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半魚人現る(先にもっとスゴイの現る)
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「あれ、早乙女さんのところで食べて来ると思ってましたのに」
俺と麗星が帰って来たので、亜紀ちゃんが驚いた。
「なんだよ」
「だって、お二人のお昼を用意してなくて」
「なんでもいいよ」
「はーい」
子どもたちはステーキパスタ(ほとんど肉)を食べていた。
亜紀ちゃんが手早く今朝の残りご飯でステーキ丼(肉とことん柔らかめ)を作る。
麗星はニコニコして優雅に頬張っている。
まあ、こういう女だ。
落ち込むというギミックがねぇ。
「麗星さん」
「はい」
食べながら聞いた。
「もう用事は済んだし、お忙しいでしょうからお帰りになりますか?」
「いいえ!」
「でも」
「あの、わたくし、「妖探盤」の改良品をお持ちしましたの」
「なんですって!」
最初に言え。
「今晩、皆様にお見せしようかと」
「夕べ見せてくれれば良かったのに」
「夕べはいろいろと忙しく」
俺とヤッてただけだ。
「まあ、分かりましたよ。じゃあ、午後はどうしましょうかねぇ」
早乙女の家をいろいろと案内しようかと思っていたが、麗星にはきつい場所のようだった。
「あの、ドライブなどは如何でしょうか」
「ドライブ?」
「はい。普段はほとんどしたことがないのです」
「なるほど。いいですよ。じゃあ、どこに行きましょうかね」
「海が! 海が見とうございます!」
「分かりました」
俺は笑って承諾した。
まあ、普段の窮屈な生活から少しでも解放してやりたい。
俺は麗星をガレージに連れ、車を選ばせた。
「アヴェンタドール!」
「アハハハハハ!」
俺はキーを持って来て、麗星を乗せた。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい! GO!」
俺たちは笑いながら出発した。
「あの、石神様。早乙女様への壺の件は、申し訳ございませんでした」
俺は笑った。
「まあ、いいですよ。金の無い家でもないし、きっとあいつは麗星さんのために金を渡したかったんでしょう。日頃の礼のつもりなんですよ」
「さようでございましたか」
麗星は前を見ていた。
「早乙女様に相談されたのです。何かいい美術品はないものかと」
「そうだったんですか」
まあ、広い家なので何か欲しかったのかもしれない。
「わたくしの家は旧いものですから、何かアドバイスをと。なので、丁度売れ残っていた」
「はい?」
「い、いいえ! 丁度手元にあった、壺などはいかがかと」
「はぁー」
ため息を吐く。
他にも売り付けていたようだ。
「あ、でも! 本当に効果はあるのですよ?」
「どんなものです?」
「お財布をよく拾うようになります。大体10年以内に元は取れるはずなのです」
「あのですね。あいつは警察官だから、拾ったら届け出るに決まってますよ」
「エェー! 早乙女様は何かお脳の御病気ですか!」
「何言ってんですか! 拾い物はちゃんと届けましょうよ!」
「御無体な!」
一般常識がちょっと違うようだ。
「まあ、いいですけどね」
麗星はニコニコして、先週拾った財布の話を始めた。
「わたくしが所用で先斗町へ行ったのです」
「はぁ」
「二軒目に行こうかと外へ出たのでございます」
「二軒目?」
「やはり、店の雰囲気を変えて飲みたくて」
「ああ」
所要って、ただ飲みに行っただけか。
「そうしましたら、通りでわたくしにお声を掛けて来た男性が」
「はい」
「わたくしの肩を掴んで「いいねぇちゃん」とおっしゃいました」
「なるほど」
「《暗黒小鬼》でお辞め頂いたのですが、その男性は慌てて走り去られて」
「はぁ」
「その後で、お財布を拾いました」
「……」
「200万円もはいっておりましたのよ?」
「……」
美人局型かっぱぎか。
まあ、どうでもいい。
1時間も走ると、横浜の赤レンガ倉庫に着いた。
暑いので、1号館に入り、二人でショップを見て回った。
麗星はベネティアンガラスのアクセサリーを面白がり、幾つか俺が購入してやった。
またスペイン製のモザイク細工のドールがあり、麗星にフクロウを、俺はネコを買った。
スカーフやストールなども好きなだけ選ばせた。
いずれも数千円で、非常に安い。
二人で楽しく選んだ。
結構な量になったので、俺はネコだけ持ち返り、あとは道間家へ宅急便を頼んだ。
2号館に行き、カフェでお茶にする。
テラス席に座り、俺はエスプレッソを、麗星はホットチョコレートを頼んだ。
「いいお店ですね」
麗星が喜んだ。
「いつも、大好きな旦那様とこういう暮らしが出来たら」
「アハハハハハ!」
笑うしかねぇ。
「やるべきことをやるから、こういう時間を味わえるんですよ」
「そうでございますね」
「贅沢なだけの人生なんて、俺は嫌ですね」
「はい」
俺たちは、陽光に輝く海を見ていた。
「後で海を見て帰りましょう」
「はい!」
ゆっくりと飲み物を飲んだ。
歩いて大桟橋ふ頭へ行った。
少し暑いが、海風が気持ちいい。
「そう言えば、「海の王」というのもいるんですか?」
「はい。でも、あまりの巨体で、普段は深海におりますのでまだ姿を見た者はおりません」
「なるほど」
「陸に近づけば、大変なことになりましょう」
「怖いですね」
俺たちは笑った。
「おい、「海の王」! あんまり陸には近づくなよ!」
二人で笑い、帰ろうとした。
突然、雨が降って来た。
「あれ?」
見上げると、空は快晴だ。
続いて海を見ると、巨大な津波が向かってくるのが見えた。
「麗星さん!」
俺は麗星を抱きかかえて空中に飛んだ。
「石神様!」
「攻撃かもしれません! ジェヴォーダンではないようですが」
ジェヴォーダン特有の、海上を疾走する音は無い。
近づいて来た津波は、恐ろしいほどの高さであることが分かった。
高さ約200メートル、幅約2キロ。
俺は「虚震花」で津波を吹っ飛ばした。
「石神様! あれを!」
麗星が、遙か沖合を指差している。
半球形の何かが見えた。
細長い何かが海上に持ち上がっている。
「虎王!」
俺が叫ぶと、数秒後に「虎王」が飛んで来た。
鞘を払い、麗星に持たせて半球形に近づく。
結構な距離を移動した。
陸から120キロ程度か。
半球形が恐ろしく巨大な物であることが分かった。
海面に出ている部分だけでも、数百キロある。
触手は雲の上に突き抜けていた。
「ぷぅ! ぷぅ! ぷぅ! ぷぅ! ぷぅ!」
麗星が、アノ状態になった。
もう、気絶しそうだ。
「てめぇかぁ! 俺と俺の女をびしょ濡れにしやがったのはぁ!」
俺は「虎王」を振り上げた。
「お待ち下さい! 「虎王」の主様!」
海面にヘンな奴が出て来た。
「「半魚人!」」
俺と麗星が帰って来たので、亜紀ちゃんが驚いた。
「なんだよ」
「だって、お二人のお昼を用意してなくて」
「なんでもいいよ」
「はーい」
子どもたちはステーキパスタ(ほとんど肉)を食べていた。
亜紀ちゃんが手早く今朝の残りご飯でステーキ丼(肉とことん柔らかめ)を作る。
麗星はニコニコして優雅に頬張っている。
まあ、こういう女だ。
落ち込むというギミックがねぇ。
「麗星さん」
「はい」
食べながら聞いた。
「もう用事は済んだし、お忙しいでしょうからお帰りになりますか?」
「いいえ!」
「でも」
「あの、わたくし、「妖探盤」の改良品をお持ちしましたの」
「なんですって!」
最初に言え。
「今晩、皆様にお見せしようかと」
「夕べ見せてくれれば良かったのに」
「夕べはいろいろと忙しく」
俺とヤッてただけだ。
「まあ、分かりましたよ。じゃあ、午後はどうしましょうかねぇ」
早乙女の家をいろいろと案内しようかと思っていたが、麗星にはきつい場所のようだった。
「あの、ドライブなどは如何でしょうか」
「ドライブ?」
「はい。普段はほとんどしたことがないのです」
「なるほど。いいですよ。じゃあ、どこに行きましょうかね」
「海が! 海が見とうございます!」
「分かりました」
俺は笑って承諾した。
まあ、普段の窮屈な生活から少しでも解放してやりたい。
俺は麗星をガレージに連れ、車を選ばせた。
「アヴェンタドール!」
「アハハハハハ!」
俺はキーを持って来て、麗星を乗せた。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい! GO!」
俺たちは笑いながら出発した。
「あの、石神様。早乙女様への壺の件は、申し訳ございませんでした」
俺は笑った。
「まあ、いいですよ。金の無い家でもないし、きっとあいつは麗星さんのために金を渡したかったんでしょう。日頃の礼のつもりなんですよ」
「さようでございましたか」
麗星は前を見ていた。
「早乙女様に相談されたのです。何かいい美術品はないものかと」
「そうだったんですか」
