990 / 2,905
蓮花研究所に着いたよ!
しおりを挟む
12月30日。
私は支度をして、群馬の蓮花の研究所へ向かった。
新幹線でいつも通りに行こうと考えていたが、石神くんからハイヤーで行くように言われた。
私の身体を思ってくれてのことで、嬉しくてすぐに承諾した。
石神くんがタクシー会社に直接電話し、腕のいい安全運転の運転手を手配してくれた。
「妊婦が移動するんです。そういう気遣いも出来る人を」
目の前でそう話しているのを聞いて、嬉しかった。
この人は、いつだって私のことを考えていてくれる。
嘘を言ったり、教えてくれないこともあったけど、それは全部私のためだ。
時々頭に来ちゃったこともあるが、後からしみじみと深い愛情を感じた。
私は、もう石神くんの愛情を疑わないと誓った。
私を心底から愛してくれている。
ハイヤーの中で何度も思い出し、顔が綻んだ。
ハイヤーの運転手さんは、腕のいい、優しい人だった。
サービスエリアが近付くたびに、私に寄りましょうかと言ってくれた。
眠くなったら眠って下さいと言う。
初老の、ベテランの運転手さんだった。
「赤ちゃん、楽しみですね!」
「ええ。本当にやっと出来た子なんで」
「そうですか!」
本当に優しい人だった。
研究所が近くなり、到着を知らせるために電話を掛けた。
蓮花が門を開けて、ミユキと一緒に本館の玄関で待っていてくれた。
蓮花もミユキも白衣姿だった。
外部の人間に、不信感を抱かせないためだろう。
ハイヤーが帰ると、物陰から完全武装の前鬼と後鬼が出て来た。
ミユキにもすぐに武器を渡す。
ミユキは白衣を脱ぎ、その下の武装が露わになった。
「ようこそいらっしゃいませ、栞様」
「蓮花、しばらくお世話になるね!」
「はい。明日にはお迎えの方がいらっしゃいますが」
「え?」
「ここは少々、耳目に及んでおりますゆえ」
「はい?」
訳が分からなかった。
「まさか、ここから移動するの?」
「はい。でもまずは中へ。ここは寒うございます」
蓮花が私の荷物を受け取り、自走ロボットの荷台へ一緒に上がった。
ミユキたちは周囲を油断なく警戒し、端末を確認している。
荷台は柔らかいクッションで、揺れを全く感じなかった。
ミユキも一緒に乗り、前鬼と後鬼は別な高速タイプの自走ロボットに乗る。
「栞様が入ってから、この研究所は最高の警戒レベルになっています」
「そうなんだ。ありがとう」
「栞様がお産みになる御子は、我々にとっても最重要人物の一人となります」
「え、ええ」
「栞様にはまず一休みして頂き、詳しく今後の予定もお話しいたします」
「そう、宜しくね」
そう言ったが、私は混乱していた。
部屋に案内された。
すぐ目の前が食堂になっており、楽な服に着替えてから来て欲しいと言われた。
私は部屋で一休みし、ゆったりとしたスウェットに着替えた。
お気に入りのディ〇ニーランドのものだ。
子どもっぽ過ぎて、ちょっと石神くんには見せられない。
蓮花が紅茶を淹れてくれ、和三盆の上品な干菓子を出してくれた。
そして、明日からのことを話されて本当に驚いた。
「明日、米軍の輸送ヘリが来ます。チヌークですので、揺れはそれほど無いかと」
「エッェーー!」
「それで一旦、三沢基地まで移動して頂きます」
「どーしてぇー!」
「三沢基地からは、C-17「グローブマスターⅢ」でアメリカのある場所まで。米海兵隊の精鋭が念のために護衛で搭乗いたします。護衛機は付きませんが、衛星から常に監視はいたしておりますので」
「ちょっとぉー!」
「それに、ブランの中でも栞様の護衛任務に特化した「桜花」「椿姫」「睡蓮」が常に栞様と一緒に行動いたします。石神様から特別に訓練を指示された三人の娘です。栞様をお守りすることを無上の喜びと思っている者たちですので、どうか可愛がってやって下さい」
「だれぇよー!」
蓮花は一旦説明を止めた。
栞を見ている。
紅茶を飲むように勧めた。
言われるままに一口含んだ。
なんかコワイ。
「栞様」
「はい!」
「しっかりなさいませ! あなたは現「花岡」御当主の御子を身籠り、尚その御子は「花岡」の到達点を極める運命の御子でございます」
「そうだけど……」
「その御母堂たるあなた様がそのような体たらくでどういたしますか! あなたは士王様が「花岡」を極めるまで何としてもお守りし、導かねばならぬのですよ!」
「なんであたしは怒られてんのー!」
「栞様!」
「はい! 分かりましたってぇー!」
蓮花は微笑んだ。
優しく、自愛に満ちた笑みだった。
栞はその笑みを見て、やっと落ち着くことが出来た。
私は支度をして、群馬の蓮花の研究所へ向かった。
新幹線でいつも通りに行こうと考えていたが、石神くんからハイヤーで行くように言われた。
私の身体を思ってくれてのことで、嬉しくてすぐに承諾した。
石神くんがタクシー会社に直接電話し、腕のいい安全運転の運転手を手配してくれた。
「妊婦が移動するんです。そういう気遣いも出来る人を」
目の前でそう話しているのを聞いて、嬉しかった。
この人は、いつだって私のことを考えていてくれる。
嘘を言ったり、教えてくれないこともあったけど、それは全部私のためだ。
時々頭に来ちゃったこともあるが、後からしみじみと深い愛情を感じた。
私は、もう石神くんの愛情を疑わないと誓った。
私を心底から愛してくれている。
ハイヤーの中で何度も思い出し、顔が綻んだ。
ハイヤーの運転手さんは、腕のいい、優しい人だった。
サービスエリアが近付くたびに、私に寄りましょうかと言ってくれた。
眠くなったら眠って下さいと言う。
初老の、ベテランの運転手さんだった。
「赤ちゃん、楽しみですね!」
「ええ。本当にやっと出来た子なんで」
「そうですか!」
本当に優しい人だった。
研究所が近くなり、到着を知らせるために電話を掛けた。
蓮花が門を開けて、ミユキと一緒に本館の玄関で待っていてくれた。
蓮花もミユキも白衣姿だった。
外部の人間に、不信感を抱かせないためだろう。
ハイヤーが帰ると、物陰から完全武装の前鬼と後鬼が出て来た。
ミユキにもすぐに武器を渡す。
ミユキは白衣を脱ぎ、その下の武装が露わになった。
「ようこそいらっしゃいませ、栞様」
「蓮花、しばらくお世話になるね!」
「はい。明日にはお迎えの方がいらっしゃいますが」
「え?」
「ここは少々、耳目に及んでおりますゆえ」
「はい?」
訳が分からなかった。
「まさか、ここから移動するの?」
「はい。でもまずは中へ。ここは寒うございます」
蓮花が私の荷物を受け取り、自走ロボットの荷台へ一緒に上がった。
ミユキたちは周囲を油断なく警戒し、端末を確認している。
荷台は柔らかいクッションで、揺れを全く感じなかった。
ミユキも一緒に乗り、前鬼と後鬼は別な高速タイプの自走ロボットに乗る。
「栞様が入ってから、この研究所は最高の警戒レベルになっています」
「そうなんだ。ありがとう」
「栞様がお産みになる御子は、我々にとっても最重要人物の一人となります」
「え、ええ」
「栞様にはまず一休みして頂き、詳しく今後の予定もお話しいたします」
「そう、宜しくね」
そう言ったが、私は混乱していた。
部屋に案内された。
すぐ目の前が食堂になっており、楽な服に着替えてから来て欲しいと言われた。
私は部屋で一休みし、ゆったりとしたスウェットに着替えた。
お気に入りのディ〇ニーランドのものだ。
子どもっぽ過ぎて、ちょっと石神くんには見せられない。
蓮花が紅茶を淹れてくれ、和三盆の上品な干菓子を出してくれた。
そして、明日からのことを話されて本当に驚いた。
「明日、米軍の輸送ヘリが来ます。チヌークですので、揺れはそれほど無いかと」
「エッェーー!」
「それで一旦、三沢基地まで移動して頂きます」
「どーしてぇー!」
「三沢基地からは、C-17「グローブマスターⅢ」でアメリカのある場所まで。米海兵隊の精鋭が念のために護衛で搭乗いたします。護衛機は付きませんが、衛星から常に監視はいたしておりますので」
「ちょっとぉー!」
「それに、ブランの中でも栞様の護衛任務に特化した「桜花」「椿姫」「睡蓮」が常に栞様と一緒に行動いたします。石神様から特別に訓練を指示された三人の娘です。栞様をお守りすることを無上の喜びと思っている者たちですので、どうか可愛がってやって下さい」
「だれぇよー!」
蓮花は一旦説明を止めた。
栞を見ている。
紅茶を飲むように勧めた。
言われるままに一口含んだ。
なんかコワイ。
「栞様」
「はい!」
「しっかりなさいませ! あなたは現「花岡」御当主の御子を身籠り、尚その御子は「花岡」の到達点を極める運命の御子でございます」
「そうだけど……」
「その御母堂たるあなた様がそのような体たらくでどういたしますか! あなたは士王様が「花岡」を極めるまで何としてもお守りし、導かねばならぬのですよ!」
「なんであたしは怒られてんのー!」
「栞様!」
「はい! 分かりましたってぇー!」
蓮花は微笑んだ。
優しく、自愛に満ちた笑みだった。
栞はその笑みを見て、やっと落ち着くことが出来た。
2
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。

娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。


セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる