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GWの計画

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 乾さんの店から帰った日曜日の夜。
 明日も休みだ。
 俺は亜紀ちゃんと風呂に入った。

 「明日はのんびりするんですよね?」
 「ああ、そうだな」
 「亜紀ちゃんとべったりですよね?」
 「どうだかな」

 亜紀ちゃんが浴槽の縁に頭を乗せ、「ぐるぐる横回転」をする。
 進化したのか、しぶきが上がらなくなった。
 若干ウザいので、頭を押して湯に沈めた。

 「プファー! タカさん、明日は久しぶりに買い物に行きましょうよ!」
 「おお。そう言えば最近何も買ってないな」
 「私、タカさんに夏物の服を選んで欲しいです」
 「まあ、いいかな。柳にも買ってやるか」
 「ああ、いいですね!」
 「じゃあ三人で出掛けるか。たまには外で飯を喰おう」
 「はい!」

 そういうことになった。
 双子は皇紀を連れて、「ミート・デビル」に行くと言っていた。
 双子が買収したステーキハウスだ。

 


 振替休日の月曜日。
 朝食を食べ、みんな出掛けた。
 ロボは留守番と思ったが、左門たちに預けた。
 マグロの柵を渡し、ロボの昼食にしてくれと言った。

 ハマーで出掛ける。
 全員、3時までに帰宅するように言ってある。

 ハマーを伊勢丹の駐車場に入れた。
 でかい車なので、二台分の駐車スペースを使う。
 まずエルメスに入った。

 亜紀ちゃんがルーズネックのブラウスと黒のパンツ。
 柳がサマーニットのセーターと白のパンツを買った。
 俺もブルゾンとTシャツを何枚か選んで買った。

 続いてシャネルへ行くと、常連の亜紀ちゃんに店長が寄って来て、プレタポルテのカタログを見せてくれた。
 亜紀ちゃんと柳が大喜びで見て、一枚ずつ選んで買う。
 二人ともサイズは店で控えてあるので、選んだだけだ。
 特別室でエスプレッソが出て来た。
 俺がそこで会計をする。

 その後もバカラや食器類を見て何点か買った。
 楽しく買い物をし、一度外へ出て駅に向かう。
 中村屋で予約してあったためだ。




 グランナに入る。
 予約は、洋食コースを亜紀ちゃんが5人前、俺と柳は二人前だ。
 俺と柳は牛フィレ肉とフォアグラのソテーと中村屋のカリーを頼んだ。
 亜紀ちゃんは全種類だ(牛フィレ肉の単品を除く)。

 俺の向かいに二人が座る。
 亜紀ちゃん用にサイドテーブルが付く。
 ちょっと恥ずかしい。

 亜紀ちゃんが美味そうにカリーを掬った。

 「そう言えば、あの女の人も「中村」でしたね」

 マンションに数百キロのウンコを置いて来た女だ。
 亜紀ちゃんのスプーンが止まる。

 「柳さん! 何で今その話をするんですかぁ!」
 「あ、ゴメン」

 こいつは時々考えなしに口に出す癖がある。
 まあ、俺たちはヤワじゃないので、ガンガン食べるが。
 柳がカリーを掬った。

 「そう言えば、今朝はちょっと緩かったなー」

 柳のスプーンが止まる。
 亜紀ちゃんが復讐に出た。

 「ちょっと、亜紀ちゃん……」
 「え?」

 それ以上は言わない。

 「そう言えば、前に一江たちがスッポンで食中毒になったじゃない。あのときは部屋中に飛び散っててよ」
 「「……」」

 喧嘩王が参戦した。

 「こないだでかいのを割箸で千切ろうとしたら折れちゃって! 指がズボッて!」
 「お父さんが獲って来た山菜で物凄い下痢になっちゃって!」
 「聖に「奈落」を試した時によ! あいつトイレも行けなくって俺が始末したんだよ。なんか真っ黒くて柔らかくってなー!」
 
 散々談義をしたが、誰もカリーを残さなかった。





 帰りに左門の家に寄って、ロボを受け取った。
 ロボが俺の顔を見て駆け寄って来る。

 「トラ兄さん! 今度はトイレも貸してね!」
 「ああ! やっちゃったか」
 「うん。散々探してたみたいなんだけど、部屋の隅でプルプルするから。気付いて洗面器にしてもらった」
 「悪かったなー」

 俺は左門たちに中村屋のカリーパンやピロシキなどを土産にやった。
 ロボのは汚くないと言うと、左門が笑った。

 三時になり、みんな帰って揃っている。
 お茶にし、中村屋の様々な土産をみんなで食べる。
 皇紀は双子が焼いた様々な肉料理を味わったそうだ。
 双子の料理研究は進んでいる。

 「今日はゴールデンウィークの予定についての確認だ」

 子どもたちは俺の方を見ていた。

 「今年はニューヨークへ行く。俺たち六人に、響子、六花、鷹だ。ああ、ロボを忘れんな! 5日間の予定だが、分かっているな?」
 「「「「「はい!」」」」」

 口には出さないが、全員でアラスカへ行く。

 「特別に作られた機体で行く。最高速度マッハ50で飛行するから、一時間もかからない。聖の会社の飛行場へ降りる」
 
 アラスカで開発された特別機だ。
 プラズマジェットで推進する、極秘の機体だった。
 
 「タカさん! 楽しみです!」
 
 亜紀ちゃんが嬉しそうに言った。
 ロックハート家もそうだろうが、士王に会えるのだ。

 「俺は向こうでいろんな人間に会わなければならないが、お前らは自由にしろ。ああ、皇紀はちょっとな」
 「はい!」

 皇紀は主にアラスカでの仕事だ。
 こいつ抜きには立ち行かないことが多い。
 鷹もほとんどがアラスカの予定だ。
 
 「それと、これはまだ話していなかったが、麗星も行く。宜しく頼むぞ」
 「「「「「!」」」」」

 「二日間の予定だ。ロックハート家とは別な場所でな」
 
 それだけで子どもたちには通じる。
 麗星には、アラスカでの霊的防衛を頼む予定だ。
 当初は予定に無かったが、「業」が妖魔の攻撃を仕掛けて来た。
 あれに対抗する手段を至急講じなければならなくなった。

 ゴールデンウィークは9日間の休暇にしている。
 恐らく、向こうでは俺は多忙だ。
 アメリカ国内での会合や面談は全部アルがまとめてくれている。
 俺はその他に聖とも話さなければならないし、アラスカでも俺の指示を待っている要件が沢山あった。
 それに加えて麗星だ。
 聖やジャンニーニとゆっくり飲む暇はあるだろうか。

 俺は大まかなスケジュールを話し、会う人間への土産の手配を子どもたちに言った。
 準備はほぼ出来ている。
 入国審査も無いので、好きな物を持って行ける。
 レッドダイヤモンドなどもそうだ。
 うちに唸るほど余っていて困っている。

 「敵の攻撃の可能性はありますか?」
 
 ルーが言った。
 将来的に作戦指揮官としての意識が出て来た。

 「ゼロではないが、心配しなくてもいいだろう。それに俺たちが揃っていれば、何があろうとな」
 「「「「「はい!」」」」」

 



 話を終え、お茶を楽しんだ。
 響子は嬉しいだろう。
 久しぶりの実家だ。
 特別機には、響子のためのポッドがある。
 ぬるま湯に浸かりながら、Gの影響を受けずにストレスなく移動できる。
 これで響子も自由にどこへでも行けるようになった。

 響子の嬉しそうな顔が浮かんだ。
 俺たちは戦いの中で、幸せを噛み締める。
 俺たちは一緒にいれば、それだけで幸せなのだ。
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