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NY Passion Ⅱ

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 「元気そうだな、聖!」
 「お前もな、トラ!」

 聖はアンジーとその息子・セイガ(聖雅)を連れて来ていた。
 聖に頼まれて、俺が名付けた。
 日本語の意味をアンジーに伝えると、大変喜んでいた。
 出産祝いに三人にレッドダイヤモンドのリングを送った。
 20カラットのものだ。
 今日は、三人ともそれを身に着けていた。
 セイガは首からチェーンで提げている。

 アンジーとセイガとも挨拶した。
 すぐにロックハート家に向かう。
 俺は聖のロールスロイス・シルバーセラフのリムジンに亜紀ちゃん、双子と乗った。
 他の人間はロックハート家のリムジンだ。

 「聖、いろいろ手伝って貰って悪いな」
 「いいよ、いい儲けにもなってるしな。これからもどんどん言ってくれ」
 「でも、お前も暴れたいだろう?」
 「適当にやってるよ。それに、いずれ面白くなるんだろう?」
 「間違いねぇ。楽しみにしててくれ」

 聖はニコニコしている。

 「聖さん、嬉しそうですね!」

 亜紀ちゃんが言った。

 「そりゃな。トラがいれば何にもいらねぇ」
 
 アンジーが笑った。

 「トラ、リングをありがとう」
 「いや、よく似合ってるよ、アンジー」
 「これ、レッドダイヤモンドでしょ?」
 「ああ、うちの庭に沢山埋まってるからな。欲しくなったら言ってくれ」
 「アハハハハハ!」

 先日、またでかい柱が敷地に立っていた。
 その下にまた作ったというクロピョンの合図なのだろう。
 そうすると、多分その前のブルーダイヤモンドの鉱脈もあそこにあるということだ。

 アンジーが俺にセイガを抱いてくれと言った。
 セイガは俺をじっと見ている。

 「Hello SEIGA」
 
 セイガがニコニコして笑った。
 俺の顔に手を伸ばす。
 俺が顔を近づけてやると、小さな手でペタペタと触った。
 優しく額にキスをしてやる。

 亜紀ちゃんと双子も抱きたがった。
 アンジーに断って抱かせてやる。

 「そっとな。首が据わってないから、腕で頭を抱えてやるようにな」
 「流石おとーさん!」

 みんなで笑った。
 亜紀ちゃんが抱くと、セイガは俺に手を伸ばす。
 ルーとハーも順番に抱かせてもらうが、やはり俺に手を伸ばして動く。

 「やっぱトラがいいんだよ」

 聖が言った。
 ハーが聖に渡すと、セイガが泣き出した。

 「このやろう」

 聖が苦笑いした。
 聖が俺にセイガを渡す。
 セイガは喜び、俺の腕の中で眠った。

 「やっぱ俺とアンジーの子なんだな!」

 俺が言うと、聖が笑った。




 ロックハート家に着いた。
 門番が確認し、俺たちを中へ入れた。
 本館の前でアルと静江さんが待っている。
 全員で再会を喜び合った。

 「アル、静江さん、今回はお世話になります」
 「タカトラ、遠慮しないでくれ。君たちを待っていた。
 「石神さん、響子がお世話になっています」

 響子がリムジンから降りた。
 駆け寄ってアルと静江さんに抱き締められた。
 大泣きした。

 静江さんも泣いていた。

 「まさか、こんな日が来るなんて」

 聖に呼ばれた。

 「じゃあ、俺たちは帰るな」
 「そうか。一緒に飯を喰って行けばいいのに」
 「俺たちみたいなのは、あんましな。時間があったら連絡してくれ。いつでもいい」
 「分かった。必ずな」

 聖が去り、俺たちは食堂へ案内される。
 昼には少し早かったが、もう子どもたちはやれる。
 ロドリゲスが入って来て、子どもたちが抱き着いた。
 ロドリゲスが大泣きしたので、みんな驚いた。
 双子がハンカチで涙を拭ってやる。

 「みなさんにお会いしたかった」
 「私たちもだよ!」
 「また美味しい物を宜しくね!」

 双子がそう言うと、ロドリゲスは笑顔を作って「お任せ下さい」と言った。
 ロドリゲスは涙を拭い、響子の所へやってきた。

 「キョ、キョウコ!」
 「ハイ! ロドリゲス!」

 またロドリゲスが泣いた。

 「心配かけたね」
 「いいえ。こんなにお綺麗になって」

 響子が微笑んだ。
 ロドリゲスは戻った。 
 料理がどんどん運ばれてくる。

 響子がアルと静江さんの間に座り、俺は六花と鷹の間に座った。
 子どもたちと柳は別テーブルだ。
 俺たちはロドリゲスのフレンチを味わう。
 子どもたちは主にステーキだ。

 六花は以前に会っているので、俺は鷹を主に紹介した。

 「栞が最も信頼する人間なんだ。明日からあっちへ行く」
 「分かった。ヨウさん、今晩はゆっくりして下さい」
 「ありがとうございます」

 六花がモゾモゾしているので、あっちへ行って来いと言った。
 輝く笑顔でテーブルを移動した。
 アルたちが笑った。

 「タカトラ。後で詳しく説明するが、スケジュールを組んだ。明日一杯で終わらせる予定だ」
 「そうか、助かる。アル、苦労をかけたな」
 「いや、とんでもない。君がロックハート家にしてくれたことは忘れたことはないよ」
 
 俺は大統領、国防総省や米軍のトップたち、CIA、それに幾つかの省の人間と会談することになっていた。
 面会する人間はアルが大統領や国防総省の人間たちと話し合って厳選してくれている。
 それに俺のスケジュールを最優先にさせてくれた。
 もちろん、事前にスケジュールは俺にも知らせてくれている。

 「レセプションやパーティなどは全部断っている。時間を有効に使うために、食事を一緒にすることはあるけどね」
 「ああ、構わない。本当にありがとう」

 詳細は後で聞くことにし、食事の会話に戻った。

 「響子、今日は随分と食べるな」
 「うん!」

 響子はシチューを飲み、アスパラの焼き物や小さなランプステーキを食べた。

 「あっちでもっと食べてもいいんだぞ?」
 「死んじゃうよ!」

 みんなで笑った。
 子どもたちはいつものように楽しく食べていた。
 時々ロドリゲスが様子を見に来て楽しそうに笑って戻っていた。
 皿のサパーで使用人たちがみんな響子に挨拶していく。
 響子も笑顔で応えていた。

 



 食後、俺はアルと打ち合わせをし、響子は六花と一緒に寝た。
 鷹は子どもたちと一緒に街に出る。
 鷹も柳もニューヨークは初めてなので嬉しそうだった。
 残ると言う皇紀も、無理矢理連れ出された。

 アルは俺を執務室へ案内した。

 「打ち合わせの前に、一人紹介したいんだ」
 「ああ、誰だ?」
 「ロボット工学とAI理論の専門家なんだ」
 「え!」
 「タカトラが欲しがっていただろう?」
 「それはそうだが」

 まずは会ってくれと言われた。
 静江さんが若い女性を連れて来た。

 「ジェシカ・ローゼンハイムです。うちの産業ロボット部門の精鋭ですよ」
 
 静江さんがそう紹介した。
 30代になったばかりの綺麗な女性だった。
 身長は170センチくらい。
 金髪で濃いブルーの美しい瞳。
 理知的な顔立ちだが、目元に愛嬌がある。

 「ジェシカ・ローゼンハイムです」
 「石神高虎です」

 日本語が堪能で驚いた。

 「東京大学の大学院に通っていました。日本語はオリヴィア先生から」
 「ああ!」

 また驚いた。

 「私が石神さんのことをお話ししたら、是非一緒にお仕事をしたいと」
 「しかし、ロックハートで働いているのでは?」
 「はい。でも石神さんのお力になることが、ロックハート家の使命ですから」

 静子さんはそう言って微笑んだ。
 彼女が推薦するのだから、相当な人物なのだろう。

 「ローゼンハイムさん、うちの仕事は随分と特殊でして。技術的な面で他に流すわけにはいかないので、来てしまえば戻れませんよ?」
 「はい、伺っています。でも、私は誰も辿り着けなかったことをしたいのです。どうか私を使っていただけませんか?」
 「その件はまた話しましょう。アル、いつになりそうだ?」
 「今晩の11時以降なら」
 
 ジェシカはそれで構わないと言った。

 俺はまたアルとスケジュールの確認を話し合った。
 会う人間とどんな内容を話すのかを確認していく。
 俺は、真剣に話しながら、先ほどのジェシカの真っ青な瞳を思い出していた。
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