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御堂家 防衛戦 Ⅶ エピローグ

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 「すまん、御堂!」

 地下の防衛施設から出て来た御堂家の皆さんに、俺は頭を下げた。
 御堂家自体は無事だったが、周辺のあちこちが大惨状だった。
 特に「空の王」が攻撃したあたりは、幅2キロ、深さ200メートルに渡って大峡谷が出来ていた。
 あの野郎、手加減がねぇ。

 「いや、いいんだ。僕たちも無事だったし、オロチも何とか大丈夫そうだしね」
 「すまん!」

 正巳さんたちも気にするなと言ってくれた。

 「あ! そうだぁ!」
 「どうした、石神?」

 「クロピョン! 土地を元に戻せ!」

 「ん?」

 地形が変わるまで破壊されたあちこちが、クロピョンの触手で修復されていった。
 さすがに、一瞬ではなかったが。

 「おー」
 「おい、石神!」
 「いや、あのね。クロピョンって地下資源とか自由に移動させられるみたいだったからさ。今思い付いた」
 「あの」
 「大成功だな!」
 「おい」

 正巳さんが大笑いしていた。

 「石神さんは最高だね」
 「ありがとうございます!」

 取り敢えず中に入った。
 澪さんがコーヒーを淹れてくれる。

 「石神、本当に助かった」
 「いや、元は俺のせいだからな。いつもすまん」
 
 本当に申し訳ない。
 正巳さんにも御堂にも仕事を休ませてしまったし、何よりもみなさんに怖い思いをさせてしまった。

 「石神さん、カッコ良かった!」

 柳が言った。

 「お前は泣きべそだったけどな!」
 「もう!」

 柳が膨れる。

 「でも、よくオロチを守ってくれたな」
 「そんな。私なんて本当に何も出来なくて」
 「そんなことはねぇよ。お前は必死にオロチに駆け寄って声を掛けてくれた。ニジンスキーたちだって嬉しかっただろうよ」
 「そうですか」

 柳が赤くなる。
 
 俺は全員に向かって言った。

 「さて、日本は大混乱だ。都内での怪物騒ぎはマスコミが全部報道した。ここでのことも、やがて大きく報道される」
 「石神さん! それじゃうちは!」

 柳が叫んだ。

 「まあ、お前たちは完全な被害者だ。ある超軍隊に救われたというな」
 「それって……」
 「そうだ。アメリカの危機を救った英雄的軍事組織によってだ。日本も「業」の標的になり、守られたということだな」
 「どういうことになるんですか?」

 俺は御堂の肩に手を置いた。

 「御堂が総理大臣になるってことだ」

 「「エェッーーーーーーー!!!!」」

 柳がまた叫び、正利も叫んだ。

 「前から、もしもの場合はということで御堂には話してある。正巳さんたちにもな」
 「石神、僕は未だ自信がないよ」
 「それでいいよ。俺の方で勝手にやるから」
 「おい!」

 俺は笑って御堂の肩を叩いた。

 「もう保守政党には話を通している。正巳さんもいるしな。正巳さんと御堂とで次の衆議院選挙に出馬してもらう。まあ、その時には日本中を御堂旋風が吹き荒れてるからな!」
 「石神、手加減してくれよ」
 「俺とロボは手加減を知らねぇ!」

 御堂が笑った。
 相変わらず、器の大きな男だ。

 「日本を変えるぞ! 「業」の強大な力を押し返す国にする」
 
 柳が驚いている。

 「でも石神さん! 幾ら政党がお父さんたちを受け入れたって」
 「大丈夫だ。御堂には莫大な支持者がいる」
 「え?」
 「数十万人は動かせるからな」
 「一体どこに???」

 「千万組、稲城会、それに神戸山王会。それにあいつらの準構成員たちだ」
 「「エェッーーーーー!!!!」」

 また柳と正利が踊戸いた。

 「お前ら! 何のために稲城会なんてわざわざ潰したと思ってんだ!」
 「え、ただのウサ晴らし?」

 俺は柳の傍まで行って、頭を引っぱたいた。

 「そうじゃねぇ! 御堂の票田のためだぁ!」
 「絶対後付けですよ」

 もう一度引っぱたいた。

 「あー、ともかくだ。御堂は絶大な支持を受けて政治家になり、そのまま総理大臣になる。野党も巻き込んで大きな改革をするぞ」
 「え、一体どんな」
 「それはこれから見ていてくれ。そうじゃないと楽しめないからな」
 「いや、石神……」

 御堂が困っている。

 「大丈夫だ、親友! 俺に任せろ!」
 「この件に関しては任せるととんでもないことになりそうだけど」

 俺は大笑いした。
 双子を傍に呼んだ。

 「ちょっと防衛システムが壊れちゃったからなー。治るまで一応こいつらを置いてくから」
 「それはありがたい!」

 正巳さんが大喜びだ。

 「まあ、うちのを移設するから数日で済むと思うけどな。何日かうるさくして申し訳ない」
 「いや、数日と言わず、夏休み一杯でもうちにいてくれ」
 「それじゃ澪さんが干からびちゃいますよ」

 澪さんが笑った。
 ルーとハーが「宜しくお願いします」と言った。

 「お前ら、ちょっとヘッポコのなんとか隊を鍛えてやれ」
 「「はーい!」」
 「ゲェッ!」

 ジェイが叫んだ。
 みんなが笑った。

 


 その夜は俺も御堂家に泊り、祝勝会を開いた。
 みんなが酒を飲み騒いでいる中で、俺は庭に出てオロチを見舞った。

 オロチは軒下に戻らず、庭に横たわっていた。
 ニジンスキーたちが頭の方で固まっている。

 「おい、大丈夫か?」

 オロチは舌を出して返事した。

 「よく守ってくれたな。すまなかったな、敵の戦力を甘く見ていた」
 
 俺をじっと見ている。

 「でも、あいつの矢を全部お前が引き受けてくれたんだろ? お陰で御堂家に被害は無かった。ありがとうな」
 
 オロチはまた舌を出した。

 「まあ、ゆっくり休んでくれ。双子が治療したから、回復も早いと思うぞ。何しろ日本一の医者の弟子なんだからな!」

 俺はオロチの頭を撫でた。
 ニジンスキーたちが俺の手にまとわりついた。

 「お前たちもありがとうな。でも、あんまし危ないことはすんなよ。まだ小さいんだからな」
 
 五匹が舌を出し、俺の腕を舐めた。
 一匹ずつキスをしてやり、オロチにもキスをする。

 「みんな愛してるぞ!」

 


 
 今回は、「業」も最大戦力に近いものを送り込んだはずだ。
 それを撃破し、俺たちは「業」と戦える確信を得た。
 また、「業」も戦力の立て直しに時間を費やすはずだった。
 俺たちはその間にまた態勢を整える。

 ただ、俺たちも「空の王」と「魔法陣」を出してしまった。
 「業」がどう観測したのかは分からないが。





 宴会場に戻ると、双子が調子に乗って「全裸ダンス」をしていたので引っぱたいた。
 どうしてこいつらはすぐに裸になりたがるのか。

 親の顔が見てぇ。
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