上 下
1,191 / 2,808

早乙女の新居(ケルン大聖堂)

しおりを挟む
 冗談じゃねぇウンコ野郎と戦った翌日の木曜日。
 昨日はまだ臭いが付いている気がして、みんなで「虎温泉」(子どもたちが隣接の敷地に作った露天風呂)に入った。
 やっと臭いが取れた気がする。

 今日は早乙女たちに新居を紹介する日だ。
 子どもたちも楽しみにしている。
 俺と皇紀しかまだ知らない。
 高い壁に囲まれているが、上の方は見えているので、そこは他の子どもたちも見ている。

 敷地は500坪で、建物は380坪くらいだ。
 ケルン大聖堂の縮小版の形にしている。
 前面に4階建ての建物があり、その後ろに二つの塔が立っている。
 ちゃんとゲルハルト・リヒターのステンドグラスを模した窓もあり、幻想的な陽光の採り入れがある。
 きっと喜んでくれるだろう。
 塔の部分は8階建てになっている。
 最上階は、片方は全方位ガラス張りで、きっと夜は最高にいい。
 夫婦の寝室にどうかとも思っている。
 もう片方は窓と壁が半々になっており、こっちはフリースペースでもいいし、食事やお茶を飲むのもいいだろう。
 まあ、部屋は沢山あるので、自由に使ってくれればいい。
 100畳のリヴィングもある。

 もちろん防衛システムも完備で、うち以上に最新の設備が入っている。
 自衛が出来ない夫婦なので、そうした。
 
 地下は2階まであり、地下2階はリニアモーターカーでうちと繋がっている。
 何かの時には、すぐに避難出来るようにだ。
 まあ、この防衛システムで対応出来ない事態は無いだろうが。
 守護神もいる。




 11時半に、早乙女夫妻が来た。
 昼食後に、みんなで新居を見に行く予定だ。

 「よう!」
 「石神、今日は本当に世話になる」
 「お邪魔します。今日はよろしくお願いします」

 早乙女はニコニコしている。
 楽しみだったようだ。

 《石神様! お会い出来て光栄ですー》

 「モハメドか。早乙女とは上手くやってるか?」
 《はい! 早乙女さんはとってもいい人で、私のことも大事にしてくれますー》
 「……」

 「そうか! 良かったよ。こいつ、ちょっと人間関係すらヘタクソな奴だからな」
 《可愛がってもらってますよー。それに、雪野さんも優しい方ですー》
 「まあ、そっちはな。じゃあ入れよ!」

 早乙女が何とも言えない顔をしていた。

 

 リヴィングで、紅茶を出す。

 「もうすぐ昼食だ。うちは12時と決めてるんで、ちょっと待ってくれな」
 「ああ。あ、これを!」

 早乙女が小川軒の「レーズンウィッチ」を俺に渡した。

 「おい! これ大好物なんだよ!」
 「うん、こないだ一江さんに聞いたんだ」
 「そうか! お前も段々人間に近づいて来たな」
 「……」

 雪野さんが笑った。

 「よく新橋まで部下に買いに行かせるんだよ。時々無性に喰いたくなるんだよなぁ」
 「そうか。良かった」
 「今日はそんなにだけどな」
 「……」

 「冗談だよ! 親友!」

 早乙女が嬉しそうに笑った。

 「よし、じゃあお茶の時間に頂こう」
 「ああ」

 昼食は鯛の炊き込みご飯と野菜炒めだ。
 それに鱧の吸い物。
 もちろん、炊き込みご飯は36合だ。
 吸い物も寸胴だが、鱧を3つ以上入れた奴は「虎パンチ」だ。
 亜紀ちゃんも失神する。

 「美味しい!」

 雪野さんが感動する。
 早乙女も夢中で食べている。

 「雪野さんは、お腹が大分目立って来ましたね」
 「はい! 順調です!」
 「もう性別も?」
 「ええ。女の子のようです」
 「そうですか! じゃあ、早乙女はメロメロですね」
 「はい! ウフフフ」

 早乙女もニコニコしていた。
 嬉しいのだろう。

 「じゃあ、士王といい年回りですね」
 「ええ。お友達になれるといいんですが」
 「是非! ああ、楽しみだなぁ!」
 「はい!」

 早乙女が一層ニコニコした。

 「石神、本当に家まで世話してもらって」
 「いいんだって。俺がお前らを勝手に危ない場所に連れ込んだんだからな。このくらいはさせてくれよ」
 「いや、何から何まで」
 「今もお前のお陰で随分と助かってるしな」
 「後でちょっと話したいことがあるんだ」
 「ああ。じゃあ、新居を案内した後でな」
 「うん。今日も泊まらせてもらうし」
 「お前、図々しいな」
 「えぇ!」

 雪野さんが笑った。

 「しょうがねぇ。亜紀ちゃん!」
 「はーい!」
 「夕飯のメザシは変更だ。味噌汁も具は変えてくれ」
 「えー! 折角雑草集めたのにー!」
 「しょがねぇ。明日の晩にしてくれ」
 「分かりましたー!」

 雪野さんが大笑いした。

 「メザシでも構いませんよ?」
 
 早乙女も首を縦に振っている。

 「そうですか。亜紀ちゃん、じゃあ予定通りだ! ああ、雪野さんは二匹な!」
 「はい。じゃあ、私とタカさんで半分こでいいですか?」
 「しょうがねぇ!」

 「石神! 俺はメザシはいいよ!」

 早乙女が慌てて言った。

 「そうか?」
 
 雪野さんが爆笑した。

 食後のお茶を飲み、みんなで出掛けた。
 うちから直線で300メートルほどだ。
 歩いて1、2分。

 高さ5メートルの塀に囲まれている。
 塀は白い大谷石だ。
 もちろん、内側には鋼鉄の補強がある。
 高さ2メートルに溝が切ってあり、LEDの照明が入れてある。
 夜はぼんやりと塀が照らされ、いい雰囲気になる。

 道路から、建物の上部が見えている。

 「おい、石神!」
 「おう」
 「なんだ、これは!」

 二人が驚いている。

 「お宅は何階建てですか、って聞かれてさ。「8階建てですよ」って答えるとカッコイイよな!」
 「おい、お前!」
 「地下は2階な」
 「なんだと!」

 二人が呆然としていた。

 「ところでさ」
 「あんだよ」
 「まあ、大きい建物はまだ分かるよ」
 「うん」
 「隣にいる、あのでかいロボットはなんだ!」
 
 家屋の脇に、全長8メートルの人型ロボットがいる。
 全身が黒い金属で覆われ、数々の凶悪な武装がある。
 顔も髑髏で、額からでかい角が生えている。

 「防衛システムの一つな。俺と蓮花は「武神ピーポン」と名付けた」
 「ぶしん……」
 「大丈夫だよ。普段はただの置物に見えるから」
 「……」

 雪野さんが卒倒しそうになったので、俺は案内を途中でやめた。




 一旦、俺の家に引き返した。
 早乙女が雪野さんを支え、ずっと俺を睨んでいた。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、

ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、 私のおにいちゃんは↓ 泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...