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亜虎

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 ちょっと時間が出来た。
 みんな何かやってる。
 今のうちに、実行しなければ!

 別荘のタカさんの部屋のドアを開けた。

 「タカさんのベッドだぁー!」

 顔が綻ぶのが自分でも分かる。

 「ウェヘヘヘヘヘヘ」

 ヘンな笑い声が出る。
 ベッドに跳び込んだ。

 「うわぁー! タカさんの匂いだぁー!」

 一杯吸う。
 タカさんが私の中に入って来る。

 「はぁー」

 幸せだ。
 タカさんに満たされる。

 「……」





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 「タカさん、着きましたよ」

 東北の港町だ。
 タカさんと一緒にここまで来た。
 
 「ああ」

 タカさんは短く応えた。

 「ほら、海が綺麗ですよ」
 「そうだな、亜紀ちゃん」

 タカさんは優しく私を振り向いて笑った。
 二人でハマーを降りる。
 色々な思い出が詰まっているハマー。
 皆で出掛ける時には、いつもこの車だった。
 皇紀やルー、ハー、柳さん。
 響子ちゃんや六花さん。
 栞さん、鷹さん、それにレイもこれに一緒に乗った。

 でも、今は私とタカさんの二人だけだ。
 私たちは逃げて来てしまった。
 何もかもを皇紀や双子たちに押し付けて。

 「タカさん……」
 「亜紀ちゃん、これで良かったのかな」
 「いいんです。あとは皇紀たちがちゃんとやりますよ」
 「そうだな」

 タカさんと抱き合ってキスをした。

 「すいません。私が……」
 「そうじゃないよ。俺が亜紀ちゃんと一緒にいたかったんだ」
 「嬉しい……」

 「さあ、アパートを探そう」
 「家を買ってもいいじゃないですか」
 「なるべくお金は皇紀たちに残したいよ」
 「そうですね」

 タカさんがいれば、どこでも良かった。
 私たちは、小さなアパートを借りた。
 ここでタカさんと二人きりで生きるのだ。




 「タカさん、子どもが出来ましたよ」
 「そうか!」

 生活にも慣れ、私たちに待望の子どもが出来た。
 タカさんは小説を書き始めた。
 それは結構評判になり、私たちの小さな生活は、その収入で賄えるようになった。

 一日中一緒にいて、笑い合った。
 美味しい食事を一緒に作った。
 お風呂にも、毎日一緒に入る。
 タカさんはオチンチンをプルプルさせる。
 楽しい。
 そして夜は愛し合った。
 
 (どうやって?)

 よく覚えていない。

 「亜紀ちゃん、ペロペロしてあげるね!」
 「はい!」

 ペロペロしてもらったような気がする。
 でも、入れてもらった記憶がないような……。
 
 (まあ、いいか!)

 子どもが生まれた。
 カワイイ男の子だ。

 「ほらタカさん! カワイイですよ!」
 「そうだな!」

 タカさんに見せると、タカさんは嬉しそうに笑った。

 (アレ、いつ生んだんだろ?)

 お母さんの出産には立ち会っていなかった。
 いつも、咲子伯母さんが来て、面倒を見てくれていた。
 皇紀やルー、ハーは、病院の中で初めて見た。

 (今はアパートだけどー、まあ、いっか!)

 「タカさん、名前はどうしましょうか!」
 「そうだな。やっぱり亜紀ちゃんの「亜」を入れたいな」
 「嬉しい! 私もタカさんの名前を入れたい!」
 「そうかー、じゃあどうしようか」

 実はもう、考えている。

 「「亜虎(あとら)」ってどうですか?」
 「いいじゃないか! それにしよう!」

 私は大喜びでタカさんに抱き着いてキスをした。
 亜虎を落っことした。

 ゴン。

 「「!」」

 大丈夫だった。
 亜虎はニコニコしている。

 「「よかったー!」」

 二人で亜虎をなでなでした。

 亜虎にオッパイをあげた。
 タカさんが見ている。

 「恥ずかしいですよ」
 「いいじゃないか!」

 タカさんは相変わらずエッチだ。

 「亜紀ちゃんのオッパイ、随分と大きくなったな!」
 「エヘヘヘヘ」

 Cカップだ。
 もう鷹さんよりもおっきい。
 六花さんには負けるが、もう巨乳と言ってもいいんじゃないか?

 タカさんが亜虎が吸ってない方のオッパイを吸おうとする。

 「もう!」

 でもおっきいから余裕がある。
 タカさんはチューチュー吸った。
 タカさんの頭をナデナデする。
 亜虎を落っことした。

 ゴン。

 「「!」」

 大丈夫だった。
 亜虎はニコニコしている。

 「「よかったー!」」

 二人で笑った。

 タカさんがベッドに横になり、亜虎を抱き上げた。
 私も嬉しくなって、ベッドのタカさんの上に重なった。
 タカさんにキスをする。

 「お姉ちゃん!」

 突然、アパートのドアが開いた。
 皇紀だった。

 「「亜紀ちゃん!」」

 ルーとハーも来た。
 三人に蹴られた。

 ゴン。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 「イタタタ。あれ?」

 蹴られてベッドから転げ落ちた。
 アパートじゃない。

 「なんだ?」

 タカさんが寝てる。

 「タカさんだー!」

 その瞬間にはっきり目が覚めた。

 「……」

 タカさんは、響子ちゃんと寝ていた。





 良かった。
 タカさんは絶対に逃げたりしない。
 二人きりで暮らすのは絶対に素敵だけど、そんなことはしたくない。
 みんなと一緒にいたい。

 そっと部屋を出た。

 「夢でよかったー!」

 でも……。





 「亜虎……」

 あなたのカワイイ笑顔は忘れないよ。




 
 ずっと後になって、タカさんに、夢の話をした。

 「亜虎?」
 「はい!」
 「なんだそりゃ」




 亜虎ぁー!
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