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「紅六花ビル」、再び Ⅱ

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 8階の俺たち専用の住居スペースに上がった。
 人数が多いので何度かに分かれてエレベーターに乗る。
 最初に俺、響子、ロボ、六花、そしてタケとよしこ。
 次に亜紀ちゃん、皇紀、双子、柳、キッチ。
 最後にミカなど荷物を持った「紅六花」の人間たち。

 広いリヴィングだったが、今回は人数も多いのでソファが追加されていた。
 俺たち11人とタケ、よしこ、ミカを除いて、他の人間は降りて行った。
 ミカが全員にコーヒーを配る。
 あらかじめ、用意していたようだ。
 一緒に出て来たいちご大福に、六花が喜ぶ。

 「栃木名産ですよ!」
 「どこでも今はあるだろう!」

 でもニコニコして食べた。
 俺の分をやると、また笑顔が輝いた。
 ミカに、響子のものは半分に切ってくれと頼んだ。
 夕飯が入らなくなる。
 他の連中は何の心配もない。

 「酒を飲む前に、みんなで「紫苑六花公園」に行くか」

 六花が俺を見て、もう泣いている。
 タケに「肉」と言った。
 タケも心得ていて、笑いながら内線で注文した。

 「ロボはどうする?」
 聞くと寄って来たので、連れて行く。




 下で「紫苑六花公園」に行くと言うと、全員がついてきた。
 もう揃っていたようで、81名の「紅六花」が総勢で走る。
 何人か、先に俺が送っていたハーレーなどに跨っていた。
 双子の買収した企業が乾さんの店に注文し、こちらへ納車したものだ。
 数えると、23台あった。

 「今、全員が大型免許を取ろうとしてるんです」
 六花がそう言った。

 「そうか」
 「みんな嬉しそうで」
 「そうか」

 「紫苑六花公園」には、駐車場がない。
 俺たちは少し離れた場所に車を置いて、みんなで歩いた。
 響子は俺が抱きかかえ、ロボは俺の隣を歩いている。

 六花はタケたちに囲まれていた。
 ミカが、六花の万一用に、唐揚げを紙の容器に入れて持っている。
 下の人間たちは、全員の缶ジュースを抱えている。
 誰かが気を利かせたのだろう。

 公園に着き、みんなで長いベンチに座った。

 「おい、全員座れたな!」
 「はい! 自分ら「紅六花」がみんな座れる長さにしましたから!」
 「アハハハハハハ!」

 よしこが説明してくれた。
 全員に飲み物が配られる。
 真っ先に俺と六花に聞きに来て、俺は適当に袋に手を突っ込んで一本もらった。
 
 《 意外な組み合わせ! スイカ+オレンジ+牛丼(国産和牛) 》
 「……」

 激マズだった。

 「柳!」
 「はい!」
 走って来る。

 「ちょっと俺の飲みかけだけど、お前飲む?」
 「はい!」
 喜んで受け取る。

 「じゃあ、お前の飲みかけも一口くれないかな」
 「はい!」

 俺は缶コーヒーを受け取り、一気に飲んだ。

 「あ、飲んじゃった」
 「いいですよ!」

 柳が席に戻った。
 俺はロボと走って遊んだ。
 柳が俺をずっと睨んでいた。




 響子がよしこに抱えられ、公園を見せてもらっていた。
 何人かも一緒に歩いている。

 俺はロボを亜紀ちゃんに任せ、六花と「紫苑」の花壇に行った。
 もう12月も終わりだったが、一本だけまだ美しい花を湛えていた。
 
 「まるで、お前が来るのを待ってくれていたようだな」

 「君を忘れない……」

 六花が紫苑の花言葉を呟いた。
 涙を流した。
 俺はその肩を抱き、一緒にベンチに戻った。

 「おい! 六花の唐揚げ!」

 みんなが探し出す。

 「急いでくれよー!」

 六花が泣くと、俺も辛い。

 「あ!」
 「ん?」

 双子が喰っているのをキッチが見つけた。
 道理で大人しいと思った。

 「おい!」

 俺が叫ぶと、ルーが慌てて駆けて来る。
 自分の口から千切れたものを出し、俺に手を差し出させて乗せた。
 半分もねぇ。
 そして空の容器を俺に見せた。
 六花は泣いている。

 「……」

 俺は六花を抱き締め、キスをした。
 目を閉じている六花の口に、喰い掛けの唐揚げを優しく入れた。

 泣き止んだ。
 みんな、それぞれ違う方向を向いていた。
 ルーの頭を引っぱたいた。
 六花はニコニコしていた。


  

 タケの店に戻ると、小鉄と従業員たちが既に準備を始めていた。
 子どもたちを着替えさせ、手伝わせる。
 小鉄が何度も頭を下げ、「申し訳ない」と言っていた。

 もう少し時間が掛かると見て、俺は響子と風呂に入った。
 当然、六花も一緒だ。
 響子を二人で泡だらけにして洗う。

 「響子、みんなに囲まれてたな」
 「うん!」

 楽しそうで良かった。
 みんな、響子を気遣ってくれている。

 「響子はどこに行っても大人気だよな!」
 「タカトラほどじゃないよー」
 「俺は響子の輝きでちょっと光ってるだけだよ」
 「ちがうよー」

 六花が笑っている。
 シャワーで洗い流した。

 「あ!」

 六花が叫んだ。
 俺が見ると、響子の腹を指差している。
 響子はシャンプーも洗い流しているので目を閉じている。

 「おい!」
 「はい!」

 響子の髪の湯を拭い、目を開けさせた。

 二人で響子のへそを指差した。

 「ケポリン!」

 生えてた。




 風呂を上がり、俺は先に下に降りた。
 双子が響子のオムライスを作ろうとしていた。
 
 「20センチの円に盛ってくれ」
 「「?」」

 俺は25センチの薄焼き卵を作り、双子が盛り付けた皿に乗せた。
 慎重に、ケチャップを細身に作った絞り器で、俺が描いた。

 《 Welcome back KEPOLIN ! 》

 真ん中に10ミリの穴を空け、細く切った海苔の紐を貼った。


 宴が始まり、席についた響子に、六花が持って行った。 
 響子が大騒ぎし、みんなが注目した。
 響子は嬉しそうに、全部食べた。



 俺と六花は、顔を見合わせて笑った。 
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