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蓮花研究所・訓練

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 途中でハーが助手席に座る。

 「やっぱ、タカさんの隣はいいね!」
 「そうかぁ! お前は本当に可愛いな!」
 「エヘヘヘ」

 「でも、そう言えばいいんだぞ。したいことや欲しいものはちゃんと言えよ」
 「うん。でも、皇紀ちゃんもそれはやらないじゃない」
 「なに?」
 「皇紀ちゃんは、いつも自分が下がって誰かに譲るじゃない。だから私もルーも同じだよ」
 「お前! 何が食べたいんだぁー!」
 「アハハハハハ!」
 「まあ、肉だよな。いつも通りか」
 「そうだね!」

 ハーの頭を撫でる。

 「蓮花さんやミユキさんたちと話すのが楽しみ!」
 「そうか。電話じゃいろいろ話してるけどな」
 「でも、やっぱお互いの顔を見て話したいよ」
 「そうだよな。蓮花は優しいんだ。あいつは何かをしても、絶対に自分がやったとは言わない」
 「奥ゆかしいんだね」
 「そうだけどな。でもそれ以上に、本当に「まだまだ全然」って思ってるんだよ」
 「なるほどー」
 「素晴らしい奴だ。最初に疑ってしまった自分が恥ずかしいよ」
 「そうなんだ」
 「ああ。あんなに素晴らしい人間をな。俺も全然ダメだ」
 「タカさんは、だから蓮花さんを大事にするんだね」
 「そうだな。俺が一生かかっても出来ない罪滅ぼしだな」
 「うん」

 ハーが嬉しそうに笑っている。

 「そんなに楽しみかよ」
 「うん! タカさんがそんなに大事にする人なら、私たちにも大事だから」
 「そうか!」

 俺たちは楽しく歌った。
 
 『人生劇場』
 『ワインレッドの心』
 『飾りじゃないのよ涙は』
 『色彩のブルース』
 『CRY BABY』
 『Los! Los! los!』

 二人で思いついて歌い出し、一緒に歌った。



 柳と変わる。

 「おう! 御堂の娘!」
 「もう! お父さんはいいですよ!」
 「アハハハハ!」

 「お前もハマーを運転してみるか?」
 「そうですね。今後必要になるかもしれませんし」
 「ほお。お前も考えるようになったな」
 「はい。石神さんと一緒にいるって、そういうことですよね?」
 「どうだかな。俺が誰かに何かして欲しいわけではないけどな」
 「私も分かって来ましたよ。何かしてもらってしまうから悲しいんですよね」
 「本当に柳か!」
 「当たり前ですよ!」

 柳が悲しそうに笑った。

 「だから石神さんは傷だらけなんですね」
 「なんだよ」
 「前は、石神さんが誰かのために傷を負ってるんだと思ってたんです。でもそうじゃない。石神さんは自分のために誰かがやるから深い傷を負ってるんだと」

 俺が笑っていると、柳が俺を見ていた。

 「お前らも、いつの間にか大人になってきたんだな」
 「なんですか」
 「あー、御堂と酒が飲みてぇなー!」
 「なんですか、また」
 「御堂とお前らが子どもだった頃を話したいよ」
 「えぇー」
 「忘れてしまいそうだよ。成長してしまうとな」
 「なんですか、まったく」
 「子どもの成長って寂しいものだったんだな」
 「アハハハハ」

 

 蓮花の研究所に近づいた。
 ハーに電話を掛けさせる。

 蓮花が門を開けて待っていた。
 子どもたちが窓を開けて手を振った。
 蓮花も笑っていた。

 俺たちは荷物を降ろし、建物へ入った。
 亜紀ちゃん以外はみんな初めてだ。
 敷地の広さと建物の大きさに驚いている。

 「お前らは「蓮花の研究所」って言われてるけど、俺は最初は「蓮花の家」って案内されたからな。ぶっ飛んだぜ」
 「「「「アハハハハ!」」」」

 「蓮花は「和」の人間じゃない。斬の屋敷もそうだったけど、勝手に日本家屋だと思ってたからなぁ」
 「栞様が驚かせたいと仰いまして」
 「ああ。そうしたらフレンチは作るわ、ビニール傘で出迎えるわなぁ!」
 「傘のことは申し訳ありませんでした」
 「そうだよー! お前のイメージを崩すんじゃねぇ!」
 「ウフフフフ」

 亜紀ちゃんとルーが大きなクーラーボックスを台車に乗せた。

 「食材までわざわざお運び頂きまして」
 「まあ、半端な連中じゃねぇからなぁ。群馬の肉が無くなっては申し訳ない」

 蓮花が声を上げて笑った。

 「食事の支度は必ず子どもたちを使え。これは命令だ」
 「かしこまりました」
 「むしろ蓮花は外れろ。お前にはもっと大事な仕事があるからな」
 「石神様たちを歓待することが、最も重要な仕事でございます」
 「そうか。ほどほどにな。俺たちも遊びに来たんじゃない」
 「はい」

 それぞれの部屋に荷物を運び、俺たちは食堂に集まった。
 蓮花がコーヒーを配る。

 「いいか、今日から渡したスケジュール通りにやるぞ。全員理解しているな!」
 「「「「はい!」」」」
 「にゃー」

 「主にブランとデュール・ゲリエとの訓練だ。亜紀ちゃんは以前に経験しているが、以前の通りだと思うな! お前らも相当やられるはずだ。俺たちは前に進んでいる!」
 「「「「はい!」」」」
 「ハー、死ぬなよ!」
 「死なないもん!」

 「まあ、食事は期待しろ! 蓮花は俺が知る限り、最高峰の料理人だ!」
 「「「「ワーイ!」」」」

 「よく働いて、たくさん喰って、ちゃんと寝ろ! 前に進むぞ!」
 「「「「はい!」」」」

 着替えて外の訓練場へ向かった。
 ミユキと前鬼後鬼、そしてアナイアレーター(殲滅者)たちが待っていた。
 互いに少し挨拶し、早速訓練を始める。

 「まずは拳で語り合え! 最初は四人とアナイアレーターだ。加減はお前らに任せる。ぶちのめせ!」

 亜紀ちゃんと柳を残し、双子が前に飛び出した。
 アナイアレーターたちは二人を呑み込むように拡がった。
 瞬時に双子が倒される。
 二人とも、何が起きたか分かっていない。
 地面を転がりながら襲い来る攻撃を必死に捌いて行く。
 亜紀ちゃんと柳が飛び出した。
 それを読んでいたように、羅刹が亜紀ちゃんを迎撃する。
 亜紀ちゃんが驚愕した。
 独りの相手に、これほど苦労するとは考えていなかった。
 柳は多聞と帝釈に同時攻撃を喰らい、すでに押されている。

 双子を潰したアナイアレーターたちが、亜紀ちゃんへの攻撃に加わった。
 亜紀ちゃんは「花岡」を使おうとしたが、その初動を悉く邪魔された。
 柳は鋭い蹴りを顎に食らい、既に脳震盪で失神していた。
 
 亜紀ちゃんの動きが変わった。

 「舐めるなよー!」

 激しく回転しながら手足で攻撃を出す。
 手足の動きで移動する、聖に教わった攻撃法だ。
 急所は考えず、暴風圏にある身体をとにかく弾いて行く。

 アナイアレーターたちも攻撃法を変えた。
 「震花」を波状攻撃で浴びせ始める。
 亜紀ちゃんは余裕で「闇月花」で防ぐが、攻撃はずっと止まない。
 ついには隙を突かれ、羅刹によって沈められた。

 四人は地面に横たわったまま息を整えている。

 「どうだ、米軍よりもきついだろう?」
 「ちくしょー!」

 亜紀ちゃんが叫ぶ。
 まさか、こんなにあっさりと負けるとは思っても見なかっただろう。

 「聖に教わっただろう。面の攻撃だ。集団の強さはそれだよ。まだまだ実戦経験が足りないのが分かったか?」
 「「「「はい!」」」」
 「お前らはまだ一人の動きしか読めない。集団であれば、その全体の動きを読まなければ負けるぞ」
 「「「「はい!」」」」

 俺が手本を見せた。

 集団が面の攻撃を仕掛けようとする初動をいなし、各個撃破していく。
 羅刹が突出していたが、仲間を間に挟まれ攻撃が届かない。
 俺は半数を倒し、羅刹を潰し、あとはほとんど1分もかからずに平らげた。

 「一人なのに!」

 亜紀ちゃんが叫んだ。
 アナイアレーターたちが地面に平伏した。

 「さて、次はミユキたちとやるぞ!」
 「「「「はい!」」」」





  子どもたちの顔が輝いた。
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