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燦然たる星のごと、ダイヤモンドの残らんことを(『灰とダイヤモンド』より)

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 11月のある夜。
 亜紀ちゃんから、真夜がダイヤの鉱脈を掘り出したと聞いた。

 「あんだって?」

 一瞬、亜紀ちゃんが言っている意味が分からなかった。
 
 「落とし物か?」
 「そうじゃないですよ! 鉱脈ですって!」
 「バカなことを言うな。ダイヤモンドの鉱脈は限られてんだ」

 特殊な条件、マグマの熱と圧力によって生成されたダイヤモンドが、地表に出て来た場所にしか、ダイヤモンドの鉱脈は無い。
 日本は新しい地殻の上にあるので、ダイヤモンドは基本的に無い。

 「だって! 出て来たんですから!」

 亜紀ちゃんはそう言って、袋から原石を出して見せた。
 近所のスーパーのレジ袋(大)だ。

 「おい」
 「ね!」
 「でか過ぎだぁ!」
 「そうですか?」

 俺は手紙の重量を測る重量計に乗せた。

 「2キロありますね?」
 「1万カラットだぁー!」
 「へ?」

 恐ろしさが亜紀ちゃんに伝わらない。

 「間違いなく、世界最大のものだぞ!」
 「そうなんんですか?」
 「そうなんです!」

 俺は照明に翳した。
 俺の部屋は暖色系の灯なので、よく色は分からない。
 でも、赤っぽく見える。
 亜紀ちゃんと皇紀の部屋へ行った。

 「おい、皇紀!」
 「タカさん、ノック!」
 「あ、ああ?」

 自家発電中だった。
 一旦ドアを閉めて、ノックをした。

 「皇紀ちゃーん、入っていい?」
 「……」

 ドアが開き、泣きそうな顔の皇紀が顔を出した。

 「くよくよすんな!」
 
 肩を叩き、早速演色性のいいライトを出させた。

 「おい! 赤いじゃねぇか!」
 「ほんとですね!」

 亜紀ちゃんと騒いでいると、立ち直った皇紀も覗いてみた。

 「確かに赤ですよ。なんですか、これ?」
 「「ダイヤモンド!」」
 「エェッ!」

 世界中でも幾つも発見されていない、超希少なレッド・ダイヤモンドだった。

 「おい、真夜は大金持ちだな!」
 「それがですね。真夜は絶対に受け取れないって」
 「それはダメだよ。あいつが掘ったんだろ?」
 「そうなんですが、何しろこの件は頑強に」

 まあ、分らんでもない。
 俺の土地で掘り出したものだし、何しろ亜紀ちゃんへの心酔が大きい。

 「まあ、金に換えてあいつにやるか」
 「受け取りますかねぇ」
 「額を言ったら気が変わるかもしれんぞ」
 「そうですかねー」
 「普通の色で、テニスボール大で、数十億になる」
 「そうですか」
 「それがこのサイズでレッド・ダイヤモンドだと、数百億にはなるな」
 「うちではあんまり」
 「そうなんだけどなー」

 もうすぐ、一千兆円を超えそうだと聞いている。
 



 数か月後。
 信頼できる人間に、カットしてもらった。
 秘密にすることと成功報酬ということで、2億円を渡した。
 破片もすべて回収だ。

 見事なティアドロップのものが出来上がった。
 いろんな人間に見せた。

 「すごいね!」
 響子が大喜びだった。
 六花と一緒に俺の寝室のベランダで光に翳して楽しむ。

 鷹はしばらく現実が分からず、分かった瞬間に叫んで失神しそうになった。
 
 蓮花たちにも持って行って見せた。
 早乙女夫妻にも、院長夫妻にも秘密だと言って見せた。
 千両たちにも見せ、斬にも自慢した。

 「フン!」

 栞に見せると、大喜びだった。
 
 「指輪を作ろうよ!」

 やめとけと言った。
 
 さて、どうするか。

 亜紀ちゃんと話し、真夜に持って行った。

 「絶対に受け取れません!」
 「あたしの言うことが聞けねぇってかぁ!」
 「だって! こんなの持ってたら危なくてしょうがないですよ!」

 それもそうか。
 俺は100億を渡すと言った。
 それも頑強に拒んだ。
 亜紀ちゃんが真夜をぶん殴り、腹を38回蹴って、ようやく納得させた。




 さて、どうするか。
 亜紀ちゃんと網に入れてみた。
 紐を付けてロボの首に下げた。

 「フッシャー!」

 ロボが怒って首を振り、網を引き千切って暴れた。
 お茶を飲んでいた柳の額にぶつかり、血が出た。
 酷く腫れたが、亜紀ちゃんが「Ω軟膏」を塗ると、すぐに治った。

 「さて、どうするかなー」
 「弱りましたね」

 亜紀ちゃんと一緒に風呂に入り、オチンチンけん玉をしてみた。
 尖った部分が痛かった。

 「ダメだな」
 「そうですかー」

 レイの部屋に置いてみた。
 なんかダイヤモンドがプルプル震えるので可哀そうになって回収した。

 「あいつ、こういうの好きじゃなかったか」
 「そうなんですね」

 向かいに持ってった。

 「諸見、いらない?」
 「ぜ、絶対、お断りいたします!」

 東雲たちは慌てて出て行った。

 風花に送ったら、慌てて新幹線で返しに来た。

 「もうやめてくださいね!」
 「すまんね」

 困った。
 指輪にしたがっていた栞に、ペンダントにして送った。

 「オッパイが痛い」
 返された。

 もう面倒になり、リヴィングのテーブルに飾った。
 いつか欲しがる人間にやろう。
 皇紀がレーザーの照明を作り、美しい乱反射にみんなが喜んだ。

 「やったな、皇紀!」
 「エヘヘヘヘ」

 みんなで楽しむようになった。





 「タカさん、良かったですね」
 酒を飲みながら、亜紀ちゃんが言った。

 「ああ、一時はどうなることかと思ったけどな!」
 俺も一安心した。

 「あの、亜紀ちゃん、「鉱脈」って言ってましたよね?」
 柳が言う。

 「うん。取り敢えず適当に持って来たんですけど」
 「じゃあ、まだあるんですか?」
 「「え!」」
 俺と亜紀ちゃんが顔を見合わせた。





 最大850キロの塊と、200キロ以上のものが122個出て来た。
 亜紀ちゃんの頭を引っぱたいた。
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