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双子の修学旅行 Ⅲ

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 その夜はフラダンス・ショーだった。
 ホテルの広大なステージで、華麗なダンスを見ながらみんなで食事をする。
 日本語のメニューが各テーブルに置かれ、好きな物を好きなだけ注文出来る。
 双子は専用のテーブルがステージ前に置かれ、5人のウェイターが付いていた。
 次々と料理が運ばれてくる。
 主にステーキだったが。
 ホテルには無かった「クリームメロンソーダ」も特別に作られた。

 食事がある程度進むと、ステージのダンサーたちが、10人ほど子どもたちを招いた。
 フラダンスを教えると言っている。
 当然、双子も呼ばれた。
 基本の腰の動かし方を教わる。
 みんな初めてで出来ない。
 双子だけ、見事な動きでカホロを見せた。
 家で練習していた。
 ダンサーたちから絶賛される。

 二人はファイアー・ダンスもやらせてもらった。
 両端に火の点いた棒を回転させる。
 音楽が流れ、二人の華麗なダンスをみんなが見る。
 途中まで一緒にフラダンスをしていたダンサーが、次第に双子に魅入っている。
 双子はスティックを高く投げ、それを受けて互いに投げ合う。
 ハーが床でブレイクダンスを踊りながら、脚でスティックを激しく回転させる。
 ルーは空中で華麗な炎の乱舞を見せた。
 ダンサーたちも、全員がダンスをやめて、双子のショーを見ていた。
 大歓声が沸いた。
 二人はスティックを高速回転させて炎を消した。

 双子は急いで「喰い」に戻った。
 



 翌朝。
 朝食のビュッフェを堪能し、双子は土産を買いに出た。
 今日は観光ツアーが用意されているが、基本的に自由行動だ。
 夕方に、ライオル・オーシャン・ビューに集合するだけとなっている。
 二人はアロハシャツを買おうと思っていた。

 「タカさん、よく似合ってたもんね!」
 「ああいうの、いいよね!」

 ツアコンに聞いてみると、ベイリーズという店が豊富に揃っているらしい。
 ツアコンの案内で店に行った。

 店内所狭しと様々なアロハシャツが吊られていた。

 「どうしよう?」
 「なんか選べないよね?」
 「タカさん、どういうのがいいのかなー」
 「タカさんに選んでもらおっか?」
 「そうだね!」

 「「おーる!」」

 店員がやって来る。
 ツアコンが通訳しに来る。

 「お決まりですかって言ってます」
 「だから全部!」
 「はい?」

 「「おーる!」」

 ルーが店の端から端までを手で示した。
 
 「在庫もね!」
 「「……」」

 店の人間とツアコンが沈黙した。





 ブラックカードで支払いを済ませ、店を出た。

 「ホテルに戻りますか?」
 「そうだなー」
 「このまま観光に出ましょうか?」
 「私たちって、あんまし興味無いんだよね」
 「そうですか」

 何となく、ホテルへ向かっている。

 「そうだ! 亜紀ちゃんがお世話になったじゃん!」
 「ああ!」
 「「ヒッカム空軍基地!」」
 「はい?」
 「調べて向かって!」

 「は、はい! 分かりました!」

 ツアコンは電話で連絡し、場所を調べた。
 



 「じゃー、あなたはここで帰っていいよ」
 「いえ、待ってますが」
 「大丈夫! 帰りは送ってもらうから!」
 「そうですか……」

 ツアコンは独りで帰った。
 ゲートの門番が、二人の美少女を怪訝そうな顔で見ていた。

 「イシガミ! ぷりーず・おふぃさー!」
 「ワット?」
 
 ルーが上空に「轟雷」を撃った。

 「イシガミ! どぅーゆーのー?」
 「イ、イエス!」

 慌てて門番が連絡した。
 
 数分後、ジープに乗った日系人の人間が来た。

 「君たちは石神高虎の家族か?」
 「そうだよ!」
 「この前タカさんが暴れた時も一緒だよ!」

 「ルイン・ツインズ!」
 「「はい?」」

 「いや、何でもない! 私はここの少佐のジョージ・ヤマシタだ。今日はどのような用事で?」
 「うーん、何となく」
 「修学旅行でハワイまで来たからさ。ちょっと見てみようかって」
 「そ、そうなんだ」
 「中を案内してくださーい!」
 「お願いしまーす!」

 ヤマシタ少佐は、笑って士官用の食堂へ案内した。
 アイスコーヒーを出す。

 「君たちのことは、我々はよく知っている。絶対に逆らうなと命じられている」
 「そーなんだ」

 「恐れている人間も多いが、君たちを尊敬している人間も多い。自分もそうだ。君たちと一緒に戦えることは嬉しいよ」
 「「よろしくー」」
 「ああ、そろそろ昼時だ。お腹は空いてないかね?」
 「「ぺこぺこー!」」
 「だったら、用意しよう。何がいいかな?」
 「「ステーキ!」」
 「そうか。ここは軍人が多いから、サイズが大きいんだ」
 「「やったー!」」
 「小さくカットしようか?」
 「大丈夫です!」

 肉厚の、500gほどのステーキが来た。

 「食べきれなかったら残してくれ」
 「「おかわりー!」」
 「はい?」

 ものの十数秒で喰われていた。
 10枚ずつ喰われた。

 「すごいね」
 「「ごちそーさまー!」」

 手を合わせた双子に、ヤマシタ少佐は笑顔になった。
 コーヒーとバニラアイスを頼んだ。

 二人はヤマシタ少佐の案内で、基地内を見せられた。
 亜紀が破壊したという滑走路も見た。
 
 「「ギャハハハハハ!」」

 「君たちの姉がどれほど恐ろしかったのかは聞いているよ」
 「亜紀ちゃん、怒るとコワイんだよねー」
 「止められるの、タカさんだけだから」

 ヤマシタ少佐は、双子からジェヴォーダンの攻撃の話を聞いた。

 「ギリギリだったんだよね」
 「あいつら、強かったからね」
 「まー、今なら瞬殺だけどね!」
 
 ヤマシタ少佐は笑った。
 そして正直に双子に話した。

 「何故、ここがこのままになってるかと言うと、イシガミ・ファミリーの力を検証するためなんだ」
 「へー」
 「今となっては、こんなものはどうでもいいんだが。でも、むしろ記念碑的な意味になっている」
 「それは?」
 「イシガミ・ファミリーに逆らうなってことだよ」
 「「アハハハハハハ!」」

 帰りは双子の希望で装甲車で送ってもらった。
 ライオル・オーシャン・ビューに着くと、全員が驚いた。

 「さー、みんな! 今日は食べるぞー!」

 全員が笑い、歓声を挙げた。 
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