富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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マンモスの牙隊

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 双子がキャンプから帰って来た。
 ジェイたちの車に乗って来た。
 俺は憮然とした顔で全員を迎えた。

 「タイガー! ひどいぜ!」
 「うるせぇ! お前らの方がおかしいんだぁ!」

 男たちが、マンモスの角を抱えている。

 「おい! そんなものを家に入れるなよ!」
 「なんだよ! 大事なものなんだ!」
 「ふざけんなぁ!」

 とにかく洗わせて欲しいと言われた。
 俺は洗車用の庭の水道を使わせた。

 「マジックを貸してくれ」
 「何するんだ?」
 「名前を書いておかねぇと。間違うと大変なんだ」
 「?」

 貸した。




 全員を風呂に入れ、リヴィングで食事にした。
 俺たちはキャンプの内容を聞いて驚いた。

 「ルー、ハー! いつの間に仕込んだ!」
 「春頃です」
 「皇紀!」
 「え! 僕はタカさんの許可を得たって」

 俺は双子の頭に拳骨を落とした。
 一瞬、白目を剥いて気絶した。

 「まあ、この事態になれば、もういいけどな。大体考えていることは分かるしよ」

 二人は、防衛システムの弱点を探ろうとしていたのだろう。
 「花岡」に返し技があるように、俺たちの防衛システムも検討しておく必要がある。

 「お前ら、よく無事だったな」
 「まあ、やばかったよ。何しろM16が効かねぇんだ」
 「でも突破したのか?」
 「なんとかな。半分をやったのはお嬢ちゃんたちだけどな」
 「利用されたんだよ。いきなり投げられて、仕方なく攻撃したの」
 「へぇ」

 やはり、面白い連中だ。
 既存の枠の中に納まらない戦闘が出来る。

 「うちの土地でマンションがあるんだ。そこでゆっくりしろよ」
 「助かるよ」
 「でもヒマじゃありませんか?」

 亜紀ちゃんが言った。

 「東京、案内しよっか!」

 ハーが言った。
 全員が断った。

 「じゃあ、私と一緒に吉住連合でも潰しに行きます?」

 俺は亜紀ちゃんの頭を引っぱたいてやめさせた。

 「タイガー。良ければ、「ハナオカ」の基礎訓練を始めたいんだが」
 「ああ、それなら俺も教えるし、近くに栞の道場もある。頼んでおくよ」
 「助かる。今回のキャンプで、俺たちの弱さを思い知った。本気でかからないといけない」
 「そうか」

 俺はジェイたちの心意気が嬉しかった。

 「タカさん」
 「なんだ、ルー?」
 「これからは霊的な相手との訓練も必要だよね」
 「まあ、そうだな」
 「麗星さんに……」
 「バカ!」
 「あ!」

 チャイムが鳴った。
 亜紀ちゃんが出ると、麗星が門で立っていた。

 「「「「「「……」」」」」」

 



 「丁度近くまで参ったものですから」

 麗星は白地に青のススキをあしらった着物を着ていた。
 相変わらず、趣味がいい。

 土産に和三盆の干菓子をもらった。
 間違いなく、美味い物だろう。
 亜紀ちゃんに、包を捨てるなと言った。

 リヴィングに案内し、屈強なマリーンの男たちを見て驚いた。

 「この方々は?」

 俺は紹介し、ジェイたちにも麗星を紹介した。
 今後御堂の家を守る連中だと言った。

 「まあ! でもあそこは既に防衛システムが」
 「そうですけどね。その上で、システムの維持管理と、いずれは「花岡」を習得させて実戦的にも役立つようになりますよ」
 「さようでございますか。あ! それでしたらわたく、いえ「みんなの」石神様のために、うちでも訓練をなさいませんか?」
 「麗星さんのところで?」
 「はい! うちで基礎を鍛えれば、「花岡」の習得も効率が上がりますわ」
 「そうですか」

 どういうことか分からない。

 「「花岡」は死の拳法です。ですので、「死」を身近で感じたり、覚悟をするほどに奥義を得やすくなると聞いています」
 「ああ」

 千万組でも、死の覚悟の高い者程、強くなっていると斬に聞いたことがある。
 だから桜が突出して強くなり、東雲や月岡などもそうだ。
 蓮花の研究所では、俺のために命を捨てると考えているミユキたちは、格段に技の習得が早く高い。

 「皆様、いかがでしょう? 数日でもうちで訓練してみては」
 「いや、こいつら地獄の訓練を今朝終えたばかりで」
 「タイガー! 俺たちは遊びに来たんじゃねぇ。その方が俺たちを早く強くしてくれるってんなら、是非お願いしたい!」
 「ジェイ」

 俺は感動した。

 「分かったよ、ジェイ! お前らは最高だ。でもな、数日はゆっくりしろよ。休むことも大事だぞ?」
 「あ、ああ、分かった。そうさせてもらうか」
 「でしたら、わたくしも数日こちらで」

 「ジェイ! 一日くらいはゆっくりしろよ」
 「え?」
 「出発は明日でいいだろう」
 「いや、あの」
 「今日はゆっくりしろよな! ああ、晩飯はみんなで来いよ! 壮行会って奴だ!」
 「いや、数日」
 「明日の準備はちゃんと今日中にしろよな!」
 「あ、ああ。分かった」

 「あの、石神様……」
 「Strike while the iron is hot!」

 麗星に言った。




 翌朝、麗星はジェイたちと出発した。

 後から聞いた話では、地下闘技場で訓練をしたようだ。
 


 「ギャァーーーーー!」
 「あ! また首が飛びましたわね。大丈夫です。5秒以内ならちゃんとつながりますから」
 「いや、麗星さん……」
 「治癒系の「あやかし」も居りますの。半分以上身体が潰れない限りは、ちゃんと復活できますから」
 「いや、いくらなんでも……」
 「はい、次の方! あなたはもう下がりなさい。続けて首が飛ぶと、本当に死にますからね」
 「……」

 「あ、心臓が出ましたね。じゃあ、次の方。あ、みなさん、もうちょっと頑張りましょう。はい、次……」



 一週間後、うちに戻って来たジェイたちは、見違えるほどに強靭な戦士になっていた。

 後に斬が物凄い才能のある連中だと、珍しく手放しで喜んだ。

 「おい、信じられんぞ。野にこんな男たちがまだいたとはな!」
 「そうかよ」
 「おうよ! 何て言うかな、もう何度も死んだことがあるような連中だぞ。相当修羅場を潜ったな」
 「まーなー」

 「とにかく任せろ! お前も驚くような仕上がりにしてやる!」
 「よろしくな」




 御堂家守備隊、通称「マンモスの牙隊」は、どのような敵が来ても一歩も御堂家の敷地には侵入させなかった。
 強靭な戦士たちだった。
 ただ、その通称の元となった「正装」は、御堂が絶対にやめろと言った。
 あいつが珍しく本気で怒った。
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