1,112 / 2,806
ガンバレ! 麗星ちゃん!
しおりを挟む
少し遡り、早乙女と雪野さんを送って行った木曜日。
俺はその足でそのまま羽田空港へ向かい、麗星を迎えに行った。
「石神さーん!」
麗星は嬉しそうに笑いながら俺に手を振って来た。
仕方が無いので、俺も小さく手を振る。
ニコニコして傍に駆け寄り、俺に抱き着く。
俺も毎回遠い所をすぐに駆けつけてくれる麗星を邪険には出来ない。
軽く抱き寄せた。
唇を奪われた。
濃厚な、舌をこねくり回すようなキスをされた。
「ちょっと!」
俺が引き離すと、麗星は口の周りを舌で舐め上げた。
「やっとお会い出来ました」
「ご苦労様です」
俺はトランクを持ち、麗星と並んで歩いた。
麗星は薄紫の地に青い菖蒲を描いた着物を着ていた。
麗星ほどになると、旅行で着物を着るくらいはどうということもない。
洋装で来ることもあるが、恐らくは普段着ないものを着たいということなのだろう。
基本的に、屋敷では着物だ。
「詳しい話は家に着いてからで。その前に食事は如何ですか?」
「ステーキ!」
手を挙げて叫んだ。
俺は笑って伝えた。
「寿司屋を予約しているんですが、もしステーキが宜しければそちらへ」
麗星は少し考えていた。
「ザギンですか?」
「そうです」
「ザギンでシースー!」
「分かりました」
俺は笑ってハマーを出した。
一旦病院へ停める。
そこからタクシーで行くのが一番いい。
銀座で俺の改造ハマーを停める場所はほとんどない。
行きつけの店に入った。
「お好きなものをどうぞ」
カウンターで麗星がニコニコしている。
「大トロを10貫とウニを6貫、イクラを……」
俺はマグロの赤身とヒラメ、アワビ、それにお任せで握ってもらった。
麗星はどんどん食べるが、やはり所作が美しい。
まあ、食べる量は凄いが。
酒を勧めたが、これから真剣な話をするということで断られた。
50貫も食べて、最後に椀物を味わってから店を出た。
俺はミキモトに連れて行った。
「車を取って来ますから、ここでお好きな物を選んでいて下さい。プレゼントしますよ」
「本当でございますか!」
「もちろんです。麗星さんには、いつもいろいろ頂いてばかりですから」
「では、見させていただきますね!」
「ご遠慮なく、気に入ったものを選んで下さい」
俺はタクシーに乗って病院へ行き、ハマーで戻った。
30分も掛からない。
ミキモトの前で、麗星が待っていた。
「どんなものにしました?」
「いえ、特に気に入るものがなくて」
「そんな、じゃあ一緒に選びましょうか?」
麗星がニッコリと笑った。
「今度また。今日はお宅へ参りましょう」
「そうですか」
何か選んでくれるかと思っていたが。
車内で、麗星は大人しかった。
「東京はやはり違いますね」
「麗星さんのお宅のような、物静かな雰囲気はありませんね」
「いいえ。東京は活気に溢れています。わたくしのような女には眩しいくらい」
「麗星さんが歩けば、みんな見惚れて行きますよ」
「そうでしょうか」
幽かに微笑んで、俺を見た。
「わたくしは、石神様に見ていただければ、それで」
「俺もいつも見惚れていますよ」
麗星が嬉しそうに笑った。
本当に美しい女だった。
家に着くと、子どもたちは夕飯を終えていた。
子どもたちに挨拶させ、麗星を地下へ案内する。
俺は皇紀に言って、蓮花の研究所から送られた資料を印刷して来いと命じた。
その間に、麗星に事の詳細と早乙女が持って来た資料を見せる。
「間違いなく、人間をあやかしと融合させるためのものですね」
「そうですか」
蓮花の研究所で撮影された化け物化した写真を見た。
「ダイダイダラボッチャンですね」
「はい?」
「低級なあやかしです」
「適当に言ってません?」
麗星が俺を見た。
「何を仰いますか」
「もう一度名前を」
「……」
「麗星さん?」
「何度もこの名前を呼ぶのは危険です」
「そうなんですか」
「はい」
低級だと言っていたが。
「では、どのようなあやかしなのでしょうか」
「女性の股間を舐めるのが大好きです」
「え?」
「ああ!」
「どうしました!」
「油断しました! 写真から精神攻撃を仕掛けられました!」
「大丈夫ですか?」
「いいえ! 石神様!」
「はい」
「わたくしの股間をペロペロして下さい!」
「なんですって?」
「そうすれば逃げていきます」
「誰が」
「名前は言えません!」
「ダイダラドンボッチ?」
「それです」
「タヌ吉!」
「はい、主様」
「麗星さんが攻撃されたそうだ。「地獄道」で何とかしてくれ」
「石神様!」
「はい」
「なんとかわたくしが祓いました!」
「そうですか」
「ペロペロは無用です」
「良かったですね」
「はい!」
疲れた。
「そう言えば、シャワーも浴びていませんでした」
「ああ、先に風呂に入りますか?」
「石神様は、匂いがきついのもお好きですか?」
「はい?」
「いいえ。そうですね。一度、お風呂を頂いても宜しいですか?」
「もちろん」
麗星を風呂に案内し、俺もその後で入った。
何かおかしい。
俺の勘がそう訴えていた。
殺意は無いので、よくは分からない。
気にせずに風呂に浸かった。
その瞬間、身体が動かなくなった。
浴室のドアが開く。
麗星が入って来た。
もちろん裸だ。
「フフフ、石神様。これでやっと」
声も出ない。
麗星は近付いて来て、俺の股間を持ち上げる。
「いつ見てもご立派な! 今わたくしのウルテクで!」
俺の身体を軽々と抱えた。
俺は洗い場に横たえられた。
麗星の手と口でそそり立って行く。
「さあ、石神様! いよいよ頂きますね!」
俺は体内の気を丹田に集中した。
呼吸は出来る。
瞬間に身体が動き、麗星を跳ね飛ばした。
浴室のドアを開けた。
「ロボー!」
ロボが走って来た。
「麗星さんを眠らせてくれ」
「にゃ!」
ズボッ。
「ニャホフー!」
麗星はぐったりとなった。
「まったく、こいつは何しに来たんだか」
後日、来栖嵐山の神通力で身体の自由を奪われた。
早乙女は何も出来なかったが、俺は自由に話せたし、実は身体も動いた。
それは、麗星の金縛りの経験から会得したものだった。
本当に不思議に思うが、麗星がやるすべては、俺の危機を救ってくれる。
俺も、あの美しく明るく楽しい女を心の底から愛しているのだが。
でも、まだその愛を伝えられずにいる。
俺が悪いのだろうか……。
俺はその足でそのまま羽田空港へ向かい、麗星を迎えに行った。
「石神さーん!」
麗星は嬉しそうに笑いながら俺に手を振って来た。
仕方が無いので、俺も小さく手を振る。
ニコニコして傍に駆け寄り、俺に抱き着く。
俺も毎回遠い所をすぐに駆けつけてくれる麗星を邪険には出来ない。
軽く抱き寄せた。
唇を奪われた。
濃厚な、舌をこねくり回すようなキスをされた。
「ちょっと!」
俺が引き離すと、麗星は口の周りを舌で舐め上げた。
「やっとお会い出来ました」
「ご苦労様です」
俺はトランクを持ち、麗星と並んで歩いた。
麗星は薄紫の地に青い菖蒲を描いた着物を着ていた。
麗星ほどになると、旅行で着物を着るくらいはどうということもない。
洋装で来ることもあるが、恐らくは普段着ないものを着たいということなのだろう。
基本的に、屋敷では着物だ。
「詳しい話は家に着いてからで。その前に食事は如何ですか?」
「ステーキ!」
手を挙げて叫んだ。
俺は笑って伝えた。
「寿司屋を予約しているんですが、もしステーキが宜しければそちらへ」
麗星は少し考えていた。
「ザギンですか?」
「そうです」
「ザギンでシースー!」
「分かりました」
俺は笑ってハマーを出した。
一旦病院へ停める。
そこからタクシーで行くのが一番いい。
銀座で俺の改造ハマーを停める場所はほとんどない。
行きつけの店に入った。
「お好きなものをどうぞ」
カウンターで麗星がニコニコしている。
「大トロを10貫とウニを6貫、イクラを……」
俺はマグロの赤身とヒラメ、アワビ、それにお任せで握ってもらった。
麗星はどんどん食べるが、やはり所作が美しい。
まあ、食べる量は凄いが。
酒を勧めたが、これから真剣な話をするということで断られた。
50貫も食べて、最後に椀物を味わってから店を出た。
俺はミキモトに連れて行った。
「車を取って来ますから、ここでお好きな物を選んでいて下さい。プレゼントしますよ」
「本当でございますか!」
「もちろんです。麗星さんには、いつもいろいろ頂いてばかりですから」
「では、見させていただきますね!」
「ご遠慮なく、気に入ったものを選んで下さい」
俺はタクシーに乗って病院へ行き、ハマーで戻った。
30分も掛からない。
ミキモトの前で、麗星が待っていた。
「どんなものにしました?」
「いえ、特に気に入るものがなくて」
「そんな、じゃあ一緒に選びましょうか?」
麗星がニッコリと笑った。
「今度また。今日はお宅へ参りましょう」
「そうですか」
何か選んでくれるかと思っていたが。
車内で、麗星は大人しかった。
「東京はやはり違いますね」
「麗星さんのお宅のような、物静かな雰囲気はありませんね」
「いいえ。東京は活気に溢れています。わたくしのような女には眩しいくらい」
