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挿話: ズボッ!

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 ある初夏の金曜の晩。
 いつものように亜紀ちゃん、柳と酒を飲んだ。
 今日は亜紀ちゃんが甘えモードで、一緒に寝たがった。
 柳は亜紀ちゃんに遠慮したのか、自分の部屋へ入った。
 少し肌寒い晩で、布団を描けて寝る。
 
 2時頃に重みで目が覚めた。
 
 「なんだ、また寝惚けてやがるのか」

 亜紀ちゃんが布団に潜って俺の身体の上に乗っている。
 何の夢を見ているのか、そのまま身体を昇って来る。


 ズボッ!


 亜紀ちゃんの長い髪の頭が俺の胸の下から飛び出した。

 「怖ェェェェェ!」

 亜紀ちゃんの頭をパシパシ叩いた。

 「イターイ! 何すんですか」
 「お前だ、お前!」

 亜紀ちゃんが目を覚まし、俺の顔を見る。

 「今、スッゲェー怖かったんだよ!」
 「なんなんですか!」
 「よし! じゃあ、俺がやってやるよ!」

 俺は院長との女装のためのロングのウィッグを被った。
 亜紀ちゃんにベッドで寝ろと言う。
 布団に潜り、亜紀ちゃんの身体を上に昇る。


 ズボッ!


 「コワイコワイコワイコワイ!」
 
 亜紀ちゃんが大騒ぎする。
 俺の頭をポカポカする。

 「な!」
 「ほんとに怖かったですぅー!」

 俺はそうだろうと言った。
 
 「あのよ、『呪怨』かなんかで、こんなの観た気がする」
 「コワイですね!」

 ロボが布団に潜ってモゾモゾして頭を出した。


 ズボッ!


 すっげぇカワイイ。
 ノリのいい奴だ。





 すっかり二人とも目が覚めてしまった。
 
 「どうすんだよ!」
 「すみません」

 しょうがないんで、柳の部屋に行った。
 ぐっすり寝ている。

 亜紀ちゃんがそーっと柳の布団の足元から入った。


 ズボッ!


 「キャァーーーーー!!!!!」

 柳が絶叫した。
 亜紀ちゃんと二人で笑った。

 「怖かっただろ?」
 「怖すぎですよ!」
 「柳さん、騒ぎすぎ」
 「亜紀ちゃん、何言ってんの!」

 柳もすっかり目が覚めた。
 調子が出て来た。
 双子の部屋に行く。
 二人が可愛らしい寝顔でぐっすり眠っていた。
 カワイイのでしばらくみんなで眺める。
 柳に俺のウィッグを貸し、亜紀ちゃんと二人で布団に潜る。


 ズボッ! ズボッ!


 「「グギャァァァァァァァーーーーー!!」」

 ステレオ絶叫する。
 亜紀ちゃんと柳がボコボコ殴られた。

 「ゴメンゴメンゴメン!」
 「石神さんがやれってぇー!」

 「「なにすんのぉー!」」

 俺が大笑いした。
 みんなすっかり眠れなくなった。

 「じゃあ、最後は皇紀だな!」
 「「「「はい!」」」」

 石神家はノリが良い。
 これだけの騒ぎで皇紀は起きて来ない。
 連日の激務で疲れているのだろう。
 ちょっとカワイソウな気もしたが、ここで仲間外れは良くない。
 俺たちは家族だ。

 そーっと皇紀の部屋に行く。
 亜紀ちゃんが一番コワイということで、決まった。

 「おめぇ、ほんとに怖ぇよ」
 「任せて下さい!」

 ドアを開けた。
 亜紀ちゃんは長い髪を前に垂らして準備している。

 ベッドの向こうがほんのり明るい。
 亜紀ちゃんが急いで皇紀の布団の足元に潜った。
 流石の最強「花岡」使いは、気配を殺して皇紀に気付かせない。

 「おい、待て!」
 
 俺が止めた。
 しかし亜紀ちゃんは移動を開始していた。

 「なに!」
 
 ヘッドフォンをした皇紀が叫んだ。
 
 「なによ、これぇー!」

 亜紀ちゃんが叫んだ。

 暗い部屋で、テレビが点いていた。
 エロビデオだった。

 布団が跳ね上げられ、皇紀は下半身丸出しだった。
 握っていた。
 発射し終わっていた。
 亜紀ちゃんにベットリだった。

 「テメェー!」
 「なんだよ、お姉ちゃん!」

 俺と柳、双子は呆然としていた。
 皇紀が亜紀ちゃんに無言で蹴られる。
 ガシガシと音が響いた。
 蹴られ続けたせいで、ヘッドフォンのコードがテレビから抜けた。

 《夜也ちゃん、カワイイよー!》

 どこかで聞いた声が響いた。
 亜紀ちゃんが蹴るのを止める。
 みんながダンディな奴を見ている。

 《うわー! 夜也ちゃんのここって、こうなってたんだぁー!》
 《トラちゃん、エッチね!》
 《ペロペロしてあげるね!》
 《アン!》

 みんなが画面に近寄った。



 俺が出ていた。



 「タカさんだー!」
 
 ハーが言った。
 全員が俺を見た。
 亜紀ちゃんの目が、暗闇で赤く光っていた。
 柳も鬼のような顔をしていた。
 
 「「ギャハハハハハハ!」」

 双子は大笑いだった。

 「タカさーん!」

 チンコ野郎が俺に助けを求めていた。

 「皇紀、お前死ねよ」
 「「死ぬのはお前だぁー!」」

 「待て待て待て待てぇー!

 必死で二人の攻撃をかわした。

 「皇紀! DVDを止めろ!」

 何とか二人を宥め、落ち着いた。

 「『巨根魔王と25人の淫乱娘』だって!」

 ルーがパッケージタイトルを読み上げた。
 
 「25人!」
 
 亜紀ちゃんの目がまた光を増した。
 
 「待てってぇ! それは若い頃に石動に騙されたんだ!」
 「そうじゃないでしょう、絶対!」
 「待てって!」

 俺は必死に言い訳した。

 「ちょっと削らせて頂きます」
 「やめろってぇー!」

 何とか誤魔化し切り、その場を収めた。
 亜紀ちゃんがDVDを抜いて、目の前でパッケージごとバキバキと噛み砕いた。
 柳は「ペロペロ……」」と放心して繰り返し呟いていた。

 「この世から抹消しました」
 「お、おう!」

 亜紀ちゃんがコワイ顔で言った。
 俺はみんなにもう寝ようと言った。
 亜紀ちゃんがついてきて、着替えてから俺に抱き着いてちょっと泣いた。
 
 「もう、あんなのに出ないで下さいね」
 「お、おう!」
 「もう壊しちゃいましたから」
 「そうだな!」

 亜紀ちゃんが泣きながら寝た。






 亜紀ちゃん、あと9枚あるんだ。
 俺、主演男優だから10枚もらったのね。
 無修正も一枚あるんだよ。
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