1,115 / 2,806
They Live
しおりを挟む
宇宙人が来た翌日の金曜日。
俺は朝食の後で、響子を見に行った。
アヴェンタドールで向かう。
響子は朝食を食べ終え、いつものセグウェイの巡回から帰った所だった。
休暇中の六花が、やはり来ていた。
「お前もちゃんと休めって」
「はい。でも響子と一緒にいるのが一番落ち着きます」
「お前なー」
響子がニコニコしている。
「そうだ響子、夕べな」
「なに!」
「うちの庭に宇宙人が来たんだよ」
響子が頬を膨らませ、不満そうな顔をする。
「タカトラ」
「なんだ?」
「そこに座って」
響子はベッド脇の椅子に座れと言った。
いつも六花が使っているものだ。
六花用のクッションがあり、6つの可愛らしい花が刺繍してある。
「あのね、タカトラ」
「うん」
響子がベッドに立ち上がり、腕を組んでいる。
六花が響子に手招きされ、同じように立って腕を組んだ。
「もう私を子ども扱いしないで」
「いや、何言ってんだよ」
「水玉のゾウとか宇宙人とかってなによ?」
六花が隣で首を何度も縦に振っている。
「もう騙されないし、子ども扱いをされると悲しい」
「いや、本当にさ」
響子が俺の頭をペチっと叩いた。
六花もやれと促される。
「こら」
ペチっと叩かれた。
「このやろう!」
六花は急いで花瓶を抱えて部屋を出て行った。
「タカトラ!」
「はい!」
「ごめんなさいは?」
「ごめんなさい」
「よろしー!」
本当なんだけどなー。
今度、死体を持って来るか。
大体、お前子どもじゃん。
鷹の所に顔を出した。
「実は夕べうちに宇宙人がさ」
「アハハハハハ!」
「大変だったんだよ」
「今晩、うちにいらっしゃいますか?」
「そうしたいんだけどな。生憎客が来てるんだ」
「そうですかー」
「また連絡するよ」
「はい!」
肝心な話がまったく出来なかった。
自分の部屋に行く。
「部長! どうしたんですか?」
「一江、実はうちに宇宙人が」
「あの、忙しいんで」
「おい!」
「斎藤、宇宙人って信じる?」
「いいえ、全然」
「斎木さ」
「確率的には存在するとは思いますが」
「おお!」
「でも、部長のお宅にというのは、ちょっと」
「やっぱ?」
「はい」
誰も聞いてくれないと、逆に誰かとどうしても話したくなった。
俺に絶対に逆らわず、俺を信頼し切っている奴がいる。
家に戻った。
「よう! 蓮花!」
「石神様! 何かございましたか?」
「そうなんだよ! 実は夕べうちの庭に宇宙人がさ!」
「あの、御冗談は結構ですので、早速ご用件を」
「だから宇宙人が来たんだよ!」
「さようでございますか」
「酒を飲んでたらさ、いきなり庭がピカーってなってな」
「「業」の手先ですか!」
「違う違う! 殺気がねぇんで見に行ったら、ちっちゃい子どもみたいな背丈の奴らが五人いてな」
「はぁ」
「それで目がでかいの! アーモンドアイって言うんだっけか?」
「さぁ」
「ちょっと話がこじれちゃってな」
「大変ですね」
「母船をぶっ飛ばした」
「アハハハ」
「凄いだろ!」
「はい。また何かありましたら、宜しくお願い致します」
「おい!」
電話が切られた、
「皇紀!」
俺は怒鳴って皇紀を呼んだ。
すぐに走って俺の部屋へ来る。
「はい!」
「宇宙人の死体は冷凍保存してるな!」
「はい!」
「すぐに蓮花に送れ! あのやろう、俺の話を信じねぇ!」
「分かりました!」
冷凍マグロと品名に印刷して、冷凍便で送る手配をさせた。
「絶対に謝らせてやる!」
早乙女に電話した。
「宇宙人が来たぞ!」
「石神! 今は「デミウルゴス」の件で忙しいんだ!」
「あ、ああ、あれか」
「悪いがまたな!」
「すまんね」
麗星が起きて来た。
「すっかり遅くまで寝てしまいまして」
「いや、お疲れだったんでしょう」
「申し訳ございません」
俺は麗星のために食事を作った。
土鍋でアサリの炊き込みご飯だ。
シメジ、油揚げを入れ、刻んだシソを最後に乗せる。
それにタケノコの味噌汁と香の物。
麗星は華麗に、そして結構な量を食べた。
「美味しゅうございました」
「それは良かった」
食後のお茶を淹れる。
「夕べは大変だったんですよ。庭に宇宙人がね」
「オーホホホホホ!」
大笑いされた。
他の連中とは違う。
この家に死体がちゃんとあるのだ。
「皇紀! ちょっと持って来い!」
「はい!」
皇紀が「超肉うどん」を掻き込んで、走って行った。
10分程で戻る。
でかいコンテナボックスを抱えて来た。
「タカさん!」
「おう! 早く麗星さんに見せてやれ!」
「それが! 全部溶けてなくなってます!」
「あんだと!」
俺がフタを開くと、死体も、あのスーツも消え、水のようなものがジャブジャブとあった。
「宅急便は!」
「まだです! 2時4時で回収に来る予定です!」
「すぐにマグロを買って来い!」
子どもたちが近所のスーパーで買って来た。
1キロもない。
仕方が無いので、それを発泡スチロールに入れて蓮花に送った。
うちの冷凍の魚の柵も一緒に詰めた。
亜紀ちゃんがちょっと悲しそうな顔をした。
その夜。
俺は「タカハシ」の望遠鏡をウッドデッキに出し、麗星と子どもたちを誘ってみんなで星を見た。
月を見せると、亜紀ちゃんがへばりついた謎の触手に喜んだ。
テーブルと椅子を出し、みんなで楽しく飲み食いした。
麗星は望遠鏡を夢中で覗いていた。
翌朝、蓮花からマグロの礼の電話が来た。
皇紀に監視カメラの映像を確認させたが、宇宙人がいた間は、ずっと画面がブラックアウトしていた。
皇紀を引っぱたいた。
翌月。
双子が「人生研究会」の分科として「宇宙人対策隊」を組織した。
「みんな信じないだろう」
「大丈夫だよ! 私たちが言うことは全部信じてくれるから!」
ルーが自慢げにそう言った。
「そうなのか」
「そうだよ?」
「……」
別にいいもん。
俺は朝食の後で、響子を見に行った。
アヴェンタドールで向かう。
響子は朝食を食べ終え、いつものセグウェイの巡回から帰った所だった。
休暇中の六花が、やはり来ていた。
「お前もちゃんと休めって」
「はい。でも響子と一緒にいるのが一番落ち着きます」
「お前なー」
響子がニコニコしている。
「そうだ響子、夕べな」
「なに!」
「うちの庭に宇宙人が来たんだよ」
響子が頬を膨らませ、不満そうな顔をする。
「タカトラ」
「なんだ?」
「そこに座って」
響子はベッド脇の椅子に座れと言った。
いつも六花が使っているものだ。
六花用のクッションがあり、6つの可愛らしい花が刺繍してある。
「あのね、タカトラ」
「うん」
響子がベッドに立ち上がり、腕を組んでいる。
六花が響子に手招きされ、同じように立って腕を組んだ。
「もう私を子ども扱いしないで」
「いや、何言ってんだよ」
「水玉のゾウとか宇宙人とかってなによ?」
六花が隣で首を何度も縦に振っている。
「もう騙されないし、子ども扱いをされると悲しい」
「いや、本当にさ」
響子が俺の頭をペチっと叩いた。
六花もやれと促される。
「こら」
ペチっと叩かれた。
「このやろう!」
六花は急いで花瓶を抱えて部屋を出て行った。
「タカトラ!」
「はい!」
「ごめんなさいは?」
「ごめんなさい」
「よろしー!」
本当なんだけどなー。
今度、死体を持って来るか。
大体、お前子どもじゃん。
鷹の所に顔を出した。
「実は夕べうちに宇宙人がさ」
「アハハハハハ!」
「大変だったんだよ」
「今晩、うちにいらっしゃいますか?」
「そうしたいんだけどな。生憎客が来てるんだ」
「そうですかー」
「また連絡するよ」
「はい!」
肝心な話がまったく出来なかった。
自分の部屋に行く。
「部長! どうしたんですか?」
「一江、実はうちに宇宙人が」
「あの、忙しいんで」
「おい!」
「斎藤、宇宙人って信じる?」
「いいえ、全然」
「斎木さ」
「確率的には存在するとは思いますが」
「おお!」
「でも、部長のお宅にというのは、ちょっと」
「やっぱ?」
「はい」
誰も聞いてくれないと、逆に誰かとどうしても話したくなった。
俺に絶対に逆らわず、俺を信頼し切っている奴がいる。
家に戻った。
「よう! 蓮花!」
「石神様! 何かございましたか?」
「そうなんだよ! 実は夕べうちの庭に宇宙人がさ!」
「あの、御冗談は結構ですので、早速ご用件を」
「だから宇宙人が来たんだよ!」
「さようでございますか」
「酒を飲んでたらさ、いきなり庭がピカーってなってな」
「「業」の手先ですか!」
「違う違う! 殺気がねぇんで見に行ったら、ちっちゃい子どもみたいな背丈の奴らが五人いてな」
「はぁ」
「それで目がでかいの! アーモンドアイって言うんだっけか?」
「さぁ」
「ちょっと話がこじれちゃってな」
「大変ですね」
「母船をぶっ飛ばした」
「アハハハ」
「凄いだろ!」
「はい。また何かありましたら、宜しくお願い致します」
「おい!」
電話が切られた、
「皇紀!」
俺は怒鳴って皇紀を呼んだ。
すぐに走って俺の部屋へ来る。
「はい!」
「宇宙人の死体は冷凍保存してるな!」
「はい!」
「すぐに蓮花に送れ! あのやろう、俺の話を信じねぇ!」
「分かりました!」
冷凍マグロと品名に印刷して、冷凍便で送る手配をさせた。
「絶対に謝らせてやる!」
早乙女に電話した。
「宇宙人が来たぞ!」
「石神! 今は「デミウルゴス」の件で忙しいんだ!」
「あ、ああ、あれか」
「悪いがまたな!」
「すまんね」
麗星が起きて来た。
「すっかり遅くまで寝てしまいまして」
「いや、お疲れだったんでしょう」
「申し訳ございません」
俺は麗星のために食事を作った。
土鍋でアサリの炊き込みご飯だ。
シメジ、油揚げを入れ、刻んだシソを最後に乗せる。
それにタケノコの味噌汁と香の物。
麗星は華麗に、そして結構な量を食べた。
「美味しゅうございました」
「それは良かった」
食後のお茶を淹れる。
「夕べは大変だったんですよ。庭に宇宙人がね」
「オーホホホホホ!」
大笑いされた。
他の連中とは違う。
この家に死体がちゃんとあるのだ。
「皇紀! ちょっと持って来い!」
「はい!」
皇紀が「超肉うどん」を掻き込んで、走って行った。
10分程で戻る。
でかいコンテナボックスを抱えて来た。
「タカさん!」
「おう! 早く麗星さんに見せてやれ!」
「それが! 全部溶けてなくなってます!」
「あんだと!」
俺がフタを開くと、死体も、あのスーツも消え、水のようなものがジャブジャブとあった。
「宅急便は!」
「まだです! 2時4時で回収に来る予定です!」
「すぐにマグロを買って来い!」
子どもたちが近所のスーパーで買って来た。
1キロもない。
仕方が無いので、それを発泡スチロールに入れて蓮花に送った。
うちの冷凍の魚の柵も一緒に詰めた。
亜紀ちゃんがちょっと悲しそうな顔をした。
その夜。
俺は「タカハシ」の望遠鏡をウッドデッキに出し、麗星と子どもたちを誘ってみんなで星を見た。
月を見せると、亜紀ちゃんがへばりついた謎の触手に喜んだ。
テーブルと椅子を出し、みんなで楽しく飲み食いした。
麗星は望遠鏡を夢中で覗いていた。
翌朝、蓮花からマグロの礼の電話が来た。
皇紀に監視カメラの映像を確認させたが、宇宙人がいた間は、ずっと画面がブラックアウトしていた。
皇紀を引っぱたいた。
翌月。
双子が「人生研究会」の分科として「宇宙人対策隊」を組織した。
「みんな信じないだろう」
「大丈夫だよ! 私たちが言うことは全部信じてくれるから!」
ルーが自慢げにそう言った。
「そうなのか」
「そうだよ?」
「……」
別にいいもん。
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、
ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、
私のおにいちゃんは↓
泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
イケメン歯科医の日常
moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。
親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。
イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。
しかし彼には裏の顔が…
歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。
※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる