富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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蓮花研究所・訓練 Ⅱ

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 ミユキたちは特殊な武装をしている。
 ミユキは特殊チタン合金の軽装鎧を着込み、両手に大きなスパイクのついたグローブ。
 前鬼は同じく特殊チタン合金のスパイク付きの鎧にステンレス鋼の3メートルの棒。
 後鬼は胸部だけに特殊チタン合金のプレートを着て、手には右に湾曲の浅いショーテル、左に稲妻のようにジグザグに曲がった変形刀だ。
 今は刃を潰したものを持っている。

 亜紀ちゃんと双子が突っ込んだ。
 連携を取らせない作戦だ。
 しかしミユキが前に出て三人を迎え撃ち、取り囲もうとする双子を前鬼と後鬼が襲った。
 ミユキは後ろへ下がり、追う亜紀ちゃんを前鬼が棒で瞬時に突いた。
 まともに衝撃を側頭部へ受ける。
 見事な連携だった。
 ルーが前鬼の足に蹴りを入れるが、棒で身体を移動してかわされる。
 ハーは後鬼の剣技に既に潰れそうになっている。

 「何、この連撃!」

 ハーが叫ぶ。

 柳が「震花」を放った。
 亜紀ちゃんたちごと巻き込む。
 「暗月花」を発動しているのが分かっているためだ。
 しかし、ミユキたちは三人を楯にし、攻撃をかわした。

 「その位置に入るのは分かってるよー!」

 ルーが前鬼の顔に膝蹴りを入れようとしたが、その動きこそ読まれていた。
 高速の突きでルーが全身を打撲され沈んだ。
 同じくハーも後鬼の更にスピードを増した攻撃に沈む。

 柳が亜紀ちゃんと共闘しようと駈け込むが、後鬼に瞬殺され、亜紀ちゃんもミユキと前鬼によって地面に沈んだ。

 「おい、まだ動けるか?」

 俺が聞くと、四人は寝たまま手を挙げた。

 「お前ら、一応うちの最大戦力だったんだけどな」
 「「「「……」」」」
 「蓮花、悪いがこいつらは今日はここまでだ」
 「かしこまりました」
 
 俺はミユキたちと戦った。
 三人のどんな攻撃も俺には当たらなかった。
 最初はかわすだけだったが、徐々に攻撃を入れ始める。
 後鬼が背後から攻撃するが、一切俺には当たらない。
 ミユキは前面から高速の拳と足技を使う。
 前鬼は俺の左側から突きを入れ、棒を旋回させながら攻撃する。
 後鬼は背後だ。
 その位置で好きなように攻撃させた。
 瞬間、ミユキの拳、前鬼の突き、後鬼の稲妻刀が交差した。
 俺の身体は空中に片手で倒立している。
 次の瞬間、旋風脚で三人をぶっ飛ばした。

 脳震盪を起こし、三人は立ち上がれない。

 「なに、それ!」

 ハーが叫ぶ。

 「攻撃が面だとは分かっているな。防御も同じだ。敵の動きを予測し、「圧」を感じれば簡単なことだ」
 「タカさんは戦場でいつも独りで突っ込んでたって」

 亜紀ちゃんが言う。

 「そうだ。出来なきゃ俺はとっくに死んでいる。言い換えれば、突っ込むのは俺と同じことが出来るようになってからだ」
 「ミユキさんたちは出来るんですか!」
 「まだまだだな。一番俺に近いのは後鬼かな。でもまだ防御が甘い。5人程度までだなぁ」
 「そんな!」
 
 「蓮花! デュール・ゲリエを20体出せ!」
 「はい」

 「ミユキ、前鬼、後鬼! お前らでやってみろ!」
 「「「はい!」」」

 10分後、ミユキたちはデュール・ゲリエとやり合った。
 デュール・ゲリエは多彩な攻撃を展開する。
 波状的に攻撃法を変え、三人を襲う。
 最初の5体までは撃破したが、徐々に押されて潰された。
 10体を倒した。
 ミユキと後鬼は光線兵器を浴び、前鬼はブレードを首に喰らった。
 怪我は無い。
 量子コンピューターの判定だ。

 「蓮花、50体出せ!」
 「はい!」

 俺が相手をした。
 敢えて集団に取り囲ませ、攻撃をかわしながら撃破していく。
 デュール・ゲリエも戦法を多彩に変えて来るが、俺の攻撃は防げなかった。
 実際に破壊はしないが、有効打を量子コンピューターが判定し、デュール・ゲリエを停止させていく。
 10分ほどで50体を撃破した。

 「今日はここまでにするか」
 「はい」

 蓮花が俺たちを風呂に案内した。
 俺は亜紀ちゃんたちとは別な風呂だ。
 蓮花とミユキが一緒に来る。

 「お子様たちの様子を見なくてもよろしいのですか?」

 蓮花が俺の服を脱がせながら聞いて来た。

 「ああ、分かってるからな。大した怪我はないよ」
 「さようでございますか」
 「なんだ、心配か?」
 「いいえ。石神様がそう仰るのなら」

 蓮花はボロ負けした心のことを思っているのだろう。

 「あいつらには、ああいう経験が必要なんだ。アメリカと喧嘩して勝ったなんて思い上がっていては困る」
 「そうですね」
 「実際、まだまだだよ。ミユキには分かるだろう」
 「はい。思い通りの戦闘というのは、なかなか無いと思います」
 「その通りだ。そのことが分からなければ、あいつらはこの先死ぬ」
 「はい」

 俺は二人に身体を洗われ、二人を抱いた。

 


 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「チックショー!」
 亜紀が怒鳴った。

 「柳ちゃん、大丈夫?」
 ハーが柳の全身を診た。

 「うん、ありがとう。私、何にも出来なかったね」
 「しょーがないよ。タカさんが鍛えてる人たちだもん」
 「でもねー」
 「考えよ? 今日のことは今日のこと! 明日はやっつけてやるんだ!」
 「そうそう! 亜紀ちゃんも悔しがってないでさ!」
 「クッソー!」

 四人で湯船に浸かる。

 「なんでだったかなー」
 「ルーはどう思う?」
 「タカさんは面の攻撃とか言ってたけど、結局こっちがやりたいことが出来ないって感じ?」
 「あー、分かる! 亜紀ちゃんはほとんど攻撃の初動で止められてたよね?」
 「そうそう! 聖さんよりもやりにくかった。聖さんは何かよく分からないうちに私を倒してた感じ? でも今日は何かやる前に邪魔されるって感じかなー」
 「石神さんの動きってさ」

 柳が言う。

 「「「なになに!」」」
 「あ、あの、何かダンスのショーを見ているような感じだった」
 「あ! タカさんが世界に引き込めって言ってたことがある!」
 「自分の領域にするんだね」
 「でも、どうやって」

 「多分だけど、待ってるんじゃないと思うの。石神さんは、攻撃を誘導しているような感じだった」
 「柳ちゃん、スゴイよ!」
 「それだ!」

 双子が絶賛する。

 「じゃあ、明日はさ……」
 四人はフォーメーションと作戦を話し合った。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 夕飯はバーベキューだった。
 ブランたちと一緒に食べ、親睦を深める目的だ。
 まあ、ボロ負けした子どもたちは恥ずかしいかもしれないが。

 しかし、心配することもなく、子どもたちは楽しそうに食べた。
 ミユキやブランたちとも交流していく。
 ブランたちは、基本的に子どもたちを上に立ててくれる。
 俺の子どもたちだからだ。
 もちろん、柳もそうだ。

 「早々に負けた割にはよく喰うな!」
 「「「「アハハハハハ!」」」」

 それでいい。
 俺はいい肉を選び、焼いた。
 ミユキと前鬼、後鬼を呼んで食べさせた。

 「美味しいです!」

 ミユキたちが喜んだ。

 次いで大量の肉を焼き、アナイアレーターたちに食べさせた。
 
 「羅刹! お前の動きはいいなぁ!」
 「ありがとうございます!」
 「それにみんな、お前の使い処をよく心得ている。まったくいいチームだ」

 みんな嬉しそうに笑った。

 「多分、どんな特殊部隊だろうが、お前らの方が上だな」
 「そうですか」
 「ただし、同じ規模でぶつかった場合だ。10倍も差があれば、お前たちも危うい」
 「はい」
 「まあ、同じ武器でやり合った場合だけどな。お前たちには「花岡」がある」
 「はい」
 「お前たちは軍隊とやり合うためにいるんじゃない。それを忘れるな」
 「はい!」

 来るべき、「業」の兵士との戦いだ。
 それがどのような戦闘になるのかは分からない。

 俺はまた肉を焼いた。

 「おい、負け犬!」
 「「「「はい!」」」」

 いい返事だ。

 「お前らどうした? 今日は喰いが足りねぇじゃねぇか! どんどんもっと喰え!」
 「「「「はい!」」」」

 嬉しそうに俺の焼いた肉を食べる。

 俺は『あゝ紅の血は燃ゆる』を歌った。

 ♪ 花も蕾の若桜 五尺の命 引っ提げて ♪

 「俺の愛する美しい女が言った。「お前たちの紅を見せろ!」ってな。あの言葉に感動した。俺は忘れない。俺たちは「紅」を持っている。俺たちの「紅」は燃えている。この先、俺たちは死ぬのかもしれない。どうせいつか死ぬ命だ。「紅」を燃やして死のう!」

 『オォォォォォーーーーゥ!』

 全員が叫んだ。
 若い連中が、命を燃やしていた。
 そうさせるのは俺だ。
 こいつらには悪も罪も間違いも無い。
 全ては、俺なのだ。 



 罪があらば、それは、俺だけのものなのだ。
 蓮花が俺の手を握った。
 俺は振りほどき、蓮花の肩を抱いた。
 蓮花がにこやかに俺を見ていた。
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