まあ、広い家なので何か欲しかったのかもしれない。
「わたくしの家は旧いものですから、何かアドバイスをと。なので、丁度売れ残っていた」
「はい?」
「い、いいえ! 丁度手元にあった、壺などはいかがかと」
「はぁー」
ため息を吐く。
他にも売り付けていたようだ。
「あ、でも! 本当に効果はあるのですよ?」
「どんなものです?」
「お財布をよく拾うようになります。大体10年以内に元は取れるはずなのです」
「あのですね。あいつは警察官だから、拾ったら届け出るに決まってますよ」
「エェー! 早乙女様は何かお脳の御病気ですか!」
「何言ってんですか! 拾い物はちゃんと届けましょうよ!」
「御無体な!」
一般常識がちょっと違うようだ。
「まあ、いいですけどね」
麗星はニコニコして、先週拾った財布の話を始めた。
「わたくしが所用で先斗町へ行ったのです」
「はぁ」
「二軒目に行こうかと外へ出たのでございます」
「二軒目?」
「やはり、店の雰囲気を変えて飲みたくて」
「ああ」
所要って、ただ飲みに行っただけか。
「そうしましたら、通りでわたくしにお声を掛けて来た男性が」
「はい」
「わたくしの肩を掴んで「いいねぇちゃん」とおっしゃいました」
「なるほど」
「《暗黒小鬼》でお辞め頂いたのですが、その男性は慌てて走り去られて」
「はぁ」
「その後で、お財布を拾いました」
「……」
「200万円もはいっておりましたのよ?」
「……」
美人局型かっぱぎか。
まあ、どうでもいい。
1時間も走ると、横浜の赤レンガ倉庫に着いた。
暑いので、1号館に入り、二人でショップを見て回った。
麗星はベネティアンガラスのアクセサリーを面白がり、幾つか俺が購入してやった。
またスペイン製のモザイク細工のドールがあり、麗星にフクロウを、俺はネコを買った。
スカーフやストールなども好きなだけ選ばせた。
いずれも数千円で、非常に安い。
二人で楽しく選んだ。
結構な量になったので、俺はネコだけ持ち返り、あとは道間家へ宅急便を頼んだ。
2号館に行き、カフェでお茶にする。
テラス席に座り、俺はエスプレッソを、麗星はホットチョコレートを頼んだ。
「いいお店ですね」
麗星が喜んだ。
「いつも、大好きな旦那様とこういう暮らしが出来たら」
「アハハハハハ!」
笑うしかねぇ。
「やるべきことをやるから、こういう時間を味わえるんですよ」
「そうでございますね」
「贅沢なだけの人生なんて、俺は嫌ですね」
「はい」
俺たちは、陽光に輝く海を見ていた。
「後で海を見て帰りましょう」
「はい!」
ゆっくりと飲み物を飲んだ。
歩いて大桟橋ふ頭へ行った。
少し暑いが、海風が気持ちいい。
「そう言えば、「海の王」というのもいるんですか?」
「はい。でも、あまりの巨体で、普段は深海におりますのでまだ姿を見た者はおりません」
「なるほど」
「陸に近づけば、大変なことになりましょう」
「怖いですね」
俺たちは笑った。
「おい、「海の王」! あんまり陸には近づくなよ!」
二人で笑い、帰ろうとした。
突然、雨が降って来た。
「あれ?」
見上げると、空は快晴だ。
続いて海を見ると、巨大な津波が向かってくるのが見えた。
「麗星さん!」
俺は麗星を抱きかかえて空中に飛んだ。
「石神様!」
「攻撃かもしれません! ジェヴォーダンではないようですが」
ジェヴォーダン特有の、海上を疾走する音は無い。
近づいて来た津波は、恐ろしいほどの高さであることが分かった。
高さ約200メートル、幅約2キロ。
俺は「虚震花」で津波を吹っ飛ばした。
「石神様! あれを!」
麗星が、遙か沖合を指差している。
半球形の何かが見えた。
細長い何かが海上に持ち上がっている。
「虎王!」
俺が叫ぶと、数秒後に「虎王」が飛んで来た。
鞘を払い、麗星に持たせて半球形に近づく。
結構な距離を移動した。
陸から120キロ程度か。
半球形が恐ろしく巨大な物であることが分かった。
海面に出ている部分だけでも、数百キロある。
触手は雲の上に突き抜けていた。
「ぷぅ! ぷぅ! ぷぅ! ぷぅ! ぷぅ!」
麗星が、アノ状態になった。
もう、気絶しそうだ。
「てめぇかぁ! 俺と俺の女をびしょ濡れにしやがったのはぁ!」
俺は「虎王」を振り上げた。
「お待ち下さい! 「虎王」の主様!」
海面にヘンな奴が出て来た。
「「半魚人!」」
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