1,152 / 2,840
亜紀ちゃんとドライブ Ⅱ
しおりを挟む
陳さんの店で最高に美味い北京ダックを、俺は1羽、亜紀ちゃんは3羽食べた。
亜紀ちゃんはもっと食べられるが、そこで辞めた。
「なんだよ、遠慮するなよ」
「いいんです。今日は女らしくするんです」
「え?」
「なんですか!」
「いや、3羽喰う女っていねぇと思うぞ?」
「でも、六花さんも食べますよね」
「あー、そうかー」
そういえばそうだ。
「ところでさ。士王がそろそろ離乳食になるんだ」
「あー! そうですか!」
「栞ももちろん勉強してるけど、桜花たちはプロ並みだからな」
「タカさんも勉強してますよね!」
「いや、俺はあんまし。任せてるよ」
「そうですか?」
「まあ、いろいろ喰わせたいとは思ってるけどな」
「楽しみですね!」
亜紀ちゃんがニコニコして言う。
「そうなんだよな。早く一緒に飯を食いたいよな!」
「お酒も!」
「それはしばらく先だ。あ! お前絶対に飲ませるなよ!」
「分かってますよ!」
まあ、分かってるだろうが。
「でもな、山中が言ってたことがやっと分かったよ。あいつ、毎日子どもが成長するのが楽しいんだって言ってた。その通りだな」
「はい!」
「早く一緒に酒を飲みたいってこともな。よく分かるよ」
「そうですねー!」
「まあ、もう長女とは飲んでるけどな!」
「アハハハハハ!」
アワビのスープが来た。
アツアツのものを二人で食べる。
「士王ちゃんはイモムシにならなかったんですよね」
「ああ、そうだけど、よく考えると、やっぱり亜紀ちゃんたちへの特別な思いだったんだろうなぁ」
「どういうことです?」
「四六時中一緒にいる家族というかな。柳は、そこでほんのちょっと短いからな。そういうことじゃないかと思うよ」
「なるほど」
「俺はずっと一人だった。お袋が再婚して遠くに行っちゃってな。二十年間独りでいたわけだ。でも、突然亜紀ちゃんたちが来た。俺は毎日が一変して楽しかったんだよ」
「嬉しいですよ!」
アワビがまた美味かったので、追加で二人前頼んだ。
「本当にな。俺が知らない、本当に楽しい日々になった。今でもな。だからだろうなぁ。突然それが無くなることを、俺は自分でも分からないほど、恐れていたんだな」
「そうですか」
「人間は厄介だよ。当たり前と思っていても、それを喪うこともある。でもな、それを恐れていたら、何も出来ない。一歩も進めない」
「はい!」
「お袋は仕方ないとしても、奈津江やレイのことで、俺は臆病にもなっているんだろう」
「そんなことは……」
「いや、それを認めなければ、俺も進めない。俺は恐れながら、前に進まなければならない」
「はい」
陳さんが、伊勢海老の蒸し物を持って来た。
「トラちゃん! 今日の伊勢海老は絶品よ」
「ありがとうございます。ああ、本当に美味そうだ!」
「アハハハハ! 今日はこれ、お店のサービスね」
「ダメですよ、陳さん!」
「いいのいいの。沢山食べてくれたお礼」
「困ったなー」
「そろそろタピオカにする?」
俺は亜紀ちゃんに注文しろと言ったが、亜紀ちゃんはもういいと言った。
「じゃあ、ゆっくり食べててね。タピオカも一杯用意するよ」
「ありがとうございます」
伊勢海老もまた美味かった。
ほんのりとライムの香りがする。
締めにいいものだった。
陳さんがでかいグラスに、たっぷりのタピオカココナッツミルクを持って来た。
俺は会計を頼んだ。
「今度はよ」
「はい?」
「せめてネコになってくれ」
「アハハハハハハ!」
「もう、何の文句もなく、お前らを可愛がってやるから」
「じゃあ、そうしますね」
「頼むわ」
俺たちは店を出て、乾さんの店に向かった。
乾さんには連絡しなかった。
驚かせようと思った。
丁度昼時だったので、乾さんは店にいなかった。
ディディと上で食事をしているらしい。
「今呼んで来ますよ」
顔馴染みなった店員の男性が言ったが、俺は断って、二階に上がらせてもらった。
亜紀ちゃんと、二階のドアをノックする。
「ちょっと待て! 上がって来るなと言っただろう!」
「こんにちはー! 俺ですよー!」
「と、トラぁー!
「そうですよー! 遊びに来ましたー」
「おい! ちょっと待て! 今出るから!」
亜紀ちゃんと顔を見合わせた。
食事中とは聞いたが、何かおかしい。
「入りますよー!」
「待てってぇー!」
バタバタと音が聞こえる。
数分後、ドアが開いた。
「連絡しろよ!」
「すいません。驚かせようと思って」
「驚いたよ!」
乾さんのズボンのジッパーが開いていた。
「ズボン、開いてますよ?」
「!」
乾さんが慌てて上に引き上げた。
ディディも出て来る。
「石神様、ようこそ。先日は大変お世話になりました」
「ああ、いいって。ディディ、俺が命令する。正直に答えろ」
「はい」
「今、ヤッテた?」
「はい」
「ディディー!」
俺と亜紀ちゃんは大笑いした。
「すいませんでした。下で待ってますね」
「おい、トラ!」
二人で下に降りた。
ソファに座ってると、乾さんの指示だろうが、コーヒーが出された。
亜紀ちゃんと飲みながら、店の中を見ていた。
乾さんが降りて来る。
「乾さん、早いですね!」
「うるせぇ!」
乾さんが赤い顔をしていた。
「今度から連絡しますね」
「と、当然だぁ!」
「でも、不味いタイミングだったら、そう言って下さいね?」
「おい!」
「娘の教育上の問題もあることですし」
「トラぁ!」
亜紀ちゃんが笑っていた。
ディディが降りて来た。
ニコニコしている。
まあ、ディディは乾さんが大好きなので、何も恥ずかしいこともない。
乾さんに食事を聞かれたが、陳さんの店で食べて来たと伝えた。
「すいません。もうここでゆっくり話をするしかなくて」
「いや、いいけどよ」
「じゃあ、何の話をしましょうか」
「トラ、もう勘弁しろ」
みんなで笑った。
俺は乾さんに、オリジナルのバイクの開発の話を聞いた。
国内の有名なメーカーにエンジンの調達を頼んでいる。
乾さんの設計で組んでもらう予定だ。
「トラの口利きのお陰で、スムーズに進んでいるよ」
「そうですか。まあ、うちは丁度株主にもなってますしね」
「お前はすげぇなぁ」
「いや。バイクが好きなだけですよ」
乾さんは今、フレームの設計を始め、各種パーツの選定も始めている。
「でもな、俺なんかの作ったバイクを誰か買うのかな」
俺が手を挙げた。
亜紀ちゃんも手を挙げる。
「アハハハハ! そうか、宜しくな」
俺は一つのアイデアを言った。
「乾さんは名家の家系じゃないですか」
「お前、よく知ってんな」
「だからライトを十文字にしましょうよ」
「ああ、うちの家紋か」
「はい。絶対カッチョイイですって!」
「面白そうだな!」
俺は紙と鉛筆を借り、デザイン画を描いた。
乾さんが乗って来る。
「いいな!」
「そうでしょ!」
「素敵ですよ!」
亜紀ちゃんも喜んだ。
三人で話し合い、幾つもデザイン画が出来た。
乾さんに検討してもらう。
夕方になり、俺たちは帰ると言った。
「おい、夕飯を喰ってけよ」
「いいですよ」
「遠慮すんなって!」
「いや、ディディが寂しそうですし」
「おい!」
「アハハハハハ!」
帰ることにした。
乾さんとの夕飯も楽しそうだが、亜紀ちゃんと出掛けたかった。
「亜紀ちゃん、あそこへ行くか」
「え、どこです?」
「城ケ崎に行こう」
「ああ!」
前に亜紀ちゃんとドライブに行った場所だ。
奈津江のことを初めて話した。
俺たちの思い出の場所だ。
亜紀ちゃんはもっと食べられるが、そこで辞めた。
「なんだよ、遠慮するなよ」
「いいんです。今日は女らしくするんです」
「え?」
「なんですか!」
「いや、3羽喰う女っていねぇと思うぞ?」
「でも、六花さんも食べますよね」
「あー、そうかー」
そういえばそうだ。
「ところでさ。士王がそろそろ離乳食になるんだ」
「あー! そうですか!」
「栞ももちろん勉強してるけど、桜花たちはプロ並みだからな」
「タカさんも勉強してますよね!」
「いや、俺はあんまし。任せてるよ」
「そうですか?」
「まあ、いろいろ喰わせたいとは思ってるけどな」
「楽しみですね!」
亜紀ちゃんがニコニコして言う。
「そうなんだよな。早く一緒に飯を食いたいよな!」
「お酒も!」
「それはしばらく先だ。あ! お前絶対に飲ませるなよ!」
「分かってますよ!」
まあ、分かってるだろうが。
「でもな、山中が言ってたことがやっと分かったよ。あいつ、毎日子どもが成長するのが楽しいんだって言ってた。その通りだな」
「はい!」
「早く一緒に酒を飲みたいってこともな。よく分かるよ」
「そうですねー!」
「まあ、もう長女とは飲んでるけどな!」
「アハハハハハ!」
アワビのスープが来た。
アツアツのものを二人で食べる。
「士王ちゃんはイモムシにならなかったんですよね」
「ああ、そうだけど、よく考えると、やっぱり亜紀ちゃんたちへの特別な思いだったんだろうなぁ」
「どういうことです?」
「四六時中一緒にいる家族というかな。柳は、そこでほんのちょっと短いからな。そういうことじゃないかと思うよ」
「なるほど」
「俺はずっと一人だった。お袋が再婚して遠くに行っちゃってな。二十年間独りでいたわけだ。でも、突然亜紀ちゃんたちが来た。俺は毎日が一変して楽しかったんだよ」
「嬉しいですよ!」
アワビがまた美味かったので、追加で二人前頼んだ。
「本当にな。俺が知らない、本当に楽しい日々になった。今でもな。だからだろうなぁ。突然それが無くなることを、俺は自分でも分からないほど、恐れていたんだな」
「そうですか」
「人間は厄介だよ。当たり前と思っていても、それを喪うこともある。でもな、それを恐れていたら、何も出来ない。一歩も進めない」
「はい!」
「お袋は仕方ないとしても、奈津江やレイのことで、俺は臆病にもなっているんだろう」
「そんなことは……」
「いや、それを認めなければ、俺も進めない。俺は恐れながら、前に進まなければならない」
「はい」
陳さんが、伊勢海老の蒸し物を持って来た。
「トラちゃん! 今日の伊勢海老は絶品よ」
「ありがとうございます。ああ、本当に美味そうだ!」
「アハハハハ! 今日はこれ、お店のサービスね」
「ダメですよ、陳さん!」
「いいのいいの。沢山食べてくれたお礼」
「困ったなー」
「そろそろタピオカにする?」
俺は亜紀ちゃんに注文しろと言ったが、亜紀ちゃんはもういいと言った。
「じゃあ、ゆっくり食べててね。タピオカも一杯用意するよ」
「ありがとうございます」
伊勢海老もまた美味かった。
ほんのりとライムの香りがする。
締めにいいものだった。
陳さんがでかいグラスに、たっぷりのタピオカココナッツミルクを持って来た。
俺は会計を頼んだ。
「今度はよ」
「はい?」
「せめてネコになってくれ」
「アハハハハハハ!」
「もう、何の文句もなく、お前らを可愛がってやるから」
「じゃあ、そうしますね」
「頼むわ」
俺たちは店を出て、乾さんの店に向かった。
乾さんには連絡しなかった。
驚かせようと思った。
丁度昼時だったので、乾さんは店にいなかった。
ディディと上で食事をしているらしい。
「今呼んで来ますよ」
顔馴染みなった店員の男性が言ったが、俺は断って、二階に上がらせてもらった。
亜紀ちゃんと、二階のドアをノックする。
「ちょっと待て! 上がって来るなと言っただろう!」
「こんにちはー! 俺ですよー!」
「と、トラぁー!
「そうですよー! 遊びに来ましたー」
「おい! ちょっと待て! 今出るから!」
亜紀ちゃんと顔を見合わせた。
食事中とは聞いたが、何かおかしい。
「入りますよー!」
「待てってぇー!」
バタバタと音が聞こえる。
数分後、ドアが開いた。
「連絡しろよ!」
「すいません。驚かせようと思って」
「驚いたよ!」
乾さんのズボンのジッパーが開いていた。
「ズボン、開いてますよ?」
「!」
乾さんが慌てて上に引き上げた。
ディディも出て来る。
「石神様、ようこそ。先日は大変お世話になりました」
「ああ、いいって。ディディ、俺が命令する。正直に答えろ」
「はい」
「今、ヤッテた?」
「はい」
「ディディー!」
俺と亜紀ちゃんは大笑いした。
「すいませんでした。下で待ってますね」
「おい、トラ!」
二人で下に降りた。
ソファに座ってると、乾さんの指示だろうが、コーヒーが出された。
亜紀ちゃんと飲みながら、店の中を見ていた。
乾さんが降りて来る。
「乾さん、早いですね!」
「うるせぇ!」
乾さんが赤い顔をしていた。
「今度から連絡しますね」
「と、当然だぁ!」
「でも、不味いタイミングだったら、そう言って下さいね?」
「おい!」
「娘の教育上の問題もあることですし」
「トラぁ!」
亜紀ちゃんが笑っていた。
ディディが降りて来た。
ニコニコしている。
まあ、ディディは乾さんが大好きなので、何も恥ずかしいこともない。
乾さんに食事を聞かれたが、陳さんの店で食べて来たと伝えた。
「すいません。もうここでゆっくり話をするしかなくて」
「いや、いいけどよ」
「じゃあ、何の話をしましょうか」
「トラ、もう勘弁しろ」
みんなで笑った。
俺は乾さんに、オリジナルのバイクの開発の話を聞いた。
国内の有名なメーカーにエンジンの調達を頼んでいる。
乾さんの設計で組んでもらう予定だ。
「トラの口利きのお陰で、スムーズに進んでいるよ」
「そうですか。まあ、うちは丁度株主にもなってますしね」
「お前はすげぇなぁ」
「いや。バイクが好きなだけですよ」
乾さんは今、フレームの設計を始め、各種パーツの選定も始めている。
「でもな、俺なんかの作ったバイクを誰か買うのかな」
俺が手を挙げた。
亜紀ちゃんも手を挙げる。
「アハハハハ! そうか、宜しくな」
俺は一つのアイデアを言った。
「乾さんは名家の家系じゃないですか」
「お前、よく知ってんな」
「だからライトを十文字にしましょうよ」
「ああ、うちの家紋か」
「はい。絶対カッチョイイですって!」
「面白そうだな!」
俺は紙と鉛筆を借り、デザイン画を描いた。
乾さんが乗って来る。
「いいな!」
「そうでしょ!」
「素敵ですよ!」
亜紀ちゃんも喜んだ。
三人で話し合い、幾つもデザイン画が出来た。
乾さんに検討してもらう。
夕方になり、俺たちは帰ると言った。
「おい、夕飯を喰ってけよ」
「いいですよ」
「遠慮すんなって!」
「いや、ディディが寂しそうですし」
「おい!」
「アハハハハハ!」
帰ることにした。
乾さんとの夕飯も楽しそうだが、亜紀ちゃんと出掛けたかった。
「亜紀ちゃん、あそこへ行くか」
「え、どこです?」
「城ケ崎に行こう」
「ああ!」
前に亜紀ちゃんとドライブに行った場所だ。
奈津江のことを初めて話した。
俺たちの思い出の場所だ。
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~
みつまめ つぼみ
キャラ文芸
ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。
彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。
そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!
彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。
離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。
香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる