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They Live

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 宇宙人が来た翌日の金曜日。
 俺は朝食の後で、響子を見に行った。
 アヴェンタドールで向かう。

 響子は朝食を食べ終え、いつものセグウェイの巡回から帰った所だった。
 休暇中の六花が、やはり来ていた。

 「お前もちゃんと休めって」
 「はい。でも響子と一緒にいるのが一番落ち着きます」
 「お前なー」

 響子がニコニコしている。
 
 「そうだ響子、夕べな」
 「なに!」
 「うちの庭に宇宙人が来たんだよ」

 響子が頬を膨らませ、不満そうな顔をする。
 
 「タカトラ」
 「なんだ?」
 「そこに座って」
 
 響子はベッド脇の椅子に座れと言った。
 いつも六花が使っているものだ。
 六花用のクッションがあり、6つの可愛らしい花が刺繍してある。

 「あのね、タカトラ」
 「うん」
 
 響子がベッドに立ち上がり、腕を組んでいる。
 六花が響子に手招きされ、同じように立って腕を組んだ。

 「もう私を子ども扱いしないで」
 「いや、何言ってんだよ」
 「水玉のゾウとか宇宙人とかってなによ?」

 六花が隣で首を何度も縦に振っている。

 「もう騙されないし、子ども扱いをされると悲しい」
 「いや、本当にさ」

 響子が俺の頭をペチっと叩いた。
 六花もやれと促される。

 「こら」

 ペチっと叩かれた。

 「このやろう!」

 六花は急いで花瓶を抱えて部屋を出て行った。

 「タカトラ!」
 「はい!」
 「ごめんなさいは?」
 「ごめんなさい」
 「よろしー!」

 本当なんだけどなー。
 今度、死体を持って来るか。
 大体、お前子どもじゃん。




 鷹の所に顔を出した。

 「実は夕べうちに宇宙人がさ」
 「アハハハハハ!」
 「大変だったんだよ」
 「今晩、うちにいらっしゃいますか?」
 「そうしたいんだけどな。生憎客が来てるんだ」
 「そうですかー」
 「また連絡するよ」
 「はい!」

 肝心な話がまったく出来なかった。

 自分の部屋に行く。
 
 「部長! どうしたんですか?」
 「一江、実はうちに宇宙人が」
 「あの、忙しいんで」
 「おい!」

 「斎藤、宇宙人って信じる?」
 「いいえ、全然」

 「斎木さ」
 「確率的には存在するとは思いますが」
 「おお!」
 「でも、部長のお宅にというのは、ちょっと」
 「やっぱ?」
 「はい」

 誰も聞いてくれないと、逆に誰かとどうしても話したくなった。
 俺に絶対に逆らわず、俺を信頼し切っている奴がいる。

 家に戻った。




 「よう! 蓮花!」
 「石神様! 何かございましたか?」
 「そうなんだよ! 実は夕べうちの庭に宇宙人がさ!」
 「あの、御冗談は結構ですので、早速ご用件を」
 「だから宇宙人が来たんだよ!」
 「さようでございますか」
 「酒を飲んでたらさ、いきなり庭がピカーってなってな」
 「「業」の手先ですか!」
 「違う違う! 殺気がねぇんで見に行ったら、ちっちゃい子どもみたいな背丈の奴らが五人いてな」
 「はぁ」
 「それで目がでかいの! アーモンドアイって言うんだっけか?」
 「さぁ」
 「ちょっと話がこじれちゃってな」
 「大変ですね」
 「母船をぶっ飛ばした」
 「アハハハ」
 「凄いだろ!」
 「はい。また何かありましたら、宜しくお願い致します」
 
 「おい!」

 電話が切られた、

 「皇紀!」

 俺は怒鳴って皇紀を呼んだ。
 すぐに走って俺の部屋へ来る。

 「はい!」
 「宇宙人の死体は冷凍保存してるな!」
 「はい!」
 「すぐに蓮花に送れ! あのやろう、俺の話を信じねぇ!」
 「分かりました!」

 冷凍マグロと品名に印刷して、冷凍便で送る手配をさせた。

 「絶対に謝らせてやる!」




 早乙女に電話した。

 「宇宙人が来たぞ!」
 「石神! 今は「デミウルゴス」の件で忙しいんだ!」
 「あ、ああ、あれか」
 「悪いがまたな!」
 「すまんね」

 麗星が起きて来た。

 「すっかり遅くまで寝てしまいまして」
 「いや、お疲れだったんでしょう」
 「申し訳ございません」

 俺は麗星のために食事を作った。
 土鍋でアサリの炊き込みご飯だ。
 シメジ、油揚げを入れ、刻んだシソを最後に乗せる。
 それにタケノコの味噌汁と香の物。

 麗星は華麗に、そして結構な量を食べた。

 「美味しゅうございました」
 「それは良かった」

 食後のお茶を淹れる。

 「夕べは大変だったんですよ。庭に宇宙人がね」
 「オーホホホホホ!」

 大笑いされた。
 他の連中とは違う。
 この家に死体がちゃんとあるのだ。

 「皇紀! ちょっと持って来い!」
 「はい!」

 皇紀が「超肉うどん」を掻き込んで、走って行った。

 10分程で戻る。
 でかいコンテナボックスを抱えて来た。


 「タカさん!」
 「おう! 早く麗星さんに見せてやれ!」
 「それが! 全部溶けてなくなってます!」
 「あんだと!」

 俺がフタを開くと、死体も、あのスーツも消え、水のようなものがジャブジャブとあった。

 「宅急便は!」
 「まだです! 2時4時で回収に来る予定です!」
 「すぐにマグロを買って来い!」

 子どもたちが近所のスーパーで買って来た。
 1キロもない。
 仕方が無いので、それを発泡スチロールに入れて蓮花に送った。
 うちの冷凍の魚の柵も一緒に詰めた。
 亜紀ちゃんがちょっと悲しそうな顔をした。





 その夜。
 俺は「タカハシ」の望遠鏡をウッドデッキに出し、麗星と子どもたちを誘ってみんなで星を見た。
 月を見せると、亜紀ちゃんがへばりついた謎の触手に喜んだ。

 テーブルと椅子を出し、みんなで楽しく飲み食いした。
 麗星は望遠鏡を夢中で覗いていた。

 翌朝、蓮花からマグロの礼の電話が来た。
 皇紀に監視カメラの映像を確認させたが、宇宙人がいた間は、ずっと画面がブラックアウトしていた。
 皇紀を引っぱたいた。




 
 翌月。
 双子が「人生研究会」の分科として「宇宙人対策隊」を組織した。

 「みんな信じないだろう」
 「大丈夫だよ! 私たちが言うことは全部信じてくれるから!」

 ルーが自慢げにそう言った。

 「そうなのか」
 「そうだよ?」
 「……」





 別にいいもん。
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