丈夫だったですね」
 「あなたという方はぁ!」
 「アハハハハハ!」

 俺は解散を宣言し、麗星を連れて寝室へ入った。






 俺を尚も説教しようとしていたが、俺が本気で攻めて、麗星は「ごめんなさい」と繰り返して気を喪った。
 まあ、俺も別に誤魔化すつもりではないのだが。
 麗星が魅力的過ぎるのが悪い。
 それに、今回は麗星のお陰で大きな進展が幾つもあった。
 「海の王」との邂逅も、「霊素」の観測も、麗星のお陰だ。

 ロボが後から入って来て、一緒に寝た。
 「夜間飛行」の香りが心地よかった。
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