1,006 / 2,840
今週のオロチ当番
しおりを挟む
子どもたちも朝食を食べ終え、俺たちは出ることにした。
「申し訳ない。急いで行かなきゃいけないんで、掃除もろくに出来なかった」
「そんなこと! こちらこそ、いろいろとありがとうございました」
仕事で来れない人間もいたが、多くの「紅六花」のメンバーが見送りに来てくれた。
「じゃあ、みんな元気でな! 何かあったらすぐに言うんだぞ!」
大歓声の中で見送られた。
本当にいい連中だ。
響子が隣に座っている。
あまり構ってやれなかったので、運転しながらしょっちゅう頭を撫で、頬を突き、肩を叩き、ぺたんこのオッパイを触った。
「いやー」
「響子、眠かったら寝ていいんだぞ?」
「寝れないじゃん!」
御堂家に向かっている。
柳を送りながら、昼食をご馳走になる予定だ。
澪さんが大変だろうとは思いながら、みなさんが来てくれと言ってくれている。
ありがたいことだ。
俺の運転なら二時間ほどで着く。
子どもたちに手伝わせることも出来るだろう。
途中のサービスエリアにも寄らない。
俺がしつこく構っていると、響子が俺の手に嚙みついた。
笑って、分かったと言った。
「響子、途中で寄らないけどオシッコは大丈夫か?」
「うん」
「ウンコは?」
「大丈夫だよ!」
「まあ、お前のウンコはいい匂いだからな!」
「そうだよ!」
みんなが笑った。
御堂家が近付き、柳が電話をした。
「柳! お前が今週のオロチ当番だからな!」
「またですか!」
「そうだよ。ちゃんと世話するんだぞ?」
「何するんですかぁ!」
みんなで笑った。
寒い中、また御堂家ではみなさんで出迎えてくれた。
「オワァァァーーー!」
オロチもいた。
後ろに気付かず、みなさんが驚いていた。
寒いが、オロチは冬眠しないようだ。
生態は俺も知らん。
御堂家のみなさんが腰を抜かしそうになっていた。
「またお世話になります!」
「なんで石神が来るとオロチが出て来るんだ!」
御堂も流石に驚いていた。
俺はオロチに近づき、寄せて来た頭を抱いた。
「寒いのに、わざわざ出て来てくれたのか。子どもたちは元気か?」
オロチが首を縦に振った。
「そうか!」
「石神、お前やっぱり会話できるんじゃ……」
「ああ。今度『一〇日でマスター! ヘビ語初級者篇』を送ってやるよ」
「頼む」
単語の暗記と長文読解が重要だと言うと、もういいと言われた。
座敷でコーヒーを頂き、俺は子どもたちにすぐに手伝えと言った。
カレーにしてもらっている。
米はもう炊かれているだろうから、食材のカットを中心にさせてもらった。
大勢でかかるので、準備はすぐに出来た。
俺は澪さんと柳を呼んで、後はうちの子どもたちに任せた。
「手伝っていただいて、助かりました」
澪さんが言った。
「いや、こちらこそ。わざわざ昼食をご馳走になってしまって」
「石神さん、今日は本当に泊まれないのかね」
正巳さんが残念そうに言う。
「すみません。また夏にお邪魔させて下さい」
「そうかぁ」
「正巳さんと菊子さんこそ、お時間があったら是非うちに来て下さいよ」
「ほんとか!」
「もちろんです。うちでの柳も見てもらいたいですし」
「ああ、本当に考えよう」
「お願いします」
柳も嬉しそうだ。
「ああ、御堂と澪さん。報告があるんだ」
「なんだ?」
「柳に夜這いされてな。それでつい……」
「い、い、石神さん!!」
柳が慌てて立ち上がって叫んだ。
「そういうことなんだ。御堂に許可は貰っていたけど、俺としては大学を卒業……」
「石神さん! やめてくださいよ! 何言ってんですかぁ!」
「柳、もうちゃんと話そう。隠しておきたいお前の気持ちも分かるけどな」
「だって! 何もしてくれなかったじゃないですかぁ!」
全員で爆笑した。
「そうだっけ?」
「そうじゃないですか!」
「でも夜這いはしたよな?」
「!」
真っ赤になって俯いた。
みんなが笑っている。
「お前なぁ」
「何ですか!」
「俺は御堂に何でも話す人間だって知ってるだろう」
「!」
また爆笑した。
大量のカレーをガンガン子どもたちが食べ、正巳さんを喜ばせた。
澪さんは自信ありげだったが、やはりご飯が無くなり、またうどんを慌てて作った。
俺も手伝った。
本当に申し訳ない。
食後のコーヒーを頂き、全員でオロチを見に行くことにした。
「あ! ちょっと待ってくれ!」
「タカさん、どうしたんですか?」
亜紀ちゃんが言う。
「あのよ! 名前なんだっけ?」
「はい?」
「子どもヘビの名前だよ! あの時適当に付けたから、覚えてねぇ!」
「タカさん! ちょっと酷くないですか!」
御堂が大笑いしている。
澪さんも笑っていた。
「もう! いいですか、虹栞、虹花、虹鷹、虹柳、ニジンスキーです!」
「お、おう! 流石、お姉ちゃん!」」
「じゃあ行きますよ!」
「ごめん、もう一回」
亜紀ちゃんに頭をはたかれた。
掴み合いになりそうだったが、柳と双子に止められた。
なんとか覚えた。
「オロチー!」
俺は呼びながら、卵を6つ割って行った。
オロチが出て来る。
「おう! 呼んで悪かったな。俺たちはもう出るから、もう一度顔が見たくてな!」
オロチが長い舌を出し入れする。
喜んでいる。
分からんが。
「虹栞、虹花、虹鷹、虹柳、ニジンスキーは寝てるか? だったらいいんだけどよ」
オロチが口を開いた。
幽かに耳鳴りがする。
呼んでいるようだ。
少し待っていると、五匹の虹色の蛇が出て来た。
「よー! 虹栞、虹花、虹鷹、虹柳、ニジンスキー! どれがどれだか分かんないけど」
亜紀ちゃんに後頭部を叩かれる。
「ちょっと大きくなったか!」
今は1メートルにもなっている。
本当に成長した。
俺は一匹ずつ頭を撫でてやる。
撫でると舌を出し入れした。
喜んでいる。
分からんが。
「じゃあ、良かったら卵を喰ってくれ! また来るからな!」
俺たちは離れた。
正巳さんと菊子さんが最後まで手を合わせていた。
座敷には戻らず、俺たちは出発することにした。
「ゆっくりできないで申し訳ないな。別荘で鷹と待ち合わせているんだ。寒い中を待たせるわけにはいかんからな」
「ああ、また来てくれ。いつでも待っている」
御堂を握手を交わした。
「みなさん、すみませんでした! ではまた!」
子どもたちも挨拶する。
「あ!」
オロチがまた出て来た。
何かを咥えている。
小さな紐に見えた。
俺は駆け寄った。
オロチが頭を俺に近づける。
抜け殻だった。
サイズ的に、ニジンスキーたちのものだろう。
「俺にまたくれるのか! ありがとうな!」
五本の抜け殻を受け取った。
「じゃあ、みんな元気でな! オロチ、御堂家を頼むぞ!」
出発する俺たちを、全員が見送ってくれた。
オロチが柳の頭に自分の頭を乗せ、柳は気を喪った。
澪さんが慌てて抱き上げ、御堂が大笑いしているのがバックミラーで見えた。
まあ、あいつは今週のオロチ当番だからな。
俺も大笑いした。
「申し訳ない。急いで行かなきゃいけないんで、掃除もろくに出来なかった」
「そんなこと! こちらこそ、いろいろとありがとうございました」
仕事で来れない人間もいたが、多くの「紅六花」のメンバーが見送りに来てくれた。
「じゃあ、みんな元気でな! 何かあったらすぐに言うんだぞ!」
大歓声の中で見送られた。
本当にいい連中だ。
響子が隣に座っている。
あまり構ってやれなかったので、運転しながらしょっちゅう頭を撫で、頬を突き、肩を叩き、ぺたんこのオッパイを触った。
「いやー」
「響子、眠かったら寝ていいんだぞ?」
「寝れないじゃん!」
御堂家に向かっている。
柳を送りながら、昼食をご馳走になる予定だ。
澪さんが大変だろうとは思いながら、みなさんが来てくれと言ってくれている。
ありがたいことだ。
俺の運転なら二時間ほどで着く。
子どもたちに手伝わせることも出来るだろう。
途中のサービスエリアにも寄らない。
俺がしつこく構っていると、響子が俺の手に嚙みついた。
笑って、分かったと言った。
「響子、途中で寄らないけどオシッコは大丈夫か?」
「うん」
「ウンコは?」
「大丈夫だよ!」
「まあ、お前のウンコはいい匂いだからな!」
「そうだよ!」
みんなが笑った。
御堂家が近付き、柳が電話をした。
「柳! お前が今週のオロチ当番だからな!」
「またですか!」
「そうだよ。ちゃんと世話するんだぞ?」
「何するんですかぁ!」
みんなで笑った。
寒い中、また御堂家ではみなさんで出迎えてくれた。
「オワァァァーーー!」
オロチもいた。
後ろに気付かず、みなさんが驚いていた。
寒いが、オロチは冬眠しないようだ。
生態は俺も知らん。
御堂家のみなさんが腰を抜かしそうになっていた。
「またお世話になります!」
「なんで石神が来るとオロチが出て来るんだ!」
御堂も流石に驚いていた。
俺はオロチに近づき、寄せて来た頭を抱いた。
「寒いのに、わざわざ出て来てくれたのか。子どもたちは元気か?」
オロチが首を縦に振った。
「そうか!」
「石神、お前やっぱり会話できるんじゃ……」
「ああ。今度『一〇日でマスター! ヘビ語初級者篇』を送ってやるよ」
「頼む」
単語の暗記と長文読解が重要だと言うと、もういいと言われた。
座敷でコーヒーを頂き、俺は子どもたちにすぐに手伝えと言った。
カレーにしてもらっている。
米はもう炊かれているだろうから、食材のカットを中心にさせてもらった。
大勢でかかるので、準備はすぐに出来た。
俺は澪さんと柳を呼んで、後はうちの子どもたちに任せた。
「手伝っていただいて、助かりました」
澪さんが言った。
「いや、こちらこそ。わざわざ昼食をご馳走になってしまって」
「石神さん、今日は本当に泊まれないのかね」
正巳さんが残念そうに言う。
「すみません。また夏にお邪魔させて下さい」
「そうかぁ」
「正巳さんと菊子さんこそ、お時間があったら是非うちに来て下さいよ」
「ほんとか!」
「もちろんです。うちでの柳も見てもらいたいですし」
「ああ、本当に考えよう」
「お願いします」
柳も嬉しそうだ。
「ああ、御堂と澪さん。報告があるんだ」
「なんだ?」
「柳に夜這いされてな。それでつい……」
「い、い、石神さん!!」
柳が慌てて立ち上がって叫んだ。
「そういうことなんだ。御堂に許可は貰っていたけど、俺としては大学を卒業……」
「石神さん! やめてくださいよ! 何言ってんですかぁ!」
「柳、もうちゃんと話そう。隠しておきたいお前の気持ちも分かるけどな」
「だって! 何もしてくれなかったじゃないですかぁ!」
全員で爆笑した。
「そうだっけ?」
「そうじゃないですか!」
「でも夜這いはしたよな?」
「!」
真っ赤になって俯いた。
みんなが笑っている。
「お前なぁ」
「何ですか!」
「俺は御堂に何でも話す人間だって知ってるだろう」
「!」
また爆笑した。
大量のカレーをガンガン子どもたちが食べ、正巳さんを喜ばせた。
澪さんは自信ありげだったが、やはりご飯が無くなり、またうどんを慌てて作った。
俺も手伝った。
本当に申し訳ない。
食後のコーヒーを頂き、全員でオロチを見に行くことにした。
「あ! ちょっと待ってくれ!」
「タカさん、どうしたんですか?」
亜紀ちゃんが言う。
「あのよ! 名前なんだっけ?」
「はい?」
「子どもヘビの名前だよ! あの時適当に付けたから、覚えてねぇ!」
「タカさん! ちょっと酷くないですか!」
御堂が大笑いしている。
澪さんも笑っていた。
「もう! いいですか、虹栞、虹花、虹鷹、虹柳、ニジンスキーです!」
「お、おう! 流石、お姉ちゃん!」」
「じゃあ行きますよ!」
「ごめん、もう一回」
亜紀ちゃんに頭をはたかれた。
掴み合いになりそうだったが、柳と双子に止められた。
なんとか覚えた。
「オロチー!」
俺は呼びながら、卵を6つ割って行った。
オロチが出て来る。
「おう! 呼んで悪かったな。俺たちはもう出るから、もう一度顔が見たくてな!」
オロチが長い舌を出し入れする。
喜んでいる。
分からんが。
「虹栞、虹花、虹鷹、虹柳、ニジンスキーは寝てるか? だったらいいんだけどよ」
オロチが口を開いた。
幽かに耳鳴りがする。
呼んでいるようだ。
少し待っていると、五匹の虹色の蛇が出て来た。
「よー! 虹栞、虹花、虹鷹、虹柳、ニジンスキー! どれがどれだか分かんないけど」
亜紀ちゃんに後頭部を叩かれる。
「ちょっと大きくなったか!」
今は1メートルにもなっている。
本当に成長した。
俺は一匹ずつ頭を撫でてやる。
撫でると舌を出し入れした。
喜んでいる。
分からんが。
「じゃあ、良かったら卵を喰ってくれ! また来るからな!」
俺たちは離れた。
正巳さんと菊子さんが最後まで手を合わせていた。
座敷には戻らず、俺たちは出発することにした。
「ゆっくりできないで申し訳ないな。別荘で鷹と待ち合わせているんだ。寒い中を待たせるわけにはいかんからな」
「ああ、また来てくれ。いつでも待っている」
御堂を握手を交わした。
「みなさん、すみませんでした! ではまた!」
子どもたちも挨拶する。
「あ!」
オロチがまた出て来た。
何かを咥えている。
小さな紐に見えた。
俺は駆け寄った。
オロチが頭を俺に近づける。
抜け殻だった。
サイズ的に、ニジンスキーたちのものだろう。
「俺にまたくれるのか! ありがとうな!」
五本の抜け殻を受け取った。
「じゃあ、みんな元気でな! オロチ、御堂家を頼むぞ!」
出発する俺たちを、全員が見送ってくれた。
オロチが柳の頭に自分の頭を乗せ、柳は気を喪った。
澪さんが慌てて抱き上げ、御堂が大笑いしているのがバックミラーで見えた。
まあ、あいつは今週のオロチ当番だからな。
俺も大笑いした。
2
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~
みつまめ つぼみ
キャラ文芸
ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。
彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。
そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!
彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。
離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。
香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる