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別荘の日々 Ⅳ
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翌朝。
俺は9時頃に起きた。
子どもたちは既に朝食を食べている。
「タカさん、朝食はどうしますか?」
亜紀ちゃんが聞いて来るので、自分で作ると言った。
クロックマダムを作った。
ヨーグルトにキウイとベリーを入れて食べる。
「お洒落ですね!」
柳が見に来た。
「お前らは何を食べたんだよ」
「ご飯と味噌汁に、焼き魚と海苔と佃煮を」
「いいじゃねぇか」
「そうですけど」
昼も近いので、俺は一枚だけで終わった。
亜紀ちゃんがコーヒーを淹れてくれる。
「皇紀! 散歩に付き合え!」
「はい!」
「アレを持って来い!」
「はーい!」
皇紀と出掛けた。
アイスティを水筒に入れる。
皇紀は部屋からタブレットと小さな機械を持って来る。
リュックに入れた。
「皇紀、何か困ってることは無いか?」
「そんなには。蓮花さんの所で、ジェシカさんが頑張ってくれてるようです」
「あいつはまた根性がありそうだからなぁ!」
「アハハハハ!」
二人でゆっくりと歩いた。
「霊素観測はどうだ?」
「まだまだですね。一度麗星さんとじっくり実験しないといけないと思います」
「そうだな。双子と一緒に行くか」
「でも、そうするとお姉ちゃんが」
「あいつ、絶対来たがるよなぁ」
「タカさんは大丈夫ですか?」
俺が京都に行くことを、皇紀が心配する。
「ああ、一江の顔面を連れて行く」
「アハハハハ!」
「あいつの顔面は効くんだよ。こないだも、ちょっとも苦しく無かったからな」
「そうなんですか」
「チンコも、ピクリとも動かなかったしな!」
「アハハハハハハ!」
有難い奴だ。
「1970年代の映画で『ヘルハウス』というのがあるんだよ。幽霊屋敷で、電磁波を使って探知したり、防御したりする装置が出て来るのな」
「へぇー!」
「まあ、もちろんフィクションなんだけど、アプローチは今の俺たちと一緒だ。霊的な存在を何とか機械で捉えたいというな」
「はい」
「俺は電磁波現象も一部はあると思っている。「金縛り」なんかは、神経を電磁波で操作されると考えてもいいよな」
「なるほど!」
「幽霊が見えたり消えたりも、プラズマの位相で説明できる」
「そうですね!」
「でもな、それだけではない。妖魔の存在は、もっと根本的に違った現象だ。それを「霊素」と名付けて、俺たちは探ろうとしているわけだ」
「量子の一つとしてですよね」
「そうだ。または、量子の現象としてだ。俺はヒッグス粒子が関わっているのではないかと考えているけどな」
「今、南部理論を精読していますが、僕も段々とタカさんの予感が分かって来ました」
「対称性の破れ、ということだ。妖魔はその関りで存在している」
「だから物理攻撃が通じないことも多いわけですね」
「俺たちは「花岡」を量子力学的に解析してきた。だから、妖魔についても解析出来ると考えている」
「はい」
俺たちは話しながら移動していた。
俺と六花の「訓練場」に向かっている。
「タヌ吉の「地獄道」な。あれは特殊な異空間なわけだけど、ああいうものを構築するのは、妖魔のイマジネーションが量子を操作しているんだと思うんだよ」
「そうですね」
「「花岡」の奥義程、真空相転移を劇的に増大させて、昇るボゾンを大量発生させることにポイントがあるだろ?」
「はい。そこまでは今までの解析ですね」
「だから俺はヒッグス粒子が更に……」
「訓練場」に着いた。
「おし! じゃあ早速探れ!」
「はい!」
皇紀がタブレットのUSBに機械を繋いだ。
機械は蓋を開くとレーダーのようなものに変形した。
「あ! やっぱりありましたよ!」
「どっちだ!」
「11時方向! 距離は10メートルってとこですかね」
俺はその方向へ歩いて行き、セミの形をしたセンサーを見つけた。
「あったぞ!」
俺は小さな「螺旋花」でセミ型センサーを壊す。
「次は2時方向です! 距離30メートル!」
俺たちは次々に双子が仕掛けたノゾキ機械を見つけて破壊していった。
あいつら、俺と六花の「訓練」を毎年覗いてやがってた。
俺は皇紀に銘じて、センサーの探知装置を作らせていた。
「結構ありましたね」
1時間ほども掛かってしまった。
計63個もあった。
「あいつらー」
「アハハハハハ!」
皇紀と草の上に座って、紅茶を飲んだ。
「響子ちゃんと六花さんは昼頃の到着ですよね」
「ああ、朝に連絡が来て、予定通りのようだ」
一休みして、皇紀がリュックからズタ袋を出した。
ノゾキ機械を放り込んで行く。
皇紀が肩に担ぎ、別荘に帰った。
「はい、これ」
「「……」」
双子が緊張した顔で皇紀からズタ袋を受け取った。
俺が右手を頭の横で曲げ、殴る仕草をした。
笑ってやると、双子も笑った。
「「ギャハハハハ!」」
「もう仕掛けるなよ!」
「「はーい!」」
まあ、楽しい悪戯だ。
子どもたちが昼食の用意をしていると、響子から電話が来た。
「タカトラ! あと15分くらいで着くよー!」
「おう! 待ってるぞ!」
別荘に配達が来た。
俺が受け取る。
クール便だ。
「なんですか?」
「ああ、頼んでおいた杏仁豆腐なんだ」
「そうなんですか」
亜紀ちゃんが大した反応も無く俺が運ぶ荷物を見ていた。
何箱かあったので、亜紀ちゃんも手伝う。
杏仁豆腐と聞いて、大した興味も持たなかったのだろう。
中華料理のデザートとしてしか印象が無い。
俺はキッチンのでかい冷蔵庫に、箱を開けて中身を入れて行った。
「あ、結構大きいんですね」
「そうだろ?」
でも、それだけだった。
響子と六花の特別移送車が着いた。
みんなで出迎える。
「タカトラー!」
響子がシートベルトを外して抱き着いて来る。
カワイイ。
「ただいま到着しました」
「ああ、ご苦労さん。疲れただろう」
「いいえ!」
六花が美しい笑顔で俺を見た。
子どもたちが荷物を運び、みんなで中に入る。
丁度昼食も出来上がっていた。
響子の好きなオムライスにしている。
まあ、響子のもの以外は大きくカットしたステーキ肉がゴロゴロ入っているが。
うちのオムライスは、ラードを少し入れて香ばしく仕上げる。
いいラードは、後味も悪くないし、しつこくもない。
みんなで楽しく昼食を食べた。
俺は9時頃に起きた。
子どもたちは既に朝食を食べている。
「タカさん、朝食はどうしますか?」
亜紀ちゃんが聞いて来るので、自分で作ると言った。
クロックマダムを作った。
ヨーグルトにキウイとベリーを入れて食べる。
「お洒落ですね!」
柳が見に来た。
「お前らは何を食べたんだよ」
「ご飯と味噌汁に、焼き魚と海苔と佃煮を」
「いいじゃねぇか」
「そうですけど」
昼も近いので、俺は一枚だけで終わった。
亜紀ちゃんがコーヒーを淹れてくれる。
「皇紀! 散歩に付き合え!」
「はい!」
「アレを持って来い!」
「はーい!」
皇紀と出掛けた。
アイスティを水筒に入れる。
皇紀は部屋からタブレットと小さな機械を持って来る。
リュックに入れた。
「皇紀、何か困ってることは無いか?」
「そんなには。蓮花さんの所で、ジェシカさんが頑張ってくれてるようです」
「あいつはまた根性がありそうだからなぁ!」
「アハハハハ!」
二人でゆっくりと歩いた。
「霊素観測はどうだ?」
「まだまだですね。一度麗星さんとじっくり実験しないといけないと思います」
「そうだな。双子と一緒に行くか」
「でも、そうするとお姉ちゃんが」
「あいつ、絶対来たがるよなぁ」
「タカさんは大丈夫ですか?」
俺が京都に行くことを、皇紀が心配する。
「ああ、一江の顔面を連れて行く」
「アハハハハ!」
「あいつの顔面は効くんだよ。こないだも、ちょっとも苦しく無かったからな」
「そうなんですか」
「チンコも、ピクリとも動かなかったしな!」
「アハハハハハハ!」
有難い奴だ。
「1970年代の映画で『ヘルハウス』というのがあるんだよ。幽霊屋敷で、電磁波を使って探知したり、防御したりする装置が出て来るのな」
「へぇー!」
「まあ、もちろんフィクションなんだけど、アプローチは今の俺たちと一緒だ。霊的な存在を何とか機械で捉えたいというな」
「はい」
「俺は電磁波現象も一部はあると思っている。「金縛り」なんかは、神経を電磁波で操作されると考えてもいいよな」
「なるほど!」
「幽霊が見えたり消えたりも、プラズマの位相で説明できる」
「そうですね!」
「でもな、それだけではない。妖魔の存在は、もっと根本的に違った現象だ。それを「霊素」と名付けて、俺たちは探ろうとしているわけだ」
「量子の一つとしてですよね」
「そうだ。または、量子の現象としてだ。俺はヒッグス粒子が関わっているのではないかと考えているけどな」
「今、南部理論を精読していますが、僕も段々とタカさんの予感が分かって来ました」
「対称性の破れ、ということだ。妖魔はその関りで存在している」
「だから物理攻撃が通じないことも多いわけですね」
「俺たちは「花岡」を量子力学的に解析してきた。だから、妖魔についても解析出来ると考えている」
「はい」
俺たちは話しながら移動していた。
俺と六花の「訓練場」に向かっている。
「タヌ吉の「地獄道」な。あれは特殊な異空間なわけだけど、ああいうものを構築するのは、妖魔のイマジネーションが量子を操作しているんだと思うんだよ」
「そうですね」
「「花岡」の奥義程、真空相転移を劇的に増大させて、昇るボゾンを大量発生させることにポイントがあるだろ?」
「はい。そこまでは今までの解析ですね」
「だから俺はヒッグス粒子が更に……」
「訓練場」に着いた。
「おし! じゃあ早速探れ!」
「はい!」
皇紀がタブレットのUSBに機械を繋いだ。
機械は蓋を開くとレーダーのようなものに変形した。
「あ! やっぱりありましたよ!」
「どっちだ!」
「11時方向! 距離は10メートルってとこですかね」
俺はその方向へ歩いて行き、セミの形をしたセンサーを見つけた。
「あったぞ!」
俺は小さな「螺旋花」でセミ型センサーを壊す。
「次は2時方向です! 距離30メートル!」
俺たちは次々に双子が仕掛けたノゾキ機械を見つけて破壊していった。
あいつら、俺と六花の「訓練」を毎年覗いてやがってた。
俺は皇紀に銘じて、センサーの探知装置を作らせていた。
「結構ありましたね」
1時間ほども掛かってしまった。
計63個もあった。
「あいつらー」
「アハハハハハ!」
皇紀と草の上に座って、紅茶を飲んだ。
「響子ちゃんと六花さんは昼頃の到着ですよね」
「ああ、朝に連絡が来て、予定通りのようだ」
一休みして、皇紀がリュックからズタ袋を出した。
ノゾキ機械を放り込んで行く。
皇紀が肩に担ぎ、別荘に帰った。
「はい、これ」
「「……」」
双子が緊張した顔で皇紀からズタ袋を受け取った。
俺が右手を頭の横で曲げ、殴る仕草をした。
笑ってやると、双子も笑った。
「「ギャハハハハ!」」
「もう仕掛けるなよ!」
「「はーい!」」
まあ、楽しい悪戯だ。
子どもたちが昼食の用意をしていると、響子から電話が来た。
「タカトラ! あと15分くらいで着くよー!」
「おう! 待ってるぞ!」
別荘に配達が来た。
俺が受け取る。
クール便だ。
「なんですか?」
「ああ、頼んでおいた杏仁豆腐なんだ」
「そうなんですか」
亜紀ちゃんが大した反応も無く俺が運ぶ荷物を見ていた。
何箱かあったので、亜紀ちゃんも手伝う。
杏仁豆腐と聞いて、大した興味も持たなかったのだろう。
中華料理のデザートとしてしか印象が無い。
俺はキッチンのでかい冷蔵庫に、箱を開けて中身を入れて行った。
「あ、結構大きいんですね」
「そうだろ?」
でも、それだけだった。
響子と六花の特別移送車が着いた。
みんなで出迎える。
「タカトラー!」
響子がシートベルトを外して抱き着いて来る。
カワイイ。
「ただいま到着しました」
「ああ、ご苦労さん。疲れただろう」
「いいえ!」
六花が美しい笑顔で俺を見た。
子どもたちが荷物を運び、みんなで中に入る。
丁度昼食も出来上がっていた。
響子の好きなオムライスにしている。
まあ、響子のもの以外は大きくカットしたステーキ肉がゴロゴロ入っているが。
うちのオムライスは、ラードを少し入れて香ばしく仕上げる。
いいラードは、後味も悪くないし、しつこくもない。
みんなで楽しく昼食を食べた。
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