「麗星さんが歩けば、みんな見惚れて行きますよ」
「そうでしょうか」
幽かに微笑んで、俺を見た。
「わたくしは、石神様に見ていただければ、それで」
「俺もいつも見惚れていますよ」
麗星が嬉しそうに笑った。
本当に美しい女だった。
家に着くと、子どもたちは夕飯を終えていた。
子どもたちに挨拶させ、麗星を地下へ案内する。
俺は皇紀に言って、蓮花の研究所から送られた資料を印刷して来いと命じた。
その間に、麗星に事の詳細と早乙女が持って来た資料を見せる。
「間違いなく、人間をあやかしと融合させるためのものですね」
「そうですか」
蓮花の研究所で撮影された化け物化した写真を見た。
「ダイダイダラボッチャンですね」
「はい?」
「低級なあやかしです」
「適当に言ってません?」
麗星が俺を見た。
「何を仰いますか」
「もう一度名前を」
「……」
「麗星さん?」
「何度もこの名前を呼ぶのは危険です」
「そうなんですか」
「はい」
低級だと言っていたが。
「では、どのようなあやかしなのでしょうか」
「女性の股間を舐めるのが大好きです」
「え?」
「ああ!」
「どうしました!」
「油断しました! 写真から精神攻撃を仕掛けられました!」
「大丈夫ですか?」
「いいえ! 石神様!」
「はい」
「わたくしの股間をペロペロして下さい!」
「なんですって?」
「そうすれば逃げていきます」
「誰が」
「名前は言えません!」
「ダイダラドンボッチ?」
「それです」
「タヌ吉!」
「はい、主様」
「麗星さんが攻撃されたそうだ。「地獄道」で何とかしてくれ」
「石神様!」
「はい」
「なんとかわたくしが祓いました!」
「そうですか」
「ペロペロは無用です」
「良かったですね」
「はい!」
疲れた。
「そう言えば、シャワーも浴びていませんでした」
「ああ、先に風呂に入りますか?」
「石神様は、匂いがきついのもお好きですか?」
「はい?」
「いいえ。そうですね。一度、お風呂を頂いても宜しいですか?」
「もちろん」
麗星を風呂に案内し、俺もその後で入った。
何かおかしい。
俺の勘がそう訴えていた。
殺意は無いので、よくは分からない。
気にせずに風呂に浸かった。
その瞬間、身体が動かなくなった。
浴室のドアが開く。
麗星が入って来た。
もちろん裸だ。
「フフフ、石神様。これでやっと」
声も出ない。
麗星は近付いて来て、俺の股間を持ち上げる。
「いつ見てもご立派な! 今わたくしのウルテクで!」
俺の身体を軽々と抱えた。
俺は洗い場に横たえられた。
麗星の手と口でそそり立って行く。
「さあ、石神様! いよいよ頂きますね!」
俺は体内の気を丹田に集中した。
呼吸は出来る。
瞬間に身体が動き、麗星を跳ね飛ばした。
浴室のドアを開けた。
「ロボー!」
ロボが走って来た。
「麗星さんを眠らせてくれ」
「にゃ!」
ズボッ。
「ニャホフー!」
麗星はぐったりとなった。
「まったく、こいつは何しに来たんだか」
後日、来栖嵐山の神通力で身体の自由を奪われた。
早乙女は何も出来なかったが、俺は自由に話せたし、実は身体も動いた。
それは、麗星の金縛りの経験から会得したものだった。
本当に不思議に思うが、麗星がやるすべては、俺の危機を救ってくれる。
俺も、あの美しく明るく楽しい女を心の底から愛しているのだが。
でも、まだその愛を伝えられずにいる。
俺が悪いのだろうか……。
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、
ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、
私のおにいちゃんは↓
泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
イケメン歯科医の日常
moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。
親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。
イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。
しかし彼には裏の顔が…
歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。
※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる