1,092 / 2,840
南原陽子
しおりを挟む
ロックハート家から日本に戻り、今は日曜日の夜だ。
9日間休暇を取っているので、来週いっぱいが休みだった。
正月はスケジュールを入れ過ぎたと反省し、今は何も予定を組んでいない。
ロックハート家だけを予定していた。
柳は実家へ帰した。
響子と六花も病院へ送っている。
出前で寿司を取り、今は夜の11時だ。
亜紀ちゃんと風呂に入った。
「タカさん。明日からどうします?」
「そうだよなぁ」
「ちょっと予定を外し過ぎましたかね?」
「そんなこと言うなよ。遊び過ぎは良くないぜ」
「そうですけどねー」
亜紀ちゃんはまた「ぐるぐる横回転」をしている。
どういう修練か、もうほとんど波すら立たない。
突起物が少ないせいだろうと、俺は分析していた。
そう口にすると、亜紀ちゃんが立ち上がってこちらを向いた。
「フン!」
気合を込めると、ちょっと胸が膨らんだ。
理屈は分からん。
「Bカップになります」
「すごいね」
俺は拍手をした。
「タカさん、キャンプとか!」
「そうだなー」
「御堂さんち!」
「行きたいなー」
「蓮花さんの研究所!」
「あっちもそろそろなー」
「あ! 「紅六花ビル」!」
「会いたいなー」
亜紀ちゃんが湯船に入った。
「ノリ、悪いですね」
ちょっと不満そうだ。
「六花さんは?」
「あいつは明日から出勤で、木曜からまた休暇だな」
「響子ちゃんがいますもんね」
「そうだ」
亜紀ちゃんが考えている。
実を言えば、俺にはやることが結構ある。
今回のニューヨーク行きも、元々は俺がアメリカで会わなければならない人間たちと会うための目的だった。
ついでに子どもたちを連れて行った。
もちろん、響子を両親に会わせてやりたい気持ちもあった。
それと、そろそろ子どもたちにアラスカを見せてやるつもりだったことだ。
栞や士王にも会いたかっただろう。
俺も聖やジャンニーニとゆっくり飲めて良かった。
これからも、アメリカとの関係を詰めて行かなければならないし、国内でも警察や自衛隊との交渉もある。
国内で「ヘッジホッグ」を作ることは出来ないが、それなりの拠点は必要だ。
この家の周辺と、御堂の家の周辺、そして大阪にも拠点を築く予定をしている。
六花の故郷も規模は小さいが拠点を築く。
位置的には北海道や東北、中部地方、そして九州にも必要だろう。
そしてゆくゆくはヨーロッパや中央アジアなどにも。
ロシアが「業」の拠点となる可能性が高い。
だからそれに対応する地域にも「ヘッジホッグ」のような拠点を作りたい。
考えるべきことは無数にある。
最も切実なのは人材だ。
ジェシカが来てくれるのは有難いが、まだまだ足りない。
アメリカで三つの研究機関と渡りを付けたので、皇紀と蓮花の負担は軽減してくだろう。
しかし俺にも参謀と事務担当の人間が必要だ。
一江にどちらかを担ってもらうこちになるだろう。
亜紀ちゃんと風呂を出た。
今後の予定は明日話そうと言った。
翌朝。
世間では暦通りでも、火曜日までは休みだった。
朝食を食べ終えると、左門から電話が来た。
「トラ兄さん! 予定通りに戻ったんだね?」
「ああ。留守中変わりはないか?」
「うん! それでね、姉さんが来たがってるんだよ」
「そうか! 俺も会いたいな」
「急なんだけど、今晩は空いてる?」
「おい、本当に急だな。ああ、大丈夫だぞ。飛行機で来るのか」
「そう。トラ兄さんの都合が悪ければ改めるつもりだったけど」
「それなら呼んでくれよ。ああ、良ければうちに泊ってもらってもいいし」
「ほんとに! じゃあ、そう伝えるよ!」
「旦那さんも一緒か?」
「いや、姐さんだけ。子どもも置いて来るってさ」
「そうか、分かった。楽しみにしてると伝えてくれ」
俺は電話を切った。
「亜紀ちゃん!」
「はーい!」
洗い物をしながら亜紀ちゃんが返事する。
「陽子さんが来るってよ」
「え!」
「今晩には着くだろう」
「分かりましたー!」
亜紀ちゃんが洗濯や掃除を始めた子どもたちに知らせに行った。
全員が一度リヴィングに集まった。
「急なんだけどな。今晩来てうちに泊まっていただくから、そのつもりでな」
「「「「はい!」」」」
「タカさん、夕飯はメザシですか?」
「ばかやろう! カニ鍋にしろ!」
「はーい!」
俺はその他のメニューを決めて伝えた。
これから子どもたちが手分けしてデパートにカニを買い漁りに行く。
忙しくなった。
「伊勢海老も買い占めろ!」
「「「「はい!」」」」
「ステーキは喰い飽きたよな!」
「「「「いいえ!」」」」
まあ、喰えばいい。
鷹を呼ぼうかと思ったが、あいつも疲れているだろうと思いやめた。
5時頃。
左門とリーが陽子さんを連れて来た。
「トラちゃん!」
「陽子さん! ようこそ、遠い所を!」
「会いたかったよー!」
「俺もですよ! さあ、入って下さい!」
陽子さんは周囲を見ている。
「あのさ、前よりもこの家って大きくなった?」
「アハハハハ! まあ、中で説明しますよ」
玄関を開けると、子どもたちとロボが歓迎した。
皇紀が荷物を預かり、俺は陽子さんとエレベーターで2階に上がる。
リヴィングで、子どもたちに自己紹介させる。
陽子さんは笑顔で名前を憶えて行った。
「そして、ロボです。カワイイでしょ?」
「うん! ロボちゃん、宜しくね!」
ロボが「あーん」をしそうになったのでやめろと言った。
俺は陽子さんと左門たちにソファに座ってもらい、亜紀ちゃんがコーヒーを持って来た。
「もうすぐ夕飯なのでお茶請けはなしで、すみません」
「本当に四人も子どもを引き取ったのね」
「はい。後で分かりますが、随分と賑やかになりましたよ」
「そう。でもトラちゃんが元気そうで良かった」
「それはもう。それだけが取り柄ですからね」
陽子さんが笑う。
「左門がトラちゃんと一緒に仕事をするんだって聞いて。私も会いたくなって来ちゃった」
「いつでも陽子さんは大歓迎ですよ!」
「あら、そう?」
「はい!」
俺の本心だ。
まあ、陽子さんを知って陽子さんに会いたくない人間などいないだろうが。
「あ、お夕飯の前に、仏壇に線香をあげてもいいかな?」
「ありがとうございます」
こういう人だった。
仏間に案内する前に、階段のプリズムを見てもらった。
丁度いい時間だった。
綺麗だと喜んでくれた。
仏間で線香を焚く。
「奈津江さん、お久しぶりです。やっとあなたとも会えた。トラちゃんの傍にいて見守ってあげてね」
陽子さんはそう言って手を合わせ、経をあげてくれた。
左門とリーも後ろで手を合わせる。
俺は三人をリヴィングへ連れ、テーブルに着いてもらった。
陽子さんは子どもたちの食事に、大笑いしてくれた。
9日間休暇を取っているので、来週いっぱいが休みだった。
正月はスケジュールを入れ過ぎたと反省し、今は何も予定を組んでいない。
ロックハート家だけを予定していた。
柳は実家へ帰した。
響子と六花も病院へ送っている。
出前で寿司を取り、今は夜の11時だ。
亜紀ちゃんと風呂に入った。
「タカさん。明日からどうします?」
「そうだよなぁ」
「ちょっと予定を外し過ぎましたかね?」
「そんなこと言うなよ。遊び過ぎは良くないぜ」
「そうですけどねー」
亜紀ちゃんはまた「ぐるぐる横回転」をしている。
どういう修練か、もうほとんど波すら立たない。
突起物が少ないせいだろうと、俺は分析していた。
そう口にすると、亜紀ちゃんが立ち上がってこちらを向いた。
「フン!」
気合を込めると、ちょっと胸が膨らんだ。
理屈は分からん。
「Bカップになります」
「すごいね」
俺は拍手をした。
「タカさん、キャンプとか!」
「そうだなー」
「御堂さんち!」
「行きたいなー」
「蓮花さんの研究所!」
「あっちもそろそろなー」
「あ! 「紅六花ビル」!」
「会いたいなー」
亜紀ちゃんが湯船に入った。
「ノリ、悪いですね」
ちょっと不満そうだ。
「六花さんは?」
「あいつは明日から出勤で、木曜からまた休暇だな」
「響子ちゃんがいますもんね」
「そうだ」
亜紀ちゃんが考えている。
実を言えば、俺にはやることが結構ある。
今回のニューヨーク行きも、元々は俺がアメリカで会わなければならない人間たちと会うための目的だった。
ついでに子どもたちを連れて行った。
もちろん、響子を両親に会わせてやりたい気持ちもあった。
それと、そろそろ子どもたちにアラスカを見せてやるつもりだったことだ。
栞や士王にも会いたかっただろう。
俺も聖やジャンニーニとゆっくり飲めて良かった。
これからも、アメリカとの関係を詰めて行かなければならないし、国内でも警察や自衛隊との交渉もある。
国内で「ヘッジホッグ」を作ることは出来ないが、それなりの拠点は必要だ。
この家の周辺と、御堂の家の周辺、そして大阪にも拠点を築く予定をしている。
六花の故郷も規模は小さいが拠点を築く。
位置的には北海道や東北、中部地方、そして九州にも必要だろう。
そしてゆくゆくはヨーロッパや中央アジアなどにも。
ロシアが「業」の拠点となる可能性が高い。
だからそれに対応する地域にも「ヘッジホッグ」のような拠点を作りたい。
考えるべきことは無数にある。
最も切実なのは人材だ。
ジェシカが来てくれるのは有難いが、まだまだ足りない。
アメリカで三つの研究機関と渡りを付けたので、皇紀と蓮花の負担は軽減してくだろう。
しかし俺にも参謀と事務担当の人間が必要だ。
一江にどちらかを担ってもらうこちになるだろう。
亜紀ちゃんと風呂を出た。
今後の予定は明日話そうと言った。
翌朝。
世間では暦通りでも、火曜日までは休みだった。
朝食を食べ終えると、左門から電話が来た。
「トラ兄さん! 予定通りに戻ったんだね?」
「ああ。留守中変わりはないか?」
「うん! それでね、姉さんが来たがってるんだよ」
「そうか! 俺も会いたいな」
「急なんだけど、今晩は空いてる?」
「おい、本当に急だな。ああ、大丈夫だぞ。飛行機で来るのか」
「そう。トラ兄さんの都合が悪ければ改めるつもりだったけど」
「それなら呼んでくれよ。ああ、良ければうちに泊ってもらってもいいし」
「ほんとに! じゃあ、そう伝えるよ!」
「旦那さんも一緒か?」
「いや、姐さんだけ。子どもも置いて来るってさ」
「そうか、分かった。楽しみにしてると伝えてくれ」
俺は電話を切った。
「亜紀ちゃん!」
「はーい!」
洗い物をしながら亜紀ちゃんが返事する。
「陽子さんが来るってよ」
「え!」
「今晩には着くだろう」
「分かりましたー!」
亜紀ちゃんが洗濯や掃除を始めた子どもたちに知らせに行った。
全員が一度リヴィングに集まった。
「急なんだけどな。今晩来てうちに泊まっていただくから、そのつもりでな」
「「「「はい!」」」」
「タカさん、夕飯はメザシですか?」
「ばかやろう! カニ鍋にしろ!」
「はーい!」
俺はその他のメニューを決めて伝えた。
これから子どもたちが手分けしてデパートにカニを買い漁りに行く。
忙しくなった。
「伊勢海老も買い占めろ!」
「「「「はい!」」」」
「ステーキは喰い飽きたよな!」
「「「「いいえ!」」」」
まあ、喰えばいい。
鷹を呼ぼうかと思ったが、あいつも疲れているだろうと思いやめた。
5時頃。
左門とリーが陽子さんを連れて来た。
「トラちゃん!」
「陽子さん! ようこそ、遠い所を!」
「会いたかったよー!」
「俺もですよ! さあ、入って下さい!」
陽子さんは周囲を見ている。
「あのさ、前よりもこの家って大きくなった?」
「アハハハハ! まあ、中で説明しますよ」
玄関を開けると、子どもたちとロボが歓迎した。
皇紀が荷物を預かり、俺は陽子さんとエレベーターで2階に上がる。
リヴィングで、子どもたちに自己紹介させる。
陽子さんは笑顔で名前を憶えて行った。
「そして、ロボです。カワイイでしょ?」
「うん! ロボちゃん、宜しくね!」
ロボが「あーん」をしそうになったのでやめろと言った。
俺は陽子さんと左門たちにソファに座ってもらい、亜紀ちゃんがコーヒーを持って来た。
「もうすぐ夕飯なのでお茶請けはなしで、すみません」
「本当に四人も子どもを引き取ったのね」
「はい。後で分かりますが、随分と賑やかになりましたよ」
「そう。でもトラちゃんが元気そうで良かった」
「それはもう。それだけが取り柄ですからね」
陽子さんが笑う。
「左門がトラちゃんと一緒に仕事をするんだって聞いて。私も会いたくなって来ちゃった」
「いつでも陽子さんは大歓迎ですよ!」
「あら、そう?」
「はい!」
俺の本心だ。
まあ、陽子さんを知って陽子さんに会いたくない人間などいないだろうが。
「あ、お夕飯の前に、仏壇に線香をあげてもいいかな?」
「ありがとうございます」
こういう人だった。
仏間に案内する前に、階段のプリズムを見てもらった。
丁度いい時間だった。
綺麗だと喜んでくれた。
仏間で線香を焚く。
「奈津江さん、お久しぶりです。やっとあなたとも会えた。トラちゃんの傍にいて見守ってあげてね」
陽子さんはそう言って手を合わせ、経をあげてくれた。
左門とリーも後ろで手を合わせる。
俺は三人をリヴィングへ連れ、テーブルに着いてもらった。
陽子さんは子どもたちの食事に、大笑いしてくれた。
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~
みつまめ つぼみ
キャラ文芸
ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。
彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。
そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!
彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。
離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。
香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる