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双子の修学旅行 Ⅱ

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 小学校の校庭に、大きなリムジンバスが何台も停まっている。
 ルーとハーが校門から入ると、その場にいた子どもたちから大きな拍手が沸いた。

 「ルーさん、ハーさん! ありがとー」
 
 二人は手を振って応えていた。
 全員が、今回のハワイ行きが双子のお陰だと知っている。
 一部の親たちから反対もあったが、お金で片が付いた。
 
 「外国なんて、危険です!」

 そう言って最後まで反対していた親がいたが、米軍の最優遇保護の念書を見せ、納得された。

 「石神ファミリーとその仲間を守るために、有事の際には最優先で全軍が動く」

 ヒッカム空軍基地の司令官の署名入りだった。



 双子と「人生研究会」の10名の幹部には、特別なリムジンバスが用意されていた。
 成田までの短い時間だが、バスガイドと飲み物と軽食を用意するウェイトレスが付いている。
 クッションのいいソファが片側に並べられ、前にテーブルがある。
 エアクッションの緩衝で、振動はほとんどない。

 みんなで飲み食いし、歌い踊って成田まで騒いだ。
 双子はクリームメロンソーダを8杯飲んだ。

 成田では旅行代理店のツアコンが複数人待っており、子どもたちは引率されていく。

 「石神様! 今回はありがとうございました!」
 
 ツアーの担当者が挨拶してきた。
 
 「いいよ。お金に見合ったサービスを宜しくね!」
 「はい!」

 担当者はニコニコして、全員を見送った。
 今回の旅行代金130億円。
 4クラス120名と引率教師10名に、1億ずつ用意された。
 旅行代理店の総力を挙げて、最高のサービスを準備した。





 ホノルル空港からもリムジンバスで移動する。
 ここは時間も短いので、通常のバスだ。
 双子だけはリンカーンのリムジンだったが。

 機内食が出たので、昼食はなく、ホテルで一時間の休憩(双子はお食事)の後に、ワイキキビーチに移動する。

 マイクロビキニは石神に没収されたので、フリルの付いたセパレートの可愛らしい水着を着て、双子がビーチに現われた。
 サメ柄だ。
 仄かに割れた腹筋と、引き締まった腕と脚。
 ハーの身体には、痛々しい傷痕がある。
 ルーの全身にも、傷痕がある。
 二人はそれを誇らしげに見せていた。
 両肩の兎とサメの頭は謎だった。
 
 大歓声が沸いた。

 ワイキキビーチで、ツアコンたちが二人にサーフボードを渡す。
 ペイントはウサギとネコだ。
 二人は手を振って「砂浜から」サーフボードに乗って海面へ出た。
 みんなが驚いている。

 何人かのプロやアマチュアのサーファーたちが先に滑っていた。
 ルーとハーも彼らの中に入る。
 サファーたちは大勢の日本の子どもたちが来たので、何事かと見ていた。
 そして、二人の美しい日本人の少女に目を奪われる。

 「おい、パンドリングしてないんじゃねぇか?」
 「どんどんこっち来るぞ!」

 気付いたサーファーはまだ少なかった。
 しかし、突然双子が「エアー」を繰り出し、多くのサーファーが驚いた。

 ルーが波頭に向かってボードを進め、10メートル飛んだ。
 空中でボードを踏んだまま2回転した。
 
 「何だ、あの高さは!」

 続いてハーが同じく「エアー」で高く上がり、空中でボードと共に天地を三回転して降りた。

 「ロデオフリップスかぁ!」
 「違う! 3回転してたぁ!」
 「新技をメイクしたのかぁ!」

 サーフィンを知らずに双子の華麗な技を見ていた子どもたちも、サーファーたちが騒いでいることに気付いた。
 サーファーたちは他のサーファーたちに声を掛け、日本人の美少女たちを見ろと言って回った。
 子どもたちのそばに、数十名のサーファーが来る。
 日本人が何人かいた。

 「君たちは、あの二人の同級生なのか?」
 「そう。修学旅行で来たんです」
 「あの二人は何者なんだ?」
 「ルーさんとハーさん。スゴイ人たちだよ!」
 「日本じゃ有名なサーファーなの?」
 「知らない。今日初めて見た」

 日本人のサーファーは、英語で他の人間に伝えた。

 ルーとハーは、エアーで飛びまくり、高さ50メートルも飛んだり、錐揉みで回転したり、ボードを縦に回転しながら、自由自在に楽しんでいた。
 それを幾人ものサーファーや彼らのサポーターが撮影していった。

 「サーフィンの神だな」

 誰かが呟いた。
 全員が子どもたちと歓声を挙げて応援した。
 双子は華麗な技を披露していった。





 「おい、あれって!」

 サーファーの一人が言った。

 「サメだ!」
 
 みんなが騒いだ。
 サーファーたちが大声で騒ぐ。
 双子にもサメがいることを伝えた。

 「どん・おーりー!」

 サメはまっすぐハーに近づいていく。
 海中から飛び上がって、ハーを襲った。
 でかい。
 体長8メートルのホホジロザメだった。
 口を大きく開き、ボードの上のハーに真正面から迫る。
 
 ハーは落ち着いて下顎に前蹴りを放った。
 ニュートンの法則を無視して、ホホジロザメは縦回転しながら後ろに飛んだ。
 ルーが追いかけて蹴った。
 ホホジロザメは真直ぐにまたハーの方へ海面を滑って行く。

 ハーがボードごと、ホホジロザメの上に乗って一緒に滑った。

 「サメサーフィン!」

 大歓声が沸いた。
 双子が砂浜に戻ると、4人程が素早くバスタオルを持って来て二人の身体を拭いた。

 「サメが出ちゃったから、もうここでみんなは泳げないね」
 「ルーさんとハーさんの素晴らしいショーが見れたんですから、十分ですよ」
 「ごめんね、私たちだけ」
 「とんでもありません!」

 サーファーたちが寄って来る。
 名前やサーフィン歴を尋ねられるが、双子は応えなかった。
 何人か身体に触れようとした男が吹っ飛ばされていた。

 「あたしたちに触っていいのは、タカさんだけ!」
 「亜紀ちゃんと皇紀ちゃんもいいよ?」
 「あ、院長先生と静子さん!」
 「ロボも!」
 「じゃあスーもいいって」
 「ロドリゲスなんかも」
 「あたしたちって、結構触り放題だね!」
 「「ギャハハハハハ!」」

 双子は二人で話しながら、バスへ戻った。

 双子の華麗な超絶技は、すぐに有名サイトに上がり、世界中のサーファーたちを驚かせた。
 ホホジロザメは鹵獲した最大級のものだと判明した。
 当然、即死していた。
 




 ホテルで昼食を食べた。
 双子には別途、5キロずつのステーキが置かれる。
 ホテルの人間は言われたままに用意したが、本当に全部食べるとは思っていなかった。

 午後は買い物ツアーに行く人間と、双子と一緒にガン・シューティングに行く人間とに分かれた。
 「人生研究会」の10人の幹部と他に50名。
 みんな初めての銃に興奮していた。

 店の人間に安全説明をされる。
 初心者で、しかも子どもということで、22口径の銃がゴーグルと共に渡された。

 「私たちは44マグナムね」
 
 事前に連絡されていたので、店の人間は双子にはM29を渡した。
 片手の速射で撃った。
 2秒ほどで6発を撃ち終える。
 店の人間は無茶苦茶だと思った。
 笑って、的を見る。
 全てセンターに入っていた。

 「!」
 
 しばらくみんなで撃ちまくった。
 最初はおっかなびっくりだった子どもたちも、次第に銃に慣れて行った。
 双子が一人一人に優しく指導し、姿勢や撃つ時の反動の逃がし方を教えて行った。
 22口径から38口径、また覚えが早い人間には45ガヴァメントや44マグナムも撃たせた。
 
 ガヴァメントを、一瞬で分解し、店の人間を驚かせた。
 ルーが全員を集め、ショートリコイルの構造を講義した。

 「みんなベクトルのことは分かるよね?」
 「はい!」
 「銃は構造から、弾を撃つと銃口が上に跳ねることになる」
 「なるほど!」
 「だからね、ショートリコイルの構造で、なるべく弾が出てから上に跳ねるようになってるの。リヴォルバーは無いけどね」
 「分かりました!」

 また一瞬でガヴァメントを組み上げた。

 帰る頃には、全員がセンター近くに集弾出来るようになっていた。
 店の人間から絶賛された。

 初めての銃で、全員が興奮していた。
 双子は満足そうに、それを見ていた。

 「そのうち、聖のとこで本格的に訓練しようか?」
 「そうだよね。この子たちも、いつか海外で戦うかもだもんね」
 「何でも出来るようにしておかないと」
 「死んじゃわないようにね」
 
 「何ですか、ルーさん、ハーさん?」
 「「なんでもない!」」

 二人の明るい笑顔に、全員が笑った。
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