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真冬の別荘 Ⅳ: ニューヨーク恋物語
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俺が今の病院に移り、数年が経った頃。
やっと蓼科部長から夏に長期休暇をもらった。
「お前なんかが休暇で何するんだ?」
「久しぶりにニューヨークの友達に会いたいと思います!」
「お前の友達?」
「はい!」
「どうせ人殺しかなんかだろう」
「はい! その通りです」
その通りだ。
すっげぇー人殺しだ、あいつは。
聖が珍しく空港まで迎えに来てくれた。
早速ガシガシと喧嘩をし、警備員が来たので慌てて逃げた。
「トラ、なんかジャンニーニがお前に会いたいってさ」
「え? なんだろう」
「またぶん殴って欲しいんじゃねぇの」
「あいつも変わってんなぁ」
取り敢えず聖のアパートメントへ行き、一息付いた。
電話が掛かって来て、聖が受けた。
「ああそうだよ。今着いたとこだ」
俺のことらしい。
「トラには話したよ! なんだようるせぇな!」
「おい、代ろうか?」
聖が受話器を寄越す。
「トラ! お前今ニューヨークにいるんだよな?」
「なんだジャンニーニか。何だよ、俺に用って?」
「とにかくうちに来てくれないか?」
「あー、めんどくせぇ」
「お前ら! いつも呼んでもいねぇのに突っ込んでくるくせに!」
「アハハハハハハ!」
俺は聖に行こうと言った。
まあ、ジャンニーニにも久しぶりに会いたい。
二人で出掛ける。
聖が買ったばかりのロールスロイス「シルヴァー・セラフ(銀の熾天使)」を運転する。
俺が聖に車の相談を受け、これを勧めた。
もちろん「シルヴァー・セラフ」という名前が聖にピッタリだったからだ。
こいつは天使だ。
無邪気で危険な天使。
俺の大親友だ。
聖も俺が選んでくれたと喜んでいた。
三日間寝ないで悩んだと言ったら「すぐに寝てくれ」と泣きそうな声で言った。
起きたばかりで眠くも無かったが、俺は取り敢えず寝た。
聖の車を見て、門番がすぐに門を開ける。
俺は手を振って挨拶した。
でかい屋敷の玄関前に停めて降りる。
すぐにジャンニーニの執務室へ案内された。
「トラ!」
ジャンニーニが寄って来て握手をした。
ハグしようとしたので腹に拳を入れた。
豪華なソファに座らされ、紅茶が置かれた。
俺たちは口を付けない。
「トラが来るってセイントに聞いたんでな」
「なんなんだよ、ジャンニーニ。戦争か?」
「そうじゃねぇ。実はな」
「おう」
「セイントには全然関係ねぇんだが」
「そうかよ」
「それでな」
「ああ」
「トラは元気か?」
「テメェ! とっとと用件を話せぇ!」
俺はイラついて怒鳴った。
ジャンニーニはハンカチで額の汗を拭いた。
「トラは女によくモテるだろ?」
「まーな」
「俺に女の扱いを教えてくれ!」
ジャンニーニが叫んだ。
部下たちは無表情だ。
下手に反応すればどうなるか分からない。
ジャンニーニは恐ろしい裏社会の実力者なのだ。
「まず背中から手を回して乳首をゆっくり回してやる。耳も甘噛みしろ。股間はその後だぞ? それも出来るだけ最初はソフトにな! 焦って指なんか入れんじゃねぇぞ」
「い、いや、トラ。そういう扱いじゃなくてだな」
「あ?」
違うらしい。
ジャンニーニが汗を拭きながら俺たちに話した。
「最初はニューヨーク市長がうちに来た時なんだ」
「あ、そう」
その秘書に一目惚れしたということらしい。
ソフィア・ミラー、身長179センチ、金髪のロングストレート、瞳はエメラルドグリーン、顔はBB(ブリジット・バルドー)に似ているらしい。
B98 W65 H99。
イェール・ロー・スクールを首席で卒業した現在32歳のインテリ女性だ。
「へー」
「頼む、トラ! 何とかお前の力を貸してくれ!」
「攫って来ようか?」
「そうじゃねぇ!」
もちろん冗談だ。
俺に興味が無いだけだ。
「無理だろうよ。お前、何の稼業やってんだよ」
「分かってる! それでも忘れられないんだ!」
「へー」
「トラ!」
まったくろくでもねぇ話だった。
「トラ、ちょっと力を貸してやれよ」
聖が言った。
意外な言葉に俺が驚いた。
「ジャンニーニさ、本気で苦しそうじゃん。トラなら何とか出来んじゃないのか?」
聖は天使だった。
忘れていた。
こいつは本気で苦しんでいる人間を放っておけないのだ。
まあ、自分が気に入っている奴限定だが。
「聖、お前なぁ」
「なぁ、何とかしてやれよ。可哀そうじゃん」
「セイント!」
ジャンニーニが目を潤ませて聖を見ていた。
まったく、しょうがねぇ。
「分かったよ! 聖に言われちゃしょうがねぇ。こいつにはでっかい借りがあるからな!」
「トラ、ありがとう」
聖が微笑んで言った。
「だけどよ、ジャンニーニ。お前が無理筋を通そうとしてるのは分かってるよな?」
「ああ、もちろんだ」
「俺も協力してやるけど、どうなるかは分からねぇ」
「ああ!」
「まずは相手に会ってみないとな」
「そうか!」
「その段取りを組んでくれ」
「ああ、無理だ」
「あ?」
何の接点も持っていないらしい。
「お前なぁ。やけに詳しい資料を持ってるじゃねぇか」
「それは金と人で集めた」
「あー」
幾ら何でも、俺がニューヨーク市長の秘書と会うのは難しい。
俺はあれこれと考えていた。
「トラ、俺がなんとか出来るかも」
聖が言った。
「お前が?」
「ああ。今「セイントPMC」の新社屋の土地を探してんだ」
「ああ」
俺が設立させた「セイントPMC」は順調すぎる成長をしていた。
チャップの所にはまだ及ばないが、業界では急成長だ。
「それで、土地の買収を市長と協議しながらやってんだ」
「ほんとか!」
「ああ、何度か会ってるし、明日もまたアポが取ってある」
「じゃあ、ソフィアとも会ってるのか!」
「多分な」
「なんだよ、頼りねぇな」
「だって、俺ロリコンじゃねぇから」
なるほどね。
50超えてないもんね。
「じゃあ、トラも同席してくれよ」
「ああ、分かった。ジャンニーニ、それでいいな!」
「もちろんだぁー!」
ジャンニーニが立ち上がって両手を上に拡げた。
聖に抱き着き、腹に強烈なパンチを喰らった。
笑っていた。
まあ、こいつにもちょっとは世話になった。
何とかしてみるか。
俺もジャンニーニは嫌いじゃないしな。
やっと蓼科部長から夏に長期休暇をもらった。
「お前なんかが休暇で何するんだ?」
「久しぶりにニューヨークの友達に会いたいと思います!」
「お前の友達?」
「はい!」
「どうせ人殺しかなんかだろう」
「はい! その通りです」
その通りだ。
すっげぇー人殺しだ、あいつは。
聖が珍しく空港まで迎えに来てくれた。
早速ガシガシと喧嘩をし、警備員が来たので慌てて逃げた。
「トラ、なんかジャンニーニがお前に会いたいってさ」
「え? なんだろう」
「またぶん殴って欲しいんじゃねぇの」
「あいつも変わってんなぁ」
取り敢えず聖のアパートメントへ行き、一息付いた。
電話が掛かって来て、聖が受けた。
「ああそうだよ。今着いたとこだ」
俺のことらしい。
「トラには話したよ! なんだようるせぇな!」
「おい、代ろうか?」
聖が受話器を寄越す。
「トラ! お前今ニューヨークにいるんだよな?」
「なんだジャンニーニか。何だよ、俺に用って?」
「とにかくうちに来てくれないか?」
「あー、めんどくせぇ」
「お前ら! いつも呼んでもいねぇのに突っ込んでくるくせに!」
「アハハハハハハ!」
俺は聖に行こうと言った。
まあ、ジャンニーニにも久しぶりに会いたい。
二人で出掛ける。
聖が買ったばかりのロールスロイス「シルヴァー・セラフ(銀の熾天使)」を運転する。
俺が聖に車の相談を受け、これを勧めた。
もちろん「シルヴァー・セラフ」という名前が聖にピッタリだったからだ。
こいつは天使だ。
無邪気で危険な天使。
俺の大親友だ。
聖も俺が選んでくれたと喜んでいた。
三日間寝ないで悩んだと言ったら「すぐに寝てくれ」と泣きそうな声で言った。
起きたばかりで眠くも無かったが、俺は取り敢えず寝た。
聖の車を見て、門番がすぐに門を開ける。
俺は手を振って挨拶した。
でかい屋敷の玄関前に停めて降りる。
すぐにジャンニーニの執務室へ案内された。
「トラ!」
ジャンニーニが寄って来て握手をした。
ハグしようとしたので腹に拳を入れた。
豪華なソファに座らされ、紅茶が置かれた。
俺たちは口を付けない。
「トラが来るってセイントに聞いたんでな」
「なんなんだよ、ジャンニーニ。戦争か?」
「そうじゃねぇ。実はな」
「おう」
「セイントには全然関係ねぇんだが」
「そうかよ」
「それでな」
「ああ」
「トラは元気か?」
「テメェ! とっとと用件を話せぇ!」
俺はイラついて怒鳴った。
ジャンニーニはハンカチで額の汗を拭いた。
「トラは女によくモテるだろ?」
「まーな」
「俺に女の扱いを教えてくれ!」
ジャンニーニが叫んだ。
部下たちは無表情だ。
下手に反応すればどうなるか分からない。
ジャンニーニは恐ろしい裏社会の実力者なのだ。
「まず背中から手を回して乳首をゆっくり回してやる。耳も甘噛みしろ。股間はその後だぞ? それも出来るだけ最初はソフトにな! 焦って指なんか入れんじゃねぇぞ」
「い、いや、トラ。そういう扱いじゃなくてだな」
「あ?」
違うらしい。
ジャンニーニが汗を拭きながら俺たちに話した。
「最初はニューヨーク市長がうちに来た時なんだ」
「あ、そう」
その秘書に一目惚れしたということらしい。
ソフィア・ミラー、身長179センチ、金髪のロングストレート、瞳はエメラルドグリーン、顔はBB(ブリジット・バルドー)に似ているらしい。
B98 W65 H99。
イェール・ロー・スクールを首席で卒業した現在32歳のインテリ女性だ。
「へー」
「頼む、トラ! 何とかお前の力を貸してくれ!」
「攫って来ようか?」
「そうじゃねぇ!」
もちろん冗談だ。
俺に興味が無いだけだ。
「無理だろうよ。お前、何の稼業やってんだよ」
「分かってる! それでも忘れられないんだ!」
「へー」
「トラ!」
まったくろくでもねぇ話だった。
「トラ、ちょっと力を貸してやれよ」
聖が言った。
意外な言葉に俺が驚いた。
「ジャンニーニさ、本気で苦しそうじゃん。トラなら何とか出来んじゃないのか?」
聖は天使だった。
忘れていた。
こいつは本気で苦しんでいる人間を放っておけないのだ。
まあ、自分が気に入っている奴限定だが。
「聖、お前なぁ」
「なぁ、何とかしてやれよ。可哀そうじゃん」
「セイント!」
ジャンニーニが目を潤ませて聖を見ていた。
まったく、しょうがねぇ。
「分かったよ! 聖に言われちゃしょうがねぇ。こいつにはでっかい借りがあるからな!」
「トラ、ありがとう」
聖が微笑んで言った。
「だけどよ、ジャンニーニ。お前が無理筋を通そうとしてるのは分かってるよな?」
「ああ、もちろんだ」
「俺も協力してやるけど、どうなるかは分からねぇ」
「ああ!」
「まずは相手に会ってみないとな」
「そうか!」
「その段取りを組んでくれ」
「ああ、無理だ」
「あ?」
何の接点も持っていないらしい。
「お前なぁ。やけに詳しい資料を持ってるじゃねぇか」
「それは金と人で集めた」
「あー」
幾ら何でも、俺がニューヨーク市長の秘書と会うのは難しい。
俺はあれこれと考えていた。
「トラ、俺がなんとか出来るかも」
聖が言った。
「お前が?」
「ああ。今「セイントPMC」の新社屋の土地を探してんだ」
「ああ」
俺が設立させた「セイントPMC」は順調すぎる成長をしていた。
チャップの所にはまだ及ばないが、業界では急成長だ。
「それで、土地の買収を市長と協議しながらやってんだ」
「ほんとか!」
「ああ、何度か会ってるし、明日もまたアポが取ってある」
「じゃあ、ソフィアとも会ってるのか!」
「多分な」
「なんだよ、頼りねぇな」
「だって、俺ロリコンじゃねぇから」
なるほどね。
50超えてないもんね。
「じゃあ、トラも同席してくれよ」
「ああ、分かった。ジャンニーニ、それでいいな!」
「もちろんだぁー!」
ジャンニーニが立ち上がって両手を上に拡げた。
聖に抱き着き、腹に強烈なパンチを喰らった。
笑っていた。
まあ、こいつにもちょっとは世話になった。
何とかしてみるか。
俺もジャンニーニは嫌いじゃないしな。
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