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マリーンの地獄 Ⅱ

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 双子を先頭に、全員が走っていた。
 軽いジョギング程度のスピードだった。
 ルーが目で合図し、ハーが後ろに回った。

 「じゃあ、ペースを上げるよ!」

 ルーが倍以上のスピードで走る。
 ジェイたちもスピードを上げるが、引き離されていく。
 最後尾の人間が前に吹っ飛んで来た。

 「ちゃんと走れぇー!」

 ハーが怒鳴る。

 ジェイたちは必死に走り出した。
 後ろでバシンバシンと殴られる音が聞こえる。
 一人は抵抗しようとしたらしいが、すぐに必死で謝る声が聞こえた。

 中腹の広場に着き、全員がぶっ倒れた。

 「誰が寝ていいって言ったぁー!」

 ハーが全員を蹴り飛ばす。
 必死に立ち上がり、整列した。

 「いいかぁー! お前らはウンコだー!」
 『はい!』
 「じゃあ、脱げ! ウンコが服なんか着てるんじゃない!」

 ジェイたちは顔を見合わせた。

 「二度言わせるかぁー!」

 不審な顔をしながら、上半身を露わにした。
 まあ、暑かった。

 「そうか! よく分かったぁー! お前らは無理矢理やられるのが大好きなんだな!」

 そう叫んだルーの右手がゆるやかに動いた。
 生暖かい風が当たった。

 「ウォ!」
 「ファァック!」
 「オーマイガ!」

 それぞれに叫んだ。
 全員、全裸になっていた。
 見ると、ルーとハーも脱いでいる。
 マイクロビキニを身に付けてはいたが。
 マリーンたちも、ブーツだけは履いていた。

 マリーンたちは、小屋に案内される。
 扉を開き中に入ると、数々の銃器やナイフがあった。

 「好きなだけ取れ! お前ら貧弱ウンコには必要なものだろう!」
 
 全員がM16A2とコルト・ガバメントを手に取った。
 一応、拳銃用のショルダー・ホルスターはあった。
 替えの弾倉も吊るせる。
 
 「よし! 二人ついて来い! あとは全員で薪を集めろ! 30分後に火を起こしておけ!」

 ジェイとマイケルが双子に着いて行く。

 「ルー、二時方向」

 ハーが言い、ルーは手で着いて来いと合図する。
 ジェイとマイケルは黙って従う。
 稜線から林の中を潜る。

 イノシシが二頭いた。

 「あたしが右。あんたたちは左ね」

 小声でハーが言った。
 ジェイたちは頷く。
 ハーが瞬時に右のイノシシの近くへ飛び降り、首を刎ねた。
 ジェイがM16で左のイノシシの頭を撃った。
 逃げた。

 「このアホウ!」

 ハーが叫び、追って首を落とした。

 「この距離で外すなんて思わなかったわー」
 「聖とは違うねー」

 ハーが二頭を担いで来たので、ジェイたちは驚く。

 「じゃあ、戻るよ!」

 ジェイとマイケルがイノシシを預けられ、潰れた。
 200キロ以上あった。

 「あちゃー、何にも出来ないじゃん」
 「しょうがないよ、ウンコだもん」

 ルーとハーが一頭ずつ担ぎ、戻った。
 後ろを着いて行くのに、精一杯だった。
 キャンプ場では、マリーンたちが大量の薪を集めていた。
 既に火が起こされ、大なべに湯が溜められている。

 双子はジェイたちにイノシシの解体をさせた。
 まあ、手際はいい。
 剥いだ皮は、双子が乾燥させて上着とスカートにした。
 マリーンが驚いて見ている。
 全員フルチンだった。

 鉄板が小屋から持って来られ、火の上に置かれた。
 イノシシの脂が敷かれ、肉を焼き始めた。

 「あたしたちは約束を守った! お前らにイノシシを喰わせてやる!」
 『オー!』

 塩コショウの使用を許可し、全員で焼いて食べる。
 異常事態をしばし忘れ、ワイワイと食事をした。
 双子が半分以上食べた。
 それでも、全員が満腹した。

 陽が暮れて来た。

 「よし! じゃあ訓練を始めるぞー!」
 「え?」

 聞いた男がぶっ飛ばされた。

 「着いて来い!」

 男たちは従い、双子の後を走る。
 30分ほどで、窪地を見下ろす場所に来た。

 「お前ら! あの小屋を制圧しろ!」

 窪地の中央に、掘っ立て小屋があった。
 20平米ほどだ。
 窓は無い。

 「ゴーゴーゴー!」

 ルーが号令し、マリーン10名がわけも分からず突っ込んで行く。

 「ドッワァァァァー!」

 一人の男の後ろが大きく抉れた。
 衝撃波で、男が吹っ飛ぶ。

 「撃って来たぞ!」
 「散開しろ!」

 小屋の壁の一部から、レールガンがこちらを向いていた。

 「アバババババババ!」

 左端の男が直立し、倒れて動かなくなった。
 荷電粒子砲だった。
 出力は抑えてある。

 「おい!」

 ジェイが声を掛け、駆け寄ろうとした。

 「何か出て来たぞ! 6体!」

 見ると、銀色に輝く人間のようなものがこちらに向かって来た。
 右手が1メートルのソードになっている。

 「なんだ、ありゃ!」

 ジェイが叫ぶ。

 「デュール・ゲリエだよ。刃は潰してあるけど、当たれば骨が折れるよ?」
 「ナニィー!」

 ジェイは二手に分け、それぞれがM16で応戦する。
 流石に反応がいい。

 「おい! 効いてねぇぞ!」

 弾丸が跳ね返っている。
 デュール・ゲリエが迫り、全員がボコボコにされた。

 「全然ダメだね」
 「うん。一度かえろっか」

 双子は五人ずつ担ぎ、キャンプへ帰った。

 全員が呻き、半数が泣いていた。
 双子が腹を蹴って回ると、静かになった。

 全員を集め、ため池に入れる。
 徐々に温かくなり、見ると双子が手をかざしていた。
 みんなが不思議そうに見ている。

 「今手当てしてあげるね」

 ハーがそう言い、湯の中に手を入れた。
 身体が一層温かくなった。
 先ほどからの痛みが無くなっていった。

 「文学ちゃんの真似ね」

 意味は分からなかったが、心地よくなり、骨折していたと思われた男も治癒した。
 双子も風呂に入って来た。

 「ジェイ! 作戦を!」
 「え?」

 ルーに引っぱたかれた。

 「1時間休憩!」

 二人はそう言うと、どこかへ出かけて行った。
 10分後に戻り、シカを二頭担いで来た。
 ジェイたちが話し合っている間、シカを解体し喰っていた。

 「どうすんだよ、ジェイ!」
 「泣きごとを言うな! 今更帰りますって、お前言えるのか?」
 「い、いや、そうじゃないが」
 「とにかく、何とかする方法を考えろ」
 「あの銀色の奴はともかく、まずは拠点兵器を破壊しなきゃな」
 「ああ、レールガンと荷電粒子砲だな」
 「小屋に他にどんな武器が?」
 「対物ライフルがあったな」
 「よし! 無反動砲は?」
 「見てない」
 「ミサイルは?」
 「まずは確認しよう」

 マリーンたちは小屋へ入った。
 双子は夢中でシカを食べている。

 「バレットM82か。頼もしいな」
 「そいつが命綱だな。他には?」
 「Mk19(グレネードランチャー)がある」
 「よし、そいつも持って行こう!」
 「こんなもんか」
 「集まれ! ブリーフィングだ」

 マリーンたちが熱心に話し合っていた。

 ドアが開いた。

 「じゃー、二回戦! 行くよ!」
 『オォー』



 地獄の夜が始まった。
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