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李愛鈴 Ⅱ
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石神に驚愕の新居を見せられた翌日の金曜日。
俺は「アドヴェロス」の建物の内部にある特別留置所へ行った。
李愛鈴に会うためだ。
この建物自体も、石神に提供された。
千代田区の九段にあった、元稲城会の大きなビルがあった場所だ。
「早乙女さん」
「やあ」
改めて李愛鈴を見た。
身長166センチ、体重49キロ。
顔は細く、大きな目が端で少し上に上がっている切れ長の目だ。
額が広く、鼻も高い。
女優のように美しい顔立ちをしている。
東洋人にしてはスタイルもいい。
手足も長く、今は収監時のチャイナドレスを着ているが、胸の膨らみが前に突き出している。
「デミウルゴス」の使用が判明している李愛鈴は、まだ留置所の中にいる。
しかし、公的には犯罪を犯したわけではない。
「デミウルゴス」自体も、まだ正式に違法薬物指定を受けてもいない。
我々は、超法規的に動いているだけだ。
「俺が今上に掛け合っている。すぐには無理だけど、必ずここから出してあげるから」
「いいんです。どうせ私には行き場所なんて無いんですから」
「そんなことを言わないで」
特別留置所は、石神の提供によってある特殊な材料で作られている。
俺にも明かされていないが、「花岡」や妖魔の能力を無効にするものだそうだ。
万全ではないとも言われているが、ここ以上の場所は今の所ない。
「君は俺を助けようとしてくれた。そんな李さんを、俺は放ってはおけないよ」
「早乙女さん……」
李愛鈴が俺を見ていた。
「これは上の人間と石神の許可もいることだけど。俺は君をこのチームに加えたいと思っているんだ」
「え?」
「君が「太陽界」と決別したいと思っているのならね。このチームは「太陽界」だけじゃない。これから通常の警察が対処出来ない事案に対して備えているチームなんだ」
「はい」
「君には戦う力がある。そして何よりも、正しいことをしたいと思っている。だから俺は君を仲間にしたい」
「……」
まだ打ち明けるべきではない内容だった。
石神が知ったら、きっと怒るだろう。
それでも俺は、絶望している李愛鈴に未来を見せたかった。
「私は化け物になってしまったんです」
「姿形は関係ない。君は人間だ。ちゃんと優しい心を持っているよ」
「こないだも早乙女さんはそう言ってくれましたね。嬉しかった。でもダメです。私自身が、自分を化け物だと思っているんです」
李愛鈴はそう言った。
その気持ちも分かるが、悲しそうな顔でそう言う相手を、俺は放っては置けなかった。
「俺の親友はね。ああ、親友って言っても、俺にはたった一人しか友達はいないんだ。俺ってダメな男だから」
「そんなことは!」
「いや、それはどうでもいい。その親友は、体中に傷を負っているんだ。そりゃあ酷いものだよ。よく生きているって思うくらいだ」
「そうなんですか」
「うん。だから親友は、子どもの頃は人に見せたくなかったらしい。実際、その傷で酷いことを言われたり、時には虐待されたこともあるそうだ」
「はい」
「俺に初めて裸を見せた時にもね、親友が言ったんだ。「俺の身体は気持ち悪いだろう。悪いな」って。俺は全然そんなことは無いと言った。どんな醜い傷だって、親友の素晴らしさは全く関係ない」
「……」
「俺がそう言ったらね。恥ずかしそうに笑ったんだ。そして「ありがとう」と言った」
「そうですか」
「愛鈴さんの身体もそうだ。どんなに変わってしまったとしても、それは関係ない」
「でも……」
「愛鈴さんは、綺麗な心を持っている。それだけが大事なことだと、俺は思うよ」
「早乙女さん……」
李愛鈴はまた悲しそうな顔をした。
「その親友が、子どもの頃の話をしてくれた。同級生の女の子で、幼い頃に薬品を浴びてしまって、身体の半分に大火傷を負ったんだそうだ。顔も半分醜く焼け爛れてね」
「そうなんですか。可哀そうに」
「うん、女の子だからね。でも親友が、そんなものは関係無いって言ったんだ。その女の子を大事にし、友達になった。それでその子はね、大人になって立派になって、テレビにも出たそうだよ」
「いいですね」
「そしてインタビューで言った。子どもの頃に、自分の姿を関係無いと言ってくれた友達がいたんだと。その友達は、自分はきっと素晴らしい場所に辿り着けると言った。自分の心は綺麗だから、きっとそうなるって」
「……」
「ねえ、愛鈴さん。姿は関係ないよ。君は君のままだ。君はこれからどうしたいと思う?」
「私は、誰かの役に立ちたい。誰かのために生きようとする人を応援したい」
「そうか」
俺が笑うと、李愛鈴も小さく笑った。
「それでいいと思うよ。俺は君を応援する」
「早乙女さん……」
「少しの間、辛抱してくれ。必ず君を自由にする」
「はい」
「約束だ。俺に任せてくれ」
「はい!」
俺は李愛鈴に何か食べたいものはあるかと聞いた。
チャーハンが食べたいと言ってくれた。
「石神、今どこなんだ?」
「今別荘に向かってる途中だ。何かあったのか?」
「ちょっと話したいことがあるんだ。でも運転中なら後でもいい」
「いや、今亜紀ちゃんが運転してるから大丈夫だぞ?」
石神の娘の亜紀ちゃんは、まだ普通免許を持っていないはずだ。
「おい! 無免許だろう!」
「ばかやろう! 外科医の娘だ! 間違いはねぇ!」
「何言ってんだ! 俺は警察官だぞ!」
「お前は俺の親友だろう!」
「あ、ああ、そうだった!」
電話の向こうで叫び声が聞こえた。
「亜紀ちゃん、前に走って!」と石神の双子が叫んでいる。
「おい! 何があった!」
「あ、ああ、大丈夫だ。でもちょっと待て、次のサービスエリアで折り返す」
「石神!」
しばらくして、石神から電話が来た。
《親友・石神》と画面に表示される。
「おい、今は運転してないだろうな!」
「大丈夫だよ! ところで何の話だ?」
俺は李愛鈴を仲間に誘ったと石神に話した。
「ばかやろう! 少し間を置いてからだと言っただろう!」
「すまない。でも、落ち込んでいる李愛鈴を見ていられなかったんだ」
「お前は本当にバカだな!」
「だから謝ってるじゃないか。なあ、石神。本当に実現したいんだ」
石神は少し考えているようだった。
「お前の上司はどう思ってるんだ?」
「西条さんには下話はしている。概ね了解は得ているよ」
「そうか。でも、何かあれば、お前の破滅だぞ?」
「分かっている。でも俺は彼女を信用している」
「何度も騙されたくせに」
「まあ、そうなんだが」
俺は石神に、再度どうにかならないかと言った。
「手段が無いわけじゃないんだけどなぁ」
「是非頼む!」
「俺は李愛鈴の周囲をもう少し探ってからと思っていたんだよ」
「それは聞いている。でも、どうにも俺は」
「はぁ、仕方がねぇ。お前はそういう奴だからな。あんまり使いたくない手段だったんだけどなぁ」
「それは?」
「人間の問題は人間が解決すべきだと思ってるんだよ。でもまあ、そうも言っていられないな」
「ん?」
石神がまた奇妙なことを俺に言った。
「いいか。お前を訪ねて着物姿の女が行く。タマという女だ」
「たま?」
「妖魔だ。そいつは人間の心を読む」
「え!」
「李愛鈴が本当に信頼できる女かどうかを探らせる」
「おい、それは!」
「俺が確信したと言えば、お前の上司も納得するだろう」
「あ、ああ。それは間違いない」
しかし石神がそう言ったと言えば、今後李愛鈴に関して何かがあれば、石神の責任になるということだ。
石神が俺の責任を被ってくれようとしていることは分かった。
でも、石神に甘えることにはなるが、俺は李愛鈴の絶望を救いたかった。
「石神、頼む」
「分かったよ!」
「でも石神、何かあれば、それは全て俺の責任だ」
「ばか。お前は早く引っ越しの準備をしろ。ピーポンが寂しがってるだろう!」
「アハハハハ!」
俺はいつまでたっても、石神の世話になりっぱなしだ。
「おい、石神」
「あんだよ?」
「無免許運転だけはやめてくれ」
「あ、あれは冗談だからな!」
後ろで亜紀ちゃんが「冗談ですよー」と言っているのが聞こえた。
「分かった。じゃあ、頼むな」
「ああ、任せろ!」
「あ、それと石神!」
「あんだよ!」
「お前のチャーハンが絶品だと前に六花さんから聞いた」
「え?」
「作り方を教えてくれないか?」
「なんでだよ!」
「李愛鈴がチャーハンを食べたがっているんだ」
「お前なぁ!」
石神がまた怒ったが、それでも教えてくれた。
電話を切った。
俺は電話に向かって姿勢を正し、頭を下げた。
その日の夕方。
着物姿の美しい女性が「アドヴェロス」にやって来た。
「主から言われて来た」
妙な喋り方をする女性だった。
しかし石神から聞いてはいるが、目の前の女性が妖魔だとは思えなかった。
「わざわざすいません。早速ですが、ご案内します」
俺は女性を連れて、李愛鈴の留置場へ行った。
「彼女が……え!」
目の前で、李愛鈴が突然失神した。
俺が驚いている少しの間で、美しい女性が言った。
「この女は信用できるぞ。詳しいことは主に話す」
「は、はい」
美しい女性は俺の目の前で消えた。
その夜。
石神からの電話で、全てを了解した。
俺は上司の西条さんに連絡し、石神からの伝言を伝えた。
翌日。
李愛鈴は留置場を出た。
俺は石神に言われたように、石神の家の向かい、元はレイさんが住む予定だった家に李愛鈴を案内した。
李愛鈴は、石神が戻ってから「アドヴェロス」に加わることになった。
それまでは外には出さずに、俺に面倒を見るように言われた。
食材を雪野さんと一緒に揃え、俺が李愛鈴に渡しに行った。
俺は石神に教わったチャーハンを作った。
李愛鈴は涙を流し、感謝していた。
俺は信頼できる、大事な仲間を得た。
俺は「アドヴェロス」の建物の内部にある特別留置所へ行った。
李愛鈴に会うためだ。
この建物自体も、石神に提供された。
千代田区の九段にあった、元稲城会の大きなビルがあった場所だ。
「早乙女さん」
「やあ」
改めて李愛鈴を見た。
身長166センチ、体重49キロ。
顔は細く、大きな目が端で少し上に上がっている切れ長の目だ。
額が広く、鼻も高い。
女優のように美しい顔立ちをしている。
東洋人にしてはスタイルもいい。
手足も長く、今は収監時のチャイナドレスを着ているが、胸の膨らみが前に突き出している。
「デミウルゴス」の使用が判明している李愛鈴は、まだ留置所の中にいる。
しかし、公的には犯罪を犯したわけではない。
「デミウルゴス」自体も、まだ正式に違法薬物指定を受けてもいない。
我々は、超法規的に動いているだけだ。
「俺が今上に掛け合っている。すぐには無理だけど、必ずここから出してあげるから」
「いいんです。どうせ私には行き場所なんて無いんですから」
「そんなことを言わないで」
特別留置所は、石神の提供によってある特殊な材料で作られている。
俺にも明かされていないが、「花岡」や妖魔の能力を無効にするものだそうだ。
万全ではないとも言われているが、ここ以上の場所は今の所ない。
「君は俺を助けようとしてくれた。そんな李さんを、俺は放ってはおけないよ」
「早乙女さん……」
李愛鈴が俺を見ていた。
「これは上の人間と石神の許可もいることだけど。俺は君をこのチームに加えたいと思っているんだ」
「え?」
「君が「太陽界」と決別したいと思っているのならね。このチームは「太陽界」だけじゃない。これから通常の警察が対処出来ない事案に対して備えているチームなんだ」
「はい」
「君には戦う力がある。そして何よりも、正しいことをしたいと思っている。だから俺は君を仲間にしたい」
「……」
まだ打ち明けるべきではない内容だった。
石神が知ったら、きっと怒るだろう。
それでも俺は、絶望している李愛鈴に未来を見せたかった。
「私は化け物になってしまったんです」
「姿形は関係ない。君は人間だ。ちゃんと優しい心を持っているよ」
「こないだも早乙女さんはそう言ってくれましたね。嬉しかった。でもダメです。私自身が、自分を化け物だと思っているんです」
李愛鈴はそう言った。
その気持ちも分かるが、悲しそうな顔でそう言う相手を、俺は放っては置けなかった。
「俺の親友はね。ああ、親友って言っても、俺にはたった一人しか友達はいないんだ。俺ってダメな男だから」
「そんなことは!」
「いや、それはどうでもいい。その親友は、体中に傷を負っているんだ。そりゃあ酷いものだよ。よく生きているって思うくらいだ」
「そうなんですか」
「うん。だから親友は、子どもの頃は人に見せたくなかったらしい。実際、その傷で酷いことを言われたり、時には虐待されたこともあるそうだ」
「はい」
「俺に初めて裸を見せた時にもね、親友が言ったんだ。「俺の身体は気持ち悪いだろう。悪いな」って。俺は全然そんなことは無いと言った。どんな醜い傷だって、親友の素晴らしさは全く関係ない」
「……」
「俺がそう言ったらね。恥ずかしそうに笑ったんだ。そして「ありがとう」と言った」
「そうですか」
「愛鈴さんの身体もそうだ。どんなに変わってしまったとしても、それは関係ない」
「でも……」
「愛鈴さんは、綺麗な心を持っている。それだけが大事なことだと、俺は思うよ」
「早乙女さん……」
李愛鈴はまた悲しそうな顔をした。
「その親友が、子どもの頃の話をしてくれた。同級生の女の子で、幼い頃に薬品を浴びてしまって、身体の半分に大火傷を負ったんだそうだ。顔も半分醜く焼け爛れてね」
「そうなんですか。可哀そうに」
「うん、女の子だからね。でも親友が、そんなものは関係無いって言ったんだ。その女の子を大事にし、友達になった。それでその子はね、大人になって立派になって、テレビにも出たそうだよ」
「いいですね」
「そしてインタビューで言った。子どもの頃に、自分の姿を関係無いと言ってくれた友達がいたんだと。その友達は、自分はきっと素晴らしい場所に辿り着けると言った。自分の心は綺麗だから、きっとそうなるって」
「……」
「ねえ、愛鈴さん。姿は関係ないよ。君は君のままだ。君はこれからどうしたいと思う?」
「私は、誰かの役に立ちたい。誰かのために生きようとする人を応援したい」
「そうか」
俺が笑うと、李愛鈴も小さく笑った。
「それでいいと思うよ。俺は君を応援する」
「早乙女さん……」
「少しの間、辛抱してくれ。必ず君を自由にする」
「はい」
「約束だ。俺に任せてくれ」
「はい!」
俺は李愛鈴に何か食べたいものはあるかと聞いた。
チャーハンが食べたいと言ってくれた。
「石神、今どこなんだ?」
「今別荘に向かってる途中だ。何かあったのか?」
「ちょっと話したいことがあるんだ。でも運転中なら後でもいい」
「いや、今亜紀ちゃんが運転してるから大丈夫だぞ?」
石神の娘の亜紀ちゃんは、まだ普通免許を持っていないはずだ。
「おい! 無免許だろう!」
「ばかやろう! 外科医の娘だ! 間違いはねぇ!」
「何言ってんだ! 俺は警察官だぞ!」
「お前は俺の親友だろう!」
「あ、ああ、そうだった!」
電話の向こうで叫び声が聞こえた。
「亜紀ちゃん、前に走って!」と石神の双子が叫んでいる。
「おい! 何があった!」
「あ、ああ、大丈夫だ。でもちょっと待て、次のサービスエリアで折り返す」
「石神!」
しばらくして、石神から電話が来た。
《親友・石神》と画面に表示される。
「おい、今は運転してないだろうな!」
「大丈夫だよ! ところで何の話だ?」
俺は李愛鈴を仲間に誘ったと石神に話した。
「ばかやろう! 少し間を置いてからだと言っただろう!」
「すまない。でも、落ち込んでいる李愛鈴を見ていられなかったんだ」
「お前は本当にバカだな!」
「だから謝ってるじゃないか。なあ、石神。本当に実現したいんだ」
石神は少し考えているようだった。
「お前の上司はどう思ってるんだ?」
「西条さんには下話はしている。概ね了解は得ているよ」
「そうか。でも、何かあれば、お前の破滅だぞ?」
「分かっている。でも俺は彼女を信用している」
「何度も騙されたくせに」
「まあ、そうなんだが」
俺は石神に、再度どうにかならないかと言った。
「手段が無いわけじゃないんだけどなぁ」
「是非頼む!」
「俺は李愛鈴の周囲をもう少し探ってからと思っていたんだよ」
「それは聞いている。でも、どうにも俺は」
「はぁ、仕方がねぇ。お前はそういう奴だからな。あんまり使いたくない手段だったんだけどなぁ」
「それは?」
「人間の問題は人間が解決すべきだと思ってるんだよ。でもまあ、そうも言っていられないな」
「ん?」
石神がまた奇妙なことを俺に言った。
「いいか。お前を訪ねて着物姿の女が行く。タマという女だ」
「たま?」
「妖魔だ。そいつは人間の心を読む」
「え!」
「李愛鈴が本当に信頼できる女かどうかを探らせる」
「おい、それは!」
「俺が確信したと言えば、お前の上司も納得するだろう」
「あ、ああ。それは間違いない」
しかし石神がそう言ったと言えば、今後李愛鈴に関して何かがあれば、石神の責任になるということだ。
石神が俺の責任を被ってくれようとしていることは分かった。
でも、石神に甘えることにはなるが、俺は李愛鈴の絶望を救いたかった。
「石神、頼む」
「分かったよ!」
「でも石神、何かあれば、それは全て俺の責任だ」
「ばか。お前は早く引っ越しの準備をしろ。ピーポンが寂しがってるだろう!」
「アハハハハ!」
俺はいつまでたっても、石神の世話になりっぱなしだ。
「おい、石神」
「あんだよ?」
「無免許運転だけはやめてくれ」
「あ、あれは冗談だからな!」
後ろで亜紀ちゃんが「冗談ですよー」と言っているのが聞こえた。
「分かった。じゃあ、頼むな」
「ああ、任せろ!」
「あ、それと石神!」
「あんだよ!」
「お前のチャーハンが絶品だと前に六花さんから聞いた」
「え?」
「作り方を教えてくれないか?」
「なんでだよ!」
「李愛鈴がチャーハンを食べたがっているんだ」
「お前なぁ!」
石神がまた怒ったが、それでも教えてくれた。
電話を切った。
俺は電話に向かって姿勢を正し、頭を下げた。
その日の夕方。
着物姿の美しい女性が「アドヴェロス」にやって来た。
「主から言われて来た」
妙な喋り方をする女性だった。
しかし石神から聞いてはいるが、目の前の女性が妖魔だとは思えなかった。
「わざわざすいません。早速ですが、ご案内します」
俺は女性を連れて、李愛鈴の留置場へ行った。
「彼女が……え!」
目の前で、李愛鈴が突然失神した。
俺が驚いている少しの間で、美しい女性が言った。
「この女は信用できるぞ。詳しいことは主に話す」
「は、はい」
美しい女性は俺の目の前で消えた。
その夜。
石神からの電話で、全てを了解した。
俺は上司の西条さんに連絡し、石神からの伝言を伝えた。
翌日。
李愛鈴は留置場を出た。
俺は石神に言われたように、石神の家の向かい、元はレイさんが住む予定だった家に李愛鈴を案内した。
李愛鈴は、石神が戻ってから「アドヴェロス」に加わることになった。
それまでは外には出さずに、俺に面倒を見るように言われた。
食材を雪野さんと一緒に揃え、俺が李愛鈴に渡しに行った。
俺は石神に教わったチャーハンを作った。
李愛鈴は涙を流し、感謝していた。
俺は信頼できる、大事な仲間を得た。
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