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御堂家 防衛戦 Ⅵ

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 「ジェイ! ヤバイぜ!」
 「ああ! なんだ、あの攻撃は?」

 突然襲った光の矢。
 それが数十とオロチの身体に突き刺さった。

 「俺たちは出るぞ!」
 「おお!」

 「マンモスの牙隊」が「Ωスーツ」を装備して外へ出て行った。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「石神!」
 
 御堂から連絡が来た。

 「分かってる! こっちも状況を把握している! すぐに行くぞ!」
 「頼む! オロチが!」

 あの冷静な御堂が半狂乱だった。
 横で叫んでいる柳の声も聞こえた。

 「イリス!」
 「はい」
 「すぐに「空の王」に御堂家を守るように言ってくれ!」
 「分かりました」

 「皇紀!」
 「はい!」
 「ルーとハーに連絡! 至急御堂家に飛べ!」
 「分かりました!」

 俺は「虎王」を握り、すぐに庭に出て飛んだ。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「柳さん! あんたまで出ちゃいけない!」

 ジェイは後から出て来た柳に叫んだ。

 「私もオロチを守ります!」
 「いかん! 敵がどんな攻撃をしているのかも分からないんだ! 今、タイガーが飛んで来る!」
 「それまで、絶対に!」

 1キロ先まで、残ったジェヴォーダンたちが迫っていた。
 その後ろに、凡そ500の改造歩兵がいるのが観測システムで分かっている。

 「不味いぜ! まだ7頭も残ってやがる」
 「レールガンが潰されたぜ! あの光の矢のせいだ!」

 レールガンの他、荷電粒子砲も大破していた。
 こちらの防衛システムを知っているようだ。

 「まだ「イーヴァ」が残ってる。あれは出したことがねぇからな!」
 「でも、撃てば多分」
 「言うな! ギリギリまで踏ん張るんだ! 俺たちはそのためにここにいる!」
 
 全員が雄叫びを上げた。

 「柳さん! あんたはオロチの傍に」
 「はい!」

 柳がオロチに近寄ると、その前に五匹の蛇がいた。

 「あんたたち!」
 
 母親を守るつもりなのが分かった。
 オロチは口を開けて苦しそうな呼吸をしている。

 「オロチ! 待ってて! 今石神さんが来るから!」

 オロチの胴には数十の傷跡がある。
 それほど大きくは無いが、今も血を流していた。

 「オロチ! しっかり!」

 柳は声を掛け続けた。





 突然、空が暗くなった。

 「なんだ!」
 「ジェイ! 新手か?」

 ジェイにも分からなかった。
 
 その時、ジェヴォーダンたちの上に巨大な雷光が降り注いだ。
 暗くなった地上が、逆に目を開けていられない程の光に満たされた。

 「おい、何が起こった!」

 しばらく何も見えない。
 やがて、すこしずつ景色が見えて来た。
 空は先ほどの快晴に戻っていた。

 「ジェイ!」

 後ろから声を掛けられた。
 
 「タイガー!!」

 ジェイが白い「Ωスーツ」を来た石神を見た。
 
 「待たせたな。よく頑張った」
 「あ、ああ」
 「残るは二体だ」
 「え?」

 「切り札を使った。まあ、あまり長くいると地上が崩壊するからな。もう帰ったが」
 「なんだ?」

 「あとは俺に任せろ」
 「あ、ああ! 頼む! タイガー!」
 「おう、任せろ!」

 ジェイは長い刀を抜いた石神を見た。




 戦神がそこに立っていた。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 双子が来たのが分かった。
 すぐに俺の隣に降り立つ。

 「オロチを頼む」
 「「はい!」」

 「ルーちゃん、ハーちゃん!」
 「柳ちゃん、ダメじゃない! なんで出て来てるの!」
 「だって!」
 「もう! でもよく頑張ったね。もう安心してね」
 「え、ええ」

 「敵はタカさんがやっつける。私たちはオロチを助けるから!」
 「お願い!」
 「「うん!」」

 双子は両手をオロチの傷跡に当てて行った。
 オロチの出血が止まって行く。

 「お願い!」

 柳が何度も叫んでいるのが聴こえた。




 目の前にゆっくりと姿を現わした二体。

 一体は薄い緑色の身体をした体長4メートルほどの弓使いだった。
 身長程の巨大な弓を持っている。
 耳は細く長く尖っていた。
 顔は皺の多い醜怪な面相だ。

 もう一体はもっと大きい。
 体長9メートルで、20メートルもある馬上大槍を握っている。
 また腰には別に10メートル近い大剣を吊っていた。
 姿は下半身が馬、上半身は人間のようだが、全身が水晶のように透明だ。
 顔は西洋兜を単純化したような、異様なマスクだった。

 あの「空の王」の空爆に耐えた。
 尋常な妖魔ではない。

 「てめぇら、よくも俺の大事なオロチをやってくれたな!」

 俺が叫ぶと、弓使いが口角を吊り上げて邪悪に笑った。
 水晶の騎士の表情は動かないが、同じく笑っているように感じた。

 「来い!」

 弓使いが構えた。
 俺は高速移動で側面に回り込む。
 圧を感じて急速上昇した。
 足下を何かが通過していく。
 あれがオロチをやったのだと分かった。

 俺は「トールハンマー」を二体に放った。
 ほとんどダメージはないが、多少動きは止まった。

 上空から「グングニール」を放ちながら、弓使いに急降下した。
 弓使いは顔を歪めながらも俺に矢を放とうとする。

 「遅ぇ!」

 俺の「虎王」が弓使いを両断した。
 耳が痛くなる程の絶叫を上げて、弓使いは斃れた。

 俺は咄嗟に地面に転がった。
 俺のすぐ脇を、水晶の騎士の槍が突き抜けた。
 そのまま、音速を超えるスピードで槍が突き出されて行く。
 俺もそれを超えるスピードで「虎王」を振るった。
 大槍が粉砕されていく。

 「「千斬」!」

 「虎王」を構えて念じた。
 無数の刃が水晶の騎士の大槍を破片に変えて行った。
 水晶の騎士は槍を捨て、腰の大剣を抜いた。

 《我にこれを抜かせるとはな》

 テレパシーが聞こえた。

 「俺が本当の「突き」を見せてやるぜ!」
 
 「虎王」を地面に突き立てた。

 「魔法陣!」

 俺の右手の先に、巨大な魔法陣が展開する。

 「「グングニール」!」

 俺は水晶の騎士に向かって放った。
 直径500メートルに拡がった俺の「グングニール」が、水晶の騎士を呑み込む。

 「クロピョン! 時空の裂け目を埋めろ!」

 クロピョンの巨大な触手が地面から伸びた。
 高速で空間を薙ぐ。

 水晶の騎士は消し飛んでいた。






 ジェイたちが駆け寄って来た。

 「おい、なんだよなぁ、これは」

 大きく抉れた地面があちこちに出来ていた。
 まだ高熱で燃えている場所もある。
 オロチの攻撃だろう。
  
 「まったくな。御堂、怒るかな」
 「おい、それかよ!」

 ジェイが俺の胸を叩いた。






 俺たちは大笑いした。
 双子も治療しながら笑い、柳も泣き顔で笑った。
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