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「亜紀ちゃん道」は遠く険しい

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 「亜紀ちゃん道」は遠く険しい。

 但し、狭い。
 すれ違う幅は無い。
 一人しか通れない。
 タカさん専用だ。

 本当は険しくない。

 「亜紀ちゃん、大好きだよ」

 そう言えば、いつでも私がタカさんを担いで走る。

 「亜紀ちゃん道」とは。

 その一、「亜紀ちゃん、大好きだよー」と言う。
 その二、カワイイ亜紀ちゃんをナデナデする。
 その三、時々チューする。
 その四、一緒に楽しくお風呂に入る。
 その五、一緒に楽しくお酒を飲む。

 それだけだ。
 それを三十億年くらいするだけだ。

 しかしタカさんは、時々しか「亜紀ちゃん道」を通ってくれない。
 まあ、「その五」は結構ある。
 でも、私がうっかりしていると、独りで飲む。

 


 あんまりにも「亜紀ちゃん道」を通ってくれないので、憂さ晴らしに悪人退治をしていた。
 真夜に高性能カメラを買って与え、動画を編集させてネットにアップしていた。
 楽しかった。
 どんどんPV数が伸びた。
 真夜も喜んだ。

 タカさんにぶん殴られ、全部消去させられた。

 「フィクションですよー!」
 
 もう一発殴られた。
 ちょっと気絶した。

 でも私には分かる。
 タカさんが「亜紀ちゃん道」を歩いているのだ。
 だから、私が隠れてやっていることも分かるのだ。
 私が可愛くてしょうがないからやってくれるのだ。
 亜紀ちゃんはカワイイのだ。




 タカさんのオチンチンは大ハリネズミだ。
 どんな女も突き刺して離さなくさせる。
 そして噛みついて毒液を注ぎ込む大コブラだ。
 どんな女性も屈服する。

 でも、私と一緒にお風呂に入っても、全然鎌首を持ち上げない。
 時々プルプルさせる。
 それだけだ。
 おかしい。
 亜紀ちゃんがカワイ過ぎるのだろうか。
 タカさんのオチンチンはカワイイが。

 一つ分かったことがある。
 タカさんは「そういう関係になりたい」という女性にしか、オチンチンを使わない。
 タカさんを愛する女性が、「そうして欲しい」と望む場合だけだ。
 タカさんの望みだけではない。

 私はどうなんだろうか。
 私はタカさんが望むなら、どんなことでもしたい。
 でも私自身は、そうなりたいとまだ思っていない?

 よく分からない。

 柳さんは、思っていながら、ちょっと怖がっている。
 だからタカさんも何もしない。
 可愛がっている。
 大事にしている。
 愛している。

 


 私や弟妹たちは、「花岡」を習得した。
 それで分かったことがある。
 「花岡」は、同じ到達点にはならない、ということだ。
 他の武道は知らない。
 免許皆伝などがあるものとは違うようだ。
 「花岡」には、その人間独自の境地があった。

 ルーとハーには、「轟閃花」の合体技「巨震花」が出来た。
 二人だからこその強大な技だ。
 さらに、そこから最終奥義「スーパー・ノヴァ」が生まれた。
 二人が互いに対消滅させながら、どんな敵も撃破する究極の技だ。
 それを使えば、短時間で二人は消滅する。

 皇紀は「長城」というどんな攻撃も跳ね返す技を作った。
 そこから「フェンリル」という、優しく大人しい皇紀が反転したかのような、攻性の凄まじい最終奥義を会得した。
 どれほどの大規模な攻撃も、皇紀が自らを破壊しながら行なう最終奥義で消滅させる。
 それを使えば、皇紀は爆散する。
 恐らく、レイがやったのも、その最終奥義に似ていると思う。
 レイも優しい人だったから。
 自らを破壊するだけのものだったが。

 私には「スサノヲ」がある。
 自分のあらゆるものを解放し、攻撃に特化した破壊王の状態。
 そうなれば、自分を取り戻すことはできないかもしれない。
 多分、それを思う前に、地球は破壊されているだろう。


 タカさんにも到達した最終奥義がある。
 親友の名を冠した「アベル」だ。
 どんなものかは、私もまだ知らない。
 でも、それを使えばタカさんがいなくなることは分かる。


 また、私たち兄弟が求めている奥義がある。
 今はまだ完成には程遠く、「R」とだけ呼んでいる。
 タカさんも知らない。
 絶対に会得しなければならない。

 それぞれに道がある。
 それを知ったことで、「運命」というものが理解できた。
 他のものが欲しかったとしても、行き着く先は決まっているのだ。




 栞さんに子どもが出来た。
 六花さんにも、いつか出来るだろう。
 多分、柳さんも。
 鷹さんは、自分で別な道を選んだ。
 素敵な人だ。

 最も欲しいものが、自分が最も求めるものではない。
 矛盾した、不合理で、不幸なものが「道」なのだ。
 
 私もタカさんの子どもは超欲しい。
 でも、多分それは私が本当に求めるものではないのだろう。
 
 タカさんだってそうだ。
 タカさんはレイにも子どもを生んで欲しいと思っていた。
 心底からそう思った。
 でも、出来なかった。
 涙だけが残った。



 タカさんが笑っていると、私も嬉しいし楽しい。
 タカさんが泣いていると、死にたくなるくらいに悲しい。
 タカさんが怒るとコワイ。
 米軍のミサイルなんて到底及ばない。

 でも、どんなタカさんでも一緒にいたい。



 私は「タカさん道」の求道者だ。



 「亜紀ちゃん道」に入って欲しいが、それは私が本当に求めるものではないのだろう。
 分かってる。

 でも入って欲しいけど。

 「「亜紀ちゃん道」は遠く険しいんですよ!」
 「あ? ああ、興味ねぇ」

 ちょっとあんまりだ。
 私はこんなに「タカさん道」に入ってるのに。






 「亜紀ちゃんニャンコ、カワイイですよー」
 「お前! また「霊破」を飲んだのかぁ!」
 「エヘヘヘ、かわいがっていいですよー」
 「まったくしょうがねぇ」

 タカさんは優しい。

 麗星さんに、タカさんの秘蔵写真を送って、お酒と交換した。



 「亜紀ちゃん道」はまだまだ続く。
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