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家族でキャンプ Ⅳ

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 翌朝、俺たちは7時くらいに起きた。
 皇紀は左門とくっついて寝て温かかったせいか、微笑みながら寝ていた。
 左門が皇紀の頬にキスをした。

 「おはよう、皇紀くん!」
 「!」

 また気絶しそうになるのを、俺が引っぱたいて起こした。

 「ハー!」
 「はい!」
 「皇紀のお尻に「Ω軟膏」を塗っといてやれ」
 「はーい!」

 「大丈夫だよー」


 朝食の支度をする。
 亜紀ちゃんが全員の飯盒を準備し、皇紀は火を起こし湯を沸かす。
 双子はソーセージやサラダの準備をしていく。
 皇紀が味噌汁を作るのを、左門が手伝った。
 二人が仲良くなって、俺も嬉しい。
 食事も並んで座って食べた。

 「皇紀くん、はーい」

 左門がウインナーを口に咥えて皇紀に向く。

 「!」
 「はやくー」
 
 みんなが皇紀を見ている。
 やれ、と目で訴えている。
 皇紀は目を閉じて左門のウインナーを半分齧った。
 みんなで拍手した。

 「じゃあ、左門。皇紀は残して行くから、ゆっくりキャンプを楽しんでくれ」
 「うん!」
 「タカさーん!」

 みんなで笑った。





 洗い物をし、荷物をまとめて帰った。
 帰りはゆっくりと、左門のペースに合わせて山を降った。




 左門を送って家に戻ると、柳が帰っていた。

 「石神さん!」

 玄関に駆け下りて来る。

 「会いたかったー!」
 「バカ! まずは新年の挨拶をしろ!」
 「あ! あけましておめでとうございます」

 「タカさん」
 ハーが言う。

 「私たちもやってなかったよね?」
 「そうか?」

 柳がまたかという目で俺を見た。

 子どもたちに荷物は任せ、俺は柳とリヴィングへ上がった。
 柳がコーヒーを淹れてくれる。

 「実家もいいですけど、やっぱりこの家がいいです」
 「そうかよ。御堂がいるのになー」
 「アハハハハハ!」

 柳が笑う。
 数日しか離れていなかったが、やはり綺麗な女だと思った。

 「オロチたちはどうだ?」
 「私たちはほとんど見ないですからね。でも卵はずっと飲んでますよ」
 「そうか」
 「石神さんの子どもたちも」
 「おい」
 「アハハハハハ!」

 まあ、元気そうで良かった。
 亜紀ちゃんたちが上がって来る。

 「タカさん、夕飯は出前でいいんですよね?」
 「ああ。たまにはのんびりしよう」
 「じゃあ、何をとりましょうか?」
 「寿司屋はやってるかなぁ」
 「ちょっと確認しますね!」

 亜紀ちゃんが喜んで電話を掛けた。

 「やってますよ!」
 「じゃあ好きなのを頼め。俺はマグロの赤身と……」

 亜紀ちゃんは柳や他の子どもたちに聞いて回る。
 また電話で注文したが、量が多すぎて受けられないようだった。
 仕方なく他のネタでと頼んでいた。
 市場も休みでネタに限りがあるのだろう。

 子どもたちは吸い物を作り、ご飯を炊いた。
 自分たちで手巻き寿司を作るようだ。
 柳も着替えて手伝い出した。

 俺はロボにマグロの刺身と貝柱をもらい、食べさせた。
 ロボは唸りながら食べた。
 大好物なのだ。




 寿司が届いて、みんなで食べた。
 俺の注文はちゃんとあった。

 亜紀ちゃんが柳に左門のことを話し、皇紀と仲良くなったと言うと爆笑していた。

 「朝にちゃんと、お尻に「Ω軟膏」を塗ったもんね!」
 「やめてよー!」

 みんなで笑う。

 「でも本当に気持ちのいい人なんですよ」
 「そうなんだ。私も会いたかったなー」
 
 「大丈夫だよ。すぐに幾らでも会えるようになる」
 「いつ引っ越すんですか?」
 亜紀ちゃんが聞く。

 「まだ分からんが、春までにはな。陸自の中でも調整が必要なんだ。左門は俺たちの窓口になるわけだけど、ある程度の権限も与えられるはずだしな。その権限の検討が時間がかかりそうだ」
 「そうですかー」
 「まあ、一度出向いて俺たちの力を少し見せる必要があるだろうな。向こうも実感として掴まないと動きにくいだろう」
 「はい! いつでも言って下さい!」
 「富士の樹海を更地にしてやるか!」
 「アハハハハハ!」

 そう話している間も、亜紀ちゃんは兄弟を殴り飛ばしながらちゃんと食べている。

 「栞さんの家を掃除しておきますね!」
 「ああ。武器庫はまあ分からんだろう。折を見て話すかもしれないが」
 「そうですねー。あ! 彼女、えーと、彼氏さんも一緒に住むんですかね!」
 「おお、そうだな! 聞いておこう。別に一緒で構わないしな」
 「ベッドはクイーンサイズですしね!」
 「「ギャハハハハハ!」」

 双子が大笑いする。

 「でも、栞さんが戻ってきたら」
 「まあ、その時はまた考えるさ。土地は幾らでもあるんだしな」
 「そうですね! この家でもいいわけですし」
 「まあな」

 俺は曖昧に答えた。
 恐らく、数年以上先の話だ。
 もちろん途中で何度も会うことだろうが。

 「士王ちゃんが生まれたら見に行きますよね!」
 「まあな。ちょっと遠いけどな」
 「そんなこと! 何度も行ってるじゃないですか」
 「そうだな」

 俺も薄く笑った。
 まあ、驚くだろう。

 その夜は柳も戻ったので、みんなで幻想空間で飲んだ。
 
 皇紀に左門たちと一緒に住めと言うと、マジ泣きしそうになった。

 「お前もいろんな世界を知っといた方がいいぞ?」
 「タカさーん!」
 「「Ω軟膏」持ってっていいから」
 「やめてくださいー!」

 みんなが笑った。

 「まあ、冗談だけど、お前らは「薔薇乙女」にも行っているから、ゲイにも抵抗はないよな」
 「「「「「はい!」」」」」
 
 「愛の形は様々だ。人間はどんなものを好きになったっていいんだ。左門とも仲良くしてくれな!」
 「「「「「はい!」」」」」




 その夜、俺は石動の「ホモ物」を皇紀に貸した。
 翌朝、「結構いいかもしれませんね」と言っていた。
 
 まあ、どうでもいい。
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