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御堂家 防衛戦 Ⅳ
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「ほう、今日はローストビーフか」
正巳が嬉しそうに言った。
「石神さんのお子さんたちが好きそうだな!」
「はい、時間がありましたので、たまにはこういうものもと」
澪が笑顔で言った。
昨日から、石神が用意した地下の防衛施設に入っている。
この施設には、以前に石神が入れた家事ロボットがいる。
だから掃除も洗濯も、澪はする必要が無かった。
食事も作れるとのことだったが、せめてそれだけはと思い、澪が作った。
(きっと、石神さんが私をゆっくりさせるために用意したんだ)
澪はそう思っていた。
家族6人で食事にする。
他の使用人たちは別な居住区におり、そちらは全て家事ロボットが賄っているようだ。
今、地下の防衛施設には、50人近くが入っている。
まだ、ジェイたち「マンモスの牙隊」は地上にいた。
「さっき、石神から連絡が来たよ。敵がもうすぐ上陸するだろうって」
「そうですか。少し怖いですね」
「大丈夫だ。石神だからね!」
「そうですね。ウフフフ」
澪は御堂が石神を信頼しきっていることが少し可笑しかった。
本当に強い友情で結ばれている。
「昔からね、喧嘩は石神のものだったんだ」
「あなたは、喧嘩をしなかったんですか?」
「僕は弱いからね。でも、一度も僕が殴られることは無かったよ。全部石神が守ってくれた」
「そうですか」
「山中は何度か殴られたけどね」
「まあ!」
「山中はさ、自分が弱いくせに、石神を守ろうとしてたんだ。それでね」
「じゃあ、あなたも」
「僕は石神が絶対に勝つと思っていたからね。何もしなかった」
「ちょっとずるいですね」
「アハハハハハ!」
山中はとばっちりで殴られることも多かった。
でも、御堂は山中の男らしさを伝えたかった。
「僕はね、喧嘩は弱いけど、別なことで石神を助けるよ」
「そうですね」
「お父さん、何をやるの?」
柳が聞いた。
「うん、もうちょっと後でね。前に石神に頼まれたんだ。僕は大変なことだと思ったけど、やっぱり石神のためにやるよ」
「だから、何を?」
「まだ秘密だ。きっと柳も驚くよ」
「えー!」
御堂は笑った。
「俺も協力するからな」
正巳が言った。
「うん、お願いします。僕には分からないことだらけだから」
正巳は知っているらしい。
御堂は家族が不安になっていないことが嬉しかった。
前回のフランス外人部隊の襲撃では、結構緊張していたが。
ゆっくりと食事をしながら、その時を待った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
左門から連絡が来た。
「トラ兄さん! 静岡の洋上から、Mi-26「ヘイローEが」飛び立ったよ!」
ロシアの重量物運搬の輸送ヘリだ。
「数は30。山梨方面に向かってる!」
「そうか!」
「何か巨大なものを吊ってる! ジェヴォーダンだと思うよ」
「ジェヴォーダンの数は分かるか?」
「もうちょっと後でかな。今哨戒機が飛んだ。米軍も同じだよ」
「ああ、攻撃はするなよ? 途中で墜とされると却って厄介だしな」
「分かってる。米軍にも念のため伝えておくよ」
「頼む」
俺は御堂に連絡した。
御堂は慌てることなく、状況を受け入れた。
「みんなで食事をしていたんだ。ローストビーフを食べたよ」
「そうか、珍しいな」
「澪がやることが無くてね。いつもよりも美味しいものを作ってくれてるよ」
「何よりだ。なるべく早く終わらせるつもりだけど、少し時間を掛けた方がいいか?」
「アハハハハハ! いや、早く終わらせてくれ。僕も仕事があるからね」
「そうだな」
御堂の気遣いが有難い。
俺のせいでとんでもないことになっているのだ。
ジェイにも連絡した。
「もうすぐ、攻撃が始まる。ヤバイ雰囲気になったら、すぐに地下へ入れよな」
「ああ、分かってる。心配すんな。俺たちは双子ちゃんに鍛えられたんだからな」
「麗星もな」
「あっちは勘弁してくれ。首がぶっ飛ぶまでしごかれるなんて、二度と御免だ」
「アハハハハ! じゃあ、頼むぞ!」
「おう!」
まだ、俺のゴングは鳴っていない。
皇紀に御堂家の防衛システムとのリンクを再度確認させ、俺は庭に出た。
「イリス!」
すぐに、天空からペガサスが駆け降りて来る。
「我が主」
イリスは俺の目の前で白い美しいドレスの女になった。
「相変わらずお前は美しいな」
「そうか」
イリスがはにかんでいるように見えた。
「一緒にいてくれ。俺が言ったら、「空の王」に伝えてくれ」
「分かった」
俺はイリスを連れ、リヴィングに戻った。
「ヒェ!」
皇紀が驚く。
「ミントティでも飲むか?」
「いただく。主の作ったものなら」
俺はPC群にへばりついている皇紀の分も淹れた。
「美味しい」
「そうか、ゆっくりしてくれ」
「うん」
皇紀が「誰ですか?」という目で俺を見ている。
俺はメモを書き、イリスであり、鬼娘には黙ってろと伝えた。
皇紀は大きく頷く。
イリスと一緒にテレビを観た。
「太陽界」のテロの状況が次第に明らかになり、死者500人を下らないと報道されていた。
凄惨な現場は今は放映されない。
レポーターが離れた場所で、被害の様子を叫んでいる。
泣き出したレポーターもいた。
警官隊と一緒に、死傷者を運んでいる人間たちも報道された。
関東・千万組の人間であることが明らかになる。
「私ら、こういう万一の時には身を挺して働けと言われてますんで」
レポーターのマイクに答えている。
男たちは、瓦礫を運び、次々と怪我人を救出していった。
元稲城会だったという人間も報道されていった。
ネットで、ヤクザたちの美談が急速に広まっていった。
一江だ。
俺の隣で、イリスが俺の肩の顎を乗せ、俺の匂いを嗅いでいた。
イリスの髪も、いい香りがした。
正巳が嬉しそうに言った。
「石神さんのお子さんたちが好きそうだな!」
「はい、時間がありましたので、たまにはこういうものもと」
澪が笑顔で言った。
昨日から、石神が用意した地下の防衛施設に入っている。
この施設には、以前に石神が入れた家事ロボットがいる。
だから掃除も洗濯も、澪はする必要が無かった。
食事も作れるとのことだったが、せめてそれだけはと思い、澪が作った。
(きっと、石神さんが私をゆっくりさせるために用意したんだ)
澪はそう思っていた。
家族6人で食事にする。
他の使用人たちは別な居住区におり、そちらは全て家事ロボットが賄っているようだ。
今、地下の防衛施設には、50人近くが入っている。
まだ、ジェイたち「マンモスの牙隊」は地上にいた。
「さっき、石神から連絡が来たよ。敵がもうすぐ上陸するだろうって」
「そうですか。少し怖いですね」
「大丈夫だ。石神だからね!」
「そうですね。ウフフフ」
澪は御堂が石神を信頼しきっていることが少し可笑しかった。
本当に強い友情で結ばれている。
「昔からね、喧嘩は石神のものだったんだ」
「あなたは、喧嘩をしなかったんですか?」
「僕は弱いからね。でも、一度も僕が殴られることは無かったよ。全部石神が守ってくれた」
「そうですか」
「山中は何度か殴られたけどね」
「まあ!」
「山中はさ、自分が弱いくせに、石神を守ろうとしてたんだ。それでね」
「じゃあ、あなたも」
「僕は石神が絶対に勝つと思っていたからね。何もしなかった」
「ちょっとずるいですね」
「アハハハハハ!」
山中はとばっちりで殴られることも多かった。
でも、御堂は山中の男らしさを伝えたかった。
「僕はね、喧嘩は弱いけど、別なことで石神を助けるよ」
「そうですね」
「お父さん、何をやるの?」
柳が聞いた。
「うん、もうちょっと後でね。前に石神に頼まれたんだ。僕は大変なことだと思ったけど、やっぱり石神のためにやるよ」
「だから、何を?」
「まだ秘密だ。きっと柳も驚くよ」
「えー!」
御堂は笑った。
「俺も協力するからな」
正巳が言った。
「うん、お願いします。僕には分からないことだらけだから」
正巳は知っているらしい。
御堂は家族が不安になっていないことが嬉しかった。
前回のフランス外人部隊の襲撃では、結構緊張していたが。
ゆっくりと食事をしながら、その時を待った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
左門から連絡が来た。
「トラ兄さん! 静岡の洋上から、Mi-26「ヘイローEが」飛び立ったよ!」
ロシアの重量物運搬の輸送ヘリだ。
「数は30。山梨方面に向かってる!」
「そうか!」
「何か巨大なものを吊ってる! ジェヴォーダンだと思うよ」
「ジェヴォーダンの数は分かるか?」
「もうちょっと後でかな。今哨戒機が飛んだ。米軍も同じだよ」
「ああ、攻撃はするなよ? 途中で墜とされると却って厄介だしな」
「分かってる。米軍にも念のため伝えておくよ」
「頼む」
俺は御堂に連絡した。
御堂は慌てることなく、状況を受け入れた。
「みんなで食事をしていたんだ。ローストビーフを食べたよ」
「そうか、珍しいな」
「澪がやることが無くてね。いつもよりも美味しいものを作ってくれてるよ」
「何よりだ。なるべく早く終わらせるつもりだけど、少し時間を掛けた方がいいか?」
「アハハハハハ! いや、早く終わらせてくれ。僕も仕事があるからね」
「そうだな」
御堂の気遣いが有難い。
俺のせいでとんでもないことになっているのだ。
ジェイにも連絡した。
「もうすぐ、攻撃が始まる。ヤバイ雰囲気になったら、すぐに地下へ入れよな」
「ああ、分かってる。心配すんな。俺たちは双子ちゃんに鍛えられたんだからな」
「麗星もな」
「あっちは勘弁してくれ。首がぶっ飛ぶまでしごかれるなんて、二度と御免だ」
「アハハハハ! じゃあ、頼むぞ!」
「おう!」
まだ、俺のゴングは鳴っていない。
皇紀に御堂家の防衛システムとのリンクを再度確認させ、俺は庭に出た。
「イリス!」
すぐに、天空からペガサスが駆け降りて来る。
「我が主」
イリスは俺の目の前で白い美しいドレスの女になった。
「相変わらずお前は美しいな」
「そうか」
イリスがはにかんでいるように見えた。
「一緒にいてくれ。俺が言ったら、「空の王」に伝えてくれ」
「分かった」
俺はイリスを連れ、リヴィングに戻った。
「ヒェ!」
皇紀が驚く。
「ミントティでも飲むか?」
「いただく。主の作ったものなら」
俺はPC群にへばりついている皇紀の分も淹れた。
「美味しい」
「そうか、ゆっくりしてくれ」
「うん」
皇紀が「誰ですか?」という目で俺を見ている。
俺はメモを書き、イリスであり、鬼娘には黙ってろと伝えた。
皇紀は大きく頷く。
イリスと一緒にテレビを観た。
「太陽界」のテロの状況が次第に明らかになり、死者500人を下らないと報道されていた。
凄惨な現場は今は放映されない。
レポーターが離れた場所で、被害の様子を叫んでいる。
泣き出したレポーターもいた。
警官隊と一緒に、死傷者を運んでいる人間たちも報道された。
関東・千万組の人間であることが明らかになる。
「私ら、こういう万一の時には身を挺して働けと言われてますんで」
レポーターのマイクに答えている。
男たちは、瓦礫を運び、次々と怪我人を救出していった。
元稲城会だったという人間も報道されていった。
ネットで、ヤクザたちの美談が急速に広まっていった。
一江だ。
俺の隣で、イリスが俺の肩の顎を乗せ、俺の匂いを嗅いでいた。
イリスの髪も、いい香りがした。
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