上 下
972 / 2,840

燦然たる星のごと、ダイヤモンドの残らんことを(『灰とダイヤモンド』より)

しおりを挟む
 11月のある夜。
 亜紀ちゃんから、真夜がダイヤの鉱脈を掘り出したと聞いた。

 「あんだって?」

 一瞬、亜紀ちゃんが言っている意味が分からなかった。
 
 「落とし物か?」
 「そうじゃないですよ! 鉱脈ですって!」
 「バカなことを言うな。ダイヤモンドの鉱脈は限られてんだ」

 特殊な条件、マグマの熱と圧力によって生成されたダイヤモンドが、地表に出て来た場所にしか、ダイヤモンドの鉱脈は無い。
 日本は新しい地殻の上にあるので、ダイヤモンドは基本的に無い。

 「だって! 出て来たんですから!」

 亜紀ちゃんはそう言って、袋から原石を出して見せた。
 近所のスーパーのレジ袋(大)だ。

 「おい」
 「ね!」
 「でか過ぎだぁ!」
 「そうですか?」

 俺は手紙の重量を測る重量計に乗せた。

 「2キロありますね?」
 「1万カラットだぁー!」
 「へ?」

 恐ろしさが亜紀ちゃんに伝わらない。

 「間違いなく、世界最大のものだぞ!」
 「そうなんんですか?」
 「そうなんです!」

 俺は照明に翳した。
 俺の部屋は暖色系の灯なので、よく色は分からない。
 でも、赤っぽく見える。
 亜紀ちゃんと皇紀の部屋へ行った。

 「おい、皇紀!」
 「タカさん、ノック!」
 「あ、ああ?」

 自家発電中だった。
 一旦ドアを閉めて、ノックをした。

 「皇紀ちゃーん、入っていい?」
 「……」

 ドアが開き、泣きそうな顔の皇紀が顔を出した。

 「くよくよすんな!」
 
 肩を叩き、早速演色性のいいライトを出させた。

 「おい! 赤いじゃねぇか!」
 「ほんとですね!」

 亜紀ちゃんと騒いでいると、立ち直った皇紀も覗いてみた。

 「確かに赤ですよ。なんですか、これ?」
 「「ダイヤモンド!」」
 「エェッ!」

 世界中でも幾つも発見されていない、超希少なレッド・ダイヤモンドだった。

 「おい、真夜は大金持ちだな!」
 「それがですね。真夜は絶対に受け取れないって」
 「それはダメだよ。あいつが掘ったんだろ?」
 「そうなんですが、何しろこの件は頑強に」

 まあ、分らんでもない。
 俺の土地で掘り出したものだし、何しろ亜紀ちゃんへの心酔が大きい。

 「まあ、金に換えてあいつにやるか」
 「受け取りますかねぇ」
 「額を言ったら気が変わるかもしれんぞ」
 「そうですかねー」
 「普通の色で、テニスボール大で、数十億になる」
 「そうですか」
 「それがこのサイズでレッド・ダイヤモンドだと、数百億にはなるな」
 「うちではあんまり」
 「そうなんだけどなー」

 もうすぐ、一千兆円を超えそうだと聞いている。
 



 数か月後。
 信頼できる人間に、カットしてもらった。
 秘密にすることと成功報酬ということで、2億円を渡した。
 破片もすべて回収だ。

 見事なティアドロップのものが出来上がった。
 いろんな人間に見せた。

 「すごいね!」
 響子が大喜びだった。
 六花と一緒に俺の寝室のベランダで光に翳して楽しむ。

 鷹はしばらく現実が分からず、分かった瞬間に叫んで失神しそうになった。
 
 蓮花たちにも持って行って見せた。
 早乙女夫妻にも、院長夫妻にも秘密だと言って見せた。
 千両たちにも見せ、斬にも自慢した。

 「フン!」

 栞に見せると、大喜びだった。
 
 「指輪を作ろうよ!」

 やめとけと言った。
 
 さて、どうするか。

 亜紀ちゃんと話し、真夜に持って行った。

 「絶対に受け取れません!」
 「あたしの言うことが聞けねぇってかぁ!」
 「だって! こんなの持ってたら危なくてしょうがないですよ!」

 それもそうか。
 俺は100億を渡すと言った。
 それも頑強に拒んだ。
 亜紀ちゃんが真夜をぶん殴り、腹を38回蹴って、ようやく納得させた。




 さて、どうするか。
 亜紀ちゃんと網に入れてみた。
 紐を付けてロボの首に下げた。

 「フッシャー!」

 ロボが怒って首を振り、網を引き千切って暴れた。
 お茶を飲んでいた柳の額にぶつかり、血が出た。
 酷く腫れたが、亜紀ちゃんが「Ω軟膏」を塗ると、すぐに治った。

 「さて、どうするかなー」
 「弱りましたね」

 亜紀ちゃんと一緒に風呂に入り、オチンチンけん玉をしてみた。
 尖った部分が痛かった。

 「ダメだな」
 「そうですかー」

 レイの部屋に置いてみた。
 なんかダイヤモンドがプルプル震えるので可哀そうになって回収した。

 「あいつ、こういうの好きじゃなかったか」
 「そうなんですね」

 向かいに持ってった。

 「諸見、いらない?」
 「ぜ、絶対、お断りいたします!」

 東雲たちは慌てて出て行った。

 風花に送ったら、慌てて新幹線で返しに来た。

 「もうやめてくださいね!」
 「すまんね」

 困った。
 指輪にしたがっていた栞に、ペンダントにして送った。

 「オッパイが痛い」
 返された。

 もう面倒になり、リヴィングのテーブルに飾った。
 いつか欲しがる人間にやろう。
 皇紀がレーザーの照明を作り、美しい乱反射にみんなが喜んだ。

 「やったな、皇紀!」
 「エヘヘヘヘ」

 みんなで楽しむようになった。





 「タカさん、良かったですね」
 酒を飲みながら、亜紀ちゃんが言った。

 「ああ、一時はどうなることかと思ったけどな!」
 俺も一安心した。

 「あの、亜紀ちゃん、「鉱脈」って言ってましたよね?」
 柳が言う。

 「うん。取り敢えず適当に持って来たんですけど」
 「じゃあ、まだあるんですか?」
 「「え!」」
 俺と亜紀ちゃんが顔を見合わせた。





 最大850キロの塊と、200キロ以上のものが122個出て来た。
 亜紀ちゃんの頭を引っぱたいた。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~

みつまめ つぼみ
キャラ文芸
 ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。  彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。  そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!  彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。  離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。  香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田
キャラ文芸
 等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。 【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。 【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...