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年末年始の打ち合わせ

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 少し遡って、11月の下旬。
 亜紀ちゃんが一緒にお風呂に入っている時に言った。

 「タカさん、もうすぐ年末ですが」
 「ああ、そうだなー」

 亜紀ちゃんは湯船の縁に頭を預け、首の力で身体を湯面に浮かせている。
 割れた腹筋が逞しく、ワカメが揺らいでいる。
 ワカメは仕舞えと言った。

 「クリスマスはいつも通りで」
 「ああ、そうだな。栞の送別会も併せてやるか」
 「はい! あ、じゃあいつものメンバーを呼んで!」
 「うーん。あんまり大勢はなー。響子と六花、鷹。それと今年は院長夫妻も呼ぼう」
 「一江さんと大森さんは?」
 「あいつらは別途やるだろう」
 「あー、地獄の飲み会」
 「亜紀ちゃんも言うようになったな」
 「アハハハハハ!」

 風呂上がりにちょっと飲もうと話した。

 「早乙女さんたちは?」
 「あいつらは栞とあまり接点が無かったからな。却って気を遣わせてしまうだろう」
 「なるほど」
 「院長は栞が大好きだからな」
 「はい」

 俺も首で身体を持ち上げた。
 ワカメとウツボは仕舞えと言われた。
 俺たちは軽くクリスマスの料理メニューの打ち合わせをした。

 「それじゃー、年末年始はどうします? 去年は私たちはニューヨークでしたし」
 「俺は蓮花の研究所とタケたちの所だったなぁ」
 「あ! いいじゃないですか!」
 「蓮花の所はやめよう。あいつも忙しいからな。俺たちが大勢で押し掛けると大変だ」
 「えー、残念ですー」
 「まあ、別な機会にな。ブランたちも増えて大所帯になった。しばらくは通常の訓練メニューで行きたいしな」
 「分かりましたー! でも、だったら『紅六花ビル』で!」

 亜紀ちゃんは湯船の縁に顎を乗せ、背筋で身体を湯面に浮かせる。
 カワイイ桃のようなお尻が持ち上がった。
 俺が反対側に回ろうとすると、そっちから見るなと言われた。
 ちょっとだけ赤貝とイソギンチャクが見えた。

 「そうだなー。あそこでのんびりするのもいいな」
 「じゃあ、そういうことで!」
 「でもなぁ。また大勢でドンチャン騒ぎで、小鉄たちも大変だしな」
 「もちろん、私たちも手伝いますよ?」
 「ああ、そうなったら宜しくな」

 亜紀ちゃんから、ウツボがおっきくなったと言われた。
 恥ずかしいから見ないでくれと言い、シャワーで冷たい水をかけた。

 「柳は実家へ帰すぞ」
 「あー、残念です」
 「盆暮れには御堂に返したいからな」
 「はい。あ! 御堂さんの家とかも!」
 「やめろ、澪さんが大変過ぎる。それでなくてもおせち料理を作ったり、大勢の挨拶客の対応で死にそうになるんだしなぁ」
 「そういうのは手伝えませんしねー」
 「御堂やみなさんに会いたいのはやまやまだけどな」
 「はい」

 亜紀ちゃんは左右の頬を湯船の縁に置いて、腹斜筋と腹横筋を中心にして湯船に側面を浮かせた。
 力を込めると全身が湯面から出て、俺は拍手した。

 「俺はニューヨークにも行きたいんだがな」
 「スッゴイいいですね!」
 「でもそうすると、響子たちは置き去りだ」
 「あー」
 「六花はタケたちの所は必ず行くしな。響子は独りで年末年始を過ごすことになる」
 「それは可哀そうですね」
 
 亜紀ちゃんは右手の小指を湯船の縁にかけた。
 ザバっと音がして、全身が飛び出てそのまま直立する。
 俺は湯が掛かったと怒った。
 すいませんと言われた。

 「鷹もなんだよ。あいつは実家に帰りたがらない。何とかあいつも誘いたいんだよな」
 「そうですね! あー、でも「紅六花ビル」じゃちょっと」
 「まあ、歓迎してくれるだろうけどな。鷹が疲れちゃうよな」
 「でも、タケさんたちもタカさんのこと待ってますよね」
 「そうなんだよなー」



 
 俺たちは風呂を出て飲み始めた。
 軽く飲むだけなので、ラタトゥイユを手早く作り、あとはハムを焼いた。
 ワカメと豆腐のサラダも作り、亜紀ちゃんに喰えと言った。

 皇紀と双子たちも来た。
 部屋で飲むお茶を淹れに来たようだが、ハムをじっと見ているので、お前らも付き合えと言った。
 柳も呼んで来させた。

 「タカさんと、年末年始の予定を話してたの」
 亜紀ちゃんが言った。
 「紅六花ビル」で過ごすことが候補だと話す。

 皇紀が、冬の別荘に行きたいと言った。

 「あー! 皇紀、いいこと言ったぁー!」
 亜紀ちゃんが興奮する。

 「タカさん、キャンプは?」
 「おー! 折角大きいテント買ったんだもんな! ルー! いいこと言ったぁー!」

 「私もちょっと行きたいです」
 柳が言う。
 なんか楽しくなってきた。
 チャーシューを焼いて白髪ねぎを乗せた。
 ウインナーも3袋焼く。

 結局、28日から30日で「紅六花ビル」へ行き、六花はそのまま。
 柳を御堂家へ送り、鷹と30日の夜に合流し俺たちは別荘で三泊。
 1月2日3日でキャンプということになった。

 「忙しいな」
 「タカさんは運転以外はゆっくりして下さい」
 「ああ。でも、ちょっとだけ御堂にも会えるな」
 「もう、ホモですか!」
 「アハハハハ」

 「響子ちゃんは大丈夫ですかね?」
 「ああ、体調次第だけどな。どの時点でも崩せば俺が病院へ戻す」
 「はい」
 「柳は「紅六花ビル」は二回目だけど、大丈夫か?」
 「はい! でも私も別荘に行きたいです」
 「まあ、実家に行けよ。みんな柳に会いたがってるんだしな」
 「そうですね」

 年末年始の予定が決まり、ついでにクリスマスの食事メニューも話し合った。
 院長たちも呼ぶつもりだと言うと、双子が喜んだ。




 

 栞にクリスマスの祝いと一緒に送別会をすると伝えた。
 年末年始の予定を聞かれたので話すと、自分も行きたいと言う。

 「無理だよ」
 「えー! その気になれば近いじゃん!」
 「いや、無理だから」
 「じゃあ、自分で運転して行こうかな」
 「絶対やめとけ!」
 本気で怒った。

 「じゃあ、ちょっとでいいから石神くんが会いに来てよ」
 「それも無理だよ」
 「もーう! 愛情疑っちゃうよ!」
 「そんなこと言うなよ。愛してるぞ、栞」
 俺は栞にキスをし、優しくお腹を撫でた。

 栞は蓮花の研究所へ行くと思っている。
 まあ、本当にそれなら栞の言う通りにもしたい。
 こいつは口が軽い。
 良くも悪くも素直で正直なのだ。
 だから栞には話していない。

 



 
 栞、流石に無理だよ。
 アラスカまで行くのはなー。
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