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竹芝桟橋で
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「ジェシカ! お前はやっぱり裏切り者だったんだな!」
「そんな! 私は最初から私の役割を果たしただけです!」
「ちくしょー! お前を信じた俺がバカだったということか!」
「まあ、そういうことになりますかね」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
夕飯の後、俺はジェシカとアヴェンタドールでドライブに出掛けた。
「凄い車ですね!」
「まーなー」
シザードアを開いて助手席に乗せ、オッパイを揉んだ。
「!」
「儀式だ。大人しくしろ」
「?」
完全なセクハラだった。
しかし、ジェシカは文句も言わずに前を向いた。
後で亜紀ちゃんに説明してもらおう。
「どこへ行くんですか?」
「今日はあまり遠くでなくな。海を見に行こう」
「素敵ですね!」
まだ外は明るい。
午後6時半だった。
竹芝桟橋へ向かう。
「ジェシカは日本で暮らしていたんだよな?」
「はい。でも、あまり出掛けませんでしたかね。勉強が大変で」
「そうか。まあ、今後はあちこちへ行ってもらうことにもなるだろうけどな。取り敢えずは蓮花の研究所で修行だ」
「はい!」
「いろいろ紹介しなければならない連中もいるしな。警察関係では今日の早乙女が中心になるし、自衛隊では左門だ。それに京都の麗星さんや群馬の斬や千両ともな。そのうちにアラスカへも一緒に行ってもらうよ」
「はい。楽しみです」
「みんないい連中なんだ。蓮花の研究所は特にな」
「そうですか」
「ああ、それと何と言っても御堂な!」
「あ! 亜紀さんから聞きました!」
「そうか! いい奴だろ?」
「いえ、そういうことではなく」
「なんだ?」
「石神さんに向かって、御堂さんの悪口は絶対に言わないようにと」
「アハハハハハ!」
俺は御堂の話をした。
幾らでも御堂の魅力は出て来た。
語り尽くせない。
「柳さんは御堂さんのお嬢さんなんですよね?」
「そうだ。あいつの魅力の90%は御堂の娘ってことだからな!」
「酷いですね」
ジェシカが笑った。
「何を言う! 最強の装備物だろう!」
「アハハハハハ!」
竹芝桟橋に着いた。
二人で埠頭を歩き、暮れていく海を眺めた。
「綺麗ですね」
「ああ。砂浜は無いけどな」
俺はジェシカをベンチに座らせ、自動販売機でコークを買った。
しばらく、黙って海を見詰めた。
「いきなり生活が変わったけど、大丈夫か?」
「はい。みなさん優しくしてくれますし」
「今のうちはな」
「アハハハ」
海は完全に夜になった。
埠頭のライトが海面に照り、静かに揺れていた。
「本当は、ジェシカなんかはアメリカで暮らした方が幸せなのは分かってるんだ」
「そんなことは」
「でもな。俺たちは何にしても少なすぎる。蓮花も限界だ。だからどうしてもジェシカが欲しかった」
「私、頑張りますよ」
「頼むな。蓮花もな、本当に楽しみにしてるんだ。いろいろ教え込むことを用意しているようだから、覚悟してくれな」
「はい!」
ジェシカが嬉しそうに笑った。
人間は、自分を必要とされるほど幸せなことはない。
そういうことが分かっている女だった。
「ああ、ここには月に何度か来るんだよ」
「そうなんですか」
「うちのロボな。あいつは普通のネコじゃない」
「え?」
「尾が二つに割れて、口から巨大な光の球を吐く。それが爆発すると、物凄い衝撃を生むんだよ」
「はい???」
俺は笑って、今度見せると言った。
「ジェシカはまだ「あやかし」は信じられないか?」
「まあ、正直に言うと。でも石神さんが仰るんだから、それはあるのだとも思っていますが」
「目の前にしないと、ということか」
「そうですね」
俺は立ち上がった。
「タマ!」
「なんだ」
突如目の前に現れた着物姿の女に、ジェシカが驚く。
「こいつはジェシカだ。俺たちの仲間だ」
「分かった。こいつも守ればいいんだな」
「そうだ。必ず守ってくれ。蓮花の所で働くようになるが、重要人物だからな」
「承知した。まあ、他の女と比べて弱い奴だな」
「ああ、「花岡」は知らないからな」
「蓮花と同じだな」
「そういうことだ。頼むぞ」
「ああ」
タマが消えた。
「い、石神さん!」
ジェシカは激しく動揺しているが、俺は無視した。
「イリス!」
海の方角の空から、淡く光るものが高速で近づいて来た。
すぐに目の前の地面に降り立つ。
ペガサスが目の前でレースのドレスの美しい女になった。
「呼んだか、主」
「お前の美しい姿を見せたい女がいるんだ」
「この女か」
「そうだ。ジェシカだ。宜しくな」
「我が主の言うことであればな」
「お前が気付いた範囲でいい。この女が困っていたり危険な場合は助けてやってくれ」
「分かった。なるべくそうしよう」
「この女が助かれば、俺も嬉しい」
「ならば、必ずだ」
「頼むぞ」
「また綺麗な場所を見つけた」
「そうか、今度一緒に行こう」
「ああ」
イリスは去った。
「……」
「どうだ、信じられたか?」
「はい……」
ジェシカは呆然としていた。
「しっかりしろ。俺たちはこれが日常なんだからな」
「今の、最初はペガサスに見えました」
「ペガサスだからな!」
「すぐに、美しい女性になりましたが」
「イリスだからな!」
「もう、受け入れます」
「そうしろ!」
俺たちは笑った。
俺は、いきなりイリスの訪問を受け、「空の王」とまみえた話をした。
「最初は俺も動転してよ。パジャマのままで出掛けるところだった」
「アハハハハ」
「ニャンコ柄のな! 慌てて着替えたけど、財布だの忘れて。病院へ行ってから気付いたけど、困ったぜ」
「「空の王」というのは、どういうものなんですか?」
「全長数千キロ。帯のような姿だったな」
「!」
「地表に近づけないんだよ。影響力が大きすぎてな。だから普段は地球の近くの宇宙空間にいる。まあ、それも俺に会うためだったかもしれんけどな」
「そんな!」
「さっきのイリスは、普段は別な世界にいるらしい。まあ、俺にもよく分からんよ」
「私は石神さんこそ分かりませんが」
「アハハハハハ!」
「でも、石神さんが途轍もなく強い方なのはよく分かりました」
「そうか!」
帰りの車の中で、漫画家・猪鹿コウモリの話をした。
「ロボの「ばーん」も一緒に見る仲良しになったんだ。早乙女が漫画の原作を前にやってさ。『サーモン係長』っていう、人気の漫画にもなってるんだよ」
「へぇー!」
家に帰り、風呂に入ってみんなでゲームをした。
俺の大好きな「人狼ゲーム」だ。
子どもたちは辞めようと言ったが、俺はジェシカの歓迎祝いだと強行した。
俺が負けた。
「ジェシカ! お前はやっぱり裏切り者だったんだな!」
「そんな! 私は最初から私の役割を果たしただけです!」
「ちくしょー! お前を信じた俺がバカだったということか!」
「まあ、そういうことになりますかね」
「お前ら、いい加減にしろよな!」
「また! タカさん弱いくせにいつも機嫌が悪くなるんだから!」
亜紀ちゃんに怒られた。
「俺はみんなを信じてるのに」
「だから、これはそういうゲームでしょ!」
「酷いよ」
ジェシカが笑っていた。
「もう! 人狼ゲームは今後封印します!」
「やめてくれ! 俺は大好きなんだ!」
「だったら、もうちょっと強くなって下さい!」
俺は不貞腐れた。
「ジェシカさん、この人は本当に弱いくせにやりたがるんですよ」
「カワイイですね!」
「じぇしかー!」
みんなが笑った。
ロボが自分のおもちゃ箱から、ピンポン玉を持って来た。
ロボピンポンをやり、俺は機嫌を直した。
「ネコに慰められてますよ」
亜紀ちゃんが言い、ジェシカがまた笑った。
「これで、悪知恵の王様なんですけどね」
俺も笑った。
「そんな! 私は最初から私の役割を果たしただけです!」
「ちくしょー! お前を信じた俺がバカだったということか!」
「まあ、そういうことになりますかね」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
夕飯の後、俺はジェシカとアヴェンタドールでドライブに出掛けた。
「凄い車ですね!」
「まーなー」
シザードアを開いて助手席に乗せ、オッパイを揉んだ。
「!」
「儀式だ。大人しくしろ」
「?」
完全なセクハラだった。
しかし、ジェシカは文句も言わずに前を向いた。
後で亜紀ちゃんに説明してもらおう。
「どこへ行くんですか?」
「今日はあまり遠くでなくな。海を見に行こう」
「素敵ですね!」
まだ外は明るい。
午後6時半だった。
竹芝桟橋へ向かう。
「ジェシカは日本で暮らしていたんだよな?」
「はい。でも、あまり出掛けませんでしたかね。勉強が大変で」
「そうか。まあ、今後はあちこちへ行ってもらうことにもなるだろうけどな。取り敢えずは蓮花の研究所で修行だ」
「はい!」
「いろいろ紹介しなければならない連中もいるしな。警察関係では今日の早乙女が中心になるし、自衛隊では左門だ。それに京都の麗星さんや群馬の斬や千両ともな。そのうちにアラスカへも一緒に行ってもらうよ」
「はい。楽しみです」
「みんないい連中なんだ。蓮花の研究所は特にな」
「そうですか」
「ああ、それと何と言っても御堂な!」
「あ! 亜紀さんから聞きました!」
「そうか! いい奴だろ?」
「いえ、そういうことではなく」
「なんだ?」
「石神さんに向かって、御堂さんの悪口は絶対に言わないようにと」
「アハハハハハ!」
俺は御堂の話をした。
幾らでも御堂の魅力は出て来た。
語り尽くせない。
「柳さんは御堂さんのお嬢さんなんですよね?」
「そうだ。あいつの魅力の90%は御堂の娘ってことだからな!」
「酷いですね」
ジェシカが笑った。
「何を言う! 最強の装備物だろう!」
「アハハハハハ!」
竹芝桟橋に着いた。
二人で埠頭を歩き、暮れていく海を眺めた。
「綺麗ですね」
「ああ。砂浜は無いけどな」
俺はジェシカをベンチに座らせ、自動販売機でコークを買った。
しばらく、黙って海を見詰めた。
「いきなり生活が変わったけど、大丈夫か?」
「はい。みなさん優しくしてくれますし」
「今のうちはな」
「アハハハ」
海は完全に夜になった。
埠頭のライトが海面に照り、静かに揺れていた。
「本当は、ジェシカなんかはアメリカで暮らした方が幸せなのは分かってるんだ」
「そんなことは」
「でもな。俺たちは何にしても少なすぎる。蓮花も限界だ。だからどうしてもジェシカが欲しかった」
「私、頑張りますよ」
「頼むな。蓮花もな、本当に楽しみにしてるんだ。いろいろ教え込むことを用意しているようだから、覚悟してくれな」
「はい!」
ジェシカが嬉しそうに笑った。
人間は、自分を必要とされるほど幸せなことはない。
そういうことが分かっている女だった。
「ああ、ここには月に何度か来るんだよ」
「そうなんですか」
「うちのロボな。あいつは普通のネコじゃない」
「え?」
「尾が二つに割れて、口から巨大な光の球を吐く。それが爆発すると、物凄い衝撃を生むんだよ」
「はい???」
俺は笑って、今度見せると言った。
「ジェシカはまだ「あやかし」は信じられないか?」
「まあ、正直に言うと。でも石神さんが仰るんだから、それはあるのだとも思っていますが」
「目の前にしないと、ということか」
「そうですね」
俺は立ち上がった。
「タマ!」
「なんだ」
突如目の前に現れた着物姿の女に、ジェシカが驚く。
「こいつはジェシカだ。俺たちの仲間だ」
「分かった。こいつも守ればいいんだな」
「そうだ。必ず守ってくれ。蓮花の所で働くようになるが、重要人物だからな」
「承知した。まあ、他の女と比べて弱い奴だな」
「ああ、「花岡」は知らないからな」
「蓮花と同じだな」
「そういうことだ。頼むぞ」
「ああ」
タマが消えた。
「い、石神さん!」
ジェシカは激しく動揺しているが、俺は無視した。
「イリス!」
海の方角の空から、淡く光るものが高速で近づいて来た。
すぐに目の前の地面に降り立つ。
ペガサスが目の前でレースのドレスの美しい女になった。
「呼んだか、主」
「お前の美しい姿を見せたい女がいるんだ」
「この女か」
「そうだ。ジェシカだ。宜しくな」
「我が主の言うことであればな」
「お前が気付いた範囲でいい。この女が困っていたり危険な場合は助けてやってくれ」
「分かった。なるべくそうしよう」
「この女が助かれば、俺も嬉しい」
「ならば、必ずだ」
「頼むぞ」
「また綺麗な場所を見つけた」
「そうか、今度一緒に行こう」
「ああ」
イリスは去った。
「……」
「どうだ、信じられたか?」
「はい……」
ジェシカは呆然としていた。
「しっかりしろ。俺たちはこれが日常なんだからな」
「今の、最初はペガサスに見えました」
「ペガサスだからな!」
「すぐに、美しい女性になりましたが」
「イリスだからな!」
「もう、受け入れます」
「そうしろ!」
俺たちは笑った。
俺は、いきなりイリスの訪問を受け、「空の王」とまみえた話をした。
「最初は俺も動転してよ。パジャマのままで出掛けるところだった」
「アハハハハ」
「ニャンコ柄のな! 慌てて着替えたけど、財布だの忘れて。病院へ行ってから気付いたけど、困ったぜ」
「「空の王」というのは、どういうものなんですか?」
「全長数千キロ。帯のような姿だったな」
「!」
「地表に近づけないんだよ。影響力が大きすぎてな。だから普段は地球の近くの宇宙空間にいる。まあ、それも俺に会うためだったかもしれんけどな」
「そんな!」
「さっきのイリスは、普段は別な世界にいるらしい。まあ、俺にもよく分からんよ」
「私は石神さんこそ分かりませんが」
「アハハハハハ!」
「でも、石神さんが途轍もなく強い方なのはよく分かりました」
「そうか!」
帰りの車の中で、漫画家・猪鹿コウモリの話をした。
「ロボの「ばーん」も一緒に見る仲良しになったんだ。早乙女が漫画の原作を前にやってさ。『サーモン係長』っていう、人気の漫画にもなってるんだよ」
「へぇー!」
家に帰り、風呂に入ってみんなでゲームをした。
俺の大好きな「人狼ゲーム」だ。
子どもたちは辞めようと言ったが、俺はジェシカの歓迎祝いだと強行した。
俺が負けた。
「ジェシカ! お前はやっぱり裏切り者だったんだな!」
「そんな! 私は最初から私の役割を果たしただけです!」
「ちくしょー! お前を信じた俺がバカだったということか!」
「まあ、そういうことになりますかね」
「お前ら、いい加減にしろよな!」
「また! タカさん弱いくせにいつも機嫌が悪くなるんだから!」
亜紀ちゃんに怒られた。
「俺はみんなを信じてるのに」
「だから、これはそういうゲームでしょ!」
「酷いよ」
ジェシカが笑っていた。
「もう! 人狼ゲームは今後封印します!」
「やめてくれ! 俺は大好きなんだ!」
「だったら、もうちょっと強くなって下さい!」
俺は不貞腐れた。
「ジェシカさん、この人は本当に弱いくせにやりたがるんですよ」
「カワイイですね!」
「じぇしかー!」
みんなが笑った。
ロボが自分のおもちゃ箱から、ピンポン玉を持って来た。
ロボピンポンをやり、俺は機嫌を直した。
「ネコに慰められてますよ」
亜紀ちゃんが言い、ジェシカがまた笑った。
「これで、悪知恵の王様なんですけどね」
俺も笑った。
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