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いつもの散歩

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 翌朝の9時に、レイから電話が来た。

 「フフフ、石神さんと同じ時間に電話しました」
 「なんだよ」

 俺も笑った。
 まだ俺はベッドだ。

 「そっちは夜の8時か」
 「はい。これからちょっと、飲みに行こうかと思ってます」
 「おい、気を付けろよ」
 「大丈夫ですよ。ガンを持った相手でも」
 「これから酔っぱらうんだろう!」
 「そんなに飲みませんよ!」

 まあ、今のレイならば相手になる奴もいないだろう。

 「聖はどうだった?」
 「ああ、何とかなりそうですよ。でもやはり「セイント」一社では足りないようです」
 「あいつも他に仕事を抱えているだろうからな」
 「いえ、石神さんのためだからと、最優先でやってくれるようです」
 「そうか。聖には頭が上がらないな」

 レイは、聖が腕のいいPMCと連携すると言っていたことを話した。
 
 「あいつがそう言うのならば、信頼できる所なんだろう」
 「石神さんは、聖さんを信頼していらっしゃるんですね」
 「当然だ。戦場で安心して背中を預けられる奴だからな」
 「聖さんも同じようなことを言ってましたよ」

 俺は思い出してレイに頼んだ。

 「そういえば、あいつ子どもが生まれるそうなんだ」
 「そうなんですか!」
 「悪いけど、俺からだと言ってプレゼントを渡してくれないか?」
 「はい! 喜んで!」

 俺はレイにマイセンの天使像を探して欲しいと言った。

 「《Je les Enflamme:燃え上がる恋》というものがあるんだ。ニューヨークなら手に入ると思う」
 「分かりました! 絶対に探しますね!」
 「マイセンの「箴言の天使」というシリーズの一つなんだ。前に冗談半分であいつに似合わない奴をやったんだよ。《Je les Unis:一つになる》というな。クリスマスにさ。そうしたら、あいつ大事に飾ってやがって!」
 「アハハハハハ!」
 「あいつが恋をするなんてなぁ」
 「私もしましたよ!」
 「そうか! じゃあ日本に戻ったら祝ってやろう」
 「お願いします」

 レイが嬉しそうに言った。

 「楽しみにしてますね!」
 「ああ、俺の子どもをプレゼントしよう」
 「え?」
 「何でもねぇ。欲しくなきゃ、そう言ってくれ」
 「!」

 「じゃあな!」
 「石神さん!」

 俺は電話を切った。
 ロボが俺を見ていた。

 「なんだよー」

 顔をワシワシしてやると喜んだ。





 下に降りると、子どもたちは勉強をしていた。

 「「「「「おはようございます!」」」」」
 「ああ、おはよう。俺の飯はあるだろうなぁ!」

 亜紀ちゃんが笑って用意した。
 ルーがロボの魚を焼く。
 ハーは柳と俺の布団を干しに行った。

 ロボが鰆を美味そうに食べ、俺はハムエッグとカレイの煮物を食べた。

 亜紀ちゃんがコーヒーを持って来る。

 「今日はどこかへ出掛けますか?」
 「どうしようかな」
 「栞さんがお昼に来るそうです」
 「そうか。じゃあ二人で買い物にでも行くかな」
 「はい。それで何を?」
 「子ども服とか」
 「あー!」

 「おい、冗談だぞ!」
 「なんでですかー! いいじゃないですか」
 「いや、恥ずかしいよ。栞に一任する」
 「えー! 一緒に買えばいいじゃないですか!」
 「やだ」

 亜紀ちゃんが俺を見ている。

 「あんだよ」
 「タカさん。子どもにはちゃんと服を着せて下さいね」
 「当たり前だろう。何を言ってんだ」
 「だってタカさん、すぐに裸になっちゃうじゃないですか」
 「お前なぁ」
 「士王ちゃんはまともな子に育って欲しいですね」
 「このやろう」




 食後に、俺は双子を散歩に誘った。

 「暑いね、タカさん!」
 「そうだなぁ」
 「ソフトクリーム日和だね!」
 「お前ら真冬でも喰ってるだろう!」
 「「アハハハハハハ!」」

 いつもの公園のベンチでまったりする。
 ハーがペットボトルのコーラを買って来た。
 
 「士王ちゃんは、私たちの弟になるの?」

 ハーが聞いた。

 「ああ、そうだな」
 「なんか不思議」
 「そうか。でもまだ増えるぞ」
 「「エェー!」」
 「俺はどんどん子どもを産んでもらうことにした」
 「タカさん、どういう心境の変化?」

 ルーが聞いた。

 「なんだろうな。やっぱり好きな女には産んで欲しいということかな」
 「ふーん」
 「レイにもそう言った」
 「「ええ!」」
 「さっき電話でな」
 「じゃあさ! 六花ちゃんも?」
 「もちろんだ。ただ、時期は考えているけどな」
 「どうして?」
 「六花には響子の世話がある。まあ、子育てをしながらでも出来るだろうが、それでも一定の期間は仕事を休むことになるからなぁ」
 「そうかー」

 「柳ちゃんも?」

 ハーが突っ込んでくる。

 「まあな。あいつは特に時期はねぇよな。でも学校を出てからだろうなぁ」
 「スゴイね、タカさん!」
 「凄いことはねぇよ。普通のことだ」
 「タカさん! カンパイしよう!」

 俺は笑って、三人でコーラで乾杯をした。

 「お前ら、ありがとうな」
 「「?」」

 「お前らがいてくれたから、俺は人並みに親ってものになろうと思うようになった。子どもって本当にいいものだって思えるようになったんだ」
 「「タカさん……」」
 「毎日が楽しい。毎日が充実してる。こんな気分になれたのは、お前らのお陰だ。ありがとう」
 「「うん!」」
 「でも、弟や妹に大食いは教えなくていいぞ」
 「「アハハハハハハハ!」」

 「それでもなっちゃうのかなー」
 「どうして?」
 「俺がお前らの大食いが大好きだからな!」
 「「アハハハハハハハ!」」
 「お前ら、どんどん喰ってくれな」
 「「うん!」」
 
 「でも、俺が「今日は控えてくれ」と言ったら、ちょっと大人しく喰ってくれ」
 「「うーん」」
 「おい! そこは「うん」って言え!」
 「「アハハハハハハハ!」」



 「まあ、御堂の家、栞の家、蓮花の研究所、麗星さんのとこ、ロックハート家、千両のとこ、どこでも大食いが出来るからなぁ」
 「そうだよね!」
 「こないだ早乙女が来たじゃん。押しかけたお詫びに、今度ご馳走したいなんて言いやがった」
 「「へぇー」」
 「無理だよなぁ」
 「公務員だもんね」
 「安いとこは?」
 「どこだよ?」
 「回転ずしとか?」
 「俺らの後にネタが回らなくなるだろう!」
 「「アハハハハハハハ!」」

 「それに俺が喰えねぇ」
 「タカさん贅沢だもんね」
 「お前らもだろう!」
 「じゃあ、キャンプは?」
 「それじゃご馳走じゃねぇだろうが!」
 「「アハハハハハハハ!」」

 やっぱり双子は楽しい。

 「うちで夕飯をちゃんと喰ってから行くか」
 「そうだねぇ」
 「沼津じゃ三百万喰ったからなぁ」
 「たまにはいいじゃん!」
 「一番高かったのは?」
 「もちろん、宇留間のせいで開いたパーティだよな。3000万円」
 「「アハハハハハハハ!」」

 「あー、また沼津のお寿司屋さん行きたいなー」
 「ルー、今の話聞いてたか?」

 三人で笑った。

 「でもまた行こうな。あそこは本当に美味いよな!」
 「「うん!!」」

 「レイが戻ったら行こうよ!」
 「でもレイは寿司はそんなに好きじゃないだろう」
 「大丈夫だよ! あそこは寿司以外もあるし」
 「お前らが喰いたいだけだろう!」
 「「アハハハハハハハ!」」

 ソフトクリーム屋に行くと、のぼりに《日本一のソフトクリーム》とあった。
 俺たちは笑った。

 「根性鬼盛一つと、根性悪魔盛二つ」
 「へい!」

 超大盛にしてくれた。
 三千円を渡した。

 「日本一は美味しいね!」
 「わざわざ北海道から来た甲斐があったね!」
 「よく芸能人も来るんだろ?」

 行列が出来た。



 三人で笑って帰った。
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