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アラスカ・パッション

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 翌朝。
 朝食を食べ、俺たちはまた聖の「セイントPMC」へ向かった。
 鷹は既に昨日の午後に一人で行っている。
 麗星も来た。

 「石神様!」
 「遠い所まで済みません。今回は宜しくお願いします」
 「はい! ご期待に沿えるよう頑張ります!」

 今日は洋装だった。
 淡いピンクのスーツが美しい。
 子どもたちや響子と六花が挨拶する。

 敷地の中で青嵐と紫嵐が待っていた。
 再び「TIGER FANGS」に乗り込む。

 「予定通り、太平洋に出たらデコイを出せ。その後にな」
 「はい!」

 俺たちは30分でアラスカ「虎の穴」基地に着いた。
 基地内の着陸場に降りる。
 ターナー少将と月岡が迎えに出てくれていた。

 「わざわざ申し訳ないな」
 「何を言っている。タイガーが総司令官なんだからな」
 「アハハハハ!」

 「石神さん、お待ちしてました」
 「ああ、お前も忙しいのに悪いな」
 「いいえ」
 「栞は大人しくしてるか?」
 「はい。お子さんを毎日可愛がってますよ」
 「そうか」

 子どもたちはもうワクワクだった。
 ロボは寒いので俺に引っ付きたがる。
 響子も興奮している。
 麗星は普通だ。
 俺たちは電動移送車で移動した。
 アクリルで覆われた荷台のようなものだ。
 AI制御で何もしなくても運ばれる。
 以前はハンヴィーなどで移動していたが、防衛システムが充実した今、基地内の移動は主に電動移送車が担っている。
 そのままエレベーターに乗り込んで、栞たちがいるフロアまで上がった。

 エレベーターを降りた廊下で、また桜花が待っていた。
 廊下を進み、栞たちの居住区に着く。
 ドアが開いた。

 「あなたー!」

 栞が駆け寄って来た。

 「「「「「「「あなた!」」」」」」」
 「にゃ?」





  
 俺は栞を抱き締めた。
 子どもたちの前だが、濃厚なキスをする。
 麗星が近くで見ようと寄って来るのを、双子が必死で止めていた。
 
 「栞さん!」
 「亜紀ちゃん!」

 みんなが栞に駆け寄る。
 久しぶりの再会を喜んだ。

 ♪ あなたっとーよべーばー ♪
 ♪ なんだいっとーこたーえる ♪

 双子がくだらない歌を歌うので頭を引っぱたいた。

 「いつまでも「石神くん」じゃおかしいだろう! 士王の教育もあるんだ!」
 「「「「「アハハハハハハ!」」」」」

 鷹が士王を抱いて来た。

 「「「「「士王ちゃーん!」」」」」
 「まあ、カワイイ!」
 「ニャオ!」

 みんながカワイーと褒め称える。
 まあ、そうだろう!

 士王は目を覚ましていて、いきなり大勢に囲まれて驚いていた。
 鷹が俺に士王を渡した。

 「おう、元気そうだな!」
 
 士王が俺の顔を見てニコニコする。
 カワイイ。
 ロボが前足で立って士王を見せろと訴える。
 俺は屈んでやり、ロボにも見せてやった。
 ロボは士王に顔を近づけ、顔を舐めた。

 「よし、全員見たな! 桜花、士王を寝かせてくれ!」
 「はい」

 みんながまだ見たいと言ったが、士王も驚いている。
 一旦落ち着かせると言った。

 リヴィングで睡蓮がコーヒーを淹れた。

 「ようやく会えましたね!」
 「うん、亜紀ちゃんもしばらくは知らなかったでしょ?」
 「はい! ずっと私たち、蓮花さんの研究所だとばかり」
 「そうだよねー! この人がさー!」
 
 みんなで笑った。

 「鷹さんは知ってたんですか?」
 「私も栞がここに来て少し経ってから。驚いたけど、ここに来て納得しちゃった」
 「はい! 凄い基地ですよね!」

 みんな口々に同じ感想を口にした。

 「響子、驚いたか!」
 「うん! びっくりした!」
 「ナイショだからな!」
 「分かった!」

 まあ、もう知られてもいい。
 だから響子も連れて来た。
 
 俺は桜花たちを呼んで、全員に紹介した。

 「桜花、椿姫、睡蓮、この三人が栞と士王を守り、面倒も見ていてくれる。栞が動けなかった時には全面的にな。俺は本当に感謝している。ありがとう!」
 
 俺は立ち上がって三人に頭を下げた。
 栞もそれに倣った。
 三人は驚いていた。

 「お止め下さい、石神様、栞様!」
 「いや、どんなに感謝しても足りない。それに何度も言っているが、お前たちは奴隷ではない。栞に服従する必要は無いし、俺に対しても同じだ。栞と士王を宜しく頼むとは言っているが、いつでも嫌になったら辞めてもいい」
 「石神様!」

 「お前たちは仲間だ。俺はそう思っている。今はお前たちにこの任務を命じているが、他にしたいことがあったらそう言ってくれてもいいし、何でも言ってくれ。もちろん、栞や士王に対する不満でもいいんだぞ?」
 「あなた!」

 三人が微笑んだ。

 「ありがとうございます、石神様。今の御言葉はしかと受け取りました。でも私たちはもう決めていることです。どうかご心配なさらずに」
 「そうか、じゃあますます感謝しないとな。ああ、給料はちゃんと口座に振り込んでいるからな」
 「はい?」
 「なんだよ、聞いてないのか? お前たちに銀行口座とカードを渡しているだろう?」
 「はい、研究所を出る時に、蓮花様からお預かりしましたが」
 「預かったんじゃねぇ! お前らにやったんだよ! 毎月振り込んでるけど、見てねぇのか?」
 「「「はい」」」

 「カァー! 蓮花って、時々意志疎通がダメなんだよなぁ。前にもディディのことで俺が頼んだのと全然違うロボット作りやがってよ!」

 俺は乾さんの家のディディを荷物運搬のロボットにしろと言ったら、広域殲滅の機能まで付けたという話をした。
 全員が爆笑する。

 「流暢に会話するのはまだいいとして、子どもを楽しませる機能って観覧車まで作ったらしいよ。そんなの、ディディいらねぇじゃんかなぁ!」

 大爆笑。
 麗星まで笑っていた。
 俺は三人に残高を確認するように言った。

 「その金はお前たちが自由に使っていいんだからな。服を買ってもいいし、美味い物でも喰いに行けよ。今は交代だけど、そのうちに三人揃っての休暇も取れるようにしてやる。三人で旅行なんかもいいんだからな」

 桜花たちが泣き出した。

 「おい!」

 栞が慰めに立つ。
 まあ、いい関係を築いているようだ。

 俺は皇紀と麗星を連れて出た。
 皇紀はここでは忙しい。
 俺も麗星と一緒に霊的防衛の打ち合わせがある。




 
 「さて、どこから回ろうかな」
 「あの、一つ提案が」
 「なんですか?」
 
 麗星に聞いた。

 「ここにはホテルなどもございますか?」
 「え? ああ、外から一時的に来る人間もいるんで、一応似たような宿泊施設がありますが」
 「じゃあ、そこに行きましょう」
 「そうですか。何か特別なことがあるんですか?」
 「はい」
 「どういうものでしょうか?」
 「あの、わたくしと子作りを」
 「はい?」
 「ですから、石神様とわたくしとでセックスをして……」

 麗星の頭を引っぱたいた。

 「わたくしも赤ちゃんがほしいよー!」
 「……」




 そういえば、こういう女だった。 
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