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第十回「石神くんスキスキ乙女会議」: しばらくお別れだね!

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 12月初旬の土曜日。

 「えー、それでは第十回「石神くんスキスキ乙女会議」これでしばらくサヨウナラ」を開催します!」
 「えー、なんかちょっと悲しー」
 「はい、そこの「ヤリまくりで出来ちゃった娘」は黙って」
 「ひどいよー!」

 みんなが笑っている。

 年内で栞が病院を退職し、東京を離れることが決まっており、「乙女会議」のメンバーたちが送別会も兼ねての集まりを企画した。
 妊婦である栞は酒は飲まない。
 一江たちは安心して飲める。
 一江、大森、六花、鷹、そして亜紀とルー、ハー、それに柳。
 場所は一江のマンションでは手狭なのとドアがほとんど無い(トイレも)ため、栞の自宅に集まっていた。
 ここであれば、栞が移動しなくても済み、また広いリヴィングもあるためだ。

 「初めて来た。いい家だねぇ」
 「ありがとー」
 一江が言い、栞が喜んだ。

 「でも、しばらくここは空き家になるのか」
 大森。

 「それがね、今ちょっと石神くんがある人を誘っているところなの」
 「誰?」
 「うーん、まだちょっと言えないかなー。決まってからはみんなにも伝わるだろうけど」
 「あ! 早乙女さんたちとか!」
 「違うよ、亜紀ちゃん。流石にこの家は警察関係者はねー」
 「そうか!」
 大量の武器弾薬がある。
 早乙女はもちろん大丈夫だが、関係者が出入りすることもあるかもしれない。

 亜紀ちゃんたちが料理をテーブルに運ぶ。
 一江たちも、酒の用意を始める。
 一江と大森は薩摩焼酎。
 亜紀ちゃんはワイルドターキー。
 六花と柳はハイネケン。
 双子はメロンクリームソーダ、カルピス等。
 栞は「ミロ」だ。
 石神が冗談で出したものが気に入ったらしい。

 「それじゃー! 栞の出立と元気な赤ちゃんのためにー! 乾杯!」
 「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」

 大量のローストビーフ(石神謹製)。
 大量のステーキ(石神家子)。
 大量の唐揚げ(石神家子)。
 海老真丈(鷹)。
 鰆とギンムツの西京焼き(鷹)。
 各種御造り(鷹)。
 高野豆腐・焼き豆腐の煮びたし(鷹)。
 根菜の煮物(鷹)。
 素揚げナスの酢醤油仕立て(鷹)。
 餃子(大森)。
 麻婆豆腐(大森)。
 焼きそば(大森)。
 エビ天(一江←鷹監修)。
 野菜天(一江←鷹監修)。
 ポッキー(六花)。
 きのこの里(六花)。
 ピンポン玉(ロボ貸与)。

 テーブルに乗りきらず、キッチンにも大量にある。
 まあ、石神家と六花がいるので、片付けながら食べようということになった。
 みんなでワイワイと楽し気に飲み食いした。

 
 「第一回は悲惨だったよねー」
 一江が懐かしそうに言った。

 「警察沙汰だったもんね」
 栞も笑いながら言う。
 店で大暴れし、警察まで迎えに来た石神の高級スーツを大量の吐瀉物で汚した。
 
 「第二回は栞の恋の成就に繋がったもんね!」
 「やめてよ、陽子!」
 栞は恥ずかしそうに笑った。
 悲惨な飲み会の後で石神に思いを打ち明け、結ばれることになった。

 「第三回は、栞の本性が出たかー」
 大森が懐かしそうに言う。
 一江のマンションで初めて飲んだ時だ。
 栞に潰された。

 「第四回も酷かったなー」
 一江のマンションの部屋で、栞にみんな潰された。 

 「自分が参加することになった時ですね」
 六花が唐揚げを呑み込んで言った。

 「第五回は……」
 「あれはやめようよ!」
 スッポンで食中毒になり、全員が垂れ流し状態になった。

 「自分はあれで、新たな境地が……」
 「六花、やめろ!」
 そうだったらしい。

 「第六回は、響子だね」
 「まさかあんなことになるとはなー」
 銀座で火事を起こした。

 「それで次の第七回!」
 「あれは良かったよねー!」
 「部長と院長だよなー!」
 二人が女装して参加し、初めて無事(最後に頭から出血程度)で終わった。

 「第八回はまあまあだよね?」
 「お前がヤクザと揉めただろう!」
 「アハハハハ!」
 栞がヤクザをぶっとばし、大乱闘になった。

 「次は……」
 「「ごめんなさいー!」」
 双子が謝る。
 一江のマンションで暴れ、そのまま国道246で日本中を騒がせる大事件を起こした。

 「あ、あれは勘定に入れて無いから!」
 一江が雰囲気を壊すまいと叫んだ。

 「で、本当は十回の第九回」
 「あれは良かったですよね!」
 亜紀ちゃんが楽しそうに言った。
 新宿のゲイバー『薔薇乙女』でのものだ。

 「それで丹沢かー」
 「あれも番外編だよ」
 「訓練だったもんなー」
 「「エヘヘヘヘ」」
 双子が笑った。

 「でも、思い返すと全部楽しかったよね?」
 一江と大森がちょっとそう言った栞を睨んだが、やがて笑った。

 「まあ、そういうことにするか!」
 「そうだな」

 みんなが笑った。
 鷹が栞に緑茶はどうかと聞き、栞が礼を言った。

 「栞は蓮花さんのとこか」
 一江が言った。

 「え、一応秘密なんだけど」
 「分かるよ。防衛設備が万全で、護衛の恐ろしく強い兵士もいて。おまけに医療設備もばっちりじゃないか」
 「アハハハハ。そりゃそうだよね」
 「実家からも近いしな」
 「うん。あそこなら間違いなく大丈夫だよね」
 
 「やっぱりそうだったんですか!」
 亜紀ちゃんが叫ぶ。

 「ああ。でも亜紀ちゃん、まだ本当に秘密だぞ?」
 「はい! 私もそう思ってたんですけど」
 「うん。でもなるべく隠さないとな」
 「でも、石神くんにしては、ちょっとって感じ。私たちのことを知っている相手なら、大体予想は付くと思うんだけどな」
 「そうだけど、そう言ったって、あそこは落とせないよ」
 「そうだね!」



 双子がネコ耳を付けた。
 石神家「ロボ芸」を始める。
 ルーが「ロボ・ピンポン」を披露し、ハーが「ロボ・ジルバ」を踊った。
 亜紀と柳が「貧乳芸」を披露し、風船のオッパイバレーを見せる。
 一江と大森がキワドイ「レズ漫才」を披露し、爆笑を誘った。
 六花が歌うと言うので、みんなで止めた。
 ちょっと悲しそうな顔をしたが、ルーが唐揚げを口に突っ込むとニコニコした。

 鷹が、日本舞踊「南部坂・雪の別れ」を女性らしく優雅に舞った。

 栞が泣いた。

 みんなでまた話し、楽しく盛り上がった。
 最後にみんながベビー服などをプレゼントした。
 栞は笑って受け取っていたが、また最後に泣いてしまった。

 「みんな蓮花さんの研究所には仕事で何度も行くんだからさ」
 一江が慰める。

 「そうですよ! 私たちも訓練も兼ねてしょっちゅう行きますし!」
 「「そうそう!」」
 「そうですよ!」
 亜紀たちが言う。

 「私も行きますー!」
 六花も泣きながら言った。

 みんなで笑いながら後片付けをして、帰った。
 鷹だけが残り、泊まることになっていた。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 「タカさーん! 帰りましたー!」
 玄関で亜紀ちゃんが叫んだ。
 ロボが走って出迎えに行った。

 「おう、お帰り! 楽しかったか?」
 「「「「はい!」」」」

 「無事に終わったようだな」
 「「「「アハハハハハハ!」」」」

 散々飲み食いしたはずだが、俺が夕飯はどうすると聞くと、食べると言った。
 笑って寸胴のシチューを温めた。

 「栞さんも楽しそうでしたよ!」
 「そうか」
 「でも、お酒が飲みたかったみたいだった」
 「そりゃな。でも、もうちょっとの我慢だ」
 「「うん!」」

 亜紀ちゃんたちが、「乙女会議」の楽しかった話をする。

 「結局よ」
 「なんですか?」
 「毎回の異常事態は、全部栞が元凶だったということだな」
 「「「「アハハハハハハ!」」」」

 亜紀ちゃんがコーヒーを淹れて来る。
 俺の前に最初に置いた。

 「タカさん、栞さんは蓮花さんの所へ行くんですね?」
 「なんだ、やっぱりあいつはバラしたか」
 「しょうがないですよ。みんなそうだと気付いていましたから」
 「そうか」




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

 


 栞はその後、蓮花の研究所へ移動した。

 「いらっしゃいませ、栞様」
 「蓮花、しばらくお世話になるね!」
 「はい。明日にはお迎えの方がいらっしゃいますが」
 「え?」
 「ここは少々、耳目に及んでおりますゆえ」
 「はい?」

 


 数日後、栞は激しいブリザードの中に立っていた。

 「さむいよー! 石神くーん!」

 誰も知らない場所で、栞は大きく叫んだ。 